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やっと着られた!紗袷でしあわせ~♪の巻

星わにこ
2024/06/26 00:00
紗袷とは、絽と紗、もしくは紗を二重(無双)に仕立てた着物のこと。透ける生地が二重になっているので、微妙なモワレ模様になり、また表側の生地はだいたい無地で裏側の生地に模様を描くことでそれが表地を通して透けて見えるのがとても美しい着物です。 長年憧れ続けてきたこの「紗袷」。以前もこんなコラムを書いたことがあります。 関連記事:いつかは欲しい!憧れの紗袷(しゃあわせ)の巻 戦後に新橋の芸者さんが5月末の「東をどり」の際に着てから流行したといあわれ、5月末から6月頭のほんの10日間ほどしか着ることができないとも言われます。 年に10日間しか着るチャンスがないなんて、すごくスペシャル感ありますよね。今では、5月末から6月、また9月の単衣の時期には着用OKじゃない?と言われていて、秋の柄の紗袷もあります。 生地もさることながら、縫製もとても難しく、縫える和裁師さんも減っているそうです。いつかは着てみたいと思いつつ、お値段もですが着用期間の短かい贅沢な着物であることも相まって指をくわえてみているだけだったのですが、昨年リサイクルで自分のサイズピッタリのものを見つけ、えいやー!と購入してしまいました。 透ける裏地の絵柄が柳葉の模様で、表地にはドロンワーク(織糸を束ねたりして穴を作り透けた模様を作る刺繍の技法)で水玉があらわされていて、葉っぱの上を水滴が転がる様な、なんとも可愛らしい意匠にも一目惚れ。 あまりに好みすぎて、買った時点で満足しすぎてしまい、大事に仕舞い込んでいました。今年は東をどりを観に行ったのですが、そこでまさに紗袷を着ている方をお見かけし「ここに!!着てくるべきだった!!」と気付いたけれど後の祭り。その後もなかなか着る機会がなく6月も終わりに近づいて‥‥となったとき、着る機会が訪れたのです。 昨年から、元気が出るお金相談所の安田まゆみ先生に監修いただいたり、先生の著書にマンガを書かせてもらったりとご一緒させていただいた本が3冊。いずれもなんだかばたばたしてしまい、打ち上げもしてなかったのですが、みかねた共通の友人の片付けコンサルタントのさかもとりえさんが「出版祝いをやりましょう!」とセッティングしてくれたのです。 りえさんは、拙著『関連記事:もめないための相続前対策』でも着物の収納のアドバイスをしてくれた頼れるお片付けのプロ。私に安田先生を紹介してくれた恩人でもあります。今回は5月に出た本『もめないための相続前対策』にこんなブログも書いてくれました。 全然着物とは関係ないんですけど、今後相続に関係ある人は知識として持っていたほうがいい情報が詰まった本です。私はマンガを担当させていただいて、いろいろ考えさせられました……。 そして、その出版のお祝いということで、銀座のアルマーニのレストランでシャンパンでアペリティフ‥‥という「ここで紗袷を着ないでいつ着るの?」という素敵シチュエーション。ですよね? ですよね? 暑いけど、夕方からだったのでなんとかがんばって着て行きました。 素敵なお二人と、素敵なお祝いの会。この間までの私だったら「暑いから……」とか言い出しそうでしたが、東をどりのときに「これからの人生、着物を着る機会は有限。機会を逃したらもう次はないかもしれない」と強く思ったのです。 そしていつも着物はそれを着た時のことを記憶するアルバムみたいなもの、と言っているのですが、まさに「紗袷でしあわせ」な記憶を残すことができました。あの時、これを着ていたな、というのはいつまで経っても忘れないものですよね。しあわせなデビューができた紗袷の着物、また素敵な機会が巡ってくること(6月か9月でなんとか単衣が着られる気温の時という限定条件有)を願って‥‥。 紗袷に絽の帯、スッキリと帯揚げなし 6月なので真珠の帯留で 暑いの面倒だの言わないで、せっかく持っている着物は、箪笥から出して活躍させてあげたいなと思ったことでした。

着物リメイクで贅沢なシルクのふんどし!?の巻

星わにこ
2024/06/19 00:00
またちょっと断捨離ブームがやってきて、年初からいろいろなものを処分しています。過去いろいろ着物のリメイクにチャレンジしたこともあった私ですが、最近はもう針に糸を通すのも一苦労で、全然重い腰があがりません。なので、反物を切るだけでなにかに使えないか考えたりしています。 関連記事:浴衣地をバスタオルがわりにしたらよかったの巻 友人が「いらない着物があったらリメイク材料に欲しい」と声をかけてくれたので、ほいほいもらってもらったのですが‥‥。そのうちの古い正絹の胴裏が、なんとこのたび「ふんどし」に生まれ変わって私のところに戻ってきました!!! ふんどしにハマっているという友人、「笑えるくらい、純白で花嫁っぽいのよ~!」と送ってくれたのですが、開けてびっくり。ふんどしなのに、正絹で光沢もあるから、そして白いから、本当に花嫁衣装みたいなんです(爆笑) シルクのゴージャスさは、ふんどしになっても失われないのですね。すごいです。 ふんどしといっても、1メートルくらいの布を巻き込んで使う越中ふんどし型ではなく、ウエスト部分がゴムが入っていて、その輪っかを布がゆるやかに繋いでいるいわゆる「もっこふんどし」型。 もっこふんどしは、パンツとおなじように履けばいいのでとてもらくちんです。本来のもっこふんどしは、紐で結ぶのですが、いただいたものはゴム式だったので、まさにパンツ感覚。 で、パンツと何が違うかというとピッタリ密着しないので、すーすーします。以前、たかはしきもの工房の綿テコ(パンツなしで装着)を試したとき感じたあの解放感。あの解放感が蘇りました! 最初は心許ないかなと思ったのですが、暑くなってきた今日このごろ、とにかくムレないので、とても快適です。これはやみつきになるかも‥‥。 調べてみると2010年台からこの女子ふんどし愛用者が増えているそう。日経クロストレンドには2016年に「“ふんどし女子”が急増中?ハマる理由はこれだった!」という記事もありました。ふんどし専門店もありますし、Youtubeにはふんどしの作り方動画もたくさんありました。 日中履くのに抵抗がある場合でも、夜だけでも、しめつけから開放されることで冷えやむくみが改善され、体によいという説も。鼠蹊部の締め付けがないので、リンパも流れやすいのだとか。 しかも今回作っていただいたふんどし、なんと正絹でございます! シルクでございます奥様。光沢、肌触りも素晴らしく、熱伝導率が低いので夏涼しく冬あたたかい。通気性もよく人間の肌の成分に近い素材で、静電気がおこりにくく、お肌にとても優しい高級素材です。 そういえば昔、バブルのころ、シルクのパジャマをもらって大事にきてたな~!なんて思い出しました。もったいないと仕舞っておいて使わずに終わるくらいなら、どんどん活用したらいいですよね。 身につける度に正絹の肌触りのよさがダイレクトに感じられる肌着にリメイクは、とってもいいかも!と思いました。まさに御蚕纏(おかいこぐるみ)の言葉そのままになれちゃいます(笑)。気になった方は、ぜひお試しください!

