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古い草履に気をつけろ!の巻

星わにこ
2023/10/04 00:00
着物って、譲っていただいたりリサイクルで入手したり、古いものに袖を通す機会が結構あるのではないでしょうか。お母さんのもの、おばあちゃまのもの。私なんか、自分の若い頃の着物だって気がついたら30年以上経っているものもあります。 洋服だったら、そんな昔のものを着ようとはなかなか思わないのではないでしょうか。物理的に増量してサイズが合わないということもある(爆)んですが、たとえサイズが合ったとしても流行もあるし、第一処分してしまって手元にはないことも。 でも、着物はたとえ着なくてもずっと大切にしまってあったりして、多少のサイズの融通もきくし、着ることもできるしお直しも可能です。受け継いで着ることができるのは素晴らしいことだなあといつも思います。 一緒に、古い着付け小物や肌着、履物類も残っていて、そのまま使うこともあるのではないでしょうか。肌着や靴のそんな昔のものを身につけるというのは洋服だったら抵抗があるのではと思いますが、不思議と着物だと抵抗がない人が多いですね。 もちろん、未使用だったり新品同様だったりすることもありますし、そのまま使っても悪いことはないのですが、長年の経験から「草履だけは新しいものを買って」と言いたいです。 なぜなら、古い草履はまじ危険だからです。ウレタン草履は、加水分解といって経年劣化でぼろぼろと崩壊することがありますし、合皮はポロポロと剥がれてしまうこともあります。皮の草履でも、接着部分が剥がれてしまったりすることも。スニーカーなどでもみられる現象です。 大切にしまってあったものは、一見すると綺麗でなにも問題がないように見えますが、内部では確実に劣化がきています。中には大丈夫なものもありますが、私も古いウレタン草履の崩壊(履いて歩いているうちに、台がぐしゃり‥‥と潰れた)や、草履の底がベロンと剥がれたという経験がありますし、そういうトラブルは実際まわりでも結構起きています。経験した方や話をきいたことがあるわという方も多いのではないでしょうか。 靴やバッグなどでも、古い合皮のものは触るとベタベタしたり、強めに擦ってみると傷がついたりよれたりするものがありますよね。劣化でちょっとでもそういう傾向が感じられるものは、履くのはやめたほうが無難です。特に雨草履は注意!! また1回しか履いてないのに、とか、全然綺麗に見えるのに、というものでも古いものはやはり劣化の危険があるのです。個人的な目安だと、ウレタン草履は一度でも履いたものは10年は無理(5年くらい)本革は保存さえよければ15~20年ものくらいはいけるかなと思いますが、それ以上古いものは私も手を出しません。それ以下のものでも保存が悪いものだとNGなこともあります。 着物でお出かけ、特に歩き回る場合は高価なものでなくても、自分の足に合った新しいものを購入されるのをおすすめします。。。出先で草履がダメになったときのリカバリーは本当に厳しいです‥‥。昔みたいに角々にはきもの屋さんはありませんし、デパートに駆け込んで高い草履を買う羽目になった人も。大事な日ならなおさらなので、本当に草履だけは古いのはやめておきましょ、とおすすめしています。 見た目はね、痛んでないの。本当に綺麗でもったいないの。でも、基本古い草履は消耗品。履くのはやめとこ、人に譲ったり売ったりするのもやめとこ、大切なものや素敵なものだったら写真をとって思い出に残しとこ、ということをお伝えしたいでございます。

帯揚げの結び目が飛び出してこない方法の巻

星わにこ
2023/09/27 00:00
夏の間は「暑いし面倒臭いし帯揚げいらん」などとほざいていた私ですが、帯揚げはやっぱりあると着姿が締まりますよね。見える部分はほんのちょっと、帯の上に少し色が入っているだけなのに、存在感が大きい帯揚げ。素敵な差し色になって、コーディネートに重要な役目をはたしています。 一方で、着るときになかなか時間をとってくるくせものでもあります。もうね、帯まで結んで力を使い果たしているところに、帯揚げ。着物初心者のころは、綺麗に結びたいとおもいつつ、うまくいかなかった部分でもあります。目を瞑ってエイッと仕上げて、わーもうぐちゃぐちゃだけどゴメン!(自分に)なパートでした。 でも、しゅっと綺麗に決まっている帯揚げは、惚れ惚れしますし、憧れます。これも着付けに慣れてくるにつれて、だんだんと気を使えるようになってくるものではないでしょうか。 着付けのお悩みで「帯揚げの結び目が帯の中から飛び出してきちゃう」というのをよく伺います。今回はそんなお悩み解消のポイントをお伝えします。 まず、ゆるっと結ばないこと。布目を通して畳んで、結ぶ前にしっかり引き締めること。ゆるむと遊びが出て、飛び出しやすくなります。 そしてここからがポイントなのですが、結んだら余りの処理を横に流すのではなく、垂直に帯の中にしまうこと。 もちろんそのまま縦につっこむのは長すぎますから、帯におさまるように端をたたんで、下に向かってぐっと押し込みます。 こうすると、下方向に力が働きますから、結び目が飛び出してきにくくなります。 あとは、帯枕の紐に押し上げられて帯揚げの結び目が飛び出す事案もあります。帯枕の紐もしっかりと帯の中にしまってください。このとき、結び目だけを下に押しても動けば上にあがってきます。脇からしっかりと帯の中に入れ込むようにすると上がってきませんよ。私は、帯の下から手をいれて下にひっぱるときもあります。 いつも帯揚げの結び目がコンニチハしてきてしまう、という方、一度試してみてください。

衣替えは着物の点検とワードローブ見直しのチャンス!の巻

星わにこ
2023/09/20 00:00
暑くて永遠に終わらないように思われた夏も、少し手を緩め始めた感のある今日この頃‥‥といってもまだまだ暑くて9月も下旬になろうというのにとても単衣を着る気になれないわにこです。10月からもこの気温が高めの傾向は続くようで、とても暦通りに袷を着られるようになるとは思えません。1年中単衣で過ごしてもいいのかも? とはいえそろそろ衣替えも視野に入ってきますね。シーズンが終わった着物をお手入れするのはもちろんなんですが、仕舞い込んでいたこれからの季節の着物をもう一度点検してみませんか。 よく着物を着る人は、着物を毎シーズンお手入れに出すというよりは「汚れたら出す」ことにしている人もいらっしゃるのではないでしょうか。私も、着た回数が少なくてそんなに汚れのない普段着などは2,3シーズンに1回お手入れに出すかな、というような感じです。 そういう着物を、いざ着ようとひろげたときに、「あっ!袖付けがほころびてたんだった」とか「裾が擦り切れかけている!」とかいったことに直面したことはありませんか。私はめちゃめちゃあります(え~)。 自分でできるちょっとした修繕や、あとでお手入れに出そうと思ったものをそのままにしてとりあえずしまってしまった前シーズンの自分よ、ちょっとここにきて座れ。 まあ私ほど後回しにする人もいないかもしれませんが(ゴホンゴホン)、なかなか、着物を着た後、すぐお手入れや修繕をしておく時間がなかったり、その時は気がつかなかったりということもあるわけで。 また夏の暑い暑い中、箪笥に仕舞われていた着物は意外と湿気を吸っていることも。秋晴れの日に、箪笥から出して拡げてできたら羽織って、虫干しがてら着物の点検をしてみてはいかがでしょうか。 意外と気づかなかった汚れを発見したりということもありますし、その着物を今後も着るかどうか検討する『箪笥の肥やし自分会議』を開催することもできます。 ほんとに、なんでもかんでも「いつか着るぅ~」「直して着るぅ~」と仕舞い込んでいると、きりがないのですよね。私だけかもしれませんが、好みが偏っていて同じようなものを何枚も何枚も持っているような場合は、お気に入りの優先順位をつけて処分していかないと、増殖の一途(しかも人からみたら同じやんけ、という)を辿ることに。 シーズン終わりにももちろん考えるわけですが、シーズンの初めにもう一度「この着物、今年着る?」ということをぜひ考えてみてください。 昨年そんな着物の保管・メンテ・処分の方法について書いた拙著『その着物、どうする?』(河出書房新社)が発売から1年4ヶ月経って、なんと3刷がかかりました。感謝です!! 同時に皆さん、着物についてはやはりお悩みなのだな、としみじみしております。 表紙をみただけではわからないのですけど、全部書き下ろしの漫画です! お片付けやお手入れ、リメイクなどについてそれぞれ達人の教えをいただいたので、自分でも読み返して役立てております。まだ読んでないわ~という方がいらしたら、よろしければネットショップとかでサンプル読んでくださいね。電子書籍も出てます! なんて、最後宣伝になってしまい大変失礼いたしました。 衣替えのシーズンは、着物の点検とワードローブの見直しのチャンスです。着物を着る機会の多い方は尚更、これを機会に自分の着物を見直ししてみてくださいね!

