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ちょっとしたパーティ向けの着物を誕生祝いに着た!の巻

星わにこ
2025/11/26 00:00
私、11月生まれ蠍座の女なんですが、今年は11月生まれの友達と集って美味しいものを食べて自分たちで自分たちの誕生日をお祝いしよう!!という会に参加しました。 素敵なワインバーの個室で7名で乾杯! 京都から来てくれたお友達もいて近況報告から時勢ネタまで気の置けない仲間トークで盛り上がりました。 せっかくだから、自分なりのオシャレをしよう!と思って着物コーディネートを考えていて、10年以上前にあつらえたのに着ていない付下げのことを思い出しました。 黒地に流れ星と星が集まって月の形になっている星の模様で、裾に目つきのいい感じの鷺がいます。「星」モチーフが気に入って、子供の名前に入っている音の「月」があるのとで「わ~!」って盛り上がって購入したのですが……。 柄はカジュアルめなんだけど、正絹で黒地なのでカジュアルに振り切れてなくて、でもフォーマルな場所にはちょっとなあ‥‥という中途半端な着物で、いわゆる「ちょっとしたパーティ」向けなんだと思います。 でも「ちょっとしたパーティ」に出席する機会って、私の人生にはなかったんですよね……。というわけで、まさに箪笥の肥やしになっていたものでした。いつも、出しては仕舞い、出しては仕舞いしていましたが、そうだ、この機会に着ようではないか!としつけ糸をとりました。 今、きもの雑誌『月刊アレコレ』に隔月で連載中の「きもの事典カルタ」という読み物としてもたのしめて役立つきもの用語集のページのイラストを担当させていただいているのですが、ちょうどアレコレの撮影が昭和な家スタジオ近くで行われていたので、お邪魔してついで撮影してもらいました。もちろんカメラマンは渡部瑞穂ちゃんです。紅葉がとっても綺麗でした~。 帯揚げは招き猫なんですが、顔だけ結び目に出してみました! 自分だけが楽しいシリーズ(笑)です。 そして、夜はワインバーの素敵な個室に。4人が着物でした。皆様それぞれとっても素敵なコーディネートで眼福~。美味しいお料理とともに、笑顔はじける楽しい嬉しい会でした。それぞれ、仕事に趣味にと素晴らしい活躍をしている友達の話を聞きつつ、お仲間に入れてもらえるのも自分が頑張ってるご褒美だな~と思ったり。 直前でインフルエンザで参加できなくなった友達もいて、健康も大事だとしみじみ。万象繰り合わせて集まれることもありがたく、来年もまたぜひみんなで揃いましょう!と解散しました。 そんなこんなで無事今年の誕生日も過ぎ、会いたい人には会って、着たいものも着る! そんな1年にしたいなあと思っております。

七五三。男子袴の裾上げの裏技!の巻

星わにこ
2025/11/19 00:00
今年も七五三シーズン真っ盛り。写真スタジオでは連日七五三の撮影が続き、お子様の可愛い着物姿に日々癒されています。和装推しのスタジオなので、兄弟姉妹で全員着物、とかパパもママも着物、なんていう日もあり、着付させていただくのがとっても楽しいです! 着物はレンタルもあり、ご両親が子供の時お祝いで着た着物を受け継いで着ることもあり、またお誂えでお持ち込みもあり。お持ち込みの場合は、足りないものがあってもスタジオのレンタル品と組み合わせて着ていただいたりもします。成人式などもそうなのですが、1つだけでもなにか受け継いだものや、ご自分で用意されたお気に入りのもののお持ち込みがあるとちょっとほっこりしますね。 七五三は数えで祝う場合と満で祝う場合がありますが、どちらがいいということもなく、ご家庭の都合で決めてよいのではと思います。数えだとまだ小さくて、なかなか思うように着物を着てくれないことも。 3歳さんは特に男女とも、お子様によって足袋や草履の指の間に布が挟まる感覚がダメ!とか、髪飾りがイヤ!とか眠い!とかいろいろなNGポイントがあったりするのですが、まあぐずったりするのも「あの時は大変だったのよ~」と一生言われるいい思い出になるので、できる時に祝う!というかんじでいいのではと思います。 数えだとまだ体が小さくて、着物姿がめちゃくちゃ可愛いんですが、着付ける側からいうとちょっと苦戦します。でもあらかじめサイズ調整をしておけば、多少動いても親御さんに抱きついていてもなんとか着せられるので、ここはがんばりどころ。 3歳、5歳の着物はとくに、裄だけでなく身丈も調整しておかなければいけないので責任重大です。 特に袴は、多少長い程度なら、ウエストの紐の部分をくるっと折り曲げて調整するのですが、5歳さんの袴を3歳さんが着る、というようなときはもう裾を上げるしかない、とがんばって調整していました。 ですが……今年! もっと楽な長さ調節の技を発見したのです! それは袴の紐の下を摘んで縫って、上に折り曲げて短くしてしまうという方法。裾を上げる10分の1くらいの労力で済んでしまいます!! 後ろ側は多少形が変わってしまいますが、羽織に隠れますのでよし!というわけで早速実践して成功をおさめました。女子袴でも応用が効きそうです。 思いついたときは「ちょっと!!!私ってば天才!?」と鼻息を荒くしたのですが、ネットで調べたら動画で紹介されている方もいました(ですよねっ)。この技を必要とする人は本当に少ないので、目にすることもあまりないかもしれないし、もう今年の七五三の本番日(11月15日)はすぎてしまったのに……という話なんですが、このあとまだまだ続く後撮りや、来年以降にもしかしたら誰かの役に立つかも?と書き記しておきます。 そのほかの子供着物に関するサイズの話はこちら 七五三の三歳の着物を二歳から五歳まで着る方法の巻 子どもの着物は合理的にできてます! 今年の11月15日は本当にお天気もよく、撮影日和でした。この季節、金色に輝く銀杏や紅葉の中、笑顔のご家族の撮影ができると「この仕事やっててよかったなあ」としみじみ思うのでした。

菊の模様の着物&帯は秋限定?の巻

星わにこ
2025/11/12 00:00
毎年秋になると、菊や紅葉の紋様が気になってお出かけの時に着なくっちゃ……とそわそわします。一般的に菊の柄は9月~11月がよいと言われるのですが、重陽の節句はまだまだ暑く、秋だから……という気分になるのが10月も終わる頃。あわてて11月に着ることが多いです。 12月に入ると冬となり、そこからは松・竹・梅、雪輪など冬の意匠に移っていきます。1月に咲く寒菊などもありますし、意匠としての菊であったり、他の季節の花と一緒に描かれているものは季節を気にしなくてもよいですが、「ザ・菊」というデザインだと、やはり秋に好まれるようです。 そして、菊は桜と並んで国花としても愛されています。桜だけかと思っていたんですが、菊もそうだったんですね。そう言われれば皇室の象徴だったり、パスポートにも菊の紋章が付いているなと納得です。 いただきものの色留袖で爽やかな淡い水色に白菊の花がびっしり裾に描かれているものがあるのですが、秋というには色が爽やかすぎてちょっと違和感があったのですが、着物の達人に「柄がこうだから、と決めつけないで、全体の雰囲気で考えればいいのよ」と言われました。 帯に四季の花があれば、菊だけを見て秋、と思わないし、コーディネートでも工夫ができそうです。「菊は秋の花」という季節感覚はベースにありつつ、応用をしていくという感じでしょうか。 「四君子」という蘭、竹、菊、梅の4種類の植物を組み合わせる吉祥柄もありますし、梅に何が組み合わされているかというようなところからデザインの意図を汲むのもわくわくするものです。 季節の柄を楽しむというようなシーンでは、絶対的な正解がある、というよりは、自分の中に答えがあって納得していればいいし、さらに「なるほど」とわかってくれる人がいれば尚更楽しいというものではないかなと。 さて話を戻すと、意匠としての菊には「不老長寿」「信頼」「高貴」「邪気を払う」などの意味があり、その凛とした拡張高い美しさは古来から愛されてきました。秋を表すだけでなく、めでたい柄としてたくさん使われています。 格調高いし、仏花にも使われたり、あまりにも和柄のスタンダードすぎてなんとなく敬遠していた時期もありますが、最近また温故知新といいますか、好きになってきました。 乱菊、万寿菊、菊水、菊尽くし、むじな菊、菊唐草、横菊などなど、美しい菊のデザインをいろんなところで見たことがあると思います。 私はむじな菊の紋様が大好きです。江戸小紋でもある柄ですが、むじな(ニホンアナグマ)の毛並みのように菊の花びらを表現したもので、なんともいえず柔らかくてほんわかした気持ちになります。もふもふ感……。 乱菊は大胆でかっこいいし、万寿菊はまんまるでお饅頭みたいで可愛いし、菊が描いてあるから秋、なんていうと着る着物がないのでは?と思うくらい、花としていろんなところにあしらわれています。花びらが多く華やかですし、葉の形も特徴的で美しい形をしている菊。洋服ではあまり見かけませんが、着物では本当にポピュラーな柄です。ポピュラーすぎて見過ごしていることもあるかもしれません。 お手持ちの着物にも探せばきっとあちこちに菊が描かれているはず。秋にしか着られない、のではなく、秋だから身につけたら楽しい、と考えてコーディネートにぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?