なんと連載コラム12年目突入ありがとうございます!の巻

星わにこ
2024/06/12 00:00
風が吹こうが雨が降ろうが、担当さんに「まだですか?」とお尻をたたいてもらいつつ毎週毎週書いているこのコラムですが、前回でなんと12年目に突入しました。2013年6月に、いち利モールのイベントに参加したのがきっかけで前代担当者さんにお声をかけていただき始まったこのコラム。まさかこんなに長い間続けさせてもらえるとは誰が思ったでしょうか。 12年といえば干支も一周。当時生後二ヶ月だった子猫も今や11歳のシニア目前。小学生だった子どもも大学生になりました。アラフォーだった私ももう還暦が視野に入ってまいりました(白目)。 これは一体誰かの役に立ったりするものだろうか‥‥と思いながら、着物のお話(主に自分の失敗談)を書いてきたわけですが、何度か忌引き病欠はさみつつ、こんなに続けられたのもひとえにメルマガの素敵な一言コピーを見て、ポチッと読みにきてくださる読者の皆様と、ギリギリ原稿を神アシストでアップしてくださるイケメン担当さんのおかげでございます。 制作裏話となりますが、初めは手書きでペン入れした原稿にパソコン(フォトショップ)で色をつけていました。途中でクリップスタジオというペイントソフトを導入し、全部デジタル制作に。2021年からはiPadでずっと描いていて、iPadではコラム+コミックエッセイ2冊と実用書のコミック漫画を2冊分描きました。表面に貼った書き味がよくなる保護シートが削れてぼこぼこになり、ついに先日Apple Pencilが昇天してしまいました。 そこで憧れの液晶タブレットを購入したのですが、まだいまいち使いこなせず、手書きにパソコンで色付けという原点回帰を起こしています(爆)ペンタッチが変わったら「やっと使いこなせるようになったわね」と暖かい目で見ていただけたら嬉しいです。いまのところ液タブはサブモニターになっております(爆)。 へっぽこワンパターンイラスト(自覚あり)で本当に恐縮なのですが、見てくださった皆様に少しでもわかりやすくお伝えできたらいいなと、自分なりに努力を忘れず、精進してまいりますので、今後ともご愛顧いただけると幸いです。 そんなコラムをせっかくなので思い出深いものを駆け足で振り返ってみたいと思います。1年に1本振り返っても11本(驚)。お時間ありましたら読んでくださいませ。 ●(2013)着物イベントでキモトモを作っちゃおう!の巻 私がこのコラムをはじめるきっかけになった着物イベントのお話です ●(2014)わにこの女優体験記★「細雪」エキストラに出演しちゃいましたの巻 なんと!あの名作「細雪」で明治座の舞台に立ったわにこ!オーディション体験記もあります。 ●(2015)憧れの!十二単体験しちゃいました★の巻 今年は大河ドラマで話題の装束。貴重な経験をさせていただきました。 ●(2016)見やすくコンパクトに収納☆名古屋帯のくるくる巻畳みの巻 これで名古屋帯をどう畳むか問題から解放されました! ●(2017)おでかけイベント、着物で観劇♪明治座「細雪」に行ってきました!の巻 なんと!イベントで一緒に皆様とおでかけさせていただきました。後に出演者さんにお話を聞いたら、2階席最前列にずらりと並ぶ着物姿のわたしたちを見て帯揚げとか直してから舞台に出たとおっしゃってました(笑) ●(2018)国王陛下謁見は訪問着で!?の巻 この年は映画「バーフバリ」にどハマりしていました(笑) ●(2019)還暦で着る大人振袖☆東京キモノショー2019の巻 年をとるのは素敵なことですと思った「大人振袖」 ●(2020)超簡単。清潔な晒(さらし)でつくる縫わないマスクの巻 コラム史上一番アクセスがあったそう。コロナ禍、いろいろ必死でした。 ●(2021)因(ちな)み柄と推し着物というジャンルの巻 推し着物も、着物の楽しみのひとつ! ●(2022)出版記念パーティをしてもらったぞ★の巻 なんと10年ぶりの本が出ました! パーティもしてもらえて生きててよかった(爆) ●(2023)夏は帯揚げなくてもいいのかも……の巻 帯揚げなし着付けにハマった発端です。 ●(2024)卒業式。着物の母の気持ちの巻 子供の卒業式での大事件。そんなに言われること?と本人は曰ってましたが、言われるでしょうよ。 「きもの熱」で突っ走っていた12年前から、振り返るといろんなことがありました。いろんな方との出会いもあり、またもう会えない人もいます。自分もいつまでも生きているわけではないなと実感する人生後半戦に。 健康に気をつけて、着物をゆるゆる楽しみつつ、コラムのネタ探しも続けていきたいと思います。今後ともお付き合いいただけると幸いです。皆様も、どうぞ健康第一!でオトナの着物生活を楽しんでくださいね! <ちょっと宣伝です> 6月18日(火)13時~、八王子のよみうりカルチャーさんで思い出のお着物 整理・処分術という公開講座をいたします。平日ですが、着物の整理は心の整理。大切な着物の行先を一緒に考えましょう~~!という講座です。まだお申し込み受付中です。もしよろしければいらしてください!

お出かけ先でお太鼓が落ちた!救世主は結束テープ!?の巻

星わにこ
2024/06/05 00:00
今週は、国立能楽堂にキモトモと定例公演を見に行きました。お庭の青紅葉と紫陽花が目に美しく‥‥というレポートを書く予定だったのですが、行く道すがらに電車の中で帯締めが解けてお太鼓が落ちる(人生初)という大事件が発生したため急遽そちらをお届けしたいと思います‥‥。 ことの発端は、一緒にいくキモトモがいつもいつも素敵な帯留めをしているので、私もしてみんとせんと思ったのが始まりでした。6月だからアンティークの若鮎の帯留めをと考えたのです。3分紐とセットになっているもので、この季節にぴったりじゃん(鼻息)と。 あまり帯留めをしないので、こちらも初使い。帯を結んでさあ帯締め、となったときですね、帯留めが帯締めに固定タイプだったんですが、帯締め自体が金具で止める方式で、長さ固定。しかも‥‥‥長さが足りない!! 私の胴回りに対して圧倒的貧弱さ!!貧弱貧弱ゥ(責任転嫁) 前日見ておけば‥‥という後悔は先に立たず、迫る出発時間。これはなんか紐を足すしかないと細めの真田紐を切って結んで、なんとか胴回りに間に合わせたのですが‥‥。 電車の中でちょっと帯締めが緩いかもしれん……と触った瞬間、ばらんと解けましたね、帯締めが! 無論、お太鼓も落ちましたね(白目) こんな日に限って、羽織も仮紐も持ってきてない。大丈夫だなんて、うっかり信じたら……だめだめだめだめだめよ!と頭の中のピンクレディーがSOSを踊りはじめましたね。 立っている人もそこそこいる電車内で、こそこそっとお太鼓の形を戻して、帯締めを結び直してですね、大きめショールを羽織って、ランチ待ち合わせの駅で降りて、目の前のドンキホーテに飛び込みましたね。 帯締めが不安な今、仮紐でお太鼓を抑える方式でお太鼓を固定するしかないと考え、紐を探す我(57)。 参考記事:短い帯は隠し仮紐で固定できるぞ。の巻 黒いゴム紐なんかがあるとベストだったんですけど、お店のお姉さんに聞いたら、ないですとのこと。時間もないので店内でなんとかするべし!と見渡して、梱包用の紐とハサミでなんとかするかと売り場を見渡すと、なんかよさげなものが‥‥。 じゃーん!「長さを調節できるバックルつき 結束テープ!!」これだ!! 結束テープのおかげで、なんとかお太鼓の平和が1日保たれました。(1メートルの長さがあれば余裕やろ!と思っていたけど、結構ぎりぎりでダイエットと誓いなおした私です) 別に結束テープじゃなくてもいいんですけど、なんでも使えるってことですよね‥‥。樹木希林さんが、帯締めを忘れてホテルの湯沸しポットのコードを代わりに使ったという有名なエピソードがありますよね。並べるのもおこがましいですが、困ったときには人間いろいろ考えつくものですね。 キモトモからは「お太鼓が落ちた!10分遅れます」とメッセージが入ったりして、お太鼓落ちるデー(なにそれ)だったのかも。 まあそんなこんなありつつも無事、美味しいランチもいただけて、観能も叶いました。定例公演は狂言の「地蔵舞」と能「水無月祓」。座席で見られる字幕に助けられつつ、安らぎの周波に気をちょこちょこ失いつつ、堪能いたしました。キモトモもリアルなかたつむりの帯留めで、とっても素敵でした。いつもセンスがいいわあ。。 私のコーデは、渋めがテーマ。塩沢の単衣に茶の八寸帯、帯揚げなし。そして欲張って大きいのを選びすぎた山葡萄のカゴバックでございました。 そして正直ですね、着物でのおでかけも慣れっこだよってどこかで慢心してたんでしょうね‥‥。やっぱり前日ちゃんと準備することの大切さを思い知った事件でございました。 終わってみれば、天気もよくとても穏やかなよい午後で、普段のバタバタ(と直前のトラブルw)から開放された時間となりました。心のお洗濯、大切。ほんと、余裕を持って暮らしたいものです(自省)。