「お着物で薬膳フレンチ」に行ってきたの巻

星わにこ
2023/09/13 00:00
8月のある日、仲良しのキモ友さんのお誘いで、着物着用が参加条件の「お着物で薬膳フレンチ」にいってきました。東十条にあるオーヴェルニュ地方料理のワイン食堂『La poule au pot ラ プール オ ポ』では、毎月1回、ランチの時間にシェフもお客さんも全員着物の薬膳フレンチの会を開催しています。 カウンターのみの小さなお店で、割烹着を着たシェフの渡邉美由紀さんが、手際良く料理を作って盛り付けていく様子に見惚れつつ、友達とわいわいおしゃべり。私は今回で2回目の参加になるのですが、居心地がいい店内はくつろげて、まるでお友達の家に遊びに来たみたいです。 自分ではなかなか作れない、手の込んだ体にやさしい料理がお皿に盛り付けられて、ちょっとづつ、目も体も癒される滋味深い味わいのたくさんの種類のお料理を食べることができ、とっても幸せな気分に。前菜、メイン、デザートと飲み物、女性にちょうどいいボリュームで、大満足。 フランスで料理修行を積んできた渡邉さんは、お母様が着付の仕事をされていたこともあって、もともと着物が大好き。若い頃は料亭で着物を着てアルバイトをしたこともあり、フランスにも着物を持っていき、ご自分の結婚式でも着たそうです。小紋でしたが、自分で着付けて、とっても好評だったそうです。 日本に戻って要町(池袋の立教通り)にお店をオープンし、さらに東十条に移ってから6年目。着物好きが高じて、ゆったりと体に優しい薬膳を取り入れたフランス料理を着物で楽しんでもらいたいと、この会を始めました。 地元の着付け教室の方たちや、着物好きの人たちにクチコミで広まって人気の企画だそうです。渡邉さんがその日着ている着物について伺ったところ、着物繋がりで仲良くなったお客様から、病気でもう着物が着られないからと生前形見分けだから、といただいた夏着物だそう。「せっかくだから、着ないとと思って」とおっしゃっていましたが、着物も元の持ち主さんも、とても喜んでいるだろうな~と感動。 私も、ご縁があっていただいた着物や帯を、もっと着ないとな~!と改めて思いました。着物の話をして美味しい料理に舌鼓をうっていると、時間もあっという間に過ぎてしまいます。 夏の間は、体調がいまいちだったこともあって着物を着る回数も少なくて、この会も行けるのかな‥‥とちょっと弱気だったのですが、思い切って出かけたら、暑いけれども風も抜けて爽やかで。 夏着物は着るまでが億劫で億劫でやっぱりやめようかと何度も思うのですが、着るとしゃっきり、あら不思議。テンションがあがるせいか、着ている間は苦にならない。 そして、脱いだ時が一番爽快(笑)。 キモ友の有松絞りの浴衣の思い出のお話をきいたり、麻着物コーデや半幅帯のバリエーションを楽しませてもらい。目にも心にも優しいお出かけに。コロナ禍も終わったのだなあ‥‥と会食できる日常が戻ってきてほっと一息ついたような、過ぎた日を思うとなんともいえないような、そんな夏の終わりの1日になりました。 『La poule au pot ラ プール オ ポ』さんでは毎月1回この「お着物で薬膳フレンチの会」を開催されていますので、興味のある方はぜひ。心もお腹も満たされますよ~。夜にゆったり、大人の時間もいつか‥‥。

男物の兵児帯で普段着がマイブーム!の巻

星わにこ
2023/09/06 00:00
昨年から時々男着物を着ることがあるのですが、ずっと帯は角帯を合わせていました。先日思い立って兵児帯を使ってみたら、すっごく楽でした! きゅっと引き締めればしっかり腰をささえてくれますし、総絞りのものならちょっと弾力性があるのがまた気持ちよい。これは家に帰ったら昭和のお父さんたち、着物と兵児帯に着替えるわけです(納得)。 兵児帯は、男物も女物もサイズはあまり変わらず、幅50~75センチ、長さは3メートル50~4メートル。女性用だとポリエステルなどで軽くてふわふわしているものが多いですが、男物は結構しっかりと重さがある正絹のものが多い気がします。 おじいちゃんのものが箪笥にあった、なんていう人もいらっしゃるのでは。持つと結構ずっしりしますよね。 サイズが変わらないのであれば、男物も女物とおなじように結べばいいのでは?と思い、女性着物に合わせて結んでみました。 そのまま結ぶと幅が狭くなってしまうので、帯板を包む様にして前の幅を出します。 結び方は、普通にリボン結びかリボン返しで可愛くできます! 最初は総絞りの兵児帯を結んだのですが、結構伸びるので、あまり引き締めないで結んだら、ボリュームがあるのでお腹がぽっこり見えてお相撲さんか子供みたいなことになってしまい(本当にぽっこりだからなのでは?というツッコミはおいておいて)、しかも、後ろの結び目も重いので落ちてきそうで、仮紐で支えました。 まあなんとか形にはなったのですが、絞りなので空気も含むし、夏には暑い。。。重い。。。とマイナス面を感じてしまいました。 ただ、柔らかいので楽なんです!!! もしかしてふわふわ結んだのが悪かったのでは?と反省し、今度はしっかり引き締めて結んでみました。すると、なんということでしょう。 絞りのゴムのような弾力で引き締めても苦しくないし、体も支えてくれるし、結び目もきちっと高い位置でキープされて下がりません。 あら素敵~~~。(体感的に) というわけで、すっかり普段着兵児帯にハマってしまいました。帯が硬くないって、こんなに楽なんだなと目から鱗でした。男物は色もシックなので、汚れも目立たないし普段に使いやすいですよね。 総絞りのものは豪華だけどやっぱり暑いので、帯の端だけに絞りが入っているいわゆる「端絞り」というタイプのほうが夏には向いているかもしれません。 もしお手元にそういえばあるわ、なんていう方がいたらぜひ一度お試しを! これから秋に向かいますが、兵児帯に下駄、なんて普段着スタイルにしばらくハマっていそうなわにこでした。

夏の終わりとカランコロンと下駄の音の巻

星わにこ
2023/08/30 00:00
さすがに8月も終わりに近づき、少し暑さが和らいできたような気もしないでもないでも暑い! でも着物も着たい! ようやく夏バテも治ってきたので、キモトモ(着物友達)の皆様とおでかけ。足元は二枚歯の下駄ででかけました。 普段は草履一択なのですが、夏は下駄が履きたくなります。コロナ禍に入る前に岐阜の郡上八幡の郡上木履さんで、台に焼き印を入れて鼻緒をすげてもらった下駄は、郡上の盆踊り用。郡上おどりは、蹴ってカラン、といい音が出る振り付けがあるのですが、その時折れたりしないように台は歯をあとからつけるのではなく、ヒノキを削り出して台と一体になっています。 一夏、徹夜踊りなどに参加して踊っていると、歯が削れて小さくなるそう。そしてまた、次の年には新しい下駄で踊りを楽しむのだそうです。削れてなくなるほどは踊ったりもしないので、何年も愛用しています。 街では、音がしないようにと歯にゴムを貼ることも多いのですが、木の歯が地面にあたって「カランコロン」と音を立てるのは、涼しくも感じさせてくれます。 また、昭和を知る人には懐かしい音でもあるのではないでしょうか。昭和の時代は、サンダルのような感覚で下駄を履いている男性もいましたよね。私は祖父を思い出します。着流しに下駄がリラックスウエアだった時代です。 70年代のドラマとかはジーパンに下駄、とかありました。ゲゲゲの鬼太郎も下駄ですよね。まだまだ和装が日常に根付いていたころです。 学生服に下駄とかは、バンカラスタイルの代表で、私が上京して大学に入ったころにはまだ「下駄禁止」なんてことも言われたりしていて、カラコロと音がうるさいから、という理由だったと思います。そんな人いるの!と思ったけど、わざと履いてくる人もいたりしました(笑)。 そんな昭和を懐かしく思い出したりするせいか、夏は下駄が履きたくなります。 もう夏が終わるなあ、という時期の夕暮れに、カランコロンという音を聞くとちょっと寂しくなってみたり。別に下駄は夏のものではありませんが、私はなんだか夏に下駄を恋しく思います。 また来年も元気で、下駄でおでかけできますように。

