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インナーを制すものは着付けを制す!の巻

星わにこ
2024/09/18 00:00
いきなり大きく出た感のあるタイトルで失礼します。わたくし、きちんとサラリーをいただいて働いたことが大学卒業後の1年しかなく、以降ずっとフリーランスでいろんな仕事をしてきました。 ずっと続けているのはこのWEBコラムをはじめ、イラストや文章を書く仕事がひとつ。WEBやDTPデザイン系の仕事もしました。40代で着付けを習い、カメラマンの友人とスタジオを借りて着付け+写真撮影の仕事や、着付け教室もやっています。気づけば、着付けも仕事にしてからもう10年以上。最初はただの着物好きとしてこのコラムを書き始めたわけで、思えば遠くにきたもんだ~なんて自分でもちょっとびっくり。 着付けと並行して、たかはしきもの工房でアドバイザーの仕事をしつつ補整について学んだのですが、実感しているのは「インナーの時点できちんと着られていると、着物を着るのは超らくちん」ということです。 逆に言うと、肌襦袢、補整、長襦袢を適当に着ていると、いくら着物や帯を綺麗に着ようと思っても難しい。お化粧でベースメイクが大事なのと一緒です。 でも、実はインナーの着方って、着付け教室なんかでもほどんど教えてくれないですよね。さらっと通り過ぎることがほとんどです。 私も、たかはしでインナーの付け方をじっくり習うまでは、かなり適当に着ていたし、「見えるところじゃないし‥‥」とおざなりでした。 それが、2つのことに気をつけてインナーをきちんと身につけるようになってから変わりました。 ひとつは、適宜補整をすること。補整はいらないわ~という方もいらっしゃいますが、女性の体は凹凸があり、着物は直線断ちなのでそのままだとキレイに沿わせることができません。それを助けるのが補整です。 やりすぎるとただ太って見えてしまうので、必要なところに必要なだけ入れることが大事です。 もうひとつは、布で体を支えるようにピタッと肌着を着ること。ぶかぶかと生地が余っている状態では、着物に響いて着崩れの原因となります。余りは空気を抜くようにして、肌襦袢をピタッと着てください、とレッスンのときにお伝えすると「えっ!こんなに?」とだいたい驚かれます。 苦しいほど紐をぎゅうぎゅうに締めて止めるのではなく、面で体を支えるとしゃっきりして気持ちがよいものです。それには、自分にあったサイズの肌着を着るのも大事です。 これもふわっとゆるっと着るほうが好き、などお好みがあるのでなんとも言えない部分がありますが、着崩れに悩んでいる方は、このインナーをピタッと着るということを一度試してみていただきたい。 きっと着付けが変わりますよ~~! ※9月21日、銀座いち利横浜店で試着もできる「たかはしきもの工房補正講座」に、星わにこが参ります。詳しくはこちらよりお問い合わせください。

衿下(褄下)の寸法って結構大切!の巻

星わにこ
2024/08/28 00:00
衿下(褄下)とは、衿先から裾までの長さのこと。一般的に身丈の半分で仕立てられることが多いです。 現代ではおはしょりから2~3センチ見えているくらいが好まれているのではないでしょうか。腰紐で衿をしっかり押さえて、かつ衿先が平らに腰の後ろのほうに引かれていることで、着崩れしにくくなります。 ズバリ衿下が長く、すっきりしていると足が長く見えます! 昔と違って腰の位置が高い人も増えていますし、単純に身丈の半分という寸法でなく自分にあった寸法を探ってみるといいかもしれません。 一方長すぎると、衿がだら~んとおはしょり下に見える状態になりますので、なんだか足が短く見えてしまいます。それに加えて、上前が浮きやすかったりぴらぴらしやすかったりします。 昔の着物などを着ると結構この衿下が短いものが多いです。昔は短めが好まれたということも聞きます。あまり目につくところではありませんが、実は着付けのとき、裾合わせの肝になる部分でもあります。 初心者の頃はあまり気にも留めない部分かもしれませんが、この部分が腰紐に平らにきれいにかかっていて、腰に張り付くように後ろに向かって沿っていると、腰回りもすっきりします。 体型だけでなく、腰紐の位置など着付けの好みもありますので、自分のベストの位置を探ってみましょう。くれぐれも足が長く見えるなら‥‥と長くしすぎないように! ちょうどいい位置にあると、着付けが格段にしやすくなりますよ!

着物をゆるりと着るか、ピタッと着るか の巻

星わにこ
2024/04/17 00:00
先日、写真スタジオで3年ぶりに同じ着物を同じお客様に着付けるというお仕事をしました。あまり自分では変化がないと思っていたのですが、写真を見てびっくり。今回のほうがしゃきっと、着物が綺麗に見えるような気がするのです。 全体のシルエットもそんなに変わらないし、帯揚げや帯締めの処理、衿の合わせ具合も前回がとくにだめというわけではない。でも、全体がシャープに美しくなったような‥‥。 この3年間で私の意識が変わったことというと、「着物で体を支えるように、ピタッと着る、着付ける」ということ。これは、補整を通じて学んだことなのですが、やはりふわっとゆるっと着ると、ゆるふわ~なシルエットになるのです。何を当たり前のことをと言われると思うのですが、以前の私はゆるゆるとまではいわなくても、そんなにピターっと体を包むようには着物を着てなかったんですね。着付も然り。 でも、年齢を重ねて体のラインも崩れてきて、たかはしきもの工房の腰スッキリパットスキニーと満点ガードル裾除けで「骨盤を立てる」補整を体験し、着物や肌着も、体をラッピングして「布で体を支える」という感覚がある、ということを知ったのです。 着物は本来、そういう部分があって、昔のおパンツ「湯文字」も骨盤を立てますし、腰紐を腰骨あたりでキュッと絞めると習ったのも、そういうことかと思います。 そして何より、襦袢や着物自体の布の「面」できゅっと引き締め、体を支えるという気持ちよさ。 着付けレッスンで生徒さんに、腰回りは着物の面で支えるようにピタッと着てください、と実際の引き締め感を体感していただくと「ええっ!!こんなに!!」と驚かれます。お尻のラインが見えちゃう、破れちゃう?と心配される方もいますが、安心してください。動いているうちに自然とゆるむのでそこまで窮屈にはなりません。 体も心地よいのですが、着物もピン!と張られて余計なシワが入らないと、絹糸の輝きが見えてきます。ただふわっと着物を置いたときと、手で撫でつけてピンと張った状態にしたときを比べてみてください。後者のほうが、生地が美しく見えるような気がしませんか? それを体の上でも行うと、とってもキレイに見えます。 礼装はきちっと体に沿わせて、張って着ると美しい。それには補整を適宜入れることが大事。言われたままにやってきたけれど、礼装着付けで、ずっと行われていることには意味があるんだな~~とやっとわかった着付けのお仕事を始めて7年目の春でした。 普段着をゆるりと楽に着るときも、腰回りの要所はピッと支えると心地よいですよね。着心地や着姿に関しては、好みもあると思うので絶対というわけではありませんが、「ゆるり」と「ピタッ」という選択肢を知った上で自分はこっちがいいなと思うほうを選ぶといいのではないでしょうか。 もし私のようにピタッと着付けの感覚を未体験の方がいたら一度試してみてほしいです~。新しい世界が開けるかも!

