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半幅帯「矢の字結び」と「吉弥結び」の違いの巻

星わにこ
2026/08/05 00:00
暑い時期は半幅で気楽に普段着物や浴衣を楽しみたい!けど、意外と半幅の帯結びってお太鼓みたいに形の正解がわかりづらいのでどうしていいかわからない~という方も多いのでは。 我々大人世代は文庫結びやリボン結びなど上に重心があるものよりも、少したれがあってぺたんこな矢の字結びなどのほうが好ましくもなってきます。アシンメトリーで視線も分散しますし、帯締めも使うしお尻もカバーしてくれるので、着付レッスンでもよくリクエストされる結び方です。 で、またよく聞かれるのが「矢の字結び」と「吉弥結び」、さらに「貝の口」「後見結び」の違いってなんですかというもの。 貝の口はたれがなく、男性の帯結びと同じくぎゅっと結ぶので帯締めをしなくても落ちません。でも、他の3つは帯を折り紙のように折って形をつくるので帯締めで抑えないと安定しないという違いがあります。 で、半幅帯におけるその3つの違いって何?という話なんですが、これがまた、よくわからないんですよね。矢の字と吉弥はたれの角度が違う?とか後見結びは右上に出る角が帯の全幅で、大きめ?とか、曖昧な印象しかなかったので、今回ネットや書籍で調べてみました。 AIは「矢の字のたれはまっすぐ、吉弥はななめ」とまとめていましたが、いやいや私の認識は矢の字のたれは斜めなんですが?と思い、両者をサーチしてみると、結び方動画なんかを見てもタレの角度は斜めとまっすぐで意外とばらばら。 最近よく出ている「貝の口、矢の字、吉弥の違い」という動画では、矢の字はたれを最初に作って残りで結び目を作っていく形式(たれがまっすぐ)、吉弥は結んだ時のあまりでたれを作る(だからななめ)とのこと。 自分が最初に習って矢の字だと思っていたものは、これだと吉弥結びということになる?と思い、色々調べてみたのですが、マジで混在していました。 私のぼんやり認識では「矢の字は貝の口にたれをつけたもの、吉弥は江戸時代の引き抜き結びの応用でたれを先に作るもの」と思っていたので、ぬぬぬ、と家中の着付け本を出してきてみたところ、見事に混在。私が着付を習い始めた平成初期の本では、この認識があっていました。 1992年『きものレッスン』(主婦と生活社)や1993年『定本着つけと帯結び百科』(講談社)、2007年笹島寿美先生の『笹島式決め技の極意 帯結び100選』(世界文化社)1997年綾秦節先生の『賢いきものの楽しみ方』(世界文化社)ではこの分類でした。 でも、2016年発行のオハラリエコ先生の『ふだん着物のらくらく結び 半幅帯と兵児帯』(世界文化社)ではこれが逆に。2018年の石田節子先生の『5分で結べる! 簡単らくらく 半幅帯のお洒落』(世界文化社)でも逆になっており、さらに吉弥結びと思われるものを「斜矢の字」として紹介されていました。手持ちの大久保信子先生の書籍には矢の字が紹介されておらず、どちらかは不明。 どうも2000年代にこのあたりの認識の逆転があったのではないかと推察。2000年代というとインターネットの発達や2004年に雑誌『七緒』の創刊がありましたから、そのあたりが大勢の転換点なのかなと思います。ちなみに動画で紹介されているわれらが銀座いち利の女将も2000年代以降、つまり21世紀方式(勝手に命名)です。 で、やはりなにが正解ということはなく、自分が「矢の字」と思ったら矢の字や、ということでいいのではないかなと思いました。私は古い人間なので、20世紀方式で「矢の字」って思っていますが間違いではないと。みんな違ってみんないい。 こんな時代の流れの背景をちょっと知っていると、豊かな気分になれますね。意外なところで時の移り変わりを感じたものであります。帯は世に連れ、世は帯に連れ……。 そもそもカジュアルなものなので、半幅帯は好きな形で「私のオリジナルよ~」くらいの気持ちで楽しめたらいい。「それは間違いよ!」と自分のものさしで図りすぎない寛容さが肝要かと。お後がよろしいようで。