圧巻!能装束の虫干しツアーに参加したよの巻

星わにこ
2023/08/23 00:00
皆様お盆休みは何をして過ごされましたか? 久しぶりに帰省された方も多いのではないでしょうか。私は夏バテもあって自宅でのんびり、と思っていましたが、尊敬する着物マダムにお誘いいただいて、東京都中野区にある武田修能館の能装束の「虫干しツアー」に行ってきました。 お能好きの方ならご存知の方も多いのではないかと思いますが、財団設立以前から行われているこの「虫干しツアー」では、公益財団法人 武田太加志記念能楽振興財団所蔵の300点あまりの能装束や小道具類が虫干しされている様子を見学できます。 普段は舞台でしか目にすることができない貴重な装束を、能楽師の先生の解説つきで、もうびっくりするくらい近距離で見ることができ、写真も撮影させていただけて、ものによっては触らせていただくことも可能というどんだけ~!という大盤振る舞い。美術館でガラス越しに見るのと違った天元突破の贅沢さに思わず挙動不審になってしまうくらいでした。 虫干しは能舞台と見所(けんしょ/観客席)、楽屋を使って行われ、先生に案内していただきながら、まさに衣装をかき分けるように移動しつつ見せていただきます。能舞台の上にもあがらせていただくので、白足袋を履く決まりになっています。 今回は武田文志先生にご案内をいただく回に参加したのですが、わかりやすく楽しいお話に、時間を忘れて聞き入ってしまいました。 まず最初に、おそらく江戸の元禄時代のものであろうという武田家に代々伝わる300年前の貴重な家宝ならぬ「財宝」(財団法人のお宝だから!)から見せていただきました。 驚くのはそれがまだ、機会があれば実際に舞台に使われるものだということ。さすがは約600年の歴史があり、現存する最古の舞台芸術である「能・狂言」。初手から凄すぎます(語彙)。 能装束研究家の山口憲氏が手がけたという、もともと武田家に伝わる装束を復元した花車の唐織にも、触らせていただくことができました。江戸時代と現代では絹糸の重さが違うということで、自ら桑畑を作り養蚕から行ったというこだわりの装束は、現代物の他の唐織に比べて格段にしなやかで軽い触り心地。そんなお宝をはじめ、この装束はこんな演目で使われる、役の年齢による使い分けをするといった密度の濃いお話を伺いました。 例えば縫箔という女性や童子が着る衣装の「色」。裏地が赤いものは「紅入(いろいり)」といい、若い女性や少年役に用いられ、赤ではなく紫や紺などの裏地は「無紅(いろなし)」といって中年期以降の女性のものとして使われるそう。そういった知識があると、舞台ももっともっと楽しめそうです。 10年ほど、能の番組であらすじの漫画を描く仕事をさせていただいているのですが、あの!あれは!こういう構造になっていたのね!と実物を間近で見て初めてわかることもあり、本当に勉強になりました。 唐織をはじめ、縫箔、長絹、舞衣・水衣といった絹の美しさ、素晴らしさを間近で堪能できるこのツアー。お能が好きな方はもちろん、着物好きなら、夢中になること間違いなしです。1時間という見学時間内ではとても全てを鑑賞しきることはできないので、リピーターの方も多いとか。毎年夏に開催されますが予約制ですので、同財団のホームページやFacebookをチェックしてみてください。 武田文志先生のYoutubeチャンネルでも、虫干しの様子が見られます。お能のお話も本当に素晴らしいので、ぜひご覧ください! 公益財団法人 武田太加志記念能楽振興財団 文志村塾(ふみゆきそんじゅく)

夏は麻が涼しい!着膨れしないコツの巻

星わにこ
2023/08/09 00:00
残暑お見舞い申し上げます。暦の上ではもう秋ということですが、いやいや本当に毎日暑いですね。とても着物なんて‥‥と思いつつ、覚悟を決めて着てでかけると、意外といけるし、気分はあがるし、楽しいものですよね。でも、夏着物の一番いいところは、家に帰って脱いだときの開放感(笑)なんのために着るのかな?と思わないでもないですが、それがオシャレの醍醐味なのか、着物熱のせいなのか。 まあ夏なんて、洋服を着てたって暑いものは暑い。着たいから、着る。というだけなんでしょうね。 着るからには、ちょっとでも涼しくと思うのは人情ですが、夏の着物で涼しいといえば代表選手は「麻」です。最近は、セオアルファなど新素材のものも増えていて、それはそれで快適なんですが、やはり天然素材の麻の涼しさは独特で、着ると体が喜ぶような気がします。 麻がなぜ涼しいかというと、その高い放湿性もありますが、なんといってもハリがあって、空気をはらんで体にはりつかないということ。衣紋や袖口、身八ツ口からだけでなく、生地自体を風がぬけたとき、本当になんともいえない涼しさを感じますよね。 綿などは汗を吸ってくれる気持ちよさがありますが、麻はこの「風を着る」とでもいいましょうか、生地に熱もこもりませんし、夏は本当に快適です。逆に冷房が効きすぎているところでは、寒くなってしまうほど。 着物だけでなく、襦袢や肌着、足袋なども夏は麻が快適です。私は麻のステテコを愛用しているんですが、ロングスカートやワンピースの下にも着るくらい、涼しくて手放せません。足袋も、単に見た目とかだけでなく、やはり風が抜けて涼しいです。 そんな素敵な麻ですが、ハリがある=固いということもあり、肌が弱いので着られないという方もいます。 そして、ハリがあるということは、体から浮きやすく着膨れして見えるという、私の所属するふくよか党にとっては致命的な問題も。でも、着たい! 体に沿わないということが涼しさを生み出しているのでこれはどうしようもないことなんですが、着るときに上半身は上から下に、下半身は横方向になでつけて空気を抜くように丁寧に着るとこれが結構違います。ぜひお試しを。 そして、お手入れはなんといっても自宅で洗えて、しかも乾きが早いのが麻の素敵なところ。 洗濯はきちんとたたんで、洗濯ネットに。スラックス用の洗濯ネットやたかはしきもの工房のせんたく姫がおすすめです! 手洗いでも、洗濯機のおしゃれ着コースでもOK。ただし脱水は1分以内にしてください。脱水しすぎるとシワがとれなくなってしまいます。濡れた状態で、手でぱんぱんと叩いたり、シワが気になるところは手アイロンしたりして干します。 小千谷縮などシボのはいったものは、アイロンをかけてしまうとシボが失われてしまいますので、アイロンはかけないで。 乾くとまた「ぶわん」と膨らんでいるので、きちんとたたんで、座布団などの下において「押し」をかけると縫い目なども落ち着きます。よく布団の下に敷いて寝押しをかけるといいますが、寝押しまでしてしまうと、ハリが強くなってしまうので上に軽めの重しをするくらいでちょうどよきです。 シワやふくらみが、麻の涼しさ、愛しさではありますが、ほどよく押さえて抑えて着るとよりすっきり美しく着られるようになります。麻は着たいけど膨らんじゃうと思っている方、「着る時に空気を抜く」「洗ったら押しで落ち着かせる」をお試しください。 関連カテゴリ:麻の着物|いち利モール