晴れ着を着るとやっぱり心が晴れる!の巻

星わにこ
2024/01/17 00:00
1月も後半。お正月気分も薄れてきたかとは思いますが、まだまだ一番寒いこの時期は晴れ着が着たくなりますね。成人式の着付けも終わり、ほっと一息の今日この頃です。 今年は家に受験生がいるため極力おでかけを控えているのですが、お昼の新年会ということで、ランチをしてから東京国際フォーラムで開催されていた企画展『よそほひの源氏物語』をキモトモと観てきました。もちろんドレスコートは「お正月の晴れ着」。 ということで、久しぶりに華やかな訪問着でおでかけをしました。いつも着付けレッスンや仕事などで着る着物は、仕事なのでちょっと地味目。やっぱり明るい色の『晴れ着』は、心が晴れてうきうきしますね。 たまにはちょっと詳しく身につけているものについて書いてみたいと思います。 南天と雪輪の絞りの訪問着はいただきもので、お正月になると着たくなる着物。それに大好きな房モチーフのきらきら箔帯。一文字のパールの帯留めを白と常盤色の三分紐にあわせてみました。10年前にいち利モールのお正月セールで買った加藤萬の絞りの帯揚げはお正月コーデによく使います。あまり見えないけど薄い水色にピンクの絞りで可愛いのです。足元は暖かいので冬定番のゑびす足袋の革足袋。草履はカレンブロッソ。 半衿は、銀座いち利オリジナルの鱗。衣紋に赤い銀座いち利のロゴが入っていて、可愛いんです。ざぶざぶ洗えるちりめん生地に刺繍がしてあり、程よくボリュームがあって上品なので、私は生成りと白を愛用しています。リーズナブルでおすすめですよ! 着物の中身はほとんどたかはしきもの工房です。ちなみにくノ一涼子+スキニー幅広+綿テコ+満点スリップにうそつき衿、うそつき袖。補整も汗防止もこれでOK。袷の季節はだいたいこの組み合わせです。寒くてカジュアルなスタイルのときは、満点スリップの代わりにユニクロのUネックのヒートテックにぺチコを組み合わせたりします。ぺチコは洋服感覚で着られるし、トイレにいくときめくると着物の裾を押さえてチューリップみたいになってくれるので楽です。 あとこの時期外せないのが足袋下ハイソックス!! これがないと足元が寒くて無理です。たかはしのものはあたたかいのですが少し地厚なので、足袋のサイズを少しアップしないと履けません。ヒート+ふぃっとの足袋インナーはちょっと薄手で、足袋のサイズをアップしたくないときはこちらを履くこともあります。 着物や帯はじめ、ひとつひとつ語り始めるとキリがないヲタクです‥‥。でもそういう自分が気に入っているものばかりを集めて身につけるというのは本当に気持ちがあがりますよね。改めて、「オシャレして友達と楽しく集まる」ために着る着物って、ほんと楽しいな!と感じました。 そして友達のコーデを愛でたり、着物や帯のこだわりを聞いたりするのがまた楽しいんですよね~~~!! 初下ろしの着物との出会いの話や、お母様の訪問着を自分用に仕立て直した話を聞いたり、叔母さまの着物を羽織にしたものなど、それぞれ思い入れのある『晴れ着』で集った新年会、テンション上がりまくりでした。 ランチは北京ダックなんかいただいちゃったりして、マダム気分。その後に今年大河ドラマでも話題の紫式部がテーマのお装束の展示は本当に眼福でした。日本人の美意識の源流がここにある~!という、美の暴力。かさねの色の美しさにうっとりうっとり。 最後にカメラマンのみずほちゃんに記念写真を撮ってもらったのですが、あまりに浮かれて、キモトモの手をとって「ビューティビューティ♪」と踊ってしまいましたよ~ん。メロディが頭の中で再生できたあなたは昭和なお仲間です(笑)。懐かしすぎました! お正月から、観劇に初釜にとSNSに続々アップされるキモトモの晴れ着にいいね!を押しつつ、子どもの受験が終わったら、またお祝いの着物を着たいな!と、春を待っているわにこでございました。いやまじ頼む、お祝いの着物を着させて(切実)

小さめ着物をコートワンピ感覚で着てみるの巻

星わにこ
2023/11/08 00:00
和洋ミックスは、今はもうすっかりおなじみになっていますよね。そんな着方をして、なにか言われないかしらと気にしたのも平成まで。令和な今は、「着物はこうあらねばならない」なんてことも、普段着に関してはほぼ言われなくなってきました。 普段着のウールの着物をタートルネックの上に着ちゃう、というのは結構昔からあった着こなしですが、最近は正絹の小紋や紬なんかでもパーカーの上に着たり、ワンピースの上に着たり。自由になってまいりました。 こちらは平成28年の記事。まだパーカーの上に着る発想が自分になかったころです。 関連記事:冬に楽しみたい☆ウールの普段着物の巻 パーカーの上に着物を着るのって、令和になってからよく見るようになりましたが、衿もよごれないし衣紋も気にならないし、頭いい!って目から鱗がおちた記憶が。この頃に比べても、本当に普段着物はどんどん自由になってきています。街でも見かけますし、YoutubeやSNSでも、自由な着こなしをしている人がいっぱいいて、見るだけでもわくわくしてしまいます。 インナーを洋服でいいやと思うと、すごく気楽に着物が着られます。例えば、着物を脱いでも大丈夫なインナーにしておけば、外出中に脱いだりもできる。薄いコートワンピースのような感覚で扱えます。 襦袢が、半衿が‥‥と気にしなくてよければ、ものすごくハードルが下がりますね。しかも、コートワンピ感覚であれば、多少裄が短くてもへっちゃらです。裾も短めに着付けて、靴やブーツも可愛いですよね。 今年の夏は、浴衣にスニーカーの女子が結構いて、おばちゃんはびっくりでした。ワンピースにスニーカーをコーデして履くのが流行っていますから、その延長なんでしょうね。 コートワンピ感覚で着るなら、サイズは小さめの方が扱いやすいです。おばあちゃんやお母さんの着物、譲られ着物や、リサイクルショップで見つけためっちゃ可愛いけど小さな着物。洋服の上にシャツワンピや、コートワンピのように着てみてはいかがでしょうか?  肌に直接触れる部分を減らせば、正絹の着物でもお手入れを頻繁にする必要もないし気にせずどんどんトライしてみましょう。ウールや紬もいいんですが、正絹の柔らか物の小紋なんかを羽織ると、ほんとうに着心地がよくてうっとりします。 身丈が短くても、下にロングスカートやロングワンピを着て、それを見せて着たり、そもそも丈を短く着付けても変じゃありません。それこそ足元はスニーカーを合わせれば今っぽいかも。ワンピースもロング丈が流行っていますから、違和感なくいけちゃいますよ。 帯も、ベルトでもいいし、もちろん半幅や名古屋帯をしたっていいわけです。決まりはないので、自分で「これいいわ」と思ったらなんでもOK。ポイントは「堂々と着る」。です。間違ってるかしらとか変かしら、と気になるようだったら楽しめませんよね。自信を持って、着こなしてください。 私はお出かけする時に和洋ミックスをするというよりは、家でくつろぐときにあったかいし、気分も上がるので洋服仕様の楽なインナーの上に薄いタートルネックを着て羽織って過ごしたりしています。まじで正絹あったかいので、暖房入れなくても平気なくらいです(急にババくさい理由)。 と、私がいうまでもなく皆様もう楽しんでいらっしゃる方もたくさんだと思います。これから寒い季節には、着物が大活躍ですね。いろんな着こなしが見られるのが楽しみです!

半幅帯の結び目を高くキープする方法3選の巻

星わにこ
2023/08/02 00:00
浴衣シーズンですね! 先週末は4年ぶりに隅田川の花火大会があったり、盆踊りなどなどでたくさんの浴衣姿をお見かけしました。夏は浴衣! 本当にいいですねえ~。 素敵だなあ~ってついつい頬が緩んでしまい、危ない人に思われないよう平静を装ったりして……(笑) 帯結びもYoutubeやInstagramなど、動画でいっぱい見られるせいでしょうか、とっても素敵なスタイルが多かった気がします。 半幅の帯結びで気をつけたいのが、結んだときはいいけど動いているうちに緩んで、後の結び目が下がってしまって、伊達締めとかが見えてしまうこと。私も初心者のころよくなりました(遠い目) 伊達締めをしていなかったりしても、帯の結び目が下がると着崩れにつながったり、背中が広く見えてしまって残念なことに。特に最近の半幅帯は長いものが多いので、結び目にかかる重さが増加して、下がりがちなんですよね。 かるた結びや結ばない帯結びなどのやり方で、そもそも落ちるような位置に結び目を作らないという方法もありますが、ちょっと背中の高い位置に結び目があると、若々しいものですし、背中も華奢見えして女子力もアップします。 結び目を高い位置にキープするコツを3つご紹介しますね! 1)結び目は高く、結んだらひねってロックをかける 帯の上線の上に結び目が来るように、高い位置で結んでしっかりひきしめること。怖がらずにしっかり絞めたら、結び目を縦方向にひねります。こうすると、しっかりロックがかかって帯が緩みにくくなります。 2)クリップ使いで帯がゆるまないようにする 結び目が緩むと帯が緩んで、相乗効果でどんどん緩みます。見えない部分を便利グッズ「お太鼓止め」で止めておくと安心! ない場合は文房具のダブルクリップでもいけますよ。 3)仮紐を使って結び目を高い位置にキープ 三重仮紐を使って結び目の上に羽飾りを作っていくやり方だと、仮紐に重さがかかるので結び目は下がりません。三重仮紐でなくても、仮紐(腰紐でもOK)を使えばOK! 素敵な半幅帯結びで、夏の浴衣を楽しんでください。もちろん、普段着物のときもぜひ!