「東をどり」で花柳界の華やかな踊りを堪能しましたの巻

星わにこ
2024/05/29 00:00
新橋演舞場で5月に開催される「東をどり」。新ばし芸者、江戸の粋、日本の綺麗……普段は一見お断りと閉ざす花柳界の門。年一度の東をどりにその扉が開きます。 というなんとも魅力的なコピー。着物好きなら一度は見てみたい、芸妓さんたちの美しい踊りと衣装。私も憧れを抱きながらもなかなか機会に恵まれなかったところ、ご縁をいただいて初めて観ることができました。 九十九回目を迎える今回は「白花繚乱」。百から一を引いて「白」ということで、踊りの演目も白にちなんだものがずらり。白扇、白酒売、白波、白髪、白糸、白百合、白雪、白藤……それを美しい白塗りの芸者さんたちが艶やかに舞う舞台。 なんと今回、4列目というお席だったため、芸者さん、歌に踊り、そして衣装とその美しさに圧倒されてしまいました。 そして幕間はロビーが出張料亭に。普段芸者さんたちがお座敷で呼ばれる一流料亭がずらりです。日本三大料亭と言われる東京吉兆・新喜楽・金田中。そして松山・米村・わのふと、普段であればなかなか味わうことのできない料亭のお料理を味わうチャンス。 事前に予約をすればお弁当も食べられますし、ロビーで升酒、ビール、ドンペリニヨンなどいただきながら、6つの料亭の酒肴や卵焼きの食べ比べなども楽しめちゃいます! お亭茶席もあり、お茶を一緒に習っていたキモトモ(着物友達)と四人で出かけたので、そちらにお邪魔してきました。 初日でしたので、東京吉兆のご主人の御点前を拝見しながら、美味しいお茶とお菓子をいただきました。表千家ということで扇面立礼卓でのお点前、お道具もすばらしく、お菓子は青梅、主茶碗は青紅葉、お軸も13代即中斎宗匠の「青葉」。わいわいと賑やかな中で、楽しませていただきました。 そこで幕間はタイムアウトになってしまったので、次はお酒コーナーも覗いてみたいです。なんだかすっごく楽しそう! 料亭の女将さんたちは、ロビーで揃いの流水に千鳥の柄の一つ紋の色留袖でお出迎え。こちらもとても目に涼やかで、控えめなのに華やかで流石~とうっとりでした。 お客さんたちの装いも着物の方が多く、男性の着物姿もちらほらといらして、 とーっても目の保養になりました。 5月ですが29度の予報が出ていたので、みんな単衣で。私はセオアルファで出かけました。本当に華やいだ空間だったので、もっと華やかな装いで楽しんでもよかったかも! 古典柄の訪問着と御所解の帯の友人の装いがピッタリきていた感じがしました。少しクラシックな装いのほうが似合う場所かもしれません。 敷居が高い高いと思っていましたが、チケットも2000円からと意外とリーズナブルに公演を見ることができます。目の保養、そして魅力的な料亭のお料理……。来年は記念すべき100回目とのこと、皆様も足を運ばれてはいかがでしょうか。着物でがっつりおしゃれして出かけられるいい機会でもありますよ。私もまた行きたい! と思った素敵な経験でした。

その着物、どうする?着物の整理は心の整理 の巻

星わにこ
2024/05/22 00:00
前回、着物の処分を考える時売れないと思ったほうがいいというお話をしました。じゃあ、どうしたらいいの?というお話なんですが、着物を欲しいという方ももちろんいます。そういう方のところに届けるには、安くても買い取ってくれる業者さんに売るか、メルカリやフリマなどで自分で売るか、などの選択肢もあります。そこは自分の手間とこだわりと価値観で決めるしかありません。 今回は売る以外の選択肢も考えてみましょう。 譲る、寄付、リメイク、古布に出す、捨てる。いろいろありますが、とにかくどれも手間も時間も熱量もかかります。もちろん捨てるのが一番手間がかかりませんが、その心の痛み方といったら。 でも、ちょっと考えてみて欲しいのです。どうしてその着物を手放すのか。 今の自分に必要ないからですよね。だったら、自分の楽な方法を選べばいいと思います。今大事にしたいのは、「お母様の着物」「若い頃の着物」ですか? 「これからの自分」ですか?  私も、ずっと母に作ってもらった嫁入り着物を捨てられずに可愛いピンクの鮫小紋を大事にしていました。でも、先日箪笥をあけてみたら、なんと!全体にシミが浮いていたんです~(涙)。若い頃、小雨のお茶会に着て行った時の雨シミかもしれません。10年ほど前に着たときにはそんなシミはみあたらなかったので、何十年も経って現れたのか手入れが悪かったのか‥‥。 そいういう目でみてみると、若い頃の着物は自分では「新しくていいもの」と思っていたけど、立派に30年とかを経た古い着物になっていました。 これが年をとるということなのか‥‥なんてしばし呆然。ほんと、自分自身もいつまでも若いつもりでもそうじゃないんだな~と実感する出来事でした。 色柄が好みじゃなくて、でもせっかく作ってもらったからとずっと箪笥に入れていた着物や、50代では着れないな~とか今の好みじゃないな~というものは思い切って手放すことに。自分が今着るか!着ないか! で選びました。 仕事で着物を着るサイズが同じ若い方に差し上げたり、リメイクをしたいというおお友達に差し上げたり、あとはリサイクルショップにひきとってもらったり、古布回収に出したりしました。断腸の思いもありましたが、人生の宿題をひとつ片付けたみたいで、ものすごーくすっきりしました! もちろんシミが出たものも、染め直したりすれば使えるんですが、そこまでお金をかけてまた着るか?というと、その分で新しい着物が欲しいな‥‥と思ったり(また買うんかーい) 着物も衣類、ファッションと考えると、もったいないから着るのではなくその時の自分がしっくりくるもの、着たいものを着たいですよね。礼装はまたちょっと別の話ですけど、どちらにしても、自分が大切にできる範囲の数で、今着たいものを楽しむほうがいいと思うようになりました。 そして手放したものについては、執着しない! これが一番大事かも。 人生明らかな後半戦というか残りが少なくなってきた(笑)これからの時間を大事にするために。こだわりを捨てて、今自分が着たいものを着る。着物も洋服も同じようにしていきたい。 そして、自分の気持ちが一番すっきりする方法を選んでほしいんです。着物を処分したくなければ、持っていたらいいと思います。大事なものだから自分で着る、使うのが一番いいですよね! 手放したほうがいいと思ったら手放せばいい。やっぱりそれは、人がどうこう言うからではなく、自分が決めることなんだと思います。自分の人生だもの! そして購入するときも「今、自分が着たい」ものを選ぶのが一番。残りの人生はお気に入りのものに囲まれて過ごしたいな~、とまだまだ片付けなくてはいけない様々なモノの山を見ながら思うのでありました。 <ちょっと宣伝です> 6月18日、八王子のよみうりカルチャーさんで思い出のお着物 整理・処分術という公開講座をいたします。 着物の整理は心の整理。大切な着物の行先を一緒に考えましょう~~!という講座です。お悩みの方はぜひ!

着物の「価値」は自分軸で決める の巻

星わにこ
2024/05/15 00:00
『その着物、どうする?』という本を書いたこともあってか、よく着物の処分については相談を受けます。先日、着物の処分に困っている人がいるんだけど、どこか買い取ってくれるいいところはありませんかという相談を受けました。私自身は、実は買取をしてもらったことはありません。差し上げたり寄付したりすることがほとんどで、どうしようもないものは古布回収に出しています。 ちょっと今回はしょんぼりな話になってしまうのですが、昭和ピープルは「着物は高価なもの」と思っています。確かに、買う時は高価ですが、昔と違ってみんなが着物を着るわけではなく、またファストファッション全盛の現代、売る時には値段がつかないと思ったほうが間違いありません。 最近の若い人は、流行の服を着るために購入するときに「リセールバリュー」を大事にする人が増えているそう。飽きたらメルカリなどで売って、また新しいものを購入する。そのとき、高く売れるものを選んだり、手入れもきちんとして、その洋服の価値が下がらないようにするんだそうです。物価がどんどん上がっている今、リサイクルの衣類も需要があるし、賢いですよね。 そういう観点で見てみると、着物は圧倒的に手放したい人は多いけど、欲しい人が超少ない市場です。リセールバリューは、ほぼないジャンルと言っていいでしょう。 だから買取業者さんも高くは買ってくれません。「えっ!買ったときはすごく高かったと聞いていたのに、買取金額はこれっぽっち?」ということがほとんどです。 そして、どこの家の箪笥にも入っている喪服や普段着のウール着物などは、買取もしてもらえません。寄付も断られることが多いです。中古の喪服やウール着物は数も多すぎて需要がないのです。あと、サイズが小さい着物や色柄が流行とかけ離れていたり状態が悪かったりしても難しいです。 だれかに差し上げるときも、同じです。欲しいという人のほうが圧倒的に少ないので、もし欲しいという人がいたら本当にラッキーだと思います。 買取のことを聞かれたときには「買取金額は期待しないで、持っていってもらえてだれか着る人のところに渡ればいいと思えれば」とお伝えしています。 「あんなに大事にしていたものなのに、価値がないの?」と悲しくなってしまう可能性があれば、もらってくれる人を探すか気持ちよく寄付するか、「もうこの着物のお役目は終わった」と思って、洋服と同じように処分する方法を考えてみるほうがよいでしょう。 着物に限らずものの価値は、自分軸で考えると楽になります。いくらいいものでも、自分にとって必要なければそれは不用品なのです。自分はいらないのに、「もったいない」「高く売れるかも」「何かに使えるかも」「思い出の品だから」と手放さないでいると、際限がありません。 自分が不要と思ったら、手放す勇気も必要です。そのときは、潔くさようならすると、意外とスッキリしますよ! 決められない!というときは、一人じゃなく、誰かと一緒にやるのがおすすめ。 着物じゃないですが、実家にある大量の昔の写真アルバムの処分を考えあぐねていましたが、先日実家の法事で集まった親戚にアルバムを見てもらい、とっておきたい写真だけはがしたりスマホで撮影したりして、それで供養としてあとは全部処分することにしました。思い出話に花が咲いたし、とってもすっきりしました。 といいつつ、昨日お友達の着物整理を手伝いにいって、いらないという着物をいただいてきたり、その帰りに古本屋さんで面白そうな本を買ってきてしまった私ですが(汗)、その時その時、自分に必要なものを手元に置いて、「自分が」不要になったら処分する、という暮らしが理想。……理想です。大事なことなので2回言いました……。 自分ができることは限られていて、活かせる範囲のものしか活かせない。手にあまるものを手放して、数を減らしたほうが一つ一つのものを大切にできる。残して死んだら全部ゴミだと思うと、自分で処理したほうがいいなとも思います。 着物も、そんな「もの」のひとつです。思い入れが強くなりがちですが、自分の気持ちと相談して、ただ無闇に「大事なもの」と思い込まず、自分が本当にそれを好きか、とっておきたいか、必要かどうかという視点が大事なのかもしれないなと思う今日この頃です。