半幅帯の結び目を高くキープする方法3選の巻

星わにこ
2023/08/02 00:00
浴衣シーズンですね! 先週末は4年ぶりに隅田川の花火大会があったり、盆踊りなどなどでたくさんの浴衣姿をお見かけしました。夏は浴衣! 本当にいいですねえ~。 素敵だなあ~ってついつい頬が緩んでしまい、危ない人に思われないよう平静を装ったりして……(笑) 帯結びもYoutubeやInstagramなど、動画でいっぱい見られるせいでしょうか、とっても素敵なスタイルが多かった気がします。 半幅の帯結びで気をつけたいのが、結んだときはいいけど動いているうちに緩んで、後の結び目が下がってしまって、伊達締めとかが見えてしまうこと。私も初心者のころよくなりました(遠い目) 伊達締めをしていなかったりしても、帯の結び目が下がると着崩れにつながったり、背中が広く見えてしまって残念なことに。特に最近の半幅帯は長いものが多いので、結び目にかかる重さが増加して、下がりがちなんですよね。 かるた結びや結ばない帯結びなどのやり方で、そもそも落ちるような位置に結び目を作らないという方法もありますが、ちょっと背中の高い位置に結び目があると、若々しいものですし、背中も華奢見えして女子力もアップします。 結び目を高い位置にキープするコツを3つご紹介しますね! 1)結び目は高く、結んだらひねってロックをかける 帯の上線の上に結び目が来るように、高い位置で結んでしっかりひきしめること。怖がらずにしっかり絞めたら、結び目を縦方向にひねります。こうすると、しっかりロックがかかって帯が緩みにくくなります。 2)クリップ使いで帯がゆるまないようにする 結び目が緩むと帯が緩んで、相乗効果でどんどん緩みます。見えない部分を便利グッズ「お太鼓止め」で止めておくと安心! ない場合は文房具のダブルクリップでもいけますよ。 3)仮紐を使って結び目を高い位置にキープ 三重仮紐を使って結び目の上に羽飾りを作っていくやり方だと、仮紐に重さがかかるので結び目は下がりません。三重仮紐でなくても、仮紐(腰紐でもOK)を使えばOK! 素敵な半幅帯結びで、夏の浴衣を楽しんでください。もちろん、普段着物のときもぜひ!

夏はプチ帯留め&二分紐のすすめの巻

星わにこ
2023/07/26 00:00
気温が体温を超える日が続き、外に出たくない‥‥となってしまう今日この頃ですが、そこはひとつ、ぐっと気合を入れて着物でおでかけするとお褒めの言葉をいただけたりして気分があがりますよね~。 夏はお太鼓派の私でも暑さに負けて半幅帯にしたりするんですが、なんだか帯締めがないと物足りなくて、特に帯締めが必要ではない帯結びのときにも帯締めをします。 その時にここぞとばかりにするのが帯留め。名古屋帯や袋帯のときには自分が太っているせいもあり(爆)三分紐だと心許なくてあまり使わないのですが、飾りのような半幅帯で使うなら多少緩くてもいいやと俄然使いたくなります。 余談ですが一年中、かっこいい帯留めをしている方に伺ったら、やはり三分紐では心許ないとのことで、きちっと締めたいから金具も普通の帯締めが通るサイズのものにして、普通の冠帯締めの房を片方切り落としているのだとか! マイスタイルが確立しているってカッコいい‥‥‥。 と、話がそれました。そんなわけで夏は帯留めを使うのですが、おすすめしたいのがプチ帯留め&二分紐です。半幅帯にもゴージャスになりすぎず、小ぶり&細めの組み合わせが暑苦しくなく、さらりとおしゃれに決まります。 帯留め用の帯締めは少し短め。三分紐は幅約0.9~10cm。二分紐は0,6~0,7cm。最近は四分紐(1.2cm)なんかもあります。大きめの帯留めなどには四分紐がバランスがいいかもしれません。 ですがやっぱり夏は細めのほうが、すっきり見えます! 先日いち利モールのオリジナルのプチ帯留めをポチポチ(爆)してしまった私なのですが、最近の大きめの金具ではなく、三分紐&二分紐にジャストフィットなのが良き!! 三分紐でも、ちょっと厚め&しっかりめのものは通すのにちょっと苦労するくらいです。二分紐と相性がとてもいいかんじ。 特に、クリスタルガラス帯留めは、小さいけれど存在感抜群。ツインもいいし、同じシリーズで重ね付けしてもいいかも‥‥。 お手持ちの帯締めに金具が合わない場合は、ヘアゴムを使うといいですよ! 関連記事:透明のヘアゴムで帯留めをフィットさせるの巻 定石ですが、真田紐を使ったり、リボンや紐を通してもいいと思います。飾りと思うといろいろ遊べますよね。 夏こそ!お気に入りの帯留めで楽しんでみてはいかがでしょうか。

夏風邪と『昭和元禄落語心中』の巻

星わにこ
2023/07/19 00:00
久々にやらかしました。なんだかんだで10年間ほぼ毎週続けて書かせていただいているこのコラムですが、先週は夏風邪を拗らせて1週間近く熱が下がらず無念のお休みをいただいてしまいました。本当にすみません。 微熱でも熱があるとやっぱり動けないもので、基本ごろごろしていたわけですが、頭が痛くて本を読もうにも目が泳ぐし、そうは言っても寝れないし‥‥という中、死んだ目をして動画を見るのが関の山。 そんな中Youtubeで『昭和元禄落語心中』のアニメが全話開放とのことでおすすめにあがってきたので、そういえばやたらと評判がよかったなと軽い気持ちで見始めたら、これがもうどうかしているほどの名作で、全部観てしまいました。終始泣きっぱなしで、熱とあいまって、寝てもうなされる始末。いやそれくらい、持っていかれました。 雲田はるこ先生による原作漫画は2010年~2016年『ITAN』で連載され、2017年には手塚治虫文化賞も受賞。2016年、2017年にアニメの第一期と二期が放映され、2018年にはNHK総合でドラマ化。とにかく面白い、名作と聞こえてはきたものの、ついぞ見る機会がなかったのですが、ここにきて邂逅。 いや~ほんとすごかったです(語彙) もうご存知の皆様には今更とは思いますが、昭和最後の落語の大名人、八代目有楽亭八雲の人生を軸に同じ名を受け継ぐ「八雲」と「助六」の三世代、そしてまた次の世代にわたる物語が紡がれていきます。 一期「与太郎放浪篇」では八雲師匠が語る若かりし日の輝きと悔恨、そして二期「助六再び篇」では八雲師匠の老いと死と真実が明らかに。合わせ鏡のように、取り戻すことはできない過去を映し出します。誰も悪くないのに、拗れていく人生と取り戻そうと足掻く心といっそなにもかもと心中してしまえという気持ち。 歳をとったからでしょうか。もう本当に泣けて泣けて‥‥。誰の気持ちも、痛いほどにわかるような。リアルタイムで知るよりも、今だからこそ、またまとめて観たから余計沁みる部分もあるのかもしれません。 そして、劇中の落語もまた素晴らしい。主人公の年代によって演じ分ける石田彰さんはじめ、声優さんたちの演技がすごすぎた‥‥。まだまだ下手っぴいな前座の落語も、真打になりたての勢いのある落語も、円熟してからの名人の落語も、わかる‥‥!!という説得力。「ひ」を「し」と発音する江戸言葉にもうっとり。素晴らしき声の芸。 『死神』『野ざらし』『芝浜』『居残り佐平次』などなど、物語に絡めて古典落語が生き生きとそれぞれのキャラクターで演じられて、鳥肌が立ちます。 そして、噺家さんが高座でついっと羽織を脱ぐのをはじめ、胸筋ばーん!などなど男子着物の所作や色気が満喫できます!!!もう八雲師匠なんか、おかしいから!じいさんなのに、誰より色っぽいてんですから(落ち着いて)なんだか真夏の夢のよう(まだ熱がある模様) 一期は7月24日まで、二期は8月17日まで公開されている模様です。一期の残りがわずかですが、みたことないわという方ももう一度見ようかなと思う方も、すでにチェック済みの方も、今一度いかがでしょうか。  関連動画:アニメタイムズ公式 昭和元禄落語心中 期間限定本編配信