英国戴冠式での紀子様のお着物素敵でしたねの巻

星わにこ
2023/05/10 00:00
皆様ゴールデンウイークはいかがお過ごしでしたか? わにこは仕事・仕事でまた仕事(白目)でしたが、最終日だけちょこっとゆっくりできる‥‥と思ったら1日寝てしまっておやすみは露と消えました(笑)。ずっと抱えていた大きな締め切りをクリアして、ほっとする間もなくまた締め切りに追いまくられていますが、お仕事があるのはありがたいことです。 5月6日には、英国のチャールズ国王の戴冠式がありましたね。私も生中継を流し見しながら仕事をしたりしていたのですが、なんと70年ぶりの戴冠式とのこと。「すごいな~」という感想しかでない平民ですが、ロイヤルファミリーや各国ゲストの皆様のすばらしい衣装に目が釘付けでした。 中でも、そう。着物好きの皆さんはきっと秋篠宮紀子様の和服姿に大注目だったのではないでしょうか。私ももちろん目を皿のようにして見入っておりました。以下ただの着物好きの感想です(事実と相違ありましたらご容赦を!) 最初は「訪問着をお召しになってるんだ~」と思ってみていたら、おやっ!袖の後ろ側に紋が入っている‥‥ということは三つ紋の訪問着なのでしょう。 戴冠式関連のドレスコードなどはまったくわからない私ですが、きっと胸元にも模様のある華やかな訪問着を選ばれて、その上で紋を三つ入れられることで準礼装と言われる訪問着でも、ぐっと格をあげて敬意を表されているということなのかな?と思いました。 紋は写真や動画ではわかりませんが、おそらく秋篠宮家の御紋である「菊栂(きくつが)」と思われます。栂(マツ科の針葉樹)を使用している紋はほかにはないと言われるとても珍しい紋で、一度みたら忘れられない意匠です。 それにしても、本当に上品なコーディネートで「ザ・皇室」という感じがして素晴らしかったですね。着物ウオッチャーの血が騒ぎます!! 着物は薄い香色におめでたい文様が山取(山の形に模様が染め分けられている)もので、おそらくは皇室に数多くの着物を献上されている京友禅作家の藤井寛先生の作品ではと推察。 袋帯は七宝繋ぎで、円満にご縁がつながるこれまたおめでたく格調高い柄。その中には唐花文様が施されています。そして純白の帯揚げをあわせ、白と金の細い帯締めには、おそらく真珠(?)の帯留めをなさっているようです。 それにクラッチバッグと三段重ねの草履。フォーマルでありつつ、でもガチガチではなくて、お祝いの気持ちのこもった華やかでそれでいて上品な装いだな~と拝見しておりました。 ネットでは炎上などと騒がれていましたが、着物って、着るだけでどんなに素敵でも文句つけてくる人いるじゃないですか。まあそういうものかなと拝察。一着物ファンとしては、こんなに素敵な着物姿を見せてくださってありがとう~!という気持ちです。 惜しむらくは雨模様のお天気で、お手入れ大丈夫かしらと超余計な心配をする小市民の私‥‥そして、ちょっと静電気起きちゃった? なんて思ったりもしましたが、所作の美しさはさすがでございました。 やはり、なんだかんだで大きな行事のときに和服姿が見られると、着物好きとしては非常に嬉しい気持ちになります。長い長い女王様の時代が終わり、時代もいよいよ変わっていくけれど、これからも変わらぬ皇室の皆様の美しい着物姿を折に触れ、たくさん拝見したいものだな~と思うGWの終わりでした。

おはしょりを一重にする「三角上げ」考★の巻

星わにこ
2023/04/05 00:00
着付けについて考えるシリーズ(シリーズだったの?)、前回に引き続きおはしょりです。マニアックネタなので、好きな人だけ読んでください・・・。 おはしょりのお腹にあたる部分、上前と下前の布が重なって二重になっていると、ぶかぶかしてしまったりもっこりしてしまったりすることがありますよね。 この部分を一重にするためによく使われるテクニックが「三角上げ」。下前の衿をおはしょりまで下りないように三角に折り上げてしまうというもの。 コーリンベルトを使うとこれがかなり簡単にできます。下前の衿をコーリンベルトで留めたら、留め具の上に下前のおはしょり部分の布を持ち上げて押さえてしまえば、お腹の部分には上前の布しかなくなるというわけ。 これをすると、下前の衿がおはしょりのところで下にひっぱれなくなるので気崩れがなおしにくくなるのですが、やはりお腹のところはすっきりするし、折り上げた布でウエストの補整にもなるので一石二鳥のため、このやりかたを採用している方も多いのでは。 私はずっとこの「三角上げ」は、着崩れが直せなくなるのが欠点だと思っていたのですが、コーリンベルトの留め具を押して衿のゆるみを直す技を会得して以来、いけるでこれはと思っています。 参考:振袖や訪問着の伊達衿のゆるみを直す方法☆の巻 ところが、この三角上げの布を持ち上げる方向を逆にするという方法を、たかはしきもの工房の女将さんに教えてもらいました。 どういうことかというと、コーリンベルトは低めにして、衿はおはしょりのところで引けるように下ろしておき、右に向かって下前の布を持ち上げておはしょりを一重にするのです。 な、何を言っているかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった・・・(ジャン・ポルナレフ談)というくらいコペルニクス的発想でした。イラストを見てみてください。 右側の上前の端がなくなるのでは?と思いきや、そんなこともなく、もしなければ引っ張ればいいし、右端の腰のもたもたがなくなるという凄技。しかも、下の衿も緩んだらおはしょりのところで引いて直せるんです。 へえ~?と思った方は、試してみてくださいね! 目鱗です。 ただ、このおはしょりを一重にする必要がない時もあるわけで、薄手の着物や痩せていておはしょりがふがふがしなければやらなくていいですし、逆にふくよかさんの場合、二重になっていたほうがしっかりとお腹を押さえてくれる効果もあったりして、一重よりよい場合もあります。本当にケースバイケースですね。 人の数だけ着付けのやり方はある・・・というわけで、いろいろ試して自分がやりやすくて綺麗に仕上がる方法はまだまだ探す余地がある、と思っています。 次回も引き続き、しつこくおはしょりについて考えたいと思います。「おはしょりの横のぶかぶかをなくすには」編、お楽しみに!

正月太りも怖くない。秘技V字で細見え効果!?の巻

星わにこ
2023/01/18 00:00
皆様、お正月はいかがお過ごしでしたでしょうか。ご多聞にもれずしっかり正月太りをしてしまった私です。 これはまずいよね~~と、まんまるころころの写真を見ながらため息をついていたところ、帯締めのちょっと細見え技というのを教えてもらいました。 それは帯締めの結び目だけを少し下に下げてV字にするというもの。 これをすると少しリズムがついて、すこし細く見える効果も! ありやなしやと‥‥。コツは、脇は真ん中で結び目だけを気持ち1センチくらい下げる、というもの。本当に気持ちなんですけどね、ちょっと粋にも見えます。 あとは帯も少し前下がりにする、おはしょりも真ん中をすこし下げるという帯周りのすっきり錯覚技と合わせるとかなりいいのでは!! 目の錯覚を利用して!お腹すっきりに見えるおはしょりラインの巻 礼装などには向かないですが、普段着やパーティには使える技ではないでしょうか。帯締めは真っ直ぐと誰が決めた、と石川さゆり先生も斜め帯締めを実践しておられます。今年の紅白も健在で思わず拍手でした。という余談はさておき‥‥ 細かいことですが、帯締めの位置は結構全身の着あがりのポイントになり、印象を左右します。 帯の位置と同じで、年齢が若いと少し上目、年配になってくると下げるという認識の方も多いのでは。 例えば振袖の帯締めの位置は、帯の真ん中から上にするのがセオリー。真ん中でもよいのですが、その位置より下がることはありません。 一方、年齢を重ねてきたら真ん中より下にするのかというと、礼装では真ん中にしますし、カジュアルでも絶対そうかというとそうでもなく、お好みもあると思います。 ただ、年齢とともに、ヒップの位置が下がるんですよね~。それでそのヒップに合わせてお太鼓を作ると、お太鼓の位置も下がるわけですよ。そうすると、その下がったお太鼓の中を抑える「て」を抑える帯締めも、位置が下がるわけですよ。だから、帯締めの位置も自然と下がってくるというわけです。 でも、前から見た時はちょっと若々しくしたいな!というわけで私は前は真ん中に持ってくる派です(笑) そしてさらにV字技を使えば、ふふふふふ。(そんなこと言ってないで痩せたらというツッコミは今年もなしでお願いします) 気軽に位置はずらせますから、着物を着たときに鏡を見ながら自分の好みの帯締めの位置を再確認してみてはいかがでしょうか?