帯揚げってやっぱり必要だった? の巻

星わにこ
2024/05/08 00:00
ゴールデンウイーク、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか? 私は前半仕事で中盤休み、後半また仕事でありました。中盤でしっかりと休めたのでかなり復活しました。人間お休みって大事ですよね。。。 4月末は仕事も含め着物の日が多かったのですが、なかなか気温が高い日が多く、もうずっと単衣でした。1日だけ、雨模様で涼しいかなと思ったのですが、湿気があったせいかもう滝汗。4月後半からは単衣しか勝たんと実感しました。 毎日着物を着ていると、ちょっとでも楽をしたいという気持ちが強くなってきます。ただでさえうそつき衿でらくちん着付けをしている私ですが、去年の夏に帯揚げをしなかったことが楽だったのに味をしめて、2日ほど連続で帯揚げをしないで名古屋帯で出かけてみました。 関連記事:夏は帯揚げなくてもいいのかも……の巻 帯揚げは、もともと江戸末期にお太鼓結びができたときに、帯枕を隠す装飾として発生したものと言われています。銀座結びなどをするときに、山をキープする役割を果たしたりもしますが(これも帯枕や仮紐を使う場合もあり)基本、飾りであり、これがないと着物が着られないというパーツではありません。とはいいつつ、帯枕をくるんだ白いガーゼや紐は見せたくない!ための必需品でした。 でも、たかはしきもの工房の帯枕、空芯才crowは帯枕と枕紐がドッキングしていて、さらに色がチャコールグレーで、たとえ脇から見えたとしても「枕紐が見えちゃってる~!」というかんじにはなりません。 なので、帯揚げを省略しておでかけをしてもわからないってコト。なにしろ、帯揚げをしないとなると、着付け時間がゆうに2,3分は短縮できますからね!! そして、胴に巻く布が1枚減るわけなので、涼しいです。 着付けに使う紐は1本でも減らした方が楽、と常々思っているのでこれはいいやとばかりに、伊達締めもしなーい、帯揚げもしなーい、らくちーん!とご満悦だったのですが‥‥‥ 上半身が着崩れがちになってしまったのです。 やっぱり、減らしすぎると、だめなのかも‥‥。 ウールや木綿などあまりすべらない普段着だといいかもしれませんが、やわらかものや、滑りやすいセオアルファなどはどうしても布がすべって動いてしまいます。また、袷だとある程度落ち着きますが、単衣だと着崩れしやすいようです。 あきらめて(?)帯揚げをしてみると、帯の上部の空間がうまく埋まって、いい緩衝材というかストッパーにもなって、着物の上半身を安定させているんだな~と改めて感じました。ただの飾りだけじゃなかった。 でも、しなければやはり楽なので(まだ言ってる)、おしゃれより楽を優先したいときは、伊達締めは省略しないで帯揚げ省略とか、工夫をして帯揚げなし着付けを研究してみたいです。別に帯揚げが嫌いなわけじゃないんですけどね! これからどんどん蒸し蒸し暑くなる一方ですから、普段着物を楽に綺麗に着る方法を実験してまたお伝えできればなと思っております。皆様もこれいいよ!な工夫かありましたら、教えてくださいね!

「着物に自転車」は着付けクリップで! の巻

星わにこ
2024/04/24 00:00
着物を着たって、自転車に乗りたいときはありますよね。そりゃあ着物を着たら、日傘をさして楚々と歩きたいとこなんですが、急いで移動したいときもあります。 約束の時間にまにあわなーい!なんてときはもう、自転車頼りの私です。目安として自転車で10分以上かかるようなところに移動するときは、エプロンやもんぺ、サルエルパンツなどを着るんですが、もう駅まで急いで5分で行きたい!なんてときには、もんぺをはく時間ももったいない! そこで登場するのが、着付けクリップ~~~~(青い猫の声で) 着物の裾、上前をめくって下前とあわせて膝の少し下で止めるだけ。これで裾がばっと捲れなくなるので、襦袢や裾除けばかりか足もにょっきり見えちゃって‥‥なんてことがなくなります。 上すぎると裾がはだけやすいし、下すぎるとクリップがぶらぶらして邪魔に。自分が ちょうどいい場所を探してください! フルレングスのコートを着ているときには、一番上のコートをとめればよし。 着物自転車暦20ん年、これは重宝技です。あんまり勢いよく足をあげるとクリップが外れることもありますが()、上前か下前どっちかにはついていて、クリップを落としてしまったということもありません。 まあ見た目はそうはよろしくもないけど、とにかく一瞬で用意ができ、目的地についたら一瞬で外せるところがいいところ。時々外すのを忘れてクリップをぶらぶらさせながら買い物をしたりしているのは内緒です。。 私は幸い特に問題なく乗っていますが、大切な着物だと痛めてしまったり、自転車の汚れが裾についてしまったり、などなど気になるときはやめておきましょう。 あと、自転車はまたぐ部分が低い、フレームがカーブしている低床タイプがおすすめ!! ロードバイクなんかはさすがに乗れませんので悪しからず(笑) でも、まだ私が学生だった頃、近くのお寿司やさんの女将さんがいつも着物に割烹着、下駄でちゃっ!と自転車にのっていらしたんですよね~。フレームがまっすぐの普通の自転車だったと思います。漕ぐときに白い足袋と足首がまぶしくて、かっこいいななんて思った記憶があります。なんか達人になるとそんなクリップもいらんのかもしれません。着物も短めに着付けてらしたのかな~。秘訣を伺ってみたかった(笑) 私はこんなふうにしてます!なんて素敵アイデアがあったら、ぜひ教えてくださいね! 

着物をゆるりと着るか、ピタッと着るか の巻

星わにこ
2024/04/17 00:00
先日、写真スタジオで3年ぶりに同じ着物を同じお客様に着付けるというお仕事をしました。あまり自分では変化がないと思っていたのですが、写真を見てびっくり。今回のほうがしゃきっと、着物が綺麗に見えるような気がするのです。 全体のシルエットもそんなに変わらないし、帯揚げや帯締めの処理、衿の合わせ具合も前回がとくにだめというわけではない。でも、全体がシャープに美しくなったような‥‥。 この3年間で私の意識が変わったことというと、「着物で体を支えるように、ピタッと着る、着付ける」ということ。これは、補整を通じて学んだことなのですが、やはりふわっとゆるっと着ると、ゆるふわ~なシルエットになるのです。何を当たり前のことをと言われると思うのですが、以前の私はゆるゆるとまではいわなくても、そんなにピターっと体を包むようには着物を着てなかったんですね。着付も然り。 でも、年齢を重ねて体のラインも崩れてきて、たかはしきもの工房の腰スッキリパットスキニーと満点ガードル裾除けで「骨盤を立てる」補整を体験し、着物や肌着も、体をラッピングして「布で体を支える」という感覚がある、ということを知ったのです。 着物は本来、そういう部分があって、昔のおパンツ「湯文字」も骨盤を立てますし、腰紐を腰骨あたりでキュッと絞めると習ったのも、そういうことかと思います。 そして何より、襦袢や着物自体の布の「面」できゅっと引き締め、体を支えるという気持ちよさ。 着付けレッスンで生徒さんに、腰回りは着物の面で支えるようにピタッと着てください、と実際の引き締め感を体感していただくと「ええっ!!こんなに!!」と驚かれます。お尻のラインが見えちゃう、破れちゃう?と心配される方もいますが、安心してください。動いているうちに自然とゆるむのでそこまで窮屈にはなりません。 体も心地よいのですが、着物もピン!と張られて余計なシワが入らないと、絹糸の輝きが見えてきます。ただふわっと着物を置いたときと、手で撫でつけてピンと張った状態にしたときを比べてみてください。後者のほうが、生地が美しく見えるような気がしませんか? それを体の上でも行うと、とってもキレイに見えます。 礼装はきちっと体に沿わせて、張って着ると美しい。それには補整を適宜入れることが大事。言われたままにやってきたけれど、礼装着付けで、ずっと行われていることには意味があるんだな~~とやっとわかった着付けのお仕事を始めて7年目の春でした。 普段着をゆるりと楽に着るときも、腰回りの要所はピッと支えると心地よいですよね。着心地や着姿に関しては、好みもあると思うので絶対というわけではありませんが、「ゆるり」と「ピタッ」という選択肢を知った上で自分はこっちがいいなと思うほうを選ぶといいのではないでしょうか。 もし私のようにピタッと着付けの感覚を未体験の方がいたら一度試してみてほしいです~。新しい世界が開けるかも!