夏は帯揚げなくてもいいのかも……の巻

星わにこ
2023/07/05 00:00
蒸し暑い日が続いていますね。暑くなってくるといかに涼しく着物を着るかに腐心するわけなのですが、普段着だったら半幅帯やへこ帯、名古屋帯でも銀座結びなんかにしちゃうと、帯枕がない分涼しいですよね。 涼しいって知ってるんですけど、これらの帯結びをすると背中の露出面積が大きくなります。だから涼しい。でも、私のこの成長した、大きな背中がですね、どーんと見えるのがですね。大変苦手なわけなのです。 お尻のほうは半幅などでもたれを作ればある程度隠せるんですけど、背中がねえ‥‥。というわけで夏でも名古屋帯派な私なのですが。 先日あまりの暑さに半幅で移動して、出先で名古屋帯にしようと帯を持って出かけたところ、まんまと忘れましたね、帯揚げを。 うーんなんか以前同じ様なことをしたかも?と記憶を辿ると4年前の今頃同じ様なことをしでかしていました。 関連記事:帯揚をし忘れて出かけたら!?の巻 このときは、帯枕は普通の白い枕紐だったんです。だから、横から見たら「あれ~帯枕が見えてる!」となったわけですが、今回はたかはしきもの工房の空芯才Crowという、枕紐が墨色の帯枕。 あれっ! 別にこれはこれでいいじゃん? となりました。 特に夏は半幅に帯締めとかしたりしますし、前から見て帯揚げがあろうとなかろうとそう関係ないではありませんか。 そして帯揚げは基本「帯枕を隠す」という役割以外は、基本装飾としての意味しかない。なくても成立するパーツです(だから忘れたりしたわけですが(自己弁護))。 そして、帯揚げがなければないで、涼しい‥‥。あと、着付けも早くできる‥‥。帯揚げってねえ、地味に結ぶの面倒くさいじゃないですか。。。 色付きの枕紐がなくても、見える部分だけ例えばレースを筒状にして被せちゃったりしてもいいのかも? 枕紐が白以外ならなくてもいけるんじゃないか? 夏はなくてもいいのかも! 別にずっといらなくね?という気持ちになりました。 夏でも名古屋帯派の皆様、一度試してみてください! 存外いいかもしれませんよ? 私は癖になりそうです‥‥。 関連記事:帯揚げってやっぱり必要だった? の巻

70年代少女漫画の中の着物は生きているの巻

星わにこ
2023/06/28 00:00
老眼が進んでいる昨今、昔買い揃えた単行本や文庫本サイズの漫画を読むのが辛くなってあまり読んでいなかったのですが、iPadで読むとわかんないとこも拡大できるし非常に快適だということを知り、また最近漫画を読むのにハマっています。 いろんな漫画アプリがありますが、最近本当にラインナップが充実してきていて、過去の名作が無料で読めることも多くなってきました。超名作みたいなものは、一気読みとかできたりしていましたが、人気はあって漫画雑誌では読んでたけど単行本までは揃えなかったな~みたいなものもかなり幅広く読めるようになってきました。 今、ハマっているのがLINEマンガで読めるプリンセス連載だった『悪魔の花嫁』(あしべゆうほ作1975年~)。今なら無料で結構な話数が読めます。連載当時は小学生だったし、よくわからない部分も多くて怖いな~、でもこんなかっこいい悪魔ならちょっといいかも()とか思っていた記憶が。80年代に流行った少女漫画のイメージLP(ボイスドラマつき)もリリースされており、男性主人公が大好きな声優の塩沢兼人さんが担当していたので当時友達に借りました(買えよ)。 今回改めて調べてみたら、つい最近まで最終章という形で連載されていてまだ完結してないと知りました。『ガラスの仮面』や『王家の紋章』とともに、永遠の宿題みたいな漫画ですね。まあ、基本本当にあった怖い話みたいな一話完結ものなので、最後どうなるの!ってものでもない気はしますが。 改めて読み返してみると、あったあったこの話、みたいな記憶が蘇ったり。悪魔デイモスが砂漠に迷い込む話で、人の足に傷をつけて卵を埋め込むと体内で育って目から成長して出てくるみたいなのとか、やたらなんでも地下室に閉じ込められるとか沼に沈むとか小学生のころマジで怯えたトラウマ案件てんこもり。はい、恐怖漫画ですから。 お話は主人公の美奈子がビーナスの生まれ変わりで、ヴィーナスを愛していたデイモスが美奈子につきまとうという話なのですが、デイモスのくせに「美奈子(びーなす)、名前も同じだ」とキラキラネームもびっくりな読み方をかましてきたり、一人で旅行にいったりいろんなこと(勝手な行動ともいう)をして事件に巻き込まれる大人っぽい美奈子は金髪なのにまだ中学2年生だったり、当時気づかなかった(笑)次々と驚愕の真実が明らかに。今読むと「デイモスよ、ヴィーナスのこと責任取れよ」と思う。いやほんと。 さらにおもしろいのは、毎回起こる事件も意外と令和では「いやいやそうはならんやろ」という熱い昭和パッションに溢れていてつっこみどころ満載。そこで、みんなのコメントを見ると同じようなツッコミをしていたり「この話、覚えてる~~!」というおそらく同年代であろう女子たちで溢れていて、同級生と一緒に楽しみながら読んでいる感覚にひたれること。 一時期を風靡したマンガならではの楽しみ方なのかもしれません。 読んでいて「おおっ」と思ったのは、デイモスとビーナスの話の割には日本が舞台なので着物がちょこちょこ出てくるんですね。昔のエピソードだけじゃなく、お正月や観劇や、家での着物姿など、その時代の着物が生き生きと描かれています。(デイモスは基本半裸) 最近の漫画に着物が出てくると「いや構造上そうはならんやろ」という作画があったりしてつい心の着物警察が出動してしまうのですが、さすが1970年代、まだまだ日本に着物が日常にあった時代だけあってどの角度からの作画もパーフェクトで惚れ惚れします。 70年代の少女漫画というと外国ものが多いけど、『はいからさんが通る』などは言うに及ばず、70年代日本が舞台の『エースをねらえ!』なんかも宗方コーチが家では着流しだったりして、着物アイで見てもかなり楽しめるんですよね。ドジさまこと木原敏江先生の漫画も、本当に素晴らしく描かれています。少女漫画だけじゃなく、少年漫画の中の着物もやっぱり描写に破綻がない。描く人が構造を知っているということが、資料を見て想像で描くというのとはまったく別次元だということがよくわかります。今ももちろんきちんと描かれている漫画もありますが、70年代の漫画を見るとまさに着物が生活の中で生きていた時代だなあと思わされます。まあそんな楽しみ方もありということで。 タイムスリップ気分で読む70年代の少女漫画、70年代少女だった人にはもちろん、着物好きの方にもおすすめです! というお話でした。