刺繍の半衿をたっぷり見せる着付けの巻

星わにこ
2022/11/30 00:00
クリスマスやお正月に向けて、ドレスアップした着物が着たくなる時期ですね。普段半衿は白オンリーの私でも、華やかな刺繍半衿をしたくなるシーズンです。 せっかく刺繍半衿をしたら、やっぱりしっかりと見せたいのが人の常。白半衿の場合は、すっきりと少なめに見せるのが粋な着こなしかと思いますが、綺麗な半衿はたっぷり見せたいですよね! でもなんか、いつも着物が半衿に被ってきちゃって、半衿を見せるって難しい!というお悩みもあるのではないでしょうか。 今回は半衿をたっぷり見せて着付けるコツをご紹介します。 まず最初に 「衣紋を思い切って抜く」ことです。 その次に 「襦袢の衿をこれでもか!と深く合わせる」ことです。 衿が合わさる角度が鈍角になるようにします。これは衣紋をしっかり抜いていないとできません。 ・襦袢の衿を胸の外側を通るように深く合わせる ・衿を合わせるときに、下に引かず、真横に、いやむしろ持ち上げるくらいの気持ちで合わせる この2つのポイントを守ってください。どうしてもできない!というときは、襦袢の身幅が足りないかもしれません。 身幅のあった襦袢を着るのが一番ですが、一応身幅が足りない時の超裏技もご紹介しておきます。 長襦袢の身幅が足りない時の超☆裏技!の巻 そして最後は、 「耳の下あたりで1センチくらい半衿を見せて着物の衿を合わせる」 です。普段は、耳の下あたりから半衿をのぞかせはじめると思いますが、これをもう少し後ろから見せるのです。こうすることで、半衿が見える面積が増えます。これも衣紋をしっかり抜いて、首の横で衿が寝ているような状態でないと難しいです。すべて衣紋の抜きと連動しています。 さらに、着物の衿は浅くやや鋭角にあわせます。着物も深く合わせてしまうと半衿が見えなくなってしまいます。 この3つのポイントを心掛けて、着てみてください。刺繍の半衿をしっかり見せられますよ。 クリスマスの柄の半衿や、おめでたいお正月の半衿、大好きなモチーフの刺繍半衿などなど、ぜひぜひお好きな半衿を「見せて」着てくださいね!

短い帯は隠し仮紐で固定できるぞ。の巻

星わにこ
2022/01/26 00:00
1月も終わりになり、大寒となりました。節分までが1年で一番寒いと言われる時期です。今週は特に七十二侯で水沢腹堅(さわみずこおりつめる)、沢つまり流れる川の水も凍る寒さといわれる期間になります。 確かに寒い! そんな時期は温かみを感じさせる着物が着たくなりますね。久しぶりに髭紬の帯を取り出して結んでみたら‥‥あれ!たれが短い! このままではお太鼓ができない! また箪笥の中にしまっておいたら縮んでしまったわ・・・・。という冗談はさておき、そうだった~!短い帯なのを忘れてた。 でも、途中まで結んでしまって、結び直す時間もないし・・・・という時はありませんか? そんな時は、細い仮紐を使ってください! 短いたれで、普通にお太鼓を作って、引き返しが短くてもOKです。お太鼓の下線に仮紐を通して、結んでください。これでお太鼓の形ができて崩れることはありませんよね。 普通はそこで、手を通して帯締めを結べばこの仮紐はとってしまいますが、引き返しが短い場合には、帯締めで押さえられないのでお太鼓が落ちてしまいます。 でも、仮紐はしたままで、帯の中に仕舞い込んでしまうのです。これでお太鼓は崩れません。その上に手を通して普通通りに帯締めを結ぶだけ。 仮紐が見えてしまうと「あら」ということになりますので、なるべく見えないように帯の中に仕舞うのがポイントです。 短い帯を結ぶためには、手をなるべく短くとる、とか、前の部分を一重にする、とか結び方自体を変える、とかいろいろな方法がありますが、極端に短い帯以外はこの隠し仮紐方式で結んでしまいます。 理由は、帯の結び方を変えなくてもいいから。なにも考えずにいつも通りに結んで、長さが足りなければ仮紐で止めてしまう。一番楽ちんで時間短縮であります。 最後の最後で「あらっ!たれが短い!」となったときは、この裏技を思い出してくださいね!  それにしても、この禰豆子(ねずこ。正しい表記はネ+爾)ちゃんみたいな帯、一昨年まではこんな裏技なしで結べてた気がするんですが、タンスの中で(まだ言ってる)‥‥‥痩せたいです(切実)。

この冬は帯揚げスカーフ&帯締めベルトで決まり!?の巻

星わにこ
2021/10/20 00:00
緊急事態宣言も解除されて、やっと少し着物でおでかけしてもいいなあと思われている方も多いのではないでしょうか。きょうから大阪でキモノEXPOですね。先週は銀座で、私も会場にお邪魔しておりました。 初日は暑いくらいだったのに途中から急に気温が下がって羽織ものが欲しくなり、ああ、いよいよ袷のシーズンなんだなと皆様の着物姿を見ながらわくわくしていました。ワークショップや講演も盛況で楽しそうでしたよ! さて、そんな中洋服のお客様が「今日は着物で来られなかったから、和を取り入れてきました」とおっしゃってウエストを指さされるのでよく見るとなんと、帯締めをベルト代わりにされていました。あまりにさりげなくて、気づかなかったほど! サイドに垂れている撚房もおしゃれ! 「初日にゲットした帯締め帯揚げのセットなんです」とおっしゃるので「え?」と見直すと、なんと首に絞りの帯揚げをスカーフ代わりに巻いていらっしゃったんです。 ベースのツーピースとカラーコーディネートもばっちりすぎて、言われるまでそれが帯揚げとわかりませんでした。帯締めと帯揚げと洋服のコーディネートが本当に素敵で、トシちゃん感激!(古いネタすぎてわからない) ふわふわっと巻いていらしたらもしかしたら気づいたかもしれませんが、垂らすだけのシンプルさがまたすごくかっこよかったんです。お願いしてお写真とらせていただいたのでご紹介しますね! 考えてみたら、帯揚げってシルクだしスカーフとして使うのも素敵ですよね。スカーフを帯揚げに使うのはよくしているのに、なぜ逆はおもいつかなかったんだろう? コロンブスの卵か!?と目から鱗が100枚くらい落ちました。 好みのものはもちろん、なんだか色が派手でつかいにくいとかいう帯揚げももしかしたらスカーフにしたら有効活用できるかも!? 早速ちりめんの帯揚げをクビにくるくる巻いてみたら、収まりもいいしあったかい!! シルク100%ですからね、贅沢ですね。 いろいろ巻いてみたんですが、綾子系のつるんとしたものはまさにスカーフのようですし、ちりめんや絞りの入ったものは少し伸縮性もあるし空気も含むのでまきつけやすく、暖かいです。首に巻いて形が作りやすいのは後者ですね。先の部分を見えないように巻き込んでしまうとプチスヌードみたいでいいかんじです。 久々に大コーフンしてしまいました。まあこういうものは、多分にセンスに左右されるものでありますけれども、リメイクでもなく、あるものそのまま活かせるとなるとトライの価値はある!と思います。 帯締めもブラウスとかちょっとウエストマークしたいときに素敵かも。 帯揚げとかね、本当何枚もってるの? しかも可愛い模様とか入っててもしちゃうとほぼ見えなくて残念、なーんて思っていたものが活きるとくればやってみたさ倍増です。 今年の冬はご一緒に帯揚げスカーフ、帯揚げマフラーデビューしませんか?