私のキモトモ(着物友達)のはなしの巻

星わにこ
2025/11/05 00:00
私の着物生活を語る時、キモトモ(着物友達)の存在は欠かせません。中でも一番密に着物に関して一緒になんやかんやとやっているのが、「昭和な家スタジオ」という和装記念写真館を一緒に運営しているカメラマンの渡部瑞穂ちゃん。このコラムにも、拙著にも数えきれないくらい登場していますし、このコラムで使っている写真も彼女が撮ってくれたものがたくさんあります。着物雑誌『月刊アレコレ』の写真撮影も、ほとんど担当している着物大好きカメラマンです。 彼女は大学の同級生で、語学も専修も同じクラスでした。でも学生時代はさほど仲がよかったわけではなかった(笑)のですが、卒業後15年ほど経ってからSNS(mixi)で再会。彼女のプロフィールに着物が趣味、と書いてあったため、着物好きだった私は連絡をとってみたのです。それが2006年のことでした。 もしプロフィールに着物のことがなかったら、連絡はしなかったかもしれない、くらいの状態から、着物を媒介に一気にあれこれ連絡をとりあうように。また、ちょうど子育て世代だったこともあってワーキングマザーの会『ムギ畑』にも誘ってくれて、入会しました。 もともと幹事体質でマメな瑞穂ちゃん、面倒くさがりで自分からは滅多に連絡もしないような私に、着物や育児、仕事のあれこれまでなんやかやと声をかけてくれ、やがて一緒に古民家を借りて着物を着て記念写真を撮るスタジオを運営することに。仕事だけじゃなく、習い事や趣味、子育てとなんだかんだと一緒にずっとつきあってもらっています。 ちょっと個人的な話で恐縮ですが(個人的でなかったことはあるのかという話はさておき)、ちょうどこのスタジオを始めるころ、私はアルコール依存症になってしまった夫(これまた大学の同級生で瑞穂ちゃんとも同じクラス)と揉めまくって離婚することになってしまうわけですが、そんな時にもそのスタジオの仕事と、このコラムの仕事は続けさせてもらっていて、それが心の支えでした。そのほかにも、着物のイラストの仕事やアドバイザーの仕事などでなんとかやってきたってわけです。 この間、大学生になった息子に「母さんはいろいろ仕事をやっているけど、撮影の仕事は喜んでもらえて本当に意義のあるいい仕事だよね」と言ってもらってなんか胸熱でした。 急に身の上話とかしだして、どうした??? と思われたかもですが、、そんなみずほちゃんと『ムギ畑』で知り合ったクリエイターの仲間たちとチームを組んで仕事をしてきた「フラーレン」というグループが今年15周年を迎えます。このグループに参加した頃はまだ、こんな人生を歩むとは思ってもいなかったのですけれど、気がついたらあっという間の15年でした。 チームといっても、それぞれが独立したフリーランスのクリエイターであり、ゆるく連携をとっている、というかんじなのですが、フリーランスでの仕事というのは基本一人なので、そんなとき同じように子育てをしながら仕事をしている女性たちに、助けてもらったり愚痴を聞いてもらったりできたこの環境は本当にありがたく、なんとか生きてこられた縁のひとつです。みんなには感謝しかありません。 これも、瑞穂ちゃんが「着物が趣味」とプロフィールに書いていなかったら、始まらなかったご縁かも?と思うと、着物よありがとう、と心から思うのでありました。 そんなクリエイター集団フラーレン15周年イベント「ひらく展」が京王線柴崎駅のギャラリーカフェ Gallery&Cafe Warehouse Garden で11月末に開催されます。私と瑞穂ちゃんは、11月30日に「きものを語るお茶会」を担当します。瑞穂ちゃんによるポートレート撮影つきです。着物がつないでくれた二人の着物愛炸裂のお茶会になること間違いなしなので、もしよかったらいらしてくださいませ。 ほかにも素敵なギャラリーカフェでいろいろなワークショップがあります。興味のある方、ぜひ参加してみてくださいね! 宣伝失礼いたしました(ぺこり)

1.5分紐帯締めのすすめ!の巻

2025/10/22 00:00
帯留めを使うときに使用する帯締めの代表は房がなく、普通の帯締めより少し短めの三分紐ですが、他にも四分紐、二分紐もあります。 それぞれ四分紐が幅約12mm、三分紐が約9mm、二分紐が約7mmです。 三分紐の半分の幅の1.5分紐(幅約4mm)1分紐(約3mm)というのもあるのですが、滅多に見かけません。が! ただいま開催中のいち利モールでオリジナル品がセールになっているのを発見。早速ポチりました。 10年ほど前に、友人に1分紐を譲ってもらい、2本でちょうど3分紐の幅になるので、2本使いして帯締めをとめたり、3本使いで色の組み合わせを楽しんだりしていたので、追加で持っていない色を購入。 これからのクリスマス、お正月シーズンに重宝しそうな金、銀、燕脂、白の4色を選んでみました(欲張りす)。 1.5分紐は1本使いだと浴衣の飾り紐などに重宝。夏に細い紐は涼しげに見えますよね。袷の時期には1本使いは流石にちょっと寂しい感じがあるのですが、2本3本と組み合わせるととても楽しいんです。 関連記事:夏はプチ帯留め&二分紐のすすめの巻 帯留めを通してもいいし、飾り結びをしてもいい。気が速いけどちょっとクリスマス風にコーディネートをしてみました。 2本を添わせて2色の三分紐風にしてもいいし、バラけさせてボリュームを持たせても楽しいです。金銀はいろんな色とも合わせやすいし、細いので主張もしすぎずほどがよいです。 右下の写真は、花玉結び風をして、紐の端を結び目の下に押し込んであります。仕上がりは一期一会(適当ともいう……) 関連記事:春の帯締め花玉結び風の巻 いち利オリジナルの1.5分紐は柔らかくて、扱いがしやすくていい感じです。でも帯締めなので、しっかりしていて安心感もあり! ちょっと帯締めで遊んでみたいかた、セールのチャンスに好きな色を揃えてみてはいかがでしょうか?

帯締めの寿結び(祝結び)の結び方の巻

星わにこ
2025/10/15 00:00
先日、秋の佳き日に結婚式の黒留袖、色留袖、訪問着の着付をさせていただきました。綺麗に着付けができるよう、事前に着付の練習をしていて知ったのですが、帯締めの結び方で「寿結び」「祝結び」「熨斗結び」と言われる結び方があり、近年よく結婚式などで用いられているそう。 私が他装を習った頃には聞いたことがない結び方なのですが、着付師さんのブログやYoutubeに結び方の解説がありました。本結びと上下逆に結んでいくので、最初は???となりましたが、覚えてしまえば簡単です。 普通に平組の帯締めを本結びにすると、房の付いている先が下向きになるのですが、この「寿結び」をすると上向きになって、水引の祝い結びのように縁起がよいということで、最近好まれているようです。 本結びはベーシックで慶弔フォーマルカジュアル問わず結ばれる緩まない結び方。寿結びとは、結び目を見れば違いがわかります。 私のもっている1993年刊『定本 着付と帯結び百科 冠婚葬祭の上品な着付け』(講談社)には寿結びの記載はなく、留袖の帯締めは本結びで結んであります。また2007年刊の『帯結び100選 笹島式決め技の極意』(世界文化社)にも平組の結び方は本結び(駒結び)しか紹介されていませんので、寿結びは令和のニューフェイスなのかもしれません。 こうしなくてはならないというルールがあるわけではないですが、帯の飾り結びなどと同じように、お祝いの時に「寿結びです」というのはおめでたい感じがしていいですね。 普段もしてはいけないというわけではなく、この結び方をすると帯締めがV字型に整いやすいので、少し痩せ見え効果もあります。冠組などをこの結び方をするとシャープなかんじになりますよ。 一方、銀座結びのように下から帯締めを持ち上げて結ぶような時は、本結びのほうが形的にも力学的にも自然に結べます。 特にいつ用いなくてはいけないというような決まりはないので、お好みで結んでみてはいかがでしょうか。