百聞は一見に如かず。黄櫨染御袍と三浦屋揚巻衣装の巻

星わにこ
2023/06/21 00:00
もともと大変出不精ここで(デブ性と変換されてショックをうけたのは内緒です)、できることならずっと家にこもっていたい生粋のインドア派妄想系に加えて、コロナ禍もあり仕事以外で積極的に外出するというアクションを忘れかけていた私。 先日友達から「日本橋高島屋でお装束が見られるよ! 見ておいた方がいいんじゃない?」と教えてもらって久しぶりに自分の趣味のために外出をしてきました。 「御即位5年・御成婚30年記念特別展 新しい時代とともに――天皇皇后両陛下の歩み」と題された展示は、5月17日から6月6日まで。気がついたらもう最終日になっていて、あわてて日本橋へGO! 両陛下ゆかりの約100点のお品の中には、何度も何度も映像などで見たご成婚パレードの雅子様のローブデコルテとボレロや、ご婚約会見の淡いイエローのワンピースもあり、歴史を間近で拝見できて超感動でした。 そして!! 即位の際の御束帯と御五衣、御唐衣、御裳も展示されていました。天皇陛下しか身につけることができない絶対禁色といわれる黄櫨染色で、これまた天皇の袍にのみ織り現されるという桐竹鳳凰の地紋。 黄櫨染は黄櫨(はじ)の樹皮と蘇芳(すおう)の心材の煎汁に灰汁や酢を混ぜて染めたもので、赤みと黄みとが感じられる茶色。太陽の光の象徴とされる色で、禁色だけにあまり目にする機会はありません。 しかもそれが実際の御袍となると、さらにです。正直をいいますと、そんなに綺麗な色でもないし(不敬)、なんでこの色が絶対禁色なのかとずっと思っていましたが、実際目にした御袍は、深く重厚な色で、威厳があり、「ああ、これはゴールドなんだ!」と腑に落ちました。しかも、キラキラした金ピカ、というのではなく、渋みのあるどっしりとした金の色。なるほどなあ~!と感じ入った次第です。 そしてまた6月中旬は、セイコーハウス銀座ホールで坂東玉三郎さんの衣裳展「四季・自然・生命~時の移ろいと自然美~」が開催されていました。またまた気付くのが遅れて、最終日直前に駆け込みで拝見。 これまた非常に近い距離で芸術品のような歌舞伎の衣装を見ることができました。10点の展示と聞いた時、さっと見られるかなと思っていたらとんでもなくて、それぞれの衣装の素晴らしさに釘付け&玉三郎さん本人による解説映像が上映されており、めちゃめちゃ濃い展示でした。 私自身は歌舞伎にそんなに詳しいわけではなく、誘われたら見に行くという程度なのですが、そんな私でも見たことがある「助六曲輪初桜」「廓文章」「隅田川」などの超メジャー演目のあの!衣装が!ガラスなどの仕切りもなく、超近くで、しかも写真撮影オッケーという大盤振る舞いで見ることができて大興奮。 もうどうかしているような豪華な唐織や、舞い散る桜や篝火が揺らめいて見える紗掛、盛り盛りの手刺繍、金泥の手書きの牡丹など、もうすごいの一言。 特に三浦屋揚巻の正月衣装は、背中に金糸の注連飾り(しめかざり)と橙(だいだい)と伊勢海老(!)が乗った鏡餅があしらわれているもので、解説でも玉三郎さんが、歌舞伎ならではのとおっしゃっていましたが、ド級のぶっ飛び具合でした。 一度イラストに描いたことがあり、一体この伊勢海老の下はどうなっているんだろう?と不思議だったのですが、20年来くらいの疑問が解けました。まさかの鏡餅(かなり立体)でした。 梅雨時にもかかわらず、着物姿のご婦人がいっぱいで、それも眼福‥‥。こういう情報は、読んだら観にいけるタイミングで書けよという話なんですが、事後報告で本当にすみません。。。 いつも映像や本やネットから得た知識を、自分の頭の中だけで妄想しまくってふくらませまくって楽しんで満足していた私ですが、黄櫨染御袍と三浦屋揚巻の打掛を実際に直近で見ることができ、実物の持つパワーに打ちのめされました。 百聞は一見に如かずとはまさにこのことなのね‥‥と。 これからは、チャンスがあったらやっぱり足を運んで実際に体験してみよう!と改めて思った。そんな体験でした。

たすき掛けのやり方★初級編&上級編の巻

星わにこ
2023/06/14 00:00
先日、友人たちと作っている「フォントかるた」を紹介する動画を撮影しました。 フォントかるたってなんぞや?というお話はこちらでご紹介しております。 6年前に誕生した「フォントかるた」ですが、去年その欧文版も発売されました。アルファベットの見分けも、かなりマニアックです。動画出演者のみなさんには「やっぱりかるたは袴でしょ!」というわけで、袴姿になっていただきました。そして動きやすいようにたすき掛けに。 たすき掛けに必要な長さは、2メートル~2メートル20センチくらいあれば女子ならだいたいOK。腰紐の長さと同じくらいです。腰紐が長尺の方はさらに20センチくらいプラスして。 普段たすき掛けをするときは、そこらにある腰紐を使うことが多いのですが、さすがに撮影ということで腰紐はどうよ、というのと、おそろいの方が可愛いよね!ということで読み手と取る人の合計6人分を作ることに。撮影の前日に欧文版のかるたのイメージのロイヤルブルーのサテン地にひたすらミシンをかけて作った私です‥‥(なんでもギリギリか)。 がんばった甲斐あって、可愛い袴女子たちの動画が撮影できました。じゃん! さてさてたすき掛けのやり方は、主に2つ。最初から輪っかに結んでおいて袖をひっかける方法と、時代劇とかでよく見る口に紐の端を加えて、肩にしゅしゅっとかけていく方法があります。 簡単なのは輪っか方式。紐の端を結んで真ん中でねじったたすきを、両腕に通したら、首をくぐらせてクロス部分を背中にやり、あとは腕にかけたたすきを肩にかけるだけ。とにかくさっとできます。 簡単でぱぱっとできますが、たすきがヨレやすく、袖をひっかけてからもたすきが緩かったら結び直したりもするのが難。 上級者編は、肩にかけていくやり方。紐の端を口に咥えるとかっこいいのですが、汚れたらやだなって場合は帯締めにひっかけたりクリップでとめたりしてもOK。 それを、左脇下を通して右肩にかけ、右脇下を通して左肩にかけて、たすきの端同士をきゅっ!と結びます。 ちょっと五十肩とかだと痛いかも(笑)。でもしゅっ、しゅっと背中で紐をクロスさせていく姿はちょっと「できる」感があって快感です。動きが大きいので、男性っぽいイメージがあるかも。 たすきをすると、袖が邪魔にならないので、水仕事のときなど便利ですよね。 もしまだたすき掛けをマスターしてない方がいたら、チャレンジしてみてください! <ちょっと宣伝> 6月17日(土)渋谷のヒカリエにて開催されるTYPE &という書体のイベントに「フォントかるた制作チーム」の一員として参加します。出演者がたすき掛けの動画も披露予定です(笑)。もし興味がある方がいらしたらよろしくお願いいたします!

思い立ったら!和服で家族写真のススメの巻

星わにこ
2023/06/07 00:00
私が普段なにをやっているかといいますと、こうやってコラムやイラストなどを書くお仕事のほかに、着付けや着付けレッスンのお仕事などもしています。カメラマンの友人と二人で小さな写真スタジオの運営をしているのですが、主に着物での撮影を得意にしています。カメラマンの渡部瑞穂さんは、月刊アレコレというきもの雑誌で毎月着物関係のグラビアなどの撮影を手掛けていて、自分も日舞や三味線を嗜む大の着物好き。大学の同級生で、卒業後10年ほどしてお互いに着物にはまっていることで意気投合。以来、着物で出かけて撮影したりしているうちに、好きが高じてスタジオ運営をすることに。 とにかく着物が好きな二人なので、「和服で家族写真」をおすすめしています。家族写真にこだわるわけは、「家族写真はいつかそのうちとか、いつでも撮れるわけじゃない」ということを二人とも知っているから。 私は両親も夫も亡くしてしまったし、渡部さんもご家族の病気などもあって「ああ、みんなが元気なうちに撮っておけばよかったなあ」と叶わない気持ちを知っているのです。だから、なにかあったら記念写真撮っておくといい!といつもお勧めしています。 七五三や卒入学式、成人式や結婚、記念日などなど。人生の節目節目のお祝いは、意外と数えるほどです。 特に子どもが小さい頃は言うことを聞いてくれるけど、大きくなって高校生、大学生ともなってくると予定を合わせるだけでも一苦労。そんなの、いらないと言われることもあるし、面倒がられてしまうことも。そこを説得してみんなの予定を合わせて‥‥となると、もういいか。となる気持ちもわかります。 でも、それでも。誰かがえいや!と頑張らないと、なかなか家族写真なんて撮れないものなんです。先日は、おばあさまの卒寿の記念とお孫さんとの三世代記念写真を撮りにいらしたお客様が。当日お孫さん三人兄弟のうち二人が都合がつかないということで長女さんとお母様、おばあさまで撮影されました。 ところがすぐ後に、やっぱりお孫さん全員とで撮影したいので、ということでもう一度撮影することに。「母も元気なうち、子どもたちも巣立ってしまう前と思うと今しかないと思って」とお母様。お忙しい中を再度スケジュールを組んで、今度は全員集合できました。 着物好きな方で、自分の着物の他にこつこつとお嬢さんに着せる振袖なども買い揃えていらして、スタジオのほうで足りない帯や小物類などを足してお持ちの着物でお支度をさせていただきました。 お子さんは24歳、20歳、17歳。七五三のときに三人で撮った可愛い着物写真をお持ちくださって、それと同じポーズでも撮影。写真を並べてみると末っ子の男の子が今では一番背が高く、子どもの成長を感じられて、「お母さんがんばりましたねーーー!!」と思わず目から汗が出そうに。 最後に少しだけロケ撮影もしたのですが、最初は歩くのがちょっと‥‥とおっしゃっていたおばあさまが、「やっぱり行くわ、今がんばらないでいつがんばるの?」とおっしゃって外へ。振袖のお嬢さん二人が卒寿のおばあちゃまを支えてキラキラの新緑の下を歩く姿にまた感動。本当に、素敵な撮影でした。 私も数少ない(汗)家族写真は、見る度に子どもの成長を感じたり、今は亡き人に感謝したりできる大切な宝物です。例えば記念日から半年、1年とずれていてものちには誤差。もし、あ~家族写真撮ってないな、なんてお祝い事があったら、思い立ったが吉日で撮影してみてはいかがでしょう。未来の自分が「あの時頑張ってえらかったぞ!」ときっと褒めてくれるのではないでしょうか。