30年前に作ってもらった3枚の色無地の話。の巻

星わにこ
2021/04/14 00:00
4月から新生活が始まった方も多いのではないでしょうか。我が家は子どもが高校に入学して、日々いろんな経験をしているようです。中学まではなんだかんだと今日はなに、帰りは何時と気にしていましたが、高校生ともなると一気に手が離れる感じがします。義務教育は終わったんだなあと、実感します。 その卒入式ですが、今年は感染症防止対策で短めの開催ながら保護者も出席して見守ることができました。小学校ではぼっち、中学校では2人だった保護者の着物姿。高校ではどうか!と思いましたら2人でした。さ、寂しい‥‥。でも卒業式も着るもんね(スーツを持っていないとも言う)。 卒園式と小学校の卒業式は雨だったので洗える着物にしましたが、小・中学校入学式と卒業式は同じ白緑の色無地と黒羽織を帯を変えて着ました。でも、あまりにワンパターンでちょっと自分が飽きて来て、高校の入学式には、お宮参りと七五三の参拝のときに着た紅掛空色の一越ちりめんの色無地をひっぱりだしてきました。 30年前。社会人になりお茶を習い始めたと母に言ったところ、だったら、と嫁入り着物の前払い(?)のように色無地を3枚仕立ててくれました。その時はもう離れて暮らしていたので、電話でどんな色がいいかと言われて、臙脂色と銀鼠とあとはおまかせ、と頼んだら、臙脂は濃い色は玄人っぽいのでやめたらと京染め屋さんに言われたそうで、却下。自分としてはスクールカラーなので、と思ったのですが、残念。玄人っぽいってなんじゃと思いましたが、昭和な感覚では仕事着っぽいというところでしょうか? 当時、憧れていたイラストレーターの大橋歩さんの「どきどき着物」という本に、成人式で着た振袖の色を抜いて、銀鼠の色無地に仕立て直して、洋服感覚でいろんなシーンに着ていける万能選手に生まれ変わったという素敵な話が載っていて、銀鼠だけはお願いします、と食い下がったのですが‥‥。 仕立て上がってきた着物と対面したら、白緑(薄い竹色)、梔子(くちなし:黄色)、紅掛空色(薄い水紫色)で、え、え、私の銀鼠ドコ!?となりましたが、どうも私には紅掛空色に見えるものが銀鼠、と言われたらしいです。まあ、素敵な色だし、喪にも使えそうな万能選手ですが、でも銀鼠じゃないー! となった想い出のある着物です。 しかも、日向紋という白抜きの一番格の高い一つ紋が入っているので、どうにもこうにもカジュアルダウンには無理そうなものです。 白緑の色無地は、ケシ縫いの一つ紋で少し大きめの蔦の地紋入りでちょっと華やかな印象があります。 でも紅掛空色のほうは、地紋もなく日向紋が入っており、ザ・礼装という感じ。若い頃はそのプレーンな感じと色が気に入って着ていましたが、一度地紋のある白緑の華やかさを経験してしまうと、そちらばかりを着るようになってしまいました。 でも今回、さすがにちょっとワンパターンすぎるな、と久々に紅掛空色をとりだしました。自分の記憶の中ではつるんとしていてなんとなく物足りないと感じていたのですが、 袖を通してみると、とっしりとした重みもあり、纏うと気持ちも引き締まって「おお~これが礼装パワーか!」と感じ入りました。絹のパワーってすごい。 入学式の頃には、桜ではなくすでに新緑がまぶしく、これからの子どもたちの新しい学校生活が楽しく輝くものになりますようにと祈りました。 色無地にはつづれの帯と、母から受け継いだいつもの一つ紋の黒羽織をあわせました。 黒羽織のお話はこちら:母の黒羽織をリメイクしてみましたの巻 いち利の女将さんとの対談でもお話しています:ほしわにこさん&女将の着物談義 母の黒羽織と義母の羽織紐は、子どもの卒業入学のお祝いのときには一緒に見届けてほしい気持ちで、着ていくようにしています。 あとはお祝いの気持ちで、昨年国立博物館の「きものKIMONO」展の帰りに清水の舞台からダイブしてしまった道明の奈良組を初おろししました。新しいものがなにかあると、特別感がありますよね! あ、買い物の言い訳じゃないですよ、はい(怪しいw)。きっと、この帯締めを使うたびに「子どもの入学式で使った」という晴れやかな想い出が、蘇ることでしょう。 カジュアルダウンもできるという色無地ですが、やっぱりこういうちょっと控えた式服、略礼装に一番しっくりくるものなんだなと改めて思いました。自分のために好きなものを着る、ということと、人のために装う、ということは違うし、それぞれ意味があることなのですね。 それにしても多少体型や年齢や流行が変わっても、着続けられるのが着物のすごいところ。30年前のスーツではこうはいきません。(あとは着られないほど太らないようにしないと‥‥モゴモゴ) ちなみに、もう一枚の色無地、梔子(日向紋)はちょっと色が濃い目で、地紋が四君子や立涌など吉祥文様の雲取で一番ゴージャスな感じです。一度黒い袋帯をしたら、お寿司の卵焼きのような色合わせになってしまい(笑)以来なんとなく手がのびていません。でもこれもまた、5年、10年と時間が過ぎていつか気に入って着こなせる日がくるかもしれません。虫干しで、取り出しては仕舞い。また思いついては取り出して、仕舞い。母を想い、来し方行く末を想い。それが、着物なのかなあとこのごろ思います。 そして、これはいつ着た、あのときも、このときも、とアルバムのように想い出を刻むもの。30年前に母が作ってくれた色無地たちと、残りの人生も過ごしていくのでしょう。感謝とともに‥‥。

大学卒業式の女子袴はいつから定番になったのか?の巻

星わにこ
2021/03/10 00:00
先週、袴の流行について調べていて、「女子大生・卒業式・袴・いつから」で検索したところ、90年ごろから1987年の映画「はいからさんが通る」の流行で女子大生が卒業式に袴をはき始めたという記事があり、当時女子大生だった自分の実感とは合わないなあと思ったのがきっかけで、調べて見ました。二週連続袴の話題で失礼します。 まずはお知恵拝借!と、その頃以前に女子大生だった皆様に卒業式の服装についてSNSで聞いてみました。ちなみに91年卒のわたしは、1尺4寸(53センチ。ちょっとだけ長め)の袖のピンクの江戸小紋に紫の無地の袴でした。同級生は袴もいれば、振袖もスーツもいました。生協でレンタルもありました。 83年卒:友達はほとんど袴姿 85年卒:袴。写真をとっておけばよかった! 85年卒:自分も友達も袴。謝恩会はドレス。84年卒の姉も袴。75年卒のいとこが着たピンク付下とえんじの袴を借りた。 85年卒:色無地に袴(デパートレンタル)。ほかにも付下、振袖に袴の人もいた。 85年卒:うす橙色の色無地と母の黒い袴。袴と振袖は半々だった。 90年代卒:ほぼ振袖。袴は女性の先生が着るイメージだった 88年卒:東京女子大はほとんど袴(矢絣は禁止だった) 88年卒:キャップとガウン 86年卒:袴(レンタル)着用。袴は多かったが、振袖やドレスもいた。 91年卒:保育園の先生である伯母(今88歳)はずっと卒業式は袴だった。その袴を借りた。 91年卒:成人式の振袖にレンタルのグラデーションの袴。 80年代から袴は定番のようですね。ちなみに、銀座いち利の女将にも伺ってみたところ、74年卒業で振袖に袴だったそうです。周りも小紋や色無地に袴で、先生も袴だったと教えてくださいました。 「はいからさんが通る」の映画の影響で袴が復活して履かれ始めたということではなく、礼装として卒業式では定番の服装のひとつであったのではないでしょうか。原作漫画の連載開始が1975年、アニメ化が78年ですので、そちらのほうがブームへの影響はありそうです。私自身も子どもの頃から大好きだった漫画ですし、刷り込みになっていると感じます。 袴が定番でこれが流行、というように雑誌にとりあげられたりするのには、女子の進学率も関係があったのでは?との指摘も。70年代に大学が大衆化し、女子の進学率も上がり、80年代には女子大生ブームがやってきます。 ふーむと思っていると、『スキルアップ!情報検索 基本と実践』の著者の一人である中島玲子先生に「女子大生 袴 1980」で検索したら共立女子大の文献がありましたよと教えてもらいました。 田中淑江ほか.卒業式に見る袴の現代的着装の研究Ⅲ : 「伝統的な視点から.共立女子大学家政学部紀要」2015,Vol.63, p. 23 - 35.によると注の(1)に「筆者が新聞4 紙(朝日新聞・読売新聞・毎日新囲・繊研新聞)を用いて分析した結果、袴復活の黎明期を1980年代初期-1980年代後期、定着期を1980年代末期-1990年代中期、安定期を1990年代後期~現代と時代区分を行った。」とあります。 全文もpdfで読めますし、この研究にはⅠやⅡもあり、卒業式の袴の着付の考察(衿あわせやえもんの抜き具合など)や流行などについて研究されておりものすごく面白い。ぼんやりと袴について「そんなかんじ?」と思っていたことが明文化されていて老眼鏡をかけたときのような気持ちになりました(婆)。 また、togetterのまとめ記事もありました。引用されていた1980年代バブルのころの謝恩会のドレスが度肝を抜かれる華やかさです!! 1970年代から女子大生の数が増えたのに伴い、1980年代初期には袴を履く女子大生の絶対数が増え、今では卒業式といえば袴、というような状況になったと考えられます。レンタル業者が着付までまとめて校内で行ったりするようになった時期とも重なるのでは。あとは、校風や学部や専攻にも関係があるかもしれませんね。 中島先生に「知りたいことを検索するときは、いつから?とか抽象的な言葉ではなく、知りたいことがどういう風に書かれているか、使われている言葉を想像して検索するといいですよ」と教えていただきました。 わにこはひとつ賢くなりました・・・・。 そして、「袴に振袖をあわせるのは最近のことだ」となんとなく思い込んでいたのですが、いち利女将の証言によって覆されました! 確かにはいからさんしかり、大正時代の高畠華宵の絵にも振袖に袴の若い女性がたくさん描かれていますし、もともと袖が長い着物にあわせるほうがスタンダードで、むしろ70~80年代の普通の袖丈の着物に袴、という流行のほうが少しイレギュラーだったのかもしれません。この頃は、手持ちの着物に袴をあわせていた人が多数だったためと考えられます。 今は着物もレンタルが多く、ほとんど二尺袖(76センチ)か振袖(100センチ前後)になります。やはり袖が長いと華やかですよね。もちろんご自分の着物で用意されている方もいらっしゃると思いますが、普通丈の袖は先生が着るものという流れになってきています。着物といえば何か絶対のルールがあると思いがちですが、細かい常識や流行も時代によって変化しているものなんですよね。 今回は女子大生に絞って調べましたが、今は小学生も卒業式に袴を着用しますし、それも漫画「ちはやふる」の人気が関係あるという人もいるようです。それだけではないにしても、漫画の影響というのも昨年の七五三の子どもたちの「鬼滅の刃」の影響による和装人気を見ても確かにあると感じます。 今回はふとした疑問から、ネットを通じて調べただけですがいろんなことがわかりました。そして、ちょっとぐぐって一番最初に見たものを鵜呑みにしたりすることは避けて、裏をとる大事さも痛感、反省。今は、なにかあるとすぐ拡散されてそれが事実かどうかというのはなおざりにされているように感じます。いろんな情報をちゃんと読み込む検索のスキルも必要なんだなと、袴とは関係ないところでも考えさせられた一件でした。いろいろ教えてくださった皆様に、感謝です!

