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半幅帯「矢の字結び」と「吉弥結び」の違いの巻

星わにこ
2026/08/05 00:00
暑い時期は半幅で気楽に普段着物や浴衣を楽しみたい!けど、意外と半幅の帯結びってお太鼓みたいに形の正解がわかりづらいのでどうしていいかわからない~という方も多いのでは。 我々大人世代は文庫結びやリボン結びなど上に重心があるものよりも、少したれがあってぺたんこな矢の字結びなどのほうが好ましくもなってきます。アシンメトリーで視線も分散しますし、帯締めも使うしお尻もカバーしてくれるので、着付レッスンでもよくリクエストされる結び方です。 で、またよく聞かれるのが「矢の字結び」と「吉弥結び」、さらに「貝の口」「後見結び」の違いってなんですかというもの。 貝の口はたれがなく、男性の帯結びと同じくぎゅっと結ぶので帯締めをしなくても落ちません。でも、他の3つは帯を折り紙のように折って形をつくるので帯締めで抑えないと安定しないという違いがあります。 で、半幅帯におけるその3つの違いって何?という話なんですが、これがまた、よくわからないんですよね。矢の字と吉弥はたれの角度が違う?とか後見結びは右上に出る角が帯の全幅で、大きめ?とか、曖昧な印象しかなかったので、今回ネットや書籍で調べてみました。 AIは「矢の字のたれはまっすぐ、吉弥はななめ」とまとめていましたが、いやいや私の認識は矢の字のたれは斜めなんですが?と思い、両者をサーチしてみると、結び方動画なんかを見てもタレの角度は斜めとまっすぐで意外とばらばら。 最近よく出ている「貝の口、矢の字、吉弥の違い」という動画では、矢の字はたれを最初に作って残りで結び目を作っていく形式(たれがまっすぐ)、吉弥は結んだ時のあまりでたれを作る(だからななめ)とのこと。 自分が最初に習って矢の字だと思っていたものは、これだと吉弥結びということになる?と思い、色々調べてみたのですが、マジで混在していました。 私のぼんやり認識では「矢の字は貝の口にたれをつけたもの、吉弥は江戸時代の引き抜き結びの応用でたれを先に作るもの」と思っていたので、ぬぬぬ、と家中の着付け本を出してきてみたところ、見事に混在。私が着付を習い始めた平成初期の本では、この認識があっていました。 1992年『きものレッスン』(主婦と生活社)や1993年『定本着つけと帯結び百科』(講談社)、2007年笹島寿美先生の『笹島式決め技の極意 帯結び100選』(世界文化社)1997年綾秦節先生の『賢いきものの楽しみ方』(世界文化社)ではこの分類でした。 でも、2016年発行のオハラリエコ先生の『ふだん着物のらくらく結び 半幅帯と兵児帯』(世界文化社)ではこれが逆に。2018年の石田節子先生の『5分で結べる! 簡単らくらく 半幅帯のお洒落』(世界文化社)でも逆になっており、さらに吉弥結びと思われるものを「斜矢の字」として紹介されていました。手持ちの大久保信子先生の書籍には矢の字が紹介されておらず、どちらかは不明。 どうも2000年代にこのあたりの認識の逆転があったのではないかと推察。2000年代というとインターネットの発達や2004年に雑誌『七緒』の創刊がありましたから、そのあたりが大勢の転換点なのかなと思います。ちなみに動画で紹介されているわれらが銀座いち利の女将も2000年代以降、つまり21世紀方式(勝手に命名)です。 で、やはりなにが正解ということはなく、自分が「矢の字」と思ったら矢の字や、ということでいいのではないかなと思いました。私は古い人間なので、20世紀方式で「矢の字」って思っていますが間違いではないと。みんな違ってみんないい。 こんな時代の流れの背景をちょっと知っていると、豊かな気分になれますね。意外なところで時の移り変わりを感じたものであります。帯は世に連れ、世は帯に連れ……。 そもそもカジュアルなものなので、半幅帯は好きな形で「私のオリジナルよ~」くらいの気持ちで楽しめたらいい。「それは間違いよ!」と自分のものさしで図りすぎない寛容さが肝要かと。お後がよろしいようで。