巻き肩も原因?クリオネポーズで着物の肩のシワなおしの巻

星わにこ
2023/05/31 00:00
皆様の着付けのお悩みを聞いていると多いのが「肩から胸元に入る縦のシワ」。タオルや脱脂綿で補整をしなさいと言われると思うのですが、ちょっと待って!  足す補整は、面倒だし暑いし、太って見える危険もあります。細身で足さなくてはどうにもこうにもならない、という方以外は意外と補整をいれなくてもなんとかなる可能性があります。 まずこの肩のシワはなぜできるのかといいますと、原因は主に2つ。 ・巻き肩で姿勢が悪い ・年齢とともに胸が下がって、鎖骨下にボリュームがなくなっている これを解消していけば、タオルを入れなくてもシワにさよならできます。 1)胸を張れ! 姿勢に気をつけるだけで段違い まずは着物を着たら、猫背は致命的。今はスマホを見る時間が増えたりして、巻き肩の人が多くなっています。肩甲骨を寄せて、鳩胸になるイメージで胸をはってみてください。それだけでも胸元がすっきりします。 この時、反り腰にならないように気をつけて! 2)和装ブラで解決! 鳩胸メイクでシワ撃退 胸がBカップ以上の方は和装ブラで解決できるかもしれません。 ご自分の胸をぐっと持ち上げて、鎖骨の下にできてしまった窪みを埋めると自分の胸が補整になってくれます。それができるのが「たかはしきもの工房のPut on キモノブラ」。ナイトブラのように下から履いて、胸を脇から首元に向かって集めて鳩胸メイクができる和装ブラです。 そうすると、だんだん重力と仲良くなってきていた胸の位置が上にあがりますので、若々しい胸元になってシワもなくなります。胸がないわという場合でも、背中の方から解散した胸を再集結させればいける可能性があります! 移動させられる戦力(お肉)がある方は、一度試していただきたいです。 移動させるお肉がないスレンダーさんの場合は、タオルや補整着に頼りましょう。 3)肌着の段階でシワを作らない 肌襦袢や肌着を適当に着て、その時点でシワが入っていると上に響いてしまいます。見えないからいいや、ではなく、下地の段階でシワがないように適切な補整でボディメイクしていると、着物はそこにのせていくだけで綺麗に着られます。補整を入れるだけではなく、肌着もしっかり体をラッピングするようにピタッと着ると、補整なしでも布の張りで体の凹凸を抑えられることもあります。見えないところから気を使ってみましょう。 4)必殺女将ポーズ(別名:クリオネポーズ)でシワなおし それでも、着ているうちにやっぱりシワが入ってしまう‥‥。あとで写真を見たら、あ~あ。。。。なんてこともあるでしょう。 そんなときは、クリオネちゃんみたいに胸を張って両手を斜め下に広げて、袖口の後ろ側をつん、とひっぱってください。そうすると胸元のシワがとれます。即席ですが、写真を撮る前にすると、すっきりした着姿になれますよ! できたらこの姿勢を常に心がけると巻き肩も改善されるかも。 このポーズ、インスタとかで銀座いち利の女将さんがよくやってますよね! お袖まで模様が見えて、着物全体の柄つけがわかるこのポーズでお写真をとっても可愛い♪その時のコツは、正面を向くこと、足(膝)を重ねて1本にして下半身をすっきりさせることだそうです。 女将ポーズはこちらの動画の6:58あたりからを是非見てください!めっかわ(めっちゃ可愛い)です。 関連動画:【女将解説】綺麗な着姿で写真に写るコツ ちょっとお話がずれましたが(笑)いかがでしたか? ちなみに私は姿勢が原因で着ているうちにシワっとなってくることがあるので、クリオネポーズで直しています! 着崩れは程度の差こそあれ、動けば起きてくるものなので、その都度なおす方法も知っておくといいですよね。お悩みの方がいらしたら、タオルを入れるその前に、ぜひお試しください。

着付けとダイエットは似ているのかも。の巻

星わにこ
2023/05/24 00:00
このごろしみじみ思っているのは、人生なんでも積み重ねだよなあ~ということ。日頃やっていることの結果が今の自分ということを痛感しています。今回はちょっとそんな私の徒然話で、着物とは直接関係なくてすみません。 なんでかというと、本当に太ってしまったために帯が壊滅的に短くなってしまい(帯は変わらない)いくら多少のサイズの変化は着付けでごまかせます!などと言っていても限度があるよな、という境地までたどり着いてしまったため、ダイエットを始めたためです。 今までも常にダイエットしなきゃとは思っていたのですが、「一ヶ月に5キロ痩せる!」「10キロ痩せたらなにしよう!」などという高すぎる目標を掲げて見事に挫折。簡単にやりたいと願うあまりに、食べる量をすごく減らしたり、張り切って運動したり。断食とかもやってみたり。 結果は食べられないストレスで爆食いや、いきなり運動したため筋を違えて動けない‥‥とかそういうお粗末なパターンを続けていて、どうせ好きなものを食べても我慢しても、そう変わらないし、好きなもの食べよ!になっていました。 あと育ち盛りの子どもと違うメニューを作るのが面倒くさいから一緒で、量だけ減らせばいいや………と唐揚げ餃子ハンバーグと白米を目の前に食欲に負ける日々。ストレスも溜まるから、甘いものも欠かせません! というわけで、いや~育ちましたね。育ったよ! もちろん今までにも「なんか楽に痩せる方法ないかな~」なんていろいろ試したり、断食もしました。Youtube見たりネットサーフィンしたりして『攻略方法探し』をしていたわけなんですが、これだけやれば爆痩せ!みたいな運動動画とか続くわけなく。幾多の挫折を繰り返してきました。 そんなとき、「筋トレ・ダイエットは自分がやったことが必ず体に反映される」「でもそれはすぐに結果には現れない」「段階的にしか変わらないから、まずは一ヶ月ゆるくでもいいからできることから続けて、それができたら次へいけ」と言っている筋トレ系Youtuberさんがいて、目から鱗が落ちましたね。 これ、私がいつも着付けレッスンで思ったりお伝えしてることじゃね? 同じじゃね? そう。自分の理想とする着姿に近づくために「これだけやればすぐできます」ということは和洋ミックスとか着崩しとかは別かもしれませんが、実はあり得ない。 着物の着付けって、肌着だけとっても、ブラに肌襦袢、裾除け?ステテコ? 補整はタオル?さらし?補整パッド? 小物も腰紐、伊達締め、コーリンベルト、クリップ、胸紐、着付けベルト? 帯枕や帯板など、一体どんなのがいいの? 長襦袢は? うそつき衿って何? 着物と帯にたどり着くまでにもう、超息切れですよ。 そして着物と帯も、格が、季節が、文様がと何も知らない状態でいっぺんに言われたら泣きたくなります。 でもこれも、長いこと「私はこんな着付けがしたいな」と思い描いているものがあって、それに近づくためにいろいろな知識を吸収してきた結果、こうやってコラムを書いたり、レッスンをさせてもらったりということに繋がっているわけですよね。 あとはこの二年ほどお習字を続けているのですが、最初は正直「すぐうまくなれるでしょ」くらいのことを思っていたわけですよね。すぐ変体仮名がつらつらと読み書きできるようになりたい!みたいな(また高すぎる理想)。楷書なんか書いてられるか、みたいな。でも、そもそも楷書も思うように字が書けないしどうしても我流が出てしまう。日々忙しくなかなか文字を練習する時間もとれないけれど、ある時思い立って無心に見本に忠実に反復練習をしていったら先生に「あら練習したわね、えらいわ」とほめていただけたんです。それからやっと、少しづつ当初の目的である変体仮名の練習をさせてもらえるようになりました。 もう80年近く文字を書くことに取り組んでいる先生からみたら、私が何を考えて字を書いているかなんてことは、きっとお見通しだったに違いありません。 この時「石の上にも3年」じゃないですけど、まずは黙って言われた通りにやる時間って、大事なものなんだなと知りました。 それは体も同じことなんですよね‥‥。なんでも回数。積み重ね。近道はない。 当たり前でしょ!と怒られそうですが‥‥。 とりあえず楽しくないと続かないので、できることからコツコツと長期展望で好きなものも食べつつ。そしてとりあえず、食事改善をはじめて一ヶ月。ゆるく1、2キロ落ちてきました。年末までに、たれの返しが少なくなってる袋帯全般楽に結べるようになるぞ!と思ってます。乞うご期待!?