令和の袴はここが違う!卒業袴にも流行あり。の巻

星わにこ
2021/03/03 00:00
3月、卒業の季節ですね。ご卒業の皆様、おめでとうございます。昨年はちょうどコロナ禍への突入の時期と重なり、卒業式も入学式も中止や縮小が相次ぎましたね。今年は対策を取りながら開催のところが多く、大学などは例年のようにで袴をレンタル当日会場で着付‥‥というようなこともないようです。いろいろなことが変わってはいますが、人生の節目であることには変わりなく。それぞれの形でお祝いできるよう、心より祈っております。 今年は小学生、大学生はじめ卒業式の袴着付をご依頼いただいているのですが、自分の卒業式(30年前‥‥がーん)の時と比べるといろいろなことが変わったなあと思います。ネットで調べてみると、1987年の映画「はいからさんが通る」の流行で、90年代から大学生が卒業式に袴を着るようになった、と記述されています。 私の卒業式のとき(平成初期)には、すでに「やっぱり卒業式は袴でしょう!」と母が張り切って用意してくれたのですが、ネットもない時代にそんな超流行に乗ったんでしょうか。「はいからさんが通る」の原作は1975年連載開始、大人気で1978年にはアニメ化され、私も子どもの頃夢中でした。だから、映画の流行ではいからさんブームが、というのはあったとは思いますがそれだけかなという疑問が。もう母も亡くなっているので聞くこともできませんが、このあたりもう少し調べてみたいですね。 実際の卒業式では今のように女子はみんな袴!ということもなく、スーツもあれば振袖もいる、というような状況でした。成人式も同じくですから、和装がこんなに増えた背景にはレンタル業者さんの仕掛けと躍進が凄かったということなのかなあと拝察いたします。 最近の袴姿が変わったと感じるのは、とにかく華やかになっているということ。 平成初期は色無地もしくは江戸小紋や小紋などに伊達衿をあわせたものに無地袴が主流。矢絣のはいからさんスタイルもありました。普通の着物に袴をあわせる、というかんじで、袖も普通でせいぜい若いので少し長めかな、という程度でした。レンタルも主流ではなく私も袴をその日のために買ってもらいましたし、「家にある着物に袴をあわせる」ということだったのかもしれません。 今はニ尺袖がベースで、振袖に袴をあわせるのも普通になってきています。最初振袖に袴をあわせるのを見てびっくりしましたが、もうすっかり慣れてしまって普通丈のお袖だと、先生ですか?と思ってしまうほど地味に感じるようになりました。慣れってすごい。また、袴も刺繍、グラデーション、バイカラーと華やか。紐の裏表で色が違うタイプも増えて、結び目も乙女結びだけではなく飾り結びなどバリエーションも豊富です。 振袖に袴をあわせるようになったのは最近では、と思っていたのですが実はそうでもないようです。ちなみに、1994年(平成6年)の「美しいキモノ」春号には大学の卒業式の袴が紹介されていますが、早稲田大学でのスナップがまさに私の時代あるある(二尺袖も数名います)。ですが、同じ号に載っているグラビアの卒業袴は、色柄こそ地味目ではありましたが、小紋などの二尺袖、振袖に袴というスタイルが掲載されていてびっくり。いわゆる今成人式で着られるような振袖は、謝恩会のスタイルとして紹介されています。そういう雑誌や着物業界の提案が、実際に着られるようになっていったということでしょうか。 きものというと細かいルールがあって、それが絶対!のように言われることも多いですが、礼装としてきちんとしていればどんな組み合わせでも問題なく、またその形も洋服とおなじように流行があるんだということを改めて感じました。 あともうひとつ、紐を結ぶ位置が平成初期と今ではスタイルが変わってきています。以前は、前紐の付け根部分の下にやや斜めに引き下ろすように紐を回して結び、後ろ紐も少し斜めにあわせて前紐の付け根より下で飾り結びをしていました。 今は、前紐の付け根に重ねて紐を結び、後ろ紐もそれに重ねて平行に高い位置に飾り結びをするスタイルが多く見受けられます。前者は男袴と同じような着付で、このほうがしっかり締まって安定するかなと思いましたが、十二単の長袴の着付を習ったとき、前紐にすべて重ねて行くスタイルだったので、しっかり結びさえすればはずれるとかずれるとかいったことはないのでしょう。 また、結び目が少し高い位置にきますので、足長効果もあります。こんなところもアップデートされているんですね。民族衣装ではあるけれど、やはり着物も流行のもの。残って行くためには魅力的であり続けることも大切ですよね。 30年後。はたして袴は卒業式の定番スタイルでありつづけるのか? またそうだとしたらどんな進化をとげているのか? そしてそれを私は見届けられるのか? なーんて思ったりする春なのでした。

昭和・平成・令和☆着物スタイルの変遷考の巻

星わにこ
2021/02/10 00:00
いつも、着物はボディを寸胴にしたほうが布が体に添ってキレイに着られます! 胸やヒップが目立たず、まっすぐなI(アイ)ラインを作った方がスマートに見えます。だから補整は大事です、と言い続けているワタシですが、先日、でも昭和の女優さんの着物姿とか帯は胸高で体もすっごくカーブしてますよね?と質問されました。 そうなんです。昭和中期のきもの雑誌を見ますと、今と全然着付けもモデルさんのポーズも違っています。流行、ということもあったと思いますが何を目指して着付けられていたのかということがまず違ったのではないでしょうか。 着物が生活に根付いていたこの頃は「着物だって、洋服と同じように足長でほっそりスタイルに見えたほうがいい!」ということがまずありました。だから、モデルさんの立ち姿もまっすぐ立つのではなく、ひねりを加えたり足を曲げたり。帯もウエストに食い込むような形で、ヒップのまるみも感じられる着付けです。 この頃の雑誌「美しいキモノ」や「きものと装い」(主婦の友別冊)などを見ても、特集で「温泉旅行にいったらこんな装い」とか、「夫婦でデート」などなど、様々なシチュエーションでの着物姿が紹介されていますし、自分で作る着物の小物やうわっぱりの製図など、まったくの普段着というよりはちょっとよそ行きだったかもしれませんが、日常に着物姿があったことがわかります。私(50代)がちょうど子どもの頃。祖母は着物が当たり前、母の世代もお正月や卒入式、なにかがあると着物を着ていた世代で、着物になじみがある人も多いでしょう。 もともと、礼装は昭和の時代でも、動き回ることが前提ではありませんから、この頃から美しくシワなく着るという傾向がありました。特に戦後に着物が着られる人が減って行く中での着付け教室などによる「着物のルール」が厳格化していく中で、いろんなしばりも生まれていき、着物離れはどんどん進んでいきました。 それが決定的になったと感じられるのがバブル時期。普段に着物を着ることがほぼなくなってきたときに、着物を「冠婚葬祭の必需品、高級品」として販売した呉服業界によって、着物は日常生活から切り離されてしまいました。このころ創刊されたのが「きものサロン(現在のきものSALON)」。女優さんたちが美しく、一分の隙もなく呉服屋さん提供の高級呉服をモデル仕立て(本仕立てではない)で着ていました。それもあって、ポーズに動きがなくなっていきました。それはそれで絵のようで美しくはありますが、これは日常生活では再現しにくい美しさといえます。 もちろん着物を愛して、普段に着ていた人もいますけれど、本当に少なかったのではないでしょうか。雑誌でも、普段に着物を楽しもう、というよりは、高級なものをいかにシワなく美しく装うかというようなところが主眼だったような気がします。このころの雑誌の着物や帯の値段を見ると「ひっ」と思うような金銭感覚です(笑)。当時20代だった私は、着物に憧れて着たいなと思っていましたが、着物一枚に帯三本なんて呪文のように言われ、言われるがままに着物を買って行ったらどうなるの?と不安にもなり、着物を一旦諦めた思い出があります‥‥。 また少し流れが変わってきたと思うのが平成中期。平成14年の「KIMONO道(後のKIMONO姫)」16年の「七緒」創刊。リサイクル着物やアンティーク着物などを安価におしゃれに楽しんで着ようという流行がやってきたのです。当時古着などで本当に安価に手に入った着物。この頃、バブルを知っている身としては「えー!着物500円とかどういうこと!?そしてこんなに自由でいいの!?」と、楽しさに再開眼して、どっぷり着物沼にはまったワタシ。 東京では、本当にこの15年で普段に着物を楽しむ人の姿が増えたなと実感します。着付教室や呉服業界リードではない、「やっぱ着物着たいじゃん!」という普段着物の流れ、そして着物を着るうちに「いいものはいいよね」と知る、伝統の技もあり。新しい素材の普段着物あり。またやはり、ここでリバイバルとでもいいましょうか、あの足長でヒップのまるみが感じられる曲線着付けが戻って来ているようにも感じます。 ただ言えるのは、曲線着付けが戻って来たからといって補整が必要じゃないわけではないということです。足長着付けは胸をかなり抑えないと難しい。あと、年齢にふさわしいかどうかというのもあります。ここも、個人差があるとは思います。 普段着に関してはここに正解はなくて、自分が「どんな着姿」が理想なのか、ステキ!!憧れ!!なりたい!!と思うのかが最優先事項。人がどういおうと、自分が着たいように着ればいいし、なりたい着物姿に、補整するしないを含めて、寄せて行くことが一番いいんじゃないかなと思います。礼装はまた、別ですけれどね。 今はYoutubeなどもあり、いろんな人のいろんな着付け方法が見られる時代。正解はないからどんどんいいとこ取りして、自分なりのきものスタイルを見つけていけばいいんじゃないかなと思っております。せっかくこの時代に「着物を着よう」という物好き(笑)な仲間は、間違い探しをするより、お互いリスペクトして大事にしたいですよね。 昭和から一般人として着物を眺め続けて来た体感はこんなところですが、うっかり年寄りの繰り言みたいになってしまい、長文となってしまったことお許しください。こうして書いてみるとやだー!もう半世紀も過ぎちゃったわ!と驚き。でもまだまだ人生長いと信じて、いろいろなことを決めつけず、楽しむ気持ちを忘れないでいたいと思います! 皆さんもいろいろ教えてくださいね。