短い帯は前を一巻きにすればいける! の巻

星わにこ
2024/04/10 00:00
遅めの桜満開で、久しぶりに入学式の桜が見られたところも多いのではないでしょうか。私の思い出の中でも、東京の大学に進学してきた時には入学式に桜が咲いていました。岐阜の山育ちで、白っぽい山桜がぽつぽつとあちこちで咲いているところしか見たことのなかった私にはソメイヨシノの桜並木が衝撃でした。 「これは花の下で死にたいし※1、死体も埋まっている※2!」と、今まで文字の上でしか知らなかったその気持ちが理解できたのでした。 そして今年は子どもの大学の入学式だったのですが、桜は咲いていたけれど見事な雨(涙)。ふさわしい洋服を持っていない私は、レインコートで着物を着ていきましたが、さすがに他には着物の保護者の方はおらず‥‥ちょっとウインドブレーカー気分を味わいました(違)。 そして皆さん安心してください、子どもはスーツでした!! 去年亡くなったおじいちゃんの腕時計をして出席しました。 入学式の母コーディネートですが、雨に強い大島紬の桜の訪問着に、祖母の丸帯を名古屋帯に仕立て直したものにしました。身内のものを身につけて一緒にお祝いしてもらいたいなという気持ちで‥‥。 この名古屋帯は、丸帯を2本の名古屋帯にして分けたものだと思うのですが、とにかく短い! 今まで締めたいなと思っても相当痩せないと無理というか、身長と骨格から変えないとだめじゃない?レベルで諦めていました。 先日ついにもうリメイクしちゃおか!と思って取り出しておいたのですが、いや一度くらい締めてみたいものだと思い、前を一巻きだけにして締めてみたらいけました!! なぜ帯を前が二重になるように巻くかというと、帯を後ろで結ぶと、そこが細くなるので帯でぐるっと胴体がカバーできないのですよね。 でも、最近私は結ばないしからげもしない、結ぶ代わりにクリップで止める方式で帯を結んでいる(だから結んでないけど‥‥えーいややこしい)ので、これはいけるのではと思ったわけです。 案の定、前は一巻きにして、「て」を長めにとってお太鼓の中に織り込む方式でいけました! 銀座いち利の女将さんの結ばないで帯を止めるクリップ使いを参考にしてください! 私はこれを後ろ結びでやっていますが、前結びでも前一巻きはもちろんいけます!! 関連記事:【前結び】誰でも簡単!楽々!女将流前結び-名古屋帯編 これで、今まであきらめていた短い帯も全然結べる! アンティークのあの帯も!! 痩せなくても(大事)いける!! むしろちょっと通常では短い程度だと、余って困るくらいですわ、ほほほほほ!! そんなに頑張って着ていった着物ですが、会場(親は別の視聴覚教室)では一度も雨コートを脱がず(笑)終わりました。 そんなこんなで無事、最後の入学式(ですよね?)が終わり、少しひと段落した気持ちです。あとは一生懸命稼ぐだけ。 晴れ晴れとした気持ちで、舞い散る桜をみながらがんばるぞー!と思う春でした。 ※1「願わくば花のもとにて春死なむ その如月の望月の頃」(西行法師) ※2「しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている」(梶井基次郎)

雨でも!夏日でも!着物を楽しむ方法 の巻

星わにこ
2024/04/03 00:00
春ですね! 待ち焦がれていた桜がやっと咲きました!と思ったら東京はこの後天気が崩れそうで、うまくお花見日和が迎えられることを祈るばかり。 2月にとても暖かくなったので、このままではすぐに桜も咲いて夏も来ちゃうのでは?と焦りましたが、その後の寒の戻りが半端なく。袷の着物を着るには快適な気温でしたが、春が待ち遠しく感じました。 もう桜が散っちゃっているかな?と思いながら予約した子どもの卒業記念写真撮影の日は、ソメイヨシノも咲いてないし雨だし着物のロケ写真は軒下のみ。こればっかりは仕方ないですね。 そして、先月末に行われた「東京キモノショー」。初日は大雨、次の日からは夏日となって最終日はなんと28度にも。 初日にお仕事で行ったのですが、電車も遅れる結構な雨の中、着物でGO!という試練(笑)。着物の裾はめくって雨コートを着て、レインブーツを履いて、草履やバッグは撥水風呂敷につつみ、忘れてはいけない首元をストールでガードして完全防備で出発。 関連記事:正絹着物でもできる雨の日対策 こちらはもう11年前(!)に書いた雨の日対策のコラムですが、とても雨草履でいける天気ではなく、レインブーツでの出動となりました。この頃と違って今はスマホで見られる雨雲レーダーが頼りになるので、時間が許せば土砂降りを避けられたりもします。 この日は雨もですが、風が強くて、駅に着くまでに傘が3回おちょこになりました。が、完全防備のおかげでなんとか会場に到着。この雨ではお客様も少ないのでは、と思いましたが、どっこい。オープンと同時に結構な人出で、着物のお客様も多数。皆さん素晴らしいです!! 私、仕事じゃなかったら着物着なかったかも‥‥と思っていたので、皆さんの着物愛に打たれました。 洋服だって外出がいやになるほどの雨だったのに‥‥。もちろん着物が濡れちゃうかもという心配や、雨の日装備が足りない、体調がいまいちなどの理由があれば、さくっと洋服にするのもひとつです。 そして後半の夏日。今までの着物の決まりからいくと4月終わりまでは袷ですけど、厳しすぎます。もう悩まず、単衣で夏仕様で。でも、朝晩は少し冷えるので大きめのストールを持っておくといい仕事をします。 関連記事:自分温度で単衣を着よう! 2019年の4月の終わりにこんなコラムを書いていますが、去年の3月末も24度を超えた日があって、そのときは単衣を着ました。 昔から三寒四温という通り、暖かくなったり寒くなったりを繰り返して春に向かっていくものですが、なんというか近年この振れ幅がでっかく感じませんか? 寒くても暑くても、着物を着るのは完全日常着にしているマスター以外はやっぱりよっこらしょ、なものだと思います。 着物を着ようと思ったら、毎回天気予報とにらめっこ。雨や気温もそうですが、花の意匠の着物や帯であれば、その花はもう咲いたかしら、散ってしまったかしらと気にかかり。 以前は着物の教科書みたいな本の「季節の着物の決まり」みたいな表を穴が開くほど見つめて、着物や帯以外にも半衿を付け替えないと、とか、小物はどれにしようなんて考えて、いや、もしこの日雨が降ったら??なんて思うと胃が痛くなったりしていたものです。 でも、最近はフォーマルなシーン以外だったら自分の基準を決めてしまって、自分の判断で着るようにしています。 令和になって、昭和の「着物の決まり」はもう機能しない部分も出てきています。着物を楽しむには、人の目や決まりを気にするのではなく、自分が着て心地よいということが一番。 すべて自分流だっていいし、ある程度ガイドがあったほうが楽という人はできる範囲でいわゆる「ルール」を取り込めばいいと思います。 私の場合は、雨だったら洗える着物か洋服にスイッチングするか、どうしても正絹を着たかったら完全防備する、そのための装備を備えています。 気温については、24度くらいを境に、袷の季節でも単衣に袖を通します。 そんなゆるめのマイルールを作っておくと、天気の心配をしすぎないで着物も楽しめるのではないでしょうか。人生も同じ、なにもかもはうまくいかないから、許容範囲を大きくしておいて、アクシデントもそんなもんかと対処できるようになると楽になるなあ、とおばちゃんになってしみじみ思います。 新年度、新しい生活が始まった方も多いと思います。ぜひぜひ着物も、生活に取り入れて楽しんでくださいね。