着物の裾の長さは鏡を見て決めろ!の巻

星わにこ
2023/05/17 00:00
寒さに震える日があったかと思うと、5月なのにいきなり真夏日!? 本当に着るものに迷う今日この頃。もう普段着は完全に「気温で決める」と思って対処していますが、洋服でも悩みまくるところ、着物も本当に悩ましいですよね。 今年に入って、着付けをさらにブラッシュアップしよう!ということで、時短になる方法や手数を減らすやり方などを教わったり試したりしているのですが、めちゃくちゃ時短になった方法があるのでシェアします! それは「着物の裾合わせを全身鏡を見ながらする」ということです。 それだけ?? と思われるかもしれませんが、それだけです。もともとそうしているわ、という方は素晴らしい! でも「ん?」と思われた方はちょっと下記を読んでみてくださいませ。 私はいままで、裾の長さを決める時、裾と床の間の「光一条」(裾と床の間に光が一条差すくらい)を下を向いて見て決めていました。 一条の光とは、暗黒の中に差し込む筋状の光で、希望を表す言葉‥‥。仮面ライダークウガの一条刑事が人生最推しの私はもうこの言葉だけでご飯が3杯食べられるので、盛り上がりワードとして常に裾を合わせる時に思い浮かべておりました(誰も聞いていないのに語ってすみません)。 でも、実はこれじーっと下を向いて裾をあわせると、最初はきちっと床すれすれでも、上から見ているので、あわせていくうちにどうしても上にひっぱってしまい、裾が短くなってしまいがち。 自分の場合は、裾の長さを決めたらもう床は見ないで顔は前を向いて、薄目で下を意識しながら床をはくように裾をあわせるというやり方をしていました。 でも人には「見て確認をしたい」という気持ちがありますので、たいていの人はどうしてもじーっと作業中の箇所を凝視してしまってなかなかうまくいかないんですよね。 あと、自分では「うまく裾の長さが決まった!」と思っても、腰紐を結ぶとまたちょっと上にあがりますから、最終的に「いまいち‥‥」となってしまうことも。 その悩みがですよ、最初から床は一切見ないで、鏡だけを見て裾合わせをすることで、一発解決したんです! 鏡に映る姿は、自分の姿を客観的に見ているのと同じですから、その中に映っている裾の長さを自分の理想の長さに合わせればいいわけです。 やわらかものだったらほんとうに床すれすれに。普段着だったら少し短く、浴衣ならさらなり。 もう、自分の決めたい長さにばっちりと決まります。 なんでこんな当たり前のことに気がつかなかったんだろう??? ほんとに時間を無駄にしたわ‥‥と遠い目。 もし裾の長さがいまいち自信がない、という方がいらしたら、一度大きな姿見の前でこの方法を試してみてくださいね!

英国戴冠式での紀子様のお着物素敵でしたねの巻

星わにこ
2023/05/10 00:00
皆様ゴールデンウイークはいかがお過ごしでしたか? わにこは仕事・仕事でまた仕事(白目)でしたが、最終日だけちょこっとゆっくりできる‥‥と思ったら1日寝てしまっておやすみは露と消えました(笑)。ずっと抱えていた大きな締め切りをクリアして、ほっとする間もなくまた締め切りに追いまくられていますが、お仕事があるのはありがたいことです。 5月6日には、英国のチャールズ国王の戴冠式がありましたね。私も生中継を流し見しながら仕事をしたりしていたのですが、なんと70年ぶりの戴冠式とのこと。「すごいな~」という感想しかでない平民ですが、ロイヤルファミリーや各国ゲストの皆様のすばらしい衣装に目が釘付けでした。 中でも、そう。着物好きの皆さんはきっと秋篠宮紀子様の和服姿に大注目だったのではないでしょうか。私ももちろん目を皿のようにして見入っておりました。以下ただの着物好きの感想です(事実と相違ありましたらご容赦を!) 最初は「訪問着をお召しになってるんだ~」と思ってみていたら、おやっ!袖の後ろ側に紋が入っている‥‥ということは三つ紋の訪問着なのでしょう。 戴冠式関連のドレスコードなどはまったくわからない私ですが、きっと胸元にも模様のある華やかな訪問着を選ばれて、その上で紋を三つ入れられることで準礼装と言われる訪問着でも、ぐっと格をあげて敬意を表されているということなのかな?と思いました。 紋は写真や動画ではわかりませんが、おそらく秋篠宮家の御紋である「菊栂(きくつが)」と思われます。栂(マツ科の針葉樹)を使用している紋はほかにはないと言われるとても珍しい紋で、一度みたら忘れられない意匠です。 それにしても、本当に上品なコーディネートで「ザ・皇室」という感じがして素晴らしかったですね。着物ウオッチャーの血が騒ぎます!! 着物は薄い香色におめでたい文様が山取(山の形に模様が染め分けられている)もので、おそらくは皇室に数多くの着物を献上されている京友禅作家の藤井寛先生の作品ではと推察。 袋帯は七宝繋ぎで、円満にご縁がつながるこれまたおめでたく格調高い柄。その中には唐花文様が施されています。そして純白の帯揚げをあわせ、白と金の細い帯締めには、おそらく真珠(?)の帯留めをなさっているようです。 それにクラッチバッグと三段重ねの草履。フォーマルでありつつ、でもガチガチではなくて、お祝いの気持ちのこもった華やかでそれでいて上品な装いだな~と拝見しておりました。 ネットでは炎上などと騒がれていましたが、着物って、着るだけでどんなに素敵でも文句つけてくる人いるじゃないですか。まあそういうものかなと拝察。一着物ファンとしては、こんなに素敵な着物姿を見せてくださってありがとう~!という気持ちです。 惜しむらくは雨模様のお天気で、お手入れ大丈夫かしらと超余計な心配をする小市民の私‥‥そして、ちょっと静電気起きちゃった? なんて思ったりもしましたが、所作の美しさはさすがでございました。 やはり、なんだかんだで大きな行事のときに和服姿が見られると、着物好きとしては非常に嬉しい気持ちになります。長い長い女王様の時代が終わり、時代もいよいよ変わっていくけれど、これからも変わらぬ皇室の皆様の美しい着物姿を折に触れ、たくさん拝見したいものだな~と思うGWの終わりでした。