中秋の名月とさよなら万博。の巻

星わにこ
2025/10/08 00:00
台湾旅から1週間。またまた今度は京都大阪の旅に行ってまいりました。今回は出産祝いと大阪の友人を訪ねて万博へ、が目的のふらり一人旅。 京都はあいにくの雨でしたが、めちゃくちゃ可愛いベイビーに会えて大感激。ずっと写真で成長を見ていたので、推しに会えた感MAXでした。しかもニコニコしてくれて抱っこもさせてくれて、ファンサが神。本当に赤ちゃんって幸せの塊ですね。幸せそうなパパとママの顔が見られてしみじみ来てよかった~と感じました。 次の日は伏見稲荷にお参りし、混んでる京都駅方面を避けて、奈良経由で大阪入り。奈良線各駅停車の旅から、大和路線の快速で弁天町まで。弁天町で中央線に乗り換えて夢洲駅へ。そうです。もうすぐ10月13日に閉幕する大阪・関西万博に行ってまいりました。 思えば私の人生、今まで日本で開催された万博、やってるんだね~くらいの認識で一度も行ったことがありませんでした。大阪、つくば、愛知の認識しかなかったのですが、調べてみると日本で過去5回開催されているんですね。1970年の大阪万博、1975年の沖縄海洋博、1988年のつくば科学博、1990年の大阪花博。この辺の連続開催に日本の国力を感じます……。そして2005年の愛知万博(愛・地球博)以来、今回実に20年ぶりとのこと。 最初は行くつもりもなかったのですが、大阪の万博リピーターの友人に聞くと、「夜間券で一緒に行く?」と手配してくれました。閉幕に向けて大混雑、パビリオンはほぼ中には入れないと聞いていましたが、一度万博なるものを体験してみたいと思い、出かけることに。 子供に万博に行くと言うと「行ってきなよ!母さんにとっては最後の万博じゃんきっと」と言われ、え~!と思ったけれど、この先日本で開催されるかどうかもわからないし、確かに……。動けるチャンスがあるうちに行かなくちゃ!という気持ちに拍車が。同じような人も多いのか(笑)最後に向けて噂通りの人出でしたが、達人のアテンドで満喫してきました。 17時入場で5時間勝負。まずは2時間並んで日本館見学。並んでいる間に満月が上り、そして花火の音を聞きました(笑)。循環がテーマの展示でしたが、様々な「循環」の一例として「和裁」も。「ひとつの布を無駄なく使って仕立てる日本の着物。糸を引き抜けば布に戻すことができ、丈を直したり、仕立て直したりできる」ということで、取り上げられていました。 その後世界で一番謎の国と言われる中東にある共和国、トルクメニスタン館へ。30分ほど並んで全然知らなかった国の情報に触れることができました。入り口のオープニング映像がバーフバリ感があってよかったです。 いろいろ欲張らず、空に浮かんだ中秋の名月を眺めながら、大屋根リングをぐるっと散歩。達人の万博解説を聞きながら、上から見る各国のライトアップされた夜のパビリオンはとても綺麗でした。 最後ギリギリまでいたので、帰りも結構並んで地下鉄へ。帰りのゲートを出てから地下鉄までの列は、そのまま友人宅へ行き泊めてもらって次の日、飛行機で東京へ。はじめて伊丹空港に行きました。大阪までは新幹線でしか行ったことがなかったので、1時間で羽田に着いて、上空から富士山も見られて、飛行機楽しかった! 何度も行った場所なのに、まだまだいっぱい初めてがあって、楽しい旅でした。各駅停車での移動もなんだか楽しくて乗り鉄さんの気持ちが少しわかったかも。今回もあまり着物が関係なくて、イベントレポートもいつも会期最後のほうで役に立たず恐縮です(爆)。来週からはまたぐっと着物の話題に戻してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします‥‥!

<番外>台湾女子旅。茶藝体験もしたよの巻

星わにこ
2025/10/01 00:00
瀬戸内旅から1週間。なんと今度は台湾に行ってまいりました。友人たちと作っている「フォントかるた」チームで、台湾のボードゲームイベントを見に行こう!ということになり、えいやっ!と出かけてきました。 この旅に着物は直接関係ないのですが、12月に「東京キモノショーin台湾」が開催されますし、おでかけになる方がいたら参考になれば幸いです。三泊四日でしたが、台湾までは飛行機で4時間足らず。朝家を出てお昼過ぎには台北の松山空港へ。 空港のセブンイレブンで交通系ICカード「悠遊カード」を買い、お金をチャージしてもらいます。これで地下鉄やバスも乗下車時のタッチで簡単に乗れますし、バス(時刻表がなく、来たバスに手を挙げて乗る方式)がバンバン走っているので使いこなせば移動も楽々です。 Google Mapに目的地を入れれば、乗るバスの路線ナンバーを教えてくれるので、初めての街でも目的地に行けて素晴らしい。謎解きが得意なメンバーが先頭に立って導いてくれて、後ろをついていっただけですが、結構感動でした(ゲームでも現実でも勇者ではなく遊び人スタンスのわにこ)。 問屋街の迪化街で買い物をしたり、夜市で食べ歩き、千と千尋の神隠しのモデルかも?と有名な観光地の九フン(※フンはにんべんにに「分」)にもバスでGO!! とっても便利なバスですが、びっくりしたのがとにかく運転がアグレッシブなこと。昭和時代以来の「やばい車に酔うかもしれない」経験をしました。九フンへの道は山道なのですが、イニシャルDですか?という攻め具合で、なかなかスリリングでした。 観光、イベント見学、書店巡りなどなどの合間で、台湾茶の茶藝体験もしてきました。茶藝館では、台湾茶を作法にのっとって味わうことができます。今回はおしゃれな青田街にある築100年以上の日本家屋をリノベーションした「青田茶館」へ。ギャラリーを兼ねた素敵な空間で、功夫茶と呼ばれる作法でお茶をいただきました。 まず茶葉を選ぶとスタッフさんが、日本語でお茶の淹れ方や飲み方を教えてくれ、自分たちでもお湯を足しておかわり自由。 茶盆というお湯をこぼしても大丈夫なお盆の上に茶器を並べ、茶壺(急須)、茶海(ピッチャー)、茶碗などを手順に則って温めてから茶壺に入れます。茶壺は小さめであふれるほどお湯を注ぎ、茶葉にあわせた抽出時間を待って茶海にお茶を注ぎます。そこから聞香杯という器に人数分のお茶を分けます。 一煎目は聞香杯に茶碗で蓋をし、天地を返して茶碗にお茶を移します。空になった聞香杯でお茶の香を楽しみ、茶杯でお茶をいただきます。東方美人茶というお茶をオーダーしたのですが、さわやかな香りにうっとり。そしてお茶は一煎目はすっきり、二煎目からはだんだん茶葉が開いてしっかり……とお茶の味の変化も楽しめました。 平日の午前ということもあってか、お客様も少なく何度もお湯を注いでお茶をゆったりと楽しめました。1杯の量が少ないので何度もおかわりをするのですが、6~10煎味わえるそうで日本茶とは随分楽しみ方が違いますね。お点前は煎茶道に似ていました。日本の煎茶道が中国の喫茶法に由来しているのだそうです。 他にも九フンの茶房や迪化街のお茶屋さんでもお茶を淹れるところを見ましたが、小さな器たちを手順通りに手早く操ってお茶を供する様子はパズルやスポーツスタッキング※を見ているようでした。 そして何より茶器のかわいらしいこと!! サイズが小さいのがきっと私の中の女子のおままごと心をくすぐるのでしょうか……すっかり目がハートに。こんなふうに家でもお茶を楽しめたら……と夢が激しく広がりましたが、いや置くとこないな……と現実に戻り(笑)、茶葉だけを買うことに。 よい茶葉は当たり前ですがよいお値段で(爆)いろいろ悩んでお茶なのにミルクやバニラのような甘い香りがすると聞き、金萱茶という1980年頃に作られた品種の烏龍茶を購入してみました。家で味わってみると、本当に甘い香りがして、味はさっぱり。ちゃんと家でも急須やカップをあたためて淹れたら香りがたって、とても美味しかったです。これはしばらく楽しめそう。それにしても台湾のお茶がこんなに高価なものとは知らず、お土産でいただいた茶葉を何が正解か分からず適当に飲んでいたことを激しく反省しました。 台湾は、何を食べても優しい味でとても美味しく、私の行った観光地や台北市内では日本語も英語も結構通じるし、小さな親切をたくさんしてもらいました。そして街中は漢字だらけで、なんだかちょっと懐かしくあまり異国にいる感じがしませんでした。鉄道博物館などでは日本が統治していた頃の様子が窺えたり、勉強不足も痛感。東日本大震災の時に台湾が大きな支援をしてくれたことは有名ですが、ちょうど旅行の頃東部で台風18号で大変な洪水被害が出たそうで、帰国してから少しですがネット募金もさせてもらいました。一日も早く平穏な日々が戻りますように‥‥。 なんだか浮かれポンチな旅行記が続きましたが、これまで結構なひきこもり人生だったのを、今年は誘ってもらったら出かける!というスタンスであちこちに出かけています。やっぱり実際にこの目で体験しなければ知ることができないことがいっぱいだ!と再確認しています。50代以降の母たちが、急にバリバリ旅行に行き始めてなんだろう?と思っていましたが、子供の手が離れてあと何年体が動くだろう?と思ったら、そりゃあ旅にも行きたくなるよね!と納得している昨今です。あまり着物と関係ない上に長い番外編で失礼いたしました。 ※スポーツスタッキング:プラスチックカップを積み上げたり崩したりしてタイムを競うスポーツ。