暑気払い。夏の鱧(はも)尽くしで京都気分の巻

星わにこ
2026/07/29 00:00
先日お茶のお稽古仲間の皆様に誘っていただき、暑気払いに参加してきました。京都に本店のある「三友居」の白金店で鱧尽くしのランチという贅沢なプランに、自分にご褒美とばかりに飛びつきました(笑)。 お恥ずかしながら鱧はほとんど食べたことがなく、憧れの食べ物。関西ではメジャーですが、関東ではあまりお目にかかりませんよね。谷崎潤一郎が好み、その最後の晩餐であったと言われる「牡丹鱧」や、皮一枚を残して細かく包丁を入れる超絶技法である鱧の筋切りなどについて知識として知っている程度でした。 京都の祇園祭は「鱧祭り」ともいわれるほど。今が旬ということで、祇園祭のコンチキチンという鉦(かね)の音をBGMに聴きながら、京都気分で涼やかな室礼の個室で美味しい鱧のコースをいただきました。 憧れの牡丹鱧、鱧の湯引き、鱧寿司、鱧巻天ぷら、鱧茶漬け……とまさに鱧尽くし。御酒もいただいてしまいました。このほかに鮑とずいきの酢の物の前菜、京茄子のいやあ贅沢贅沢。柾目の美しい木の盆に次々とサーブされていく江戸切子、錫、緑交趾などなどの器も素晴らしく、椀の蓋には露が打たれていたり、添え物の葉っぱが梶の葉(平安時代から七夕の短冊に用いられたもの)だったりと、盛り付けも素晴らしくてうっとり。 鱧のほどよく脂身のある白身は上品で、でもしっかり元気が出るお味。調理法によってふんわりほろりから、しっかり噛み締めまでバラエティに富んでいて鱧、満喫いたしました。 お店の箸袋に見慣れぬ二文字の漢字があり、一文字目は「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」のあつものかな?二文字目は知らない、なんて読むの?と話題となってお店の方に聞いてみると「こうかく」と読むことを教えてくださいました(漢字はイラストを参照してください)。特に前述のことわざは関係なく「あつもの、吸い物」を指す言葉だそう。今は辞書にも載っていないのだそうです。その場でキモトモがネットで検索してくれたところ、1992年の『大漢語林』(大修館書店)には記載されているようですが、帰ってから自宅の1995年の『大辞林』(三省堂)第2版には載っていませんでした。ひとつ賢くなりました。目にも口にも脳にも栄養が行き届いて、今年の夏ものりきれそう! お出かけにあたってせっかくなので絽の江戸小紋を用意したのですが、当日37度とゲリラ豪雨予報でワンピースで出掛けてしまった私です。だがしかし、ご一緒したキモトモの半数が着物で、絹紅梅や小千谷縮、セオαなど涼やかな姿に惚れ惚れ。やっぱりマダムランチは着物だよね!  夏着物は着るハードルが高いからこそ、着られたときの喜びは最高なんですよね。あと脱いだ時の開放感も最高(笑)。着ていけなかったコーデをここで供養させていただきます。 絽の江戸小紋(洗えるやつ)、アンティークの絽の帯(鱧じゃなくて鮎)、瓢箪の帯留(6つの瓢箪で無病!)でこの季節ならでは(鼻息)と考えてみました。考えてみるだけでも楽しかったです(弱)。今回は洋服ででかけても帰ってすぐ寝ちゃうくらいぐったりだったので、体力をしっかりつけて、残りの人生夏も着物を楽しみたいとしみじみ思いました。 皆様も機会があれば、そして気力体力が許せば、夏着物を楽しんでくださいね!

浴衣は「昼は紺地、夜は白地」「昼は白地、夜は紺地」どっち?の巻

星わにこ
2026/07/22 00:00
先週末は、仕事場の近くの中野・新井薬師の盆踊りでした。キモトモ6名で集まって、浴衣姿で繰り出しました。踊りの輪は浴衣率が高くて、揃いの浴衣の高校生くらいのグループがいたり、お子さんはカラフルな浴衣や甚平に光るヘアバンドとかをつけていてとっても可愛かったです~! 私はひさびさにワニの浴衣を引っ張り出してきて、黒の子猫柄の帯で、黒っぽいコーデ。会場でも藍や青など、大人っぽい色の浴衣が多かったのですが、白地の浴衣が一際会場で明るく映えていてとっても素敵でした。 私が昔よく言われたのは浴衣は「紺地は昼、白地は夜」。これは昼の強い日差しの中では白地は透けやすく濃い色の方が安心という意味と、夜は白地のほうが明るく映えるということだと習いましたが、この言葉に深く納得いたしましたね。 一方私はニンジャスタイル?で、すっかり夜の闇に溶けておりました(笑)。目立ちたくないとき、隠密行動には最高かもしれません。。 逆に江戸時代には「昼は白地、夜は紺地」とも言われていたそうです。これは昼は白地が涼しげに見えてよいし、夜は藍染の紺地のほうが蚊などの虫を寄せ付けずよいという説。「昼は紺地、夜は白地」も江戸時代から言われていたという説も。そもそも浴衣は湯上がり着、普段着として着用されていたものですし、これが決まりというわけではなく、こっちがイケてる、いやこっちがかっこいい、みたいな話で、どちらでも好きな方でよいのかなと思います。 屋外での盆踊り会場では白地が素敵だったし、また夜でも明るい場所では紺地が映えるかもしれません。もうここはお好みですよね。 今は音頭だけじゃなくてなんでもあり? YOASOBIの曲で踊ったり、正統派の東京音頭、中野音頭、ハワイアン音頭、炭坑節と踊って帰ったのですが、帰りかけたところで中野名物ボンジョヴィ(盆ジョヴィ)の「Livin' On A Prayer」がかかり、もう少し踊っていればよかった!ってなりました(笑)。盆踊りは同じ動作の繰り返しなので、踊っているうちにどんどん楽しくなりますよね。 暑いけれども少し涼しい風も吹いていて、夏の夜を満喫いたしました。 その後もひとしきりおしゃべりなどして、解散。日中のおでかけや街中では、浴衣でも足袋を履いたり衿を入れたりきちんと感が欲しい年齢ではありますが、ご近所に気楽な浴衣姿でおでかけも楽しいな~と思った夜でした。 ちなみに「Livin' On A Prayer」が名物?の「盆ジョヴィ」こと「中野駅前大盆踊り大会」は今年は8月1日(土)・2日(日)だそうです。今年は行ってみようかな? 皆様もご近所の盆踊りに浴衣でおでかけ、いかがでしょうか。

