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美妙巧緻の細工に惚れ惚れ!中野の歴史民俗資料館『櫛・簪・笄』展の巻

2026/10/07 00:00
10月に入って、朝晩はぐっと涼しくなりました。着物がいちばん気持ちよく着られる季節の到来ですね。ようやく袷(あわせ)の出番かと思うと、それだけでうれしくなります。そしてなんといっても、東京、やっと晴れました。こうなるとあちこち出かけたくなってしまいますよね。 そんな秋の日、ふと思い立って中野区立歴史民俗資料館へ行ってきました。開催中の「館蔵品展 櫛・簪・笄 ―身だしなみの美妙巧緻」が気になっていたのです。 髪飾りの展示と聞いて、ちょっと地味かな?と思っていたら、ところがどっこい。小さな一室の展示にもかかわらず、ぎっしり並んだ展示数に圧倒されます! 2024年に寄贈された約900点のコレクションから厳選した品々だそうです。 平安時代は髪を下ろしていたのが、江戸時代に結い上げるスタイルになると、櫛・簪(かんざし)・笄(こうがい)は一気に「見せるおしゃれ」となりました。素材も技法も増えて、種類が飛躍的に広がったそうです。髪は女の命とはよく言いますが、女性たちの髪を彩った素晴らしい細工から、その時代の職人さんの心意気が伝わってくるようでした。 明治以降は束髪や洋髪が広まり、デザインもぐっと洗練されていきます。髪型が変わると髪飾りも変わる。小さな工芸品に時代の空気が詰まっていて、いくら眺めていても飽きることがない……。 櫛には、髪を梳(くしけず)るもののほかに、日本髪の頭頂を飾る挿櫛(さしぐし)があります。これが本当に美しく、大きさや形、素材も様々で、手のひらに乗るほどの大きさの中に、小さな宇宙と言いたくなるような超絶細工の世界がひろがっています。べっ甲や螺鈿、蒔絵に水晶、金に銀、珊瑚に翡翠‥‥。これでもかという贅沢さにうっとりです。 形も様々な簪には、耳かきつきのものも。びらびら簪は歩くと揺れるので「歩揺(ほよう)」とも呼ばれるそうで、揺れる金具に乙女心が撃ち抜かれます。三味線の棹に招き猫が乗っているものもあり、あまりの可愛さにガン見してしまいました。つまみ簪もたまりませんよね。 日本髪の髷(まげ)に水平に挿す笄は、挿櫛とセットのものも多く、それも心が躍ります。髷の根元に掛ける「根掛け」も華やかです。展示にあるような髪飾り類は、普段使いではなく贅沢品だったのでしょう。そのほかにも化粧品なども並べられ、美しさと贅を競うまさに「美妙巧緻」の世界に、うっとりでした。 じっくりと眺めていると、この美しい飾りを身につけた女性たちの高揚感も感じられるような心持ちがして、気づけばケースの前で長居していました(よだれは垂らしてないと思います、多分)。 来場者にはオリジナル栞のプレゼントもあり、櫛・簪・笄の3種類から選べます。どれにするか悩みましたが、私は結局「櫛」にしました。また来ようかな。会期は10月25日(日)まで。なんと入館無料です。 さて、せっかく来たので、お隣の庭へも足をのばしました。11月3日(火・祝)まで、「山﨑家庭園・茶室」の特別公開中なのです。以前も見たことがあるのですが、久しぶりにお庭に足を踏み入れました。 山﨑家は、農業のかたわら質屋や醤油醸造も営んだ、江戸近郊でも有力な家柄。庭には空を覆うように『スダジイ』とよばれる椎の巨木がそびえています。茶室・書院は天保12年(1841)の建築で、炉は切られておらず、鷹狩りなどに幕府の役人が来た際にも立ち寄る場所だったとか。 建物は庭からの観覧になりますが、静かなお庭で、秋の空気を吸いながら眺めているだけで十分に贅沢。髪飾りが使われていた時代の暮らしの空気を、庭でもう少し味わった気分がしました。 以前、青梅にある「澤乃井櫛かんざし美術館」を訪れて、美しい日本の髪飾りにうっとりしたことを思い出しました。なかなかこんなにまとまった数を見られることはないと思うので、もしお出かけになれるようでしたらおすすめしたいです!! 実は今、還暦振袖で新日本髪を結いたいと思って髪を伸ばしている途中なのですが、展示を見てさらに気持ちが盛り上がってしまいました。 芸術の秋。ひとりでふらりと、好きなものをゆっくり眺めるのもいいなと思う休日でした。