瀬戸内アート巡り。豊島・海のレストランに海の浴衣でGOの巻

星わにこ
2025/09/24 00:00
今年はなにかに取り憑かれたようにあちこち旅しているわにこです。もともとインドア派で家にいるのが一番好きで、旅行は積極的にしたことがない人生なのですが、もうすぐ還暦ともなってくると体力の衰えがひしひしと感じられ、あれれれ、出かけたくても出かけられなくなるのでは?と思い、行ける時に行くか!とお誘いいただいた旅にどんどんくっついて行くことに。 先週はずっと行きたいと思っていた瀬戸内の島アート巡りに行きました。直島、豊島、犬島と二泊三日で、達人のご案内で瀬戸内アートを堪能しました。今回ちょっと長文で失礼します。 雨と曇りの予報が続いていてどうかなあと思っていたのですが、4人の旅メンバー中2人が協力な晴れ女だったためか、初日以外は晴れて暑くなり、真っ黒に日焼けして帰ってきました。 出かける前にベネッセアートサイト直島で、美術館や家アートのチケットを購入。大人気の瀬戸内国際芸術祭の期間外だったのですが、それでもチケットは争奪戦。時間制のところもあり、達人の綿密なスケジューリングの元、しっかり予約をしていきました。 1日目は羽田から高松、そして直島に渡り1泊。 有名な草間彌生さんの南瓜、黄色と赤で記念写真をパチリ。このためにsousouの長方形衣のおはじき大を着ていきました。黒い水玉の南瓜とワンピースのおばさんの写真を見た子供に「同じ毒を持っている」といわれました。本望です。。。 この春開館の直島新美術館と、地中美術館では安藤忠雄ワールドを堪能。コンクリートの質量と、そこから差し込む光を見上げて自分のちっぽけさといてもいなくてもいい感が感じられて心地よかったです。南寺、安藤ミュージアムでも同様に、自分の存在って思っているより感覚的なものなんだなと思えて、気持ちが軽くなりました。自然光で見るモネの睡蓮、ジェームズ・タレルの光の魔術、村上隆のバチバチの色彩。屋外の巨大アートも島の自然に溶け込んで素晴らしかった。 夜は民宿と居酒屋で一杯。タコの唐揚げと枝豆がめっちゃ美味しかった。 2日目は朝に南寺などを巡った後、昼に豊島へ渡り1泊。 豊島ではレンタカーを借りて4時間弱で島アート巡り。美しい青空の日で、海辺のアートもキラキラ。はしゃいで海に足をつけたり、ジャンプしたり満喫。棚田や海などの自然も目に栄養でした。 豊島美術館のシェル構造の「母型」では、靴を脱いで、水滴の中に吸い込まれるように中に入るとそこは見たことがない不思議な空間。ぽっかりと空いた開口部から青空と木々がのぞき、風が吹き抜けていました。思い思いに過ごす人々。私もおそるおそる座り、生きているように蠢く水滴を見つめ。やがて横になって天井を眺めれば、水面の光が反射し、波紋が映っていました。天候や季節によって、またこの空間は全然違ったものになるのでしょう。心が鎮まる得難い体験でした。 お宿は豊島エスポワールパークへ。オープン前からたくさんの友人知人が関わっていてお話を聞いていたこともあり、また英国BBCによる『The 25 best places to travel in 2025』にもおすすめされているエスポワールパークに一度行ってみたい!という夢が叶いました。  ディナーは「海のレストラン」。数年前に訪れた達人に海の景色と夕陽が素敵よ、と聞いていたので、ぜひ!と予約。着物好きのメンバーだったので、メンバーの還暦祝いでもあるし浴衣でいきましょ!と話がまとまりました。 せっかくだから、海の模様の浴衣が着たいなと思い「浴衣着てもいい?」と聞いたら着物好きのメンバーからは「わたしは薔薇の阿波しじらかな」「おニューのセオアルファ仕立てたからそれで」「南部古代型染の木綿着物で行くわ」とぽぽぽん!と決まりました。みんな持ってんな(笑) 浴衣と半幅帯、うそつき衿を持っていき、夕方ホテルにチェックインして部屋で着替え。足元は荷物になるからもうサンダルのままでいいよね、と気楽に。サンセットタイムに間に合った!! 地の素材でシンプルイタリアン、本当に美味しくて、なによりスタッフさんたちのおもてなしがとてもスマートで心地よく、本当に素敵な時間となりました。実は、東京で豊島のイベントが開かれた時にビンゴでこちらのディナー券を当てていた私。いや来られてよかった!感謝です!! 私の海の浴衣は、人魚、お魚、海星、蟹、タツノオトシゴ、海藻などが薄いブルーに白い線で描かれているのでよくみないと何の絵か気づきにくく、それもお気に入りです。人魚の尻尾をエビフライに見間違われたりしましたが(爆)海つながりで、海のレストランで着られたこと、なによりよい思い出になりました。この先、この浴衣に手を通すたびに海のレストランとこの旅を思い出すことでしょう。 荷物になるし、まいっか、と思わずに、持って行った自分えらい! 面倒臭いからいいわなんて言わずに、私も着る!って言ってくれたキモトモ(着物友達)にも大感謝!!! 3日目は、犬島に渡って犬島製錬所美術館で廃墟トリップして、家プロジェクトを周り、大宮エリーさんのフラワーフェアリーダンサーズを見て魂の安寧を祈り、美味しいランチを食べて帰路に。そして船を乗り継ぎ、飛行機に乗ってあっという間に東京に戻ってきてしまいました。 行くまではちょっと「アートとかわざわざ島に?」という気持ちもなくはなかったのですが、実際にその地に立ってみて「島でアートを楽しむ意味」が少しわかった気がします。アートを楽しむための島はどこも洗練されていて、そこに世界中から人が訪れ、ベネッセが地元にこだわり、産業でなく文化を耕し続けた凄みが感じられました。文化、大事。 そして着物で旅行に行ったこともあるけれど、あまり気負わずに旅先でちょっとだけ着物を着る、というのもありで、楽しいなと再確認の旅でした。

やっぱり和装ブラのサイズって大事だったの巻

星わにこ
2025/09/17 00:00
ちょっと痩せてもすぐ元に戻ってしまうチームふくよかのわにこです。去年は一念発起してジムに通って4キロくらい痩せたんですが、じわじわとそれがなかったことになっている昨今。夏は体調を崩したこともあり、とにかく楽な服装で過ごしていたらそれも元に戻れなくなり、シェイプアップ効果のある下着とかもう着たくない……という状態に。 その流れで、着物のときも和装ブラをいつも使っているものから1つサイズアップしてみたんですね。そしたらいやこれ、すごく楽! いつも「寄せて上げて胸の真ん中に集めて鳩胸にすると綺麗です!」と皆様に熱弁をふるっているわけですが、楽を選んでみました。 寄せて上げてはちょっと甘いがまあ胸はフラットになってるし楽だしいいか、と着物を着たら……。自分ではほんのちょっと楽をしただけのつもりが、いつもとシルエットが全然違って大ショック!! ちょうど銀座いち利の横浜店さんにお邪魔する日だったのですが大反省でございました。反面教師としていただきたい……。 普段着で誰に会うというわけでもない日はいいかもしれないけど、やはり綺麗に着たい日はちゃんと寄せて上げないとあかん……と痛感。このへんも、自分がどこまでよしとするかという部分ではあるのですが、私的にはまだサイズアップはしない方向を決意しました。(痩せろというツッコミはなしで……泣 ぶっちゃけ和装ブラのサイズだけで、体重3キロは違って見えると思います。これも以前散々サイズ選びで試行錯誤したところです。具体的に言うとMかLの間で悩みに悩んでいろいろ着てみて落ち着いたのは、たかはしきもの工房のPut on キモノブラならL(短時間着用でめっちゃ細見えを狙うならM)涼子ならMでした。これでずっと来たのですが、涼子をLにしてみたらもうあかんかったですね。胸が流れてしまいました。体型変化や加齢もあると思うけど、もうほんとサイズが変わっただけででこんなに違うのか!と実感でした(さめざめ)。 いつも「苦しくなければジャストサイズか小さめを選んで」と言っているのに、自分で大失敗の巻。いい経験でした。自分で痛い目を見ないとわからないこともありますよね(泣)。ちょっと大きいブラはもう少し太ったら……じゃなくて、カスタマイズにチャレンジしてみたいと思います。 この辺も、本当に自分との相談な部分ですよね。人に見られてどうとか、正解がこれだから、とかいうのではなく、私が着物を着るのは、楽しくてわくわくするから。だからこそ「綺麗に着れたな!」という満足感が私にとっては大事なのです。だからいつも綺麗に着られる方法を考えています。 でも、なるべく楽に簡単に着たい。常にこの二つを両立するポイントを探し求めているような気がします。自分が「これでいい」と思えるバランスが大事なのかなと。 わかっていてもいつもうまく行くわけじゃなく、ここが気に入らない、失敗したあ、どうだ今日はちょっといいぞ、次はもっとなんとか……というのを繰り返しながら、なにかのの階段を登っているのかなあと思う今日この頃でした。

長襦袢の身幅が足りない時の超☆裏技その2!の巻

星わにこ
2025/09/10 00:00
久しぶりに出してきた長襦袢、あれっ、衿がうまくあわない……ということありませんでしょうか。深く合わせられない、襟の角度が鋭角になってしまう……。そんなときは身幅が足りなくなっているから。 仕舞っているうちに、縮んでしまったのね……という冗談はさておき、なんで夏痩せもしないで育っているのか、自分に問い掛けたい案件です。もう最近はあきらめてうそつき衿でずっと過ごしています。(痩せる予定はあるんです、あるんですよ) 襦袢と着物の身幅問題は横成長族にはシビアな問題で過去こんな裏ワザをお友達の敏腕着付師じゅんちゃんに教えてもらって助けられました。 関連記事:長襦袢の身幅が足りない時の超☆裏技!の巻 関連記事:身幅が足りない着物を裾つぼまりにする方法の巻 そして先日、じゅんちゃんに会ったときに「もう1つ襦袢の衿をしっかりあわせる裏ワザがあるんです!」と伝授してくれました。私の身幅問題を覚えていてくれてありがとう……。 それは、三河芯を使って、襦袢の地衿を広くする方法。広衿に改造する感じです。三河衿芯でもいいのですが、しっかり広げたいときは帯芯を切って使うと幅がとれますよ!とのことです。 なるほど、以前は脇の馬乗り部分を解いて衿の合わせを深くするというやり方でしたが、今度は衿自体の位置を動かしてしまうわけですね! 実際その方法で衿を深くあわせられるようにしたものを見せてもらいました。なるほど! この方法、身幅狭めの関東仕立ての襦袢にもよく使われているとのこと。 三河芯は衿芯にもなるものですが、この場合は地衿の幅を広げる役割なので、衿芯は別途入れるようにしてあります。三河芯は使う前に揉んで洗って柔らかくすると、馴染みやすい。 普段の洋服感覚で行くと、既製品に体を合わせるように考えがちですけれど、着物はそもそもお誂え。もったいなかったり、簡単に買い替えしづらかったりするものだからこそ、自分の体型に合うように工夫すればいいんですよね。 とはいえ秋のさらなる増量は避けたいと決意を新たにする私でした……。

うそつき衿で秋も浴衣を活躍させよう!の巻

星わにこ
2025/09/03 00:00
9月に入りましたが相変わらず暑くて、とてもじゃないけど夏ものは手放せない今日このごろ。とはいえ、さすがにずっと浴衣でおでかけもどうかなという時に、うそつき衿で浴衣を着物風に着るのは有効技ですよね。 うそつき衿はその名の通り、襦袢は着ていないけど着ている風にうそをつく、見せ半衿のこと。半衿つけの手間がかからないこともあって1年中愛用している方も多いと思います。私もほとんど長襦袢を着ることはなく、うそつき衿で通しています。 なにがよいかというと、長襦袢を着なくていいから、涼しいし楽。半衿をつけたまま洗濯機で洗ってしまって手入れも楽。 襦袢相当の袖をどうするかという問題はありますが、普段着や浴衣であれば袖もなくても平気です。汗の問題がありますから、筒袖か、筒袖相当の袖があればOK。浴衣下スリップにうそつき衿を装着すれば、浴衣も夏着物風に着こなせるというわけです。 さすがに昔ながらの綿の平織で白紺の「ザ・浴衣」はちょっと難しいかもしれませんが、今時の素材の浴衣なら十分着物風で着られると思います。そのあたりは自分がOKと思える感覚と相談してください。 あと、衿をつけたら足元も足袋を履くとより着物感が増します。このあたりはそもそもなんちゃってなわけなので、決まりが明確にあるわけではなく、暑いから今日は素足で下駄にしようかな、とか白足袋に草履でキチンと感アップとかそのシチュエーションで選んでいただいて良いと思います。余談ですが、塗りの下駄に足袋を履くとすべることが多いので、なんでもないところでつまづきやすくなってきた世代以上の方は注意です(真剣)。 浴衣や、暑い時期だけでなくうそつき衿は本当に便利なのでちょっと熱く語ってしまいます。うそつき衿と一言でいってもいろんなものがあり、大きく分けて2種類あります。 一つはかぶせ型で、襦袢の衿にかぶせて使うもの。美容衿や、あずま衿などといわれるちょっとソフトで衿が広衿になっていて2つに折るタイプがそれです。これは襦袢の地衿がないと使えないので、単独だとへにゃっとなってしまいます。「うそつき衿はダメだった」という方はだいたいこのかぶせタイプを単独で使おうとしたためイマイチだったということが多いです。 あとは襦袢にファスナーやスナップで衿をつけるのもうそつきと言われたりします。どちらも襦袢ありき、のうそつきです。 もう一つが単独型で、襦袢が必要ないもの。こちらが「秋浴衣」にはおすすめです。襦袢を着ないと使えないのであれば、結局暑くなってしまいますから、襦袢を着なくても衿だけでOKなものがいいですよね。 単独型にもいろいろな種類があります。 (1)棒状の衿に衣紋抜きと固定する紐やベルトがついているタイプ    最小限の布なので一番涼しい。うまく固定するのにコツがいる   (2)半襦袢の袖なしで脇が縫ってないものに衿がついているタイプ   布地が少ないジレタイプもあり    安定しやすい。布がある分暑い。 (3)Tシャツに衿が縫い付けてあるタイプ    紐で固定しなくていいので楽。体型に合わないと衿が決まらない  市販品もあるし、手作りされる方もいます。私は単独型(1)のタイプでたかはしきもの工房のうそつき衿を愛用しています。ウエストより下でベルトで固定するので、胸紐で固定するタイプより楽だからです。これは本当に好みだと思いますので、使いやすいものを見つけてください。 納得のいくうそつき衿が見つかると、着物ライフの楽さが格段にアップしますよ! 浴衣もまだまだ活躍しますし、ワンピースなど洋服の上にうそつき衿をつけて、着物を羽織るなんていう気軽な着方も楽しめます。1年中まだ試してないな、とかいまいちうまく使えなかったという方ももう一度、ぜひお試しください。

日舞発表会で衣裳着付見学2025☆「鷺娘」の巻

星わにこ
2025/08/27 00:00
毎年8月に楽しみにしているキモトモ(着物友達)の日舞発表会。これまでもコラムにも何度か書いてきたのですが、今年はあの「鷺娘」を踊るということで、またまた舞台裏の見学をさせていただきました。 「鷺娘」は人間に恋してしまった白鷺が、美しい娘の姿になって舞うけれど、恋は叶わずその命が尽きてしまうという悲恋を描いています。人魚姫みたいですね。雪景色で姿を変化させながら舞う鷺娘が印象的で、映画『国宝』でも(こちらは歌舞伎版ですが)主人公の運命の象徴のように描かれていました。坂東玉三郎丈のシネマ歌舞伎も有名ですよね。 歌舞伎だけでなく、人形浄瑠璃や日舞でも人気のある演目で、衣装も髪型も何度も変わり、見せ場が多い。日舞を嗜む人なら「一度は踊ってみたい」と思うのではないでしょうか。 雪が舞う冬景色の中、白無垢に綿帽子姿で現れた鷺娘。重ね着した白い着物を引き抜きの「かぶせ」という方法で取り去って、赤い振袖姿に変わります。仮糸で留めてある二重仕立ての衣装を、舞台上で後見さんが引き抜きます。 綿帽子も取り去ると、鬘も可愛く赤いかんざしの可愛らしい娘姿で恋の始まりを表現。こちらは「クドキ」というパートだそう。 前半から後半の間に舞台袖に引っこみ、衣装替えとかんざしのチェンジが行われます。衣装さんが二人がかりで橙の振袖に着替えさせて、床山さんが白いかんざしにチェンジ。 秋色の振袖姿で恋の深まりと季節と心の移ろいを表し、最後に引き抜きのもう一つのバージョン、「ぶっかえり」といって上半身の着物を脱がせて腰から下に垂らして白鷺の姿に変身。叶わぬ恋のため地獄に堕ちてしまった……ということで鬘もシケを垂らして、後ろも捌いてザンバラ髪になります。「反り」のポーズや錫杖を振り回す激しい踊り、舞い散る雪とともに舞台は最高潮に。 最後、歌舞伎版では白鷺は息絶えて終わるのですが、この舞台では『二段』という一段高い場に登って決めポーズで幕が降りました。 普段から体幹を鍛えたり筋トレをしたりしながら、2年かけて振りを覚えて舞台に臨んで、見事踊り切ったキモトモに、応援に集まった友達みんなで惜しみない拍手を送りました。本当に、素晴らしかったです。 こちらのコラムでも何度か紹介させてもらったキモトモの日舞発表会ですが、習い始めて12年。大きな演目に挑む姿に感動しました。 関連記事:日舞発表会で衣裳着付見学☆藤娘って美しい!の巻(2016年) 関連記事:Youtubeで日舞発表会。舞台裏を覗いて来たよの巻(2020年) 舞台が終わった後、衣装のままでロビーに出てきてくれる時間があり、みんなで記念写真を撮らせてもらいました。こんな風に写真タイムがある発表会は珍しいので、毎回の楽しみでもあります。 特別に着付なども見学させていただいたのですが、松竹の衣装さんの着せつけの手際のよさ!! 踊っても着崩れず、美しく、またひきぬきなどの特殊な舞台衣装を二人でサクサクと10分ほどで着付。 途中、舞台袖での着せ替えも振袖を着付け直すのも、早い!!! ここではかんざしもチェンジがあり、着替えている間は後見さんや他のお弟子さんに扇であおいでもらったり、水分補給などもさせてもらうため「ちょっとセレブ気分だった」とキモトモは言ってました(笑) 鷺娘の鬘は2キロほどあるそうで、最初は潰し島田に結われたものが、途中でかんざしを変え、さらに地獄に落ちるシーンでは髷を解かれて振り乱すため、発表会などでは鬘が落ちないように羽二重に両面テープを貼って固定するのだとか。衣装も重いし、体力がなければ務まりませんね。 今回鬘を担当された床山さんはなんと映画『国宝』で吉沢亮さんにも鬘をつけたそう。「映画をきっかけに歌舞伎を見てくれる人が増えればいいんだけど」とおっしゃっていました。 これは最初の鬘の様子で、場面が進むにつれて乱れていきます。ドラマチックですね。。。 他にも藤娘や娘道明寺など華やかな演目が続き、まさに日舞は「日本の美」。目の保養をさせていただいた感謝の1日となりました。 取材協力:「藤蔭善次朗日本舞踊教室」

子育てがんばった!自分へのご褒美着物。の巻

星わにこ
2025/08/20 00:00
よく「自分へのご褒美」なんて言いますが、今年は私も自分への「ご褒美着物」を買っちゃいました。なんだかんだでいろいろ自分にご褒美をあげているわけですが(笑)今回は5月に新潟は十日町への研修旅行のときに一目惚れした小千谷縮をお迎え。それがこの8月に仕上がってきました。 薄紫の大きめの格子柄で、和裁師さんが上手に柄合わせをしてくださったおかげで、脇に濃いラインが入り、ちょっと細見え。これがまた嬉しい! 小千谷で湯もみの工程などを見学させていただいたこともあり、愛着もひとしおです。大好きな皆さんとの旅行も楽しかったし、畳紙を開いてはニヤニヤ、閉じてはまた開いてニヤニヤ……。さて、いつ着ようかなと考えていたところ。 ちょうど子どもが8月で20歳を迎えたタイミング。「私もよく頑張ったなぁ」ということで、同じく8月生まれのお子さんがいるママ友と、子どもたちの誕生日祝い兼母たちのご苦労さん会を企画して、恵比寿にローストビーフを食べに行きました。 暑いし体力も落ちてるし、どうしようかな~と思ったのですが、せっかくなのでこの小千谷縮のしつけ糸を外して、初めて袖を通すことに。ディナーだったこともあって、暑さも落ち着いて過ごしやすく、ひさびさにゆったりと食事を楽しみました。子どもたちもすっかり大人になって、シャンパンとサングリアで乾杯。あの頃は小さな子どもを連れての外食は大騒ぎで、着物どころではなかったのに……本当に遠い昔のことになりました。 いや~、大きな節目を一つ乗り越えたな、という気持ちです。 そんな私の20年前の出産は、今思い出しても命がけでした。私は高齢出産で子宮筋腫の手術歴もあったため、帝王切開での計画出産の予定だったのですが、予定日の2日前に思いもよらない激痛が。夜中に緊急入院したところ、子宮破裂を起こしていたそうです。あとから夫に聞いた話では、当時「母体は生存確率2割、子どもは4割」と告げられていたとか。 幸いお医者さまたちの必死の処置で二度の手術を経て、一命を取りとめました。子どもも無事で、本当に奇跡のようでした。 輸血は8リットル。全身麻酔から覚めた時、人工呼吸器をつけられていて夜間だったためしばらく外せず、それがすごく苦しかった。外科病棟にいて、子どもと対面できたのは出産から3日後でした。元気な赤ちゃんですよと聞かされていたものの、自分の状態が悪くて会うことができず、本当に無事なのかなと不安でずっと泣いていたような気がします。 出産後も体力が戻らず、上京してくれた義母や母に助けてもらう日々。母子手帳を見たお医者さんに「ご本人ですか?」と驚かれるくらい、生きているのが不思議なほどの出産だったようです。実は私自身も、仮死状態で生まれ血まみれで24時間保育器に入れられていたそうで……。まさに九死に一生を二度味わった人生。改めて産婦人科に携わる医療関係者の皆さんへの感謝でいっぱいです。 「出産は病気じゃない」なんてよく言われますが、決して安産ばかりではなく、命を賭ける場面になることもある。身をもって実感しました。 今は子どももすっかり手が離れて、あとは学費だけが課題です(笑)。友人の中にはもうお孫さんが誕生した人もいて、私も次のステージに差しかかっているんだなぁと感じます。 この頃はもう友達もお孫さんが誕生している人も多く、私もさらに大人の階段を登ったんだな~としみじみしています。このコラムの担当さんにもお子さんが生まれて勝手にばぁば気分で話を聞かせてもらって幸せのお裾分けをしてもらったり。もうね~ほんとね!!赤ちゃんは天使ですよね!! うちの子の未来は神のみぞ知るですけれど、若い頃インド人の占い師さんに「あなたは73歳まで働き、孫もできる」と言われたことがあります(笑)。それを聞いた時は「え~そんなに働くの~」と思ったけど、今は妙に現実味のある数字になってきました。 女の人生ってまあいろいろありますよね。人には言わなくても、それぞれが何かを乗り越えて生きているんだと思います。そして、ときどきご褒美がなければやっていられない。私にとって着物はそのご褒美であり、着るたびに気分が上がるし「これはこんな風に私のところに来たな」とか「あのとき着たものだな」などと思い出を呼び起こす装置でもあります。 この先のおひとり様人生も視野にいれつつ、これから先、あと何回着物に袖を通せるのかはわからないけれど、ハッピーな気持ちでまた着物に袖が通せるよう、日々を大切に積み重ねていきたいと思っています。

自分好みの素材と長さの腰紐は超楽ですの巻

2025/08/12 00:00
皆様腰紐はどんなものを使ってらっしゃいますか? 腰紐って実は結構好みがあって、十人十色。 素材はもとより、細め、太めなどの好みもさまざま。最近は「結ぶ」ということが苦手な人も増えているためか、ワンタッチのウエストベルトを使う人も多いですよね。 ざっと思いつくだけでも結ぶタイプで7種類ほど。 モスリン(毛織)は使っている方が多いのではないでしょうか。手触りは少しざらざらで滑りにくく、結び目が緩みにくいし、適度な厚みで結びやすいです。一方、ボリュームがあるので、暑かったりもたつくことも。古いものは虫食いが出やすい。 木綿は手触りが優しく、汗も吸ってくれます。洗濯に強いですが、やや滑りやすい。生地が薄いと食い込みやすい。 正絹はしなやかで結びやすく、緩みにくい。シュルッとした手触りも魅力です。水や汗に弱いという弱点も。 ポリエステルはなどの化繊は、安価で軽量、発色がきれいですが、滑りやすく結び目も緩みやすい。 ゴム入り(すずろ、シャーリングなど)は、ゴムの摩擦で着物が安定します。伸縮性があり楽という声も。ゴムが劣化すると効果が半減。 幅広タイプは、素材さまざま。胸紐や伊達締めを使う人もいる。幅広だと、圧力が分散されてシワになりにくく、身丈が長い着物に使うとおはしょりが綺麗になる。着物の長さをとるので、身丈の短い着物には不向き。 最近は「きんち(絹地、絹縮)紐」といわれる楊柳タイプの紐も人気です。素材は正絹で、ある程度厚みがあるもののほうが扱いがしやすいです。しなやかで、ごろごろしないし、軽くて手触りもいいのでテンションがあがります。綺麗な色のものも増えましたね。 結ばないものもあって、全てがゴムでできているウエストベルトで、金具で止めるタイプも。結び目がごろつかないので愛用する方も多いのではないでしょうか。 昔の腰紐で、薄い生地の中に芯があって、くちゃくちゃっと丸まっているものが箪笥から発掘された理もすると思います。他にも手作りなども含めればまだまだ腰紐はいろいろなものがあります。 要は「腰紐」の役割を果たせばいいわけですから、他にも可能性があるかも。先日はレンタルの着物セットについてきたポリエステルの楊柳生地を紐の幅に切っただけ、という腰紐(?)を見て「これもありなのか」と驚愕したことも。 私自身は何を使っているかというと、少し細めの綿の平紐タイプか、きんち紐です。どちらもあまり嵩張らないので、身丈が短い着物でもおはしょりがとりやすくなるのです。頂き物の着物やリサイクルのものなどは身丈が足りないことも多いので、この2種類は重宝しています。 個人的な感覚なのですが、ゴムタイプは、楽なようでいて常にじわじわ締め付けられている感じがしてちょっと苦手です。紐でカチッと止まる感じが嫌だという方もいますし、いろいろな選択肢があるので自分の体感を優先してください。 腰紐は自分に合った素材と形状を選ぶのが第一歩、次に着付時間が超短縮できるのが、自分にあった長さのものを使うことです。 腰回りが大きい場合は「長尺」を使うのはもちろんですが、逆に普通尺でも長すぎて結んで余った分の処理が毎回面倒だなと思う人は処理が楽な長さに切ってしまえばいいのです。 よく使う腰紐一本をマイサイズの長さにするだけで、着付時間が短くなり、小さなイライラが解消します! 胸紐や伊達締め、仮紐も自分に合わない長さのものをプチストレスを感じながら使うより、長さを自分に合わせてしまえばいいのです。 きんち紐などは勿体無くて切れない……という方もいますが、もったいない>楽 なら切らなくてOK。もったいない<楽 なら、切ればよし。 着物や帯も圧倒的にマイサイズが着やすいわけですから、腰紐も自分サイズにカスタマイズしてみてください。あと、人には見えないものですが好きな色や柄、手触りなどお気に入りのものを使うとテンションがあがりますよ。たかが腰紐と侮るなかれです。 もし今、なんとなくそこにある腰紐を使っていたら……着付の要、腰紐も自分のお気に入りを見つけてくださいね。

夏の着物と美術鑑賞は心の栄養の巻

星わにこ
2025/08/06 00:00
毎年暑さが増していくような気がする夏。それでもやはり日傘に着物姿を見ると「涼しそう」と思うのは日本人だからでしょうか。 着ている本人は暑いのはよくよく知っているはずだけど、それでもそんな女性を見ると素敵だなと目で追ってしまいます。 花火大会に行く若い人の浴衣姿とはまた違って、大人の女性がびしっと夏着物や浴衣を着こなしているのを見ると、よくぞと夏着物を着る気概に惚れ惚れしますね! そんな私はというと今年は週3着物を着るぞ!と宣言したにもかかわらず6月にすでに熱中症になりかけかなりペースダウンしている状況のヘタレでございます……。「いのちだいじに」作戦です。 先日もいつもの着物仲間と五島美術館の「極上の仮名 ─王朝貴族の教養と美意識─」に行くことになったのですが、安定の真夏日&体調イマイチということで洋服参加。でも、私以外の4名は着物姿で、本当に目の保養をさせてもらいました。 小千谷縮、綿麻、セオアルファとそれぞれ夏らしい華やかさ、涼やかさあふれる着こなしで、素敵100万点。 五島美術館はお庭も素晴らしく、照りつける太陽と木陰のコントラストの下を日傘で歩く姿は絵になるぅぅ!! 美とは、お洒落とは、健康あってこそ……! もう若い頃のような無理はできないし、これからますます衰えるであろう体力をちょっとでもなんとかしないとと切実に思いました。 そしてほそぼそと仮名書道を習っている身としては、本で目にしている古筆切の実物が!!これでもか!!と展示されているのに大興奮! 皆様と別れてしばしぐるぐると1000年前の紙と墨を目にする奇跡!! 特にこの3年ほど高野切第一種の臨書を続けているので、これが!!紀貫之様(推し)の書いたお手蹟!本物!!と、凝視しすぎて目が血走っていたかもしれません。印刷物では見ることのできない、料紙の雲母砂子のキラキラに気絶しそうに。 キモトモが「こんな手蹟(て)のお手紙をもらったらそれは惚れるわよね」と言っていましたがウンウンガクガク頷きまくり。 他にも藤原行成、公任、小野道風はじめ綺羅星のようなスーパースターズの書蹟がずらり!! そして表装の、使われている古裂の素晴らしいこと………。 「こんなに揃うことは滅多にありません」と館長さんもおっしゃっていましたが、弩級の感動でした。今回もキモトモに行こうよと誘ってもらって会期終わりギリギリに駆け込んだのですが(会期が終わってからコラムを書いてすみません……)、本物の持つ力に圧倒され、本や動画を見て分かったつもりになっていないで、チャンスがあれば自分のみたいものを見に行こう!という気持ちになりました。 着物に、仮名書に……目と心に栄養の夏の日でした。

国立能楽堂オープンデイに行ってきたよ!の巻

星わにこ
2025/07/30 00:00
キモトモ(着物友達)に教えてもらい、国立能楽堂のオープンデイに行ってきました。能楽師さんに案内してもらい、能楽堂の舞台や楽屋などを見学でき、しかも入場無料、事前申し込み不要、写真撮影OK(一部不可)という太っ腹な企画。行くしかない! 初回の7月は、金春流の能楽師、山井綱雄先生、村岡聖美さんらによるご案内でした。この春「縁~ENISHI~」という能舞とピアノのコラボレーション公演を見たばかりということもあり、至近距離で山井先生の説明が聞けてドキドキ。 国立能楽堂は、1階の舞台だけでなく、2階には若手能楽師の研鑽の場があり、地下にはライブラリーがあり、過去の資料や映像が収められています。現代の能を鑑賞できるだけでなく、700年の歴史を持つ伝統芸能である能楽を記録し、未来へ伝えていく施設でもあるのですね。 いつも客席から見る能舞台をまず見学。屋内なのに屋根がついています。これはかつて江戸城の北の丸にあった能舞台を再現したもの。明治以前は屋外で行われていたため、このような形になっているそう。 いつも能舞台を見ているとかなりの確率で眠気に襲われるのですが、決して退屈してしまうせいではなく、能の持つヒーリング効果のため。科学的にも証明されているそうです。なんだかちょっと安心しました。 その後、いよいよ関係者以外お断りのスペースに案内していただきます。本来は白足袋で入る場所。白い靴下をお借りして、上がらせていただきます。 まずは楽屋。お家元が座る場所が上座にあり、六部屋の楽屋の襖が開け放たれてすべてが見渡せるようになっています。役柄(シテ方、ワキ方、狂言方、囃子方)によって使う部屋が決まっており、とても厳格な環境。お家元が座る位置から眺める「家元ビュー」は、整然とした畳の間を一目で見渡せて、ものすごい特別感でした。 その後、能面と装束の見学をさせていただきます。若い女性を表す「小面(こおもて)」、女性が嫉妬で鬼に変貌する「般若(はんにゃ)」、狐などの動物の神霊に使われる「小飛出(ことびで)」などの面。女性の鬼にはツノがあるけど、男性の鬼にはない、というお話も。狂言の面との違いなども興味深かったです。 唐織や縫箔などの豪華な能装束、庶民的な麻の狂言の装束など、こんなに近くで拝見してもいいの?という近さ、しかも写真撮影OKという……贅沢体験です! 装束が本当に、豪華で美しくて目が釘付け。着物好きにはたまらない瞬間かと思います!! そしていよいよ舞台への入り口近くへ。 楽屋の中でも特に神聖な場所「鏡の間」。ここが! あの! シテ(主役)が能面をつけるために使う場所(漫画の知識)。 ここで能楽師は能面に一礼し、能面をつけることで役を憑依させ「無念夢想」の境地で舞台に臨みます。実際、能面をつけると視野が狭まって集中が深まり、自分という存在を消して役に入り込めるのだそう。神聖な儀式を見せていただいたようで、背筋が伸びます。 ここから揚幕をくぐり、橋がかりをわたり、舞台へと進みます。釘を1本も使わず組み上げられた空間は、能舞台は日常の空間とは異なり、あの世や天国、地獄といった「異世界」を表現。やわらかな檜の舞台には、1983年の建立以来40年以上にわたってついた舞台の跡が残されています。しかし、なんとも清浄な空間で、立っているだけで気持ちが引き締まるようでした。 また、橋がかりを渡って、舞台裏に戻ったのですが、本当に異空間から現世に戻ってきた!という気持ちに。能は、神事なのだなあとしみじみ感じ入りました。 展示室も見学させていただき、無料なのにここまで見せていただいていいのでしょうか!と思わず拝むレベルでした。 最後にマスコットキャラクターの般若ちゃんと記念撮影をして帰ってきました。国立能楽堂の門を出るとこれまたさらにさらに現世に戻ってきた感。浮世の諸々が少し洗い流され、心がすっきりしたような気がいたしました。 この国立能楽堂オープンデイは毎月1回、来年の3月まで開催されています(2月はお休み)。毎回ご案内くださる流派が変わるそうです。お能が大好きな方も、どんなものか興味がある方も、大満足間違いなしの贅沢企画です。 着物で参加するときっと一層盛り上がりますよ! おすすめです!

ちょっとでも涼しく着る!夏の普段着物の十ヶ条の巻

星わにこ
2025/07/16 10:00
今年は早くから暑くなってしまい、少しでも気温が下がるとラッキーと思ってしまうくらいですが(でも充分に暑い)、それでも着物を着たい!というのはなんなのでしょうか。 無理して着なくてもいいのでは?と言われると、いやいや無理してませんよ!?という天邪鬼が出てきたり(笑)。暑い日に着る夏着物、謎の満足感がありますよね。やはり好きだから着る、ということでしょうか。 今回はそんな私が培った(?)夏のマジ涼しい着付ポイントプラスアルファ10ヶ条。目新しいこともないかもしれませんが、ちょっとおさらいしておきたいと思います。 1)着物を着るときはキンキンに冷やした部屋で 2)衣紋は抜きをちょいと大きく、衿元は、指1本入れて少し体から浮かせるとマジ涼しい 3)帯揚げしないとマジ涼しい 4)お太鼓より半幅や兵児帯マジ涼しい 5)ステテコはいたほうがマジ涼しい 6)角袖より筒袖がマジ涼しい 7)日傘必携 8)保冷剤を味方につけよう 9)暑い場所には居続けない 10)冷房対策も忘れずに 1から順にご説明しておきますと 1)着物を着るときはキンキンに冷やした部屋で 着物を着た段階ですでに汗だくにならないように、冷房の効いた部屋で着付を! 2)衣紋は抜きをちょいと大きく、衿元は、指1本入れて少し体から浮かせるとマジ涼しい 涼しさは、風の通り道があると段違い。衣紋が詰まると夏にハイネックを着ているようなもの。衿元が少し大きく空いて、さらに少し浮くだけで風が抜けます! 3)お太鼓より半幅マジ涼しい お太鼓は背中を大きく覆いますし、帯枕、帯揚げが暑い! 胸元の紐が2本なくなるし、半幅や兵児帯は軽くて楽ちんで涼しいです。 4)帯揚げしないとマジ涼しい お太鼓でも、普段着だったら帯枕にかけるカバーの色が白でなければ、帯揚げをしなくても気づかれない(経験談)帯揚げがないだけでかなり涼しくなるのでぜひお試しを。 5)ステテコはいたほうがマジ涼しい 汗は肌着に吸ってもらったほうが暑くない。特にステテコは足の間の汗を吸ってくれて快適です。 6)角袖より筒袖がマジ涼しい 角袖は、袖の部分が二重になるということですよね。それが筒袖だと、布の量が減って涼しいんです。 7)日傘と扇子必携 自分で日陰を作りましょう。着物に日傘は相性よしです。携帯扇風機もいいですがやはり着物のときは扇子がいいですよね。涼しげな風情も醸せます。 8)保冷剤を味方につけよう 物理的に冷やせ! 駅まで持つだけでもありがたい。小さな保冷剤を握ったり、胸元や帯下にはさんだり。 9)暑い場所には居続けない 一番大事なのは、暑い場所に長くいることはできるだけ避けること。長時間炎天下を歩いたり冷房をつけなかったりするのはNGです 10)冷房対策も忘れずに 体を冷やすことばかり考えているとやられるのが、夏の冷房! 移動の電車や出先で汗をかいたのが冷え冷えになってつらい(とくに首筋)ということもあります。夏用のショールや、アームカバーを持ち歩くと助かります! 最後に書きましたが、実は夏は冷房も油断大敵なのですよね。 12年前にこんなコラムを書いていました。 関連記事:冷房対策にアームカバーを!の巻 首筋にスカーフを巻くのがカッコ悪いみたいなことを書いてますが、今の私は、ちょっとでもひやっとしたらすかさずショールを巻いています! 格好よりも健康第一!と思うようになったのは、年齢を重ねたせいでしょうか(笑) 無理せず、楽しみたいですね。とはいえ夏着物を着るには1に気合い、2に気合い、3,4がなくて5に気合い、です(私の場合)。工夫をして、ちょっとでも楽に、ですが、それだけでは歯がたたないのが夏着物。 だけど、頑張って着る甲斐がある、それが夏の着物だと思います。今年の夏も、着物を楽しめますように!

半幅帯を後ろに回す時、真ん中にきてるか簡単に確認する方法の巻

星わにこ
2025/07/09 00:00
タイトルながっ!ですが、夏になると俄然半幅帯の出番が増えますよね。浴衣にあわせるということもありますし、普段着でも半幅帯をすると帯枕などしなくていい分涼しいので「今日は半幅帯にするか‥‥」となることも。 半幅帯は前で結んで後ろに回しますが、いつも「結び目が果たして真後ろに来ているのか?」というのがイマイチ確信がもてないまま、振り返って鏡を見て「まあこんなもんかな? いやもうちょっとこっち?」なんてやっていました。 先日、お太鼓の前結びの方が、帯を回す時にたれを上に折って真ん中をクリップで止めて回す、とおっしゃっていて「これは!」と気がついてしまいました。 半幅帯も結んで、帯結びの真ん中にクリップをつけて後ろに回せば、クリップの位置で簡単に「ど真ん中」が分かるってわけ! すご! そんなの~ずっと前から知ってた!という方も多いかと思いますが、わにこ的にはコペルニクス的発見(大袈裟)だったので、書いてしまいました! ただしクリップをつけっぱなしにしないよう注意!ですね(笑) これだけではちょっと短めなので、最近のお話をちょっと。 暑い!とにかく暑いですよね。でも着物は結構覚悟を決めて着てしまえば、ずっと屋外にいたりしないかぎり、意外となんとかなります。 今年は小千谷縮の産地見学に行ったこともあって、毎年「ちょっと太って見えるから~」なんて思っていたのですが、気にしているのは自分だけで何を着てもそう変わらない誤差の範疇だなあと最近は思うように。 敬遠しないで着てみたらやっぱり涼しいですね~。半幅帯も「背中が広く見えるから」「お尻が大きく見えるから」と思っていたけど、まあそれも元が太いんだからお太鼓しようが半幅しようが誤差の範疇ですよねえ~という気持ちになり、半幅をしてみたらやっぱり涼しい。 半幅をしても、以前はなんか物足りなくて帯揚げをしたり、三重ゴム紐を使ったりしていたんですが、それもしない結び方をすると俄然楽で涼しい。ほんと、1本でも紐を減らすと涼しいですよね。 気に入っているのは笹結びです。 関連記事:紐も帯揚げも帯締めもいらない。変形笹結びが気に入ってますの巻 そこから変形させたり、あれこれ楽しんでいます。今年はちょっと半幅帯を探求してみよう!と思っているわにこでした。

オトナの振袖!還暦振袖撮影のおはなしの巻

星わにこ
2025/07/02 00:00
今年に入って、オトナの振袖撮影や着付のお仕事が増えているわにこです。2019年の東京キモノショーで還暦の女性たちによる「大人の振袖ファッションショー」が行われてから、「大人も振袖を着てもいいじゃない」という風潮が生まれてきたように思います。 カメラマンの友人と運営している写真スタジオ「昭和な家スタジオ」でも大人の振袖撮影会は大好評。一人で撮影に来る方も、グループで撮影に来る方も、美しい振袖姿に変身して、とてもいい笑顔を見せてくださいます。 二十歳の時きた振袖をもう一度着たいとか、パーティに振袖で出かけたいとか、動機はいろいろですが、ヘアスタイルを決めて、フルメイクをし、振袖に手を通すと本当にわ~っとテンションが上がるんですよね。私たちスタッフも一緒にわくわくしてしまう楽しさです。 最初は振袖着て大丈夫ですか?とか、何を着たらいいか全然わからない、という感じなのが、実際振袖を羽織って、帯や小物を決めていくとどんどんお顔が輝いていきます。大人なので自分に似合うものもよくわかっているし、最終的にはなるほど!というお似合いのコーディネートが出来上がります。指輪などのアクセサリーも大振りで豪華めなのが似合うのも大人ならでは。 ご自分の振袖をお持ちくださる方もいれば、帯だけ、バッグなどの小物だけなどお持ち込みの方もいます。やっぱりご自分のものを活かしたほうが想い出にもなりますから、レンタルと組み合わせていただいています。 そんな中、先日大学の同級生4人グループで、卒業式の袴写真と同じ並びで撮影したいです!というお客様が。忙しい中予定を合わせて衣装合わせと撮影に来てくださいました。 お一人お一人お支度ができると歓声が。綺麗!可愛い!似合う!素敵!ってたくさんの褒め言葉が飛び交ってスタジオは大盛り上がりです。 まずは一人ずつ、立ちポーズや座りポーズ、扇や傘を持つなど小道具を使った撮影をします。リクエストでお持ち込みのフルートでのポーズ写真も撮影。 七五三や成人式もそうですが、前に着物で撮影したポーズと同じで撮影してほしいというリクエストもよくあります。家族や兄弟姉妹で「〇〇年後」と、比べてみると、来し方を振り返って胸がいっぱいになるものですよね。 この日は大学の卒業式に撮影したという、グループでの袴姿のスナップ写真をお持ちになりました。写真に映っているのは5人でした。 「もう一人仲良しの友達がいたんですけど、五十代で亡くなってしまって。着物が好きだったので、みんなで着たかったです」と着物姿のご友人のお写真をお持ちになって、卒業式と同じ並びでのグループ写真を撮影しました。ご友人も、着物姿で皆さんとニコニコ笑っておられるような気がしました。 そして、卒業後永きに渡ってずっと友情を持ち続けられるということも本当に素晴らしいですよね。集まった皆さんは、女子大生に戻ったみたいにとっても楽しそうで、私も一緒に盛り上がってしまいました。 成人式の時にも思うのですが、何事もそのお祝いの日が迎えられるのが普通、なんてことはなくて、無事に生きてこられたことの尊さ。特に還暦ともなると、そんな重みも増してきます。 こうやって大事に想ってくれる人たちがいる限り、人は生きているのだろうなと思います。また、人生を大事に生きなくてはと、亡くなってからも励まし続けてくれているのだろうなと。私も先日亡くなって30年経つ弟の学生時代の友達からお墓参りをさせてほしいという連絡を受け、家族以外にも大事に思ってくれている人の存在に涙が出ました。私も亡くなった大切な人たちのことを忘れずにいたいと強く思います。 山あり谷あり。順風満帆でなにもない平坦な人生など滅多にないのではないでしょうか。それぞれがいろんなことを乗り越えて迎えた干支ひとまわり、還暦からの出発の振袖姿はとっても輝いていました。オトナの振袖、やっぱり素敵です。 なんか胸がいっぱいでなかなか書けなかったのですが、やっぱり書き残しておきたいと思いキーボードをたたきました。 時には自分のポンコツぶりに嫌になってしまうこともあるけれど、生きていられることに感謝して、また着物を楽しめることにも感謝して、日々過ごしていきたいと改めて思っているわにこでした。