体型のお悩みにはコレ!着物の補整のおすすめ本2冊の巻

2026/07/08 00:00
相変わらずAIにあれこれ聞いてみたりしている私ですが、同年代の友達も調べ物だけでなく人生相談、ダイエット、手相占い、家計関連、画像加工、ちょっとしたおしゃべりなどなど仕事以外で日常に活用している人もたくさんいて、そんな使い方できるの!なんて情報交換もしたりしています。ChatGPT派、Gemini派、Copilot派、まだまだ新しいものがいっぱいでてきて、それぞれ好みがわかれていて面白いです。 私はChatGPTにミッチー風で受け答えしてとリクエストしたら、音声会話でもめっちゃタメ口になったので敬語で話しましょう!と言ったら、結構堅苦しい敬語の後に最後にベイベー、ってつける変な返答になってきました(笑)。 一方、着物のことなど聞くと結構「それは違うのでは」という返答も多いので、あまりあてにしていないし、そもそもネットで検索してもせいぜい平成以降の情報しかあたれませんし、その情報が正しいかどうかもわからない。その上、結構な確率でこのコラムが表示されたりして「おまえ(私です)には聞いてない!」ということもしばしば(滅)。YouTubeも勉強になりますが、なにしろ見るのに時間がかかって結局ほしい情報じゃないこともあったり。先日岸惠子さんのエッセイを読んだこともあり、やっぱり本だよね! と原点回帰している今日この頃です。 もちろん着物の常識もだんだん変化していますし、YouTubeや新しいグッズなどを見るのも楽しいけれど、やはり着物を着ている人が多かった時代の本は今読んでも「なるほど」と思うことが多いです。みんなが抱えるお悩みは結構普遍的で、着付の技術はいろいろな本が出ているので、自分の好きな着付の先生の本を読み込むのも楽しいですよね。 意外とないのが、補整の本。着物を着るには土台をしっかりすると意外と着付のおなやみがなくなります。体型別の補整のお悩みについては、体と着物の関係がよくわかるこの2冊が私のバイブルです。 ・『骨格と着つけの関係―着くずれしない着つけ』笹島寿美(2007年 神無書房) ・『手ほどき七緒 「たかはしきもの工房」髙橋和江さんの十人十色の「補整」術』髙橋和江(2018年 プレジデントムック) この2冊は、補整ってなんぞ?という疑問に鮮やかな解答を示してくれる本なので、もしまだ未読の方がいらしたらおすすめいたします! さらしやタオル、補整用品まで使い方だけでなく「どうしてそういう補整をするのか」ということがよくわかります。 先日も雨の日にパラパラと読み返して「なるほど!」と目から鱗がいっぱい落ちました。本を買ったときにはわからなかったことも、着付を続けてきた今だからこそまたわかるようになったこともあり。理屈が頭に入ると、自分がそれが必要かどうか足し算引き算もできるようになります。 着物本は古いものも面白いのですが電子書籍になってないものが多いので、図書館だけでなく古本屋さんでも目を光らせていると掘り出し物があったりしますよ。スマホやパソコンもいいけど、たまには本もおすすめです! 過去記事: 岸惠子さんの「魔物・きものの魅力」を読んでの巻 古本屋さんでゲット☆昔の着物雑誌が面白かったの巻

めちゃくちゃ素敵!新日本髪で還暦振袖。の巻

星わにこ
2026/07/01 00:00
毎週毎週、とりとめもなく「オトナの着物生活」についてよしなしごとを書き連ねておりますこのコラムですが、担当さんから「15年目に突入ですよ~」と言われてびっくり!えっ、15年ですかっ! 始めたのはついこの間のことのようなのに‥‥。いろんなことがありつつも、続けてこられたのも読んでくださる皆様のおかげです。本当にありがとうございます。 万屋のような私ですが、友人と和装フォトスタジオも運営しております。着物で記念写真を撮影してほしくて立ち上げたのですが、それも気づいたら14年目。43歳で着物を仕事にするぞ!と着付を習い直して、着物ラブの気持ちだけでここまでこられたことに改めて驚きと感謝でいっぱいです。 さて、そんなフォトスタジオの人気撮影メニューが「還暦振袖」「再演(大人の振袖)」なのですが、ありがたいことにネットで検索してきてくださるお客様が増えています。いくつになっても、振袖が着たいという気持ちわかります!! 実は私は成人式に振袖を着なかったので、振袖デビューが40歳(2度目の成人式と言い張って着た)。その後なにかと理由をつけては着ています。なにしろ振袖は着たときのテンションが、ただ袖が長いだけなのにまるで別次元。訪問着では得られない高揚感があります。 昔は未婚女性しか着られないもの、また「三十振袖四十島田」という言葉があったように未婚であっても若いうちしか着られないと言われたものですけれど、今はパーティやお楽しみであれば自分が着たいと思えば着られる時代。 区切りの年に、振袖を着てお祝いして欲しいな!と思い、そして自分たちもぜひやりたいな!と作った撮影メニューですので、お客様がニコニコで撮影を楽しんでくださると本当に幸せを感じます。 先日、「日本髪で振袖を着て還暦を祝いたい」というお客様が来てくださいました。スタジオでは昔ながらの日本髪ではなく新日本髪になりますが、オプションメニューもあり。成人式に親御さんが誂えてくださった振袖で記念写真を撮影。 成人式や卒業式のほかにも、40代のとき国際的なパーティで着る機会があり、そのときにせっかく着たからと会場の写真館で記念撮影もされたのだとか。今回そのお写真をお持ちいただいたので、同じポーズで撮影もしました。 40代のお写真もとっても美しいですが、今この時の表情が本当に生き生きしていて、素敵ではないですか? 撮影中も「自分じゃないみたい、とても気持ちがあがっています、嬉しい!」とおっしゃってくださっていたのですが、そのウキウキが私たちスタッフにも伝わって、お支度から撮影まで、本当に本当に楽しい時間でした。 自毛で念願の日本髪にされて、キラキラの振袖姿から、帰りはこれまた素敵な白大島の単衣に素晴らしい紅型の帯に着替えをされて、そのまま神社にお参りに行かれて、銀座に寄って「素敵ですね」とお声かけもいただきましたとご連絡をくださいました。喜んでいただけて、このお仕事やっていてよかったな~としみじみ。 私も来年いよいよ還暦。体調の不安やもの忘れに増えるシワと、若いころのようにいかないことが増えてため息が出そうになりますが、でもこんな素敵なお祝い写真のお手伝いをさせていただくと、年を重ねるのも楽しみになります。素敵な見本を見せていただけて感謝です。 あまりに素敵だったので、自分も近年楽第一でショートヘアだったのですが、美容師さんに聞いたら肩下くらいまであれば新日本髪結えますよ!と言われたので、還暦祝いに向けて伸ばすぞ!!!と決意しました。 60年という年月を生きてきて、誰しも決して楽しいこと嬉しいことばかりではなかったはず。水戸黄門の「人生楽ありゃ苦もあるさ」という歌も、子供のころは「そんなもんかね」としか思いませんでしたが、今は「涙の後には虹もでる」、ほんとそう!って心から思います。晴れやかな笑顔を見られると、心の底からおめでとうございます!すごい!素晴らしい!って思います。成人式の振袖とはまた違った、美しさがここにあると思います。 諸事情によりスタジオは来年でクローズすることになってしまったのですが、還暦撮影メニューは同年代だからこそできるヘアメイク・着付・撮影のお祝い隊として出張撮影ができたらいいなと思っております。そして還暦振袖(前後3、4年は誤差の範疇)が世の中に認知されて、もっとたくさんの皆様に楽しんでいただけたらいいなと思っております!

着物の袖も濡れにくい!傘の「クロス持ち」試してみたの巻

星わにこ
2026/06/24 00:00
雨予報、台風予報が気になる今日この頃ですが、雨の日だって着物が着たい! 以前はとにかく雨の日は大きい傘!と決めていて、65センチや70センチの透明ビニール傘を愛用していました。これはこれでいいのですが、「途中で降り出すかも?」「止んでしまうから傘を持ち歩かなければならない」というようなとき、ちょっと持て余すんですよね。 そして、重い。若い頃、おばあちゃんがペラペラのバッグとかを持