男子の袴姿と憧れの仙台平(せんだいひら)の巻

星わにこ
2024/03/27 00:00
桜の蕾がまだ固い東京ですが、卒業式シーズンを終え、ほっと一息ついております。今年は大学の卒業袴だけではなく、小学生の卒業袴や先生の袴着付けもさせていただき、「卒業=袴」の文化を実感しました。 また、成人式で振袖着付けをさせていただいたお嬢さんの大学卒業の袴の着付けは本当に嬉しいものです。なかでも10年前、まだ着物の他装の勉強をはじめた頃に十三詣りの着付けをさせてもらったお嬢さんが大学卒業ということで袴着付と撮影に来てくれたのですが、本当に胸にくるものがありました。お子さんの成長、いえもう立派な大人になった姿を見つつ、そのお祝いを節々にお手伝いできたことの幸せを、ありがたく感じました。そして、立派に育てた親御さんにも心から拍手を送りたいです。 さて、そんな3月の終わり、我が家の子どもも無事高校を卒業したものの、先日のコラムの通り、まさに紺屋の白袴状態で、痛恨の卒業式の装い(?)をさせてしまった私ですが、子どもによると「袴は卒業写真の記念撮影でするから卒業式ではきなくてもいいと思った」とのことで‥‥いや優先どっちやっていう話なんですが‥‥その記念撮影を先日いたしました。 子どものサイズにあわせた袴を、リサイクルですが購入して楽しみにしていたので、まあ卒業式のことは生涯の笑い話になったということでおいておき、十三詣りと中学卒業、高校卒業で撮影した袴姿写真を並べてみました。 改めて見ると、こんなに小さかったのかと驚き! そして中学の卒業のときより、ぐっと大人になり、親バカですがとても嬉しかったです(卒業式当日はさておき(まだ言っている…… 並べてみるとずっと黒紋付なのにその年齢で違って見えて面白いですね。中学の卒業式のときなど、反抗期の名残でずっと変顔でちゃんとポーズもとってくれなかった思い出が蘇りました(そんなことばっかり)。あと、私の着付けも少し上達したかも(笑)。 さて、男子の袴といえば宮城の絹の袴地「仙台平(せんだいひら)」が有名ですよね。今は1社しか生産していない「精好仙台平」の生産技術は重要無形文化財です。スケートの羽生結弦選手が身につけたり、将棋の羽生善治さんが対局で着用したりとニュースにもなるほど、「男袴といえば」の憧れの逸品。 絹の縞袴は「シュルシュルッ」という独特の音がかっこよく、形もびしっと決まるのですが、中でも仙台平は光沢や風合いが素晴らしいのだそうです。 袴はなかなか手が届かないのですが、憧れて名刺入れとお財布は持っています。とても精緻で端正な縞にうっとりです。小さなものですが、しなやかで張りがあって、かっこいいんですよね~。いつか仙台平を身につけるような男になれ~息子よ(自力で頼む)。 春からはおかげさまで無事進学も決まり、入学式用には間に合うようにスーツを買いました。ちゃんとスーツで入学式に出席して、充実した大学生活を送ってほしいものです……。 学費が終わった!と晴れ晴れした笑顔のお母様方の後を追うべく、あと4年母も頑張りたいと思います!

強風に負けない!振袖の襦袢の袂が飛び出さない対策3選の巻

星わにこ
2024/03/20 00:00
友人と運営している和装写真スタジオは、秋は七五三、冬は成人式、春は卒業式・入学式の撮影が多くなります。その他、通年婚礼写真、結婚記念日、お誕生日など家族の記念日や最近は大人の振袖(還暦など)も、ご利用いただいています。 春のこの季節は卒業式が多く、大学の卒業式の撮影だと、2年前に成人式のお支度をさせていただいたお嬢様も多く、もう卒業なの!と時の流れの早さに驚くのと同時に、少しあどけなさもあった20歳の時よりぐっと大人になった様子に思わず親戚のおばちゃん気分で感動してしまいます。 また春は、春休みでもありますし少し暖かくなってからゆったりと成人式の後撮りをされる方も多いです。 この時期暖かくなってきて、季節はいいのですが立春から春分の日あたりにかけて吹く春一番をはじめとした、風が強いことが多いこと。 先日も撮影の日に、強風で振袖の襦袢がふわ~っと飛び出してきてしまい‥‥これは、袴の二尺袖でも結構お見かけします。七五三も、お袖が長いので飛び出し案件は多いです。風のいたずら、困りますね。 これを防ぐ対策3つをご紹介します。 1)つばさ たもとに入れる「つばさ」のご紹介をしたことがあります。たもとにいれる錘のようなものなんですが、だいたい15gの重さがあれば大丈夫。ハンカチのようなものでも代替できます。 関連記事:振袖の襦袢の袂が飛び出さない「つばさ」が便利☆の巻 2)糸をわたす 袖の下線から30センチくらいのところで、着物の袖の振りの部分に糸をわたします。縫って止めてしまわないで、5センチくらいの長さを残すことで、袖の動きが不自然になりません。日舞などの着付けでも使われている技です。 3)安全ピンなどでとめる 襦袢の袖の内側から、振袖の袖とまとめて安全ピンでとめてしまいます(袖の後ろ側推奨)。時間があるときは糸で止めてももちろんOK。袖の幅の真ん中あたり、下から3センチくらいのところを止めてしまいます。超応急処置ですが、両面テープでとめることもあります。七五三などはさっとできたほうがいいですし、針などを使わない方が安心なのでテープを使うことが多いです(はがし跡の残らないタイプがおすすめです)。 先日の振袖撮影では、風も強かったし撮影の後振袖のままで移動されるということで、安全ピンの応急処置をさせていただきました。 2、3の方法を使うときは、振袖を痛めないよう気をつけて。特に脱ぐときに注意してくださいね。 着付ける際は、袖付けの部分での振袖と襦袢の袖合わせをきちっとすることも大切です。 あとは、着る人の所作になりますが、\(^O^)/ など腕をばっ!と上にあげたりすると、袖付けの部分が緩んで襦袢が飛び出しやすくなってしまいますし、脇も緩んで着崩れにもつながります。まあ~お子さんの場合などは元気な証拠でそれもよしですけどね! 晴れ着を着る日のお天気がよければ最高ですが、雨でもそれはたくさんの恩恵やお金が振り込む雨、風が強かったら幸運を運んでくれる風。撮影をさせていただく時には、晴れ着を着たその日がいい思い出になりますようにと願いながら着付けをさせていただいています。 もし晴れ着を着る日に、風が強かったら思い出してもらえると吉なTIPSでした。 ちなみに普通袖の場合は下記をご参照ください! 関連記事:襦袢と着物の袖丈が合わない時の応急処置の巻

女子袴の後ろがずり落ちないためのコツと奥の手の巻

星わにこ
2024/03/13 00:00
卒業式シーズン。袴姿をあちこちで見かけます。これから3月後半は大学や小学校の卒業式で着用される方も多いのではないでしょうか。 時々袴の後ろがずり落ちて帯が見えていることがありますが、そうならないよう防ぐ方法を今回はご紹介したいと思います。 まずは所作。どんなにきちっと袴の紐を結んでも、座る時にスカートのひだを整えるように下に撫で下ろしてしまうと、後ろが落ちてきてしまいます。座るときには、脇のスリットからそっと手をいれて、後ろをふわっと持ち上げて座ると、袴のずり落ちが防げます。(男袴も同様です) 椅子にもたれても、後ろの山が崩れてしまいます。車の乗り降りのときも、後ろ側がひっぱられがちなので注意しましょう。これがもしかしたら一番のポイントかもしれません。 あとは、座っていて立ち上がる時に袴を踏んでないか確認しましょう。他の人や椅子に踏まれていることもあります‥‥。知らずに立ち上がるとアウトです。 とにかく袴を下方向に強くひっぱらない点を気をつけていれば大丈夫かと思いますが、着付けのときにもいくつかコツがあります。着付け師の方には釈迦に説法だと思いますが、卒業袴はご家族か着付けてあげることもあると思うので、ご参考までに……。 基本ですが、後ろ紐を結ぶときは、交差させるとき前紐にしっかりからげること。後ろは上側をしっかりと背中に密着させること。 それから袴紐が結ばれる胸下の部分、ウエストにタオルなどで補整を入れてあげること。あまり薄すぎるものではなく、ほどよい厚さのものを入れたいです。また、1枚では長さが足りないときもあるので2枚繋げたり、100均などでちょっと長めのロングタオルを購入してもいいでしょう。 補整が入ることで、少ししっかりと紐を結んでもクッションになって着る本人も苦しくないですし、紐も安定します。 もうひとつは、「へら」を帯の結び目に差し込むときに、ぐっと奥まで入れておくこと。さくっとさすだけでは、外れてしまって役にたたなかったりします。 へらという存在があるということは、やっぱり後ろは帯から外れて落ちやすいんですよね。特に、女子袴は男子袴のように腰板もないので、帯の根元にの腰板の付け根をあてて安定させることができません。ふんわりとした柔らかい山を作るようになっているので、より落ちやすい構造です。 着付けヘラなどで、へらをぐっと押し込んでおくとよく効きます。 この後ろの「へら」がないものもあります。そんなときは細い紐を安全ピンでとめるかちくちくっと縫ってとめて、その紐を帯の結び目にからげてあげるという奥の手があります。 あんまりひっぱりすぎると、袴のうしろのふわりとしたラインが崩れてしまいますが、ほどほどな強さで袴の腰板を帯に固定すれば、ずるっと帯が丸見えになってしまうようなことはありません。 お子さんなどの場合は、体も細くて袴も安定しづらかったりするので、補整を入れるのはもちろん、この裏技を使うのもひとつです。 卒業式、袴で1日楽に過ごして、楽しい思い出になるように‥‥。お子様、お嬢様に着付けてあげるときなど、参考になさってください。 それから、袴を着た人は「ふわっと袴を持ち上げて座る」ちょっとプリンセスな所作も忘れずに!
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卒業式。着物の母の気持ちの巻