黒羽織をジャケットに、が流行る!?の巻

星わにこ
2020/11/04 00:00
先月、NHKの番組で続けて着物にスポットがあたってましたね。「世界はほしいモノにあふれてる」では、イギリスで黒羽織をジャケット感覚で着ている、というのを紹介していました。 確かに黒は使いやすい。紋付羽織の本来の使い方も、そんなに見ることのなくなっている日本でも、古着の楽しみ方としてありですよね。若い人が着てたわよ、なんて目撃情報もあり、流行るのかも? 3年前にきものチャリティでゲットした赤いバラの絵羽織を、ヨーロッパでジャケット代わりに着たお嬢さんの話を思い出しました。 関連記事:チャリティその後☆箪笥から飛び出した着物たちの巻 私は、夏に夏の紋付黒羽織の裄が短いものなど、本当に申し訳ないような値段でゲットして、冷房よけに羽織ったりしています。シルクだし、Tシャツの上に羽織っても、本当に肌触りもよくて最高です。夏羽織は単衣なので、洋服用でもう縮んでもいいと割り切って、自宅で手洗いしてしまっています。でも、あんまり外には着ていきません。 冬も家や仕事場で裄の短い絞りの羽織をよく羽織ったりしていましたが、すっごく軽くてあったかいんです‥‥でも外出する勇気はなく、どうにも自分の中でいけてない感が強いなあとよく鏡を見ると、裄が短いと半纏ぽいんですよね~。昭和の受験生感が強い。 裄が短いのが問題か、と裄ピッタリの男性用のヒゲ紬の羽織をゲットしてみましたが、全体的に重いので、家の中ではどうかなあというかんじ。もしかして、黒羽織が流行れば外に着ていけるのかも!?ジャケットコートみたいでいいのかも!? 他にもあるよ? おばあちゃんの絵羽織とか‥‥。 今、鬼滅の刃も大流行じゃないですか。アレでも学生服みたいな隊服というのの上に羽織を羽織っていますよね。キャラごとに伝統模様の派手なやつを羽織っていますけど、主人公の妹、禰豆子は黒羽織ですよね。きてる? 黒羽織きてる? 需要急上昇?? なんて思っていたところに、やはり同じ番組を見たキモトモ(着物友達)にのせられて、ジーンズとセーターに男物の紋付の羽織を羽織って、首にストールを巻いて、仕事場のご近所の酉の市まででかけてみました。 紬の羽織とまた違って、羽二重はしっとりとしていて着心地もとてもよく、セーターの上からでもやわらかものの着物特有の「纏う」感覚もあって、これはいいかも! 露店の人に、あら、素敵ですね、なんて言ってもらってへへへ、なんて思ったりして。 ちょっといい気になったところで、ふと鏡をみたら、おやっ? ものすごい既視感が……。あー。。必殺仕事人の中村主水感でした(昭和)。思わぬ落とし穴。。 羽織ってコートと違って、体の前がちょっと開くじゃないですか。なんかちょっとあるといいかなと思って、ストールを巻いたのが主な敗因(笑)かとは思いますが……。 あとは私が、イギリス人でも若い人でもないということですかね……。昭和生まれだから、やっぱり昭和の呪縛から逃れられないってことですかね……。おばーちゃんの羽織を着たら、やっぱりおばーちゃんになるってことですかね……。とか、しばらく思ってたんですけど、おしゃれな人は、老若男女性別国籍関係なく、どんなアイテムでもバシっと決められるもんなんだよな、と思い当たりました。 同じコーディネートでも「お洒落だね!」と言われる人と、「あんたそれ間違ってるよ」と思われる人がいますよね。。まあそういうことです。おしゃれな人は、天賦の才だけでなく、努力もしてますしね! もうちょっと流行って黒羽織スタイルが認知されると、私でも着やすくなるかもしれません(他力本願)。洋服でも着物の黒羽織風の羽織ものも見かけたりするし、おしゃれな人、ばんばん洋服にも着物にも、黒羽織を羽織って流行らせてください!!

着付け時間を早くするには事前準備とイメトレが9割の巻

星わにこ
2020/10/21 00:00
よく、何分くらいで着物を着ますか?と聞かれることがあります。普段の紬に名古屋帯、というようなスタイルなら着付け時間は肌着をつけるところからで15分くらい見ています(ヘアメイク別)。 肌着&補整5分、長襦袢(うそつき衿が多いけど)&着物で5分、帯で5分というかんじでしょうか。 もっと早く着ようと思えば着られるかなと思いますが、手順を丁寧に追って、ある程度きれいに着ようと思うとそんな時間になります。時間を縮めることより、楽にきれいに仕上がりがきれいに着られるほうを重視したいと心がけています。 ただこれは、すべての着付け道具が手元に揃っていることがポイント。数がちゃんとある着付けの道具、過不足ない肌着と補整グッズ、ちゃんと半衿のついた襦袢、シワの入ってない着物、コーディネートされた帯と帯揚、帯締め。 朝、いきなり着物を着よう!となってあれがなーいこれがなーい、やべっ、裾に折れ目が入ってる!アイロン!アイロン! えっと、どっちの帯にしようか、帯締めはどれ? あーもうこれでいいや! えーん気に入らない、あっ帯結び失敗した!なんてやっていたら確実に1時間以上はかかります。もう気持ちも焦って、着付けが終わるころには気持ちもぐだぐだ。もう出かけたくない(涙目)とかになっていることも。 大事なのは、前日までの事前準備とイメトレです! なにをイメージトレーニングするのかというと「着付けの手順」と「着物をこういう風に着たいという理想の姿」です。着付けの手順は、ひさびさに着るときとかだと忘れがち。私も、帯の変わり結びとか本を読んだり動画を見たりして思い出しておきます。 あとは、なぜその手順をそのようにするかという理屈(特に補整)と、仕上がりの理想型(衿の出方や、おはしょり、帯の形、帯締めの位置や帯揚げの出し加減などなど)もイメトレ対象です。そこが明確に意識できているかできていないかで仕上がりはとても変わってきます。 こうなりたい!という姿がはっきりしていればしているほど、そこに近づけていけばいいわけなので、まずはそこのイメージを強く持つことはとても大切なのです。 これは、着物を出さなくてもできるし、スマホや雑誌や動画などで「これは素敵!」「こうなりたい!」という憧れをインプットしていく作業なので楽しみながらできますよねー。とにかく、着物の形に慣れる、触れる、美しさを普段から感じておくのが大事です・ そして着る前の事前準備。組み合わせる着物と帯と‥‥というコーディネートとコンディションチェックはもちろんですが、着付けの小物や肌着、補整用品などもまとめておくことが大事です。 そこまでしておけると、余裕を持って着付けもできるし、プラスアルファで帯飾りをつけたりアクセサリーやバッグのコーディネートまで気持ちが行き渡りますよねー。 家でゆるりと着るような普段着物は別ですが、外に出て、人に会うときに着る着物はキチンと着たいと思っています。多少のうまくいくときいかないときはありますが、平均値は、イメトレをして気をつけて着れば着るほどちょっとずつ上がる。 準備、イメトレで当日着付けの9割はもらった!といっても過言ではないでしょう。 あとの1割は、体調とテンション! わかっていても、なかなかやりきれないときもありますが、人間だもの‥‥ということで(笑)。 しまい込んでしまうとわからなくなるような小物はトラベルバッグに入れてまとめておいたり、当日あ、やっぱりこっち、みたいなこともありますので、帯締め帯揚げなんでも一カ所に集めておくように気をつけています。 関連記事:これは使える!トラベルポーチで着付小物の整理の巻 あとでやろうはバカやろうなんじゃ(ノブ。 なんでもいきあたりばったりの自分に言い聞かせながら、明日着る着物の準備をします。これもね、楽しみながらできると一番いいですよね!