星わにこ
2024/03/06 00:00
3月。卒業式シーズンですね。うちの子どもも先日無事高校の卒業式を終えました。春からの進路も決まり、ほっと一息ついております。あとは頑張って学費を稼ぐだけ!です。 高校は私服通学のため、卒業式は女子はほとんど袴! 大学の卒業式のようでした。袴の男子もちらほらいましたが、男子はスーツが主流。 受験のあれこれで、すっかりスーツのことを失念していて卒業式に購入が間に合わず、とりあえずジャケットだけでも買わないかというと、友達に借りることにしたという返事だったので、まあいいかと思っていた間抜けな母の私。 本当は黒紋付袴を用意していたのですが、卒業式が終わったら打ち上げだからと拒否られ、卒業写真を別日に撮影させてもらうことと引き換えに手打ち。当日は本人に任せるか‥‥なんて思っていました。 当日別々に学校に行き、体育館で待つことしばし。卒業生入場のみんなの晴れ姿に目頭が熱くなります。いよいようちの子‥‥と思ったら‥‥えっ!! そこには黒のウインドブレーカーの上下を着て、胸にコサージュをつけた我が子が‥‥!!! あ、友達に借りるって行ったけど、別にスーツって言ってなかったな‥‥。 いやだがしかし、ウインドブレーカーって(白目) はい、もちろんうちの子だけでしたよ!!! もうやっちまったもんは仕方ないですけど‥‥。涙もひっこんだ母でした。 この際、何事もなく(なかったと言えるのか)、元気で卒業してくれただけでいいと思うしかないと式の間中、なんともいえない気持ちでございました。 さて、気持ちを切り替えて(涙)着物の話ですが、女の子たちの袴姿は本当に華やかで、とても素敵でした。小学校、高校、大学の卒業式で袴の着用率も上がっているし、成人式も振袖を着るし、今のお子さんたちは私が若かった頃より、ずっと行事での着物の着用率が高いかもしれません。 これからのシーズン、袴の着付けの仕事が増えるので思わずめちゃ業者目線で観察してしまいました(爆) 父兄席にも着物のお母さんが数名。入学式より人数が増えていました。訪問着の方が多かったかな。 私ももちろん着物で。卒業式の昭和の定番の黒羽織に一つ紋色無地でした。久しぶりに色無地に袖を通しましたが、やっぱり気持ちが引き締まりますね。 新しく買ったものはありませんが、自分的一張羅をひっぱり出しました。 着物:一ツ紋色無地(嫁入り着物) 帯:母の辻ヶ花袋帯 羽織:母の紋付を羽織に仕立て直したもの    義母の羽織紐で 帯揚:中野スズミさんにオーダーしたワニ 帯締:道明の奈良組 草履:カレンブロッソの白 こだわりは帯揚げです! ワニに、双葉が生えている図案をリクエストしたものです。 子どもの名前に植物の漢字が入っているので、成長を祈って描いてもらいました。今や、樹も大きく育ってワニが潰れそうですが(笑) そして、中身ですが たかはしきもの工房のペチコ! 足袋下ハイソックス! 足袋はゑびす足袋のふわもこ足袋! 腕にはアームカバー という防寒ばっちりスタイルで、冷え知らずでした。 特におすすめなのが「ペチコ」。これは昔の都腰巻(ニットの腰巻)のアクリル復刻版なのですが、暖かいのはもちろん、のびがよくて、お手洗いとかにいくとき着物の裾をくるっと包んで上に持ち上げられるので、とってもいいんです。 特に柔らか物だと、トイレで四苦八苦しがちなんですが、ペチコだとらくちん! 和装肌着をスリップのスカートタイプ愛用の方の気持ちがわかります。 自分的には、卒業式完璧母着物コーデのつもりででかけたのに、まさかウインドブレーカー攻撃で薙ぎ倒されるとは思いませんでした‥‥。やられた。。。 家に帰って一悶着あったのは言うまでもありません。一生の思い出話になるやつですね。友達に上下揃いなんだから、スーツといえなくもないかもよ?と言われ、そうだなあ、黒の上下だったし色的にはそんなに浮いてなかったし、五つ紋の場所にブランドロゴが入っていていいかも‥‥いいわけあるか。 時々、かましてくれる子どもですが、気がついたらもう成人。自分のやりたいように生きていってくれればいいのかもしれません。卒業シーズンはちょっぴりおセンチになりますね。 全国の卒業生と卒業を見守るご家族の皆さんに幸あれ!

今さらだけどロングスカートで着物を着てみたの巻

星わにこ
2024/02/28 00:00
2月は逃げる、なんて申しますが、閏年で1日余分にあるとはいえもう2月が終わってしまいますね。わかっているのに、毎年焦ってしまうのはなぜ‥‥。 さてさて、このコラムでも散々とりあげている着物の和洋ミックスコーデですが、実は私自身はそんなに着ておでかけをしたりしたことははないんですね(えええ)。家では実用的な方向でMIXでよく着ているのですが、でかけるときは礼装大好きなので、いかに晴れ着を着るかみたいな方向に興味が集中しているようなんです。この辺も人それぞれですよね。 でも、先日プリーツのロングスカートを履いていて、「これはこのまま上に着物を着たらかわいいのでは~」と思いつき。ロングスカートのウエストゴムをずりずりっと下げて足首丈にして、裄も身丈も足りない着物を羽織っておでかけしてみました。和洋ミックスの達人の皆様からみたら「いまごろ何をいってるの」という感じだとは思うのですが、主に自宅でしか和洋ミックスしてなかった私にはちょっとした冒険でした(笑)。 写真も撮ってなかったのでトルソー再現で失礼します。もう半衿もせず、ほんとにシャツワンピ感覚ですね。帯も半幅で結ばない帯結びでベルト、おはしょりは腰回りがもっこりしちゃったので、帯の中に隠してしまいました。 着てでかけてみた感想は、男子着物をきた時と同じかな~。楽ちん!でした。東京は変な格好してても誰にも何も言われないし、ほんとにいい街です(笑)。 プリーツスカート風やフリルなどの見せ裾除けもありますが、ちょっとお高いんですよね~、というケチな理由もあって、やってみたことはなかったんですが、洋装用でいいんじゃね、って試してみたらあったかいし気楽だしよかったです。でもちょっとスカートとの相性のせいか静電気がすごかったので、静電気防止対策必要でした。 自分の「これはだめじゃないかしら」「恥ずかしいかも」みたいな思い込みを捨てれば、着物は自由なもの。私も頭ではわかっていて、他の人が着ているのも素敵だなと眺めていたけど、自分ではあんまりおでかけに至らなかったのは「歳だから」「太ってるから」「(自分が)みっともないから」などなどいろんなブレーキを知らず知らずにかけていたのかも。 だって、Youtubeの動画とかでワンピースの上にささっと着物を着るのとか、かっこいいミックスコーデとか若くて細くて綺麗な人ばっかじゃないですか。私は違うよな~ってどこかで思ってました。 でも、その辺「自分が着てみたいから」という気持ちで、よいっとハードルを越えてみたら、普通だった! なんでも自分との闘いだけなんですね。もうちょっといろいろ試してみようかなと思いました。 そして! この時期は! コートを着ればどんな格好でもほとんどわからない(爆)。振袖で平気で出かけるメンタルの私ですから、全然平気でした!! 楽だし、動きやすいし、あとは大好きな着物を羽織っているというわくわく感で楽しいおでかけになりました。もしまだ「私はいいわ~~」と思っている方がいらしたら、ちょっと一歩踏み出してみませんか。新しい世界が待っているかも。 春だもの! 私も

浴衣地をバスタオルがわりにしたらよかったの巻

星わにこ
2024/02/21 00:00
この春はくる日もくる日も、机にかじりついて原稿を描いているため、右手が腱鞘炎気味のわにこです。基本家にいるため、気分転換にしているのが断捨離です。 もともと収集癖があるのでものが捨てられなかったところ、着物の収納崩壊を起こしたためお片付けのプロのさかもとりえさんになんとかしてもらい(拙著『その着物どうする?』参照・宣伝か)、その後はなんとか自力でやってまいりました。 でも、やっぱり時間がたつと地味に増えていく着物関連。このお正月にりえさんの教えを思い出しつつ、泣きの涙で手放したのも記憶に新しい(爆)。でも若い頃の着物は、仕事着で着るという若い方に引き取ってもらえたし、その他も寄付などで引き取っていただいて、やっとすっきりしたなという先日。 まだありましたよ、伏兵が。「リメイク、着物からは面倒でも反物ならやりやすいかも?」なんていう心でちょい難の反物などをこっそり仕舞ってあったのが棚の奥から出てきました(灰)。 ご近所マダムたちのお茶会に呼んでいただいてお話をしていたところ、「リメイクをしたいから、いらない着物があったら欲しい」というお話があり、反物でもいいか聞いたら、解く手間がないから歓迎!と言っていただき、早速ほくほくともらっていただきました。 またリメイクしたら報告するわね!とおっしゃっていただいたので、何に生まれ変わるのかとても楽しみです!! もうほんと、縫い物が苦手なのは一生治らないので得意な方に任せたほうが吉!! きっと反物たちも喜んでくれていることでしょう。 浴衣地もあったのですが、白地部分にシミが浮いてきているものもあり差し上げるのをやめたものもあり、さてどうするかなと考えていて、ひらめきました。(今日も前置き長子ですみません‥‥) 切っただけで縫わずに使えばいい! というわけで、布巾、雑巾と切ってどんどん使うことに。そしたら、反物の中のほうはシミがない。1メートルくらいの長さに切って、バスタオルのように使ってみたらこれがいい!! 切る! だけ!(縫わない。これが大事!乾きがいいからです!ものぐさだからではありません!) 子どもの保育園用のお昼寝用に買ったIKEAの分厚い大判バスタオルで場所はとるし洗っても乾かないしで大苦戦した過去があり、すっかりバスタオル嫌いになってしまった私。温泉タオルでいいじゃん!とバスタオルを撤廃してはや10年。 ここ数年は子どもが「なぜうちにはバスタオルがないのか」と気づいてしまい(ちっ)子どもの分だけ復活させたり、ジム通い用に揃えたりと、地味にバスタオルが戻ってきてはいますが、自分はずっと温泉タオルで済ませてきました。 「手ぬぐいでいいのでは?」と思った時期もあり、試してみましたがやはり途中で絞らないと拭ききれないし、それが面倒(どんだけものぐさなのかと)。 浴衣地は手ぬぐいより幅もあるし、長さも自由自在。あんまり長くてもとりまわしが面倒なので手ぬぐいと同じかちょっと長いくらいにしてみました。 手ぬぐいの幅はだいたい35センチ前後。昔のとかは33センチくらいです。浴衣地は38センチほど。この数センチの差が実は大きい!! あと一般的な手ぬぐいの生地よりも綿の浴衣地(コーマ地)は目が詰んでおり厚地でゴワゴワしますが、その分水分を吸ってくれる気がします(個人の感想です)。 ちなみに手ぬぐいも幅38センチの大判サイズもあります。もともと浴衣地を切って手ぬぐいにしたという話もあり、このあたりの違いは定義しづらいところも。 なにより「活用できた」という喜びが大きい(笑)。洗濯してもすぐ乾くし、だんだんと柔らかく育ってくるのも愛おしい‥‥。しばらくこれでウキウキバスタイムを送ってみようと思います。 話があっちこっちにいって、収集がつかなくなってますけど、とにかく浴衣地を切ってバスタオル代わりにしたら満足度が高かった、というお話でした。 ※浴衣地は綿100%がおすすめです。

あとちょっと!帯枕を高く持ち上げる方法の巻

星わにこ
2024/02/14 00:00
皆様お元気ですか? 着付けのお悩み解決シリーズです。今回は着付けレッスンの生徒さんに教えていただいた必殺技です! 着付けレッスンで着付けを教えている側のわたしなのですが、生徒さんから教わることもたくさんあります。昔私が通った某大手お教室などでは先生の言うことが絶対で、それ以外は邪道!みたいな雰囲気でしたが、最近はYoutubeなんかもありますし、いろんな着付け方法を皆さんご存知なんですよね。自分で慣れた方法がやりやすいという方にはそれを選んでもらうようにしています。 着るのは自分ですし、その人その人であうあわないもありますから、いろんな方法にトライして自分に合った方法を探すのがいいですよね。そうはいっても、基本はありますから、最初はまず1つのやり方をしっかり覚えて、ある程度できるようになったら応用に入っていくといいのかなあ、なんて思っています。そしていい方法があったらシェアしあって、みんなの着付けが楽になるなら最高ですよね。 さて、前置き長子(56歳)になってしまいましたが、今回の技は「帯枕を高くする方法」です。もともと体が硬かったり、年齢とともに手が後ろに回らなくなってきたり、四十肩五十肩で全然だめ!だったり‥‥。特に帯枕を上に持ち上げるのが、厳しいときありますよね。 帯を結んでいる最中に、すすっと壁に近寄っていかれたので「どうしたんですか?」と聞いてみたら、壁に帯枕を押し付けて、ちょっと体を下げることで、帯枕を高く持ち上げているとのこと。なんというコペルニクス的着付け!! 壁に助手をしてもらうとは……その発想はなかった! 帯枕に帯を被せて、さあ持ち上げるぞというときに壁さんに助けてもらうわけです。使えるものは壁でも使え。でも、帯を押し当てますから、砂壁とかペンキ塗りたての壁では試さないでくださいね!! 私はいまのところ、帯枕を持ち上げるのにさほど苦労はしていないつもりだったんですが、やっぱり若い頃と比べると帯山の位置が低くなっているかも。まあ、年齢相応ということもありますが、なるほどそもそも高く結べなくなってくるからなのか‥‥と。 でも袋帯のときなど、高くしたいなっていうときにちょっとやってみたら、よかったです。壁さんにめっちゃお礼を言いました(もちろん教えてくれた方にも心の中で‥‥) 帯山が下がると、私のように肩幅があって身長もある程度ある(平たく言うとガタイがいい)場合、背中が広く逞しく見えてしまうのが悩み。帯山の位置がちょっと上がると背中が狭く華奢(当社比)に見えますしスタイルアップで若見えも狙えます。 この辺りは好みもあるんですが、もしあとちょっと!帯山を高くしたいというときがありましたら、ぜひお試しくださいませ。

雪の日のアザラシ毛皮草履の巻

星わにこ
2024/02/07 00:00
久しぶりに雪が積もった東京です。積雪は2年ぶり、大雪警報は4年ぶりだったそうです。雪が降る間は家で原稿に向かい合っていたのですが、お天気が回復してからいそいそと外に出てみました。 理由は一つ。アザラシの毛皮草履を履いてみたかったからです。 アザラシの毛皮草履については2015年のコラムで触れていました(ええ~もう9年前(爆)) 関連記事:雪が降ったらどうする!?雪対策の巻 流石に11年とかコラムを書いていると、「あれってどうだっけかな~」と和装ネタで検索すると自分のコラムがひっかかってきて、読み返して「結構いいこと書いてるじゃん(自画じいさん)」なんてことがあるのですが、雪のときもこのコラムが誰かのお役に立っているといいなと思ったり。 話がそれましたが、そのアザラシの草履。9年前には憧れのお品だったのですが、2年ほど前着物の大整理をしたお友達から譲っていただきました。そして、そうそう雪の日もない東京の我が家の靴箱で眠っていたのですが、きました!きましたよ、お外に出る日が。 アザラシなので、アザラシのごま模様(ゼニ模様?)がなんとなく見える、可愛いやつです。 じゃ~ん! そして、裏は雪の日も大丈夫な溝の深いゴムスパイク仕様。鼻緒をすげる穴から水があがらないよう、ガードもしてあります。足跡にもがっつり残ります。 ちなみに履き心地ですが、毛皮とかつるつるで滑るの?と思いきや天の部分の毛皮が足を突っ込む方に毛が流れているので、足を入れやすく脱げにくくなっていて、とても歩きやすいです。 ゑびす足袋さんのふわもこレース足袋とあわせてみました。こちらは残念ながら生産終了となってしまったものですが、内側の毛布みたいな発熱生地が極楽なんです。あったか足袋はいろいろ出ていますが、個人的にはネルよりもフリース系のもののほうが好きです。足袋下ハイソックスもあわせているので足元はほんとあったか! 着物は雪ん子柄で。きっと数日中には消えてしまいますが、束の間の雪の日仕様を楽しんでみました。 こちらは今から20年ほど前、オホーツク海で出会ったアザラシさんです(わにこ撮影)。草履大事に使わせてもらいますねええ。 関係ないですが、義実家が北海道だったため帰省の度にいまはもうない網走オホーツク水族館にいくのが楽しみでした。入り口入ってすぐのところにアザラシのプールがあり、100円でイワシのバケツを買って餌がやり放題。アザラシちゃんたちが、一斉にイワシめがけてやってくる大迫力の餌やりで、大好きでした。そんな中、一頭だけ「そんなものには興味がない」という風情でプールの隅で後ろを向いている子がいて、ジョニーと心の中で名付けていく度に会うのを楽しみにしていました。20年前廃園になってしまった時はとても寂しかったです。 老人の繰り言みたいに話が盛大にあっちこっちにいってすみません。アザラシの草履がはけて、嬉しかったっていうお話でした。