八掛の色で着物が変身!ちらりと見える裏地の美の巻

星わにこ
2020/09/16 00:00
「わたどう」ことドラマ「私たちはどうかしている」の登場人物の着物姿、話題ですね~! 公式ホームページにもそれぞれのコーディネートについて解説してあったりして、ふむふむ参考にしております。帯締めをたすきがけにしていたり斬新なアイデア(@@)も! 季節柄薄物がたくさん出てきますし、男子着物も山盛りで目の保養&勉強になりますです。 その解説の中に、「袖口から見える色と帯締の色をあわせた」という一文がありました。確かに位置も近いので、色をあわせるのはいいかも。その視点でコーディネートしたことがなかったので、目ウロコでした。袖口から見える色とは、つまり八掛の色ですよね。 八掛とは、袷もしくは胴抜き仕立てのときにつける裏地のこと。袖口2枚、すそ回し(衽、前身頃、後ろ身頃×2)で6枚の合計8枚の布です。 仕立て上がりの場合は選べないし、自分でお誂えをするときにも、訪問着には共八掛といってもうセットになっているし、なんとなくおすすめの色があったり、そんなに深く考えたことはないわ、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そもそも、裏地なので、袖口にちらりとこぼれるか、歩いたときにちょっと目に入るとか、そんな小さな面積しか表からは見えません。それなのに、八掛の色が派手とか若いとか、気に入らないとか落ち着かないとか、そんなことを感じるのも事実。 なぜだろう?と思っていたのですが、八掛って一番自分が目にするものなんですよね。着るとき、干すとき、畳むとき。なにより、着ている間中、自分の体にあたっている面積が大きな色なわけです。 自分自身が色の影響を、実は一番うけるのが八掛なのかもしれません。 大島の真っ赤な裾除けを、緑にとりかえたとき、ふう、と安心したような気持ちになったものです。 一般的には若い頃作った着物も40~50歳くらいで、八掛の色を替えると、長く切られるようになると言います。確かに、真っ赤や、可愛いピンクはちょっと気恥ずかしくなってくるお年頃。もちろん、それが大好きで自分が気に入っていれば替える必要はないと思います。だいたい年をとってくると緑とか金茶とかね、すすめられますね。 逆に言うと、自分がめっちゃ好きな色、ラッキーカラーとかを使った着物を着たらテンションがあがりますよね。調和しやすいのは表地の柄の1色を選ぶやり方。反対色やビビットなものなどを持って来てもハッとするものになります。 「裏勝り」というのは、表地よりも派手な裏地をつけることを言います。江戸時代、奢侈禁止令が出されて贅沢で派手な着物がNGになったとき、町人たちは裏地に凝ったというところから生まれた言葉。羽織の裏や、八掛を派手にしておしゃれを楽しんだというものですが、面白い柄の八掛をつけたりしたらまさにおしゃれ上級者。 八掛は、素材も様々。やわらかものには精華やパレスといった生地を、紬には紬八掛を使いますが、すべりのよい薄めの生地であれば代用することもできます。薄目の襦袢地なども使うことができるでしょう。 仕立て替えのときには、八掛の色を染め変えることもできます。 礼装の共八掛には模様が染められたりもしていますが、カジュアルなものにつける八掛はだいたい無地の1色か、ぼかしです。ぼかしは、ふきで外に色が見える部分だけに色がついていて、あとはぼかして内側は白い色のままになっているもの。表地より濃い色の八掛を使うときなどはぼかしにします。 なかなか自分でこれ!という八掛を選ぶシーンも少ないかもしれませんが、普段からもしこの着物の八掛の色を変えるとしたら‥‥なんて、想像しておくといざというときに「これがやりたかった!」という夢が叶えられる気分が味わえるかもしれませんよ! これ、考え始めると、自分の着物だけじゃなくて道行く人の八掛が気になって仕方なくなる病になります(笑)はやいもので、もう来月から袷のシーズン。普段着ではまだまだ単衣を愛用される方も多いとは思いますが、素敵な着物姿の方を見かけたら八掛もチェック! じろじろ見すぎないように要注意ですが(笑)あとは、雑誌やドラマでもチェック! コロナで着物を着る機会も減ってしまいましたが、ぼちぼち街でも着物姿の方を見かけるようになってきましたね。なにも用事がなくても、たまには袖を通したいなと思える着物のオンシーズンがやってきます。ご自分の袷の着物の八掛チェックもぜひ。もし擦り切れていたりしたら、思い切って取り替えたりなんかしてもいいかもですよ!

フォーマル?カジュアル?紬の訪問着っていつ着るの?の巻

星わにこ
2020/06/17 00:00
 とうとう梅雨に入ってしまいましたねー。湿気のひどいこの季節は、きものをおいている部屋では除湿器を稼働しているわにこです。かなり効きますので、おすすめですよ!   さて、単衣の出番があまりないまま夏に突入してしまいそうな今日この頃ですが、先日「紬はジーンズのようなもの、フォーマルなものではないということだけど、訪問着はフォーマルなものだよね? 紬の訪問着ってどういうことなの?」と質問されました。  はい、私も着物初心者の頃、大変頭を悩ませた問題です。紬とは、そもそもなんでしょうか? 節の入った糸で織った先染めの織の着物で、普段着~ちょっとした外出着などに着用されます。やわらかものと呼ばれる後染めの絹の着物は、染めによって、小紋、色無地、付け下げ、訪問着などに別れて、それぞれ着用シーンがあります。  さて、そこでこれは?と思うのが「紬の訪問着」。素材は紬ですが、絵羽になっていて、訪問着の模様付けされています。織と染め、両方があります。特に織で訪問着にしようと思うと高度な技術が必要です。  私も、1枚持っていますけれど最初は「フォーマルではないと言われたのに、普段には華やかすぎる」というところで、悩んだものです。  結論からいくと、ザ☆フォーマルシーン、つまり第一礼装(女性なら、打掛、振袖、黒留袖)、準礼装(色留袖や紋付色無地)など紋付が望ましい場面などでは着用しないほうがいいと思われます。  ではどこで! となると、活躍するのがセミフォーマル(略礼装)シーン! パーティやお食事会、観劇など、しっかりお洒落をして行きたいシーン、個性を出したお洒落をしたいシーンなど。あんまり礼装っぽすぎるのもつまらない、と思うようなとき、セミフォーマルとして着やすいのではないでしょうか。  昔読んだ本で、林真理子の『着物の悦び』(1982年)に、きもの好きが集まるパーティに気合いをいれてザ☆礼装の訪問着で行ったら、皆さんが紬などよく見るとすごく高価!というような巧者な装いばかりで、浮いてしまったというエピソードがありましたが、確かに、式典などでの礼を尽くすフォーマルと自分や人を楽しませるセミフォーマルは、違うかも!とそのとき感じました。 洋服でも同じですよね。同じワンピースやスーツでも柔らかいイメージのものが好きな方とか、ハード系が好きな方とか、いろいろあると思います。着物だって、素材からそんな風に、好きなものは好き!と楽しめるとよいですよね。特に、普段着からちょとステップアップしてお洒落したい、なんてときにドンピシャなのが紬の訪問着ではないでしょうか。 ありきたりな訪問着や色無地に飽きたときにも、普段から着物を楽しまれる方にピッタリなのではないかなと思います。そして、色などにもよりますが、カッコイイ系が多いのも、紬の訪問着の特徴。柔らかい色使いでも、どこかキリっとした雰囲気があって、素敵です。 どちらかというと個性的、趣味性が高いお洒落もオッケーなセミフォーマルシーンやおでかけで活躍するもの。ここらへんが非常~にファジ~な存在なのですが、だがそれがいい。 ちなみに私の紬の訪問着は、友達との新年会とかホテルで会食とか、伝統芸能系の催しとかで活躍しています。着物好きさんにも「お☆やるね」とか「贅沢!」「本当に着物が好きなんだなあ~」などと思ってもらえるのがこの「紬の訪問着」かなと思います! 格や季節など、細かい決まり事がある着物の世界ですが、礼装としての役割以外でしたらやはりそこはファッション。自分らしさを大切に、好きなものを着たいですよね。 今はなかなかおでかけもままならぬ状態ですが、人は部屋着のみにて生くるものに非ず。着物の整理などをして、これはいつ着よう、あれはいつ着よう、あんなのも欲しい、こんなのも欲しいなんて考えるだけで結構楽しいものです。妄想をふくらませつつ、梅雨とコロナ渦を乗り切っていきたい今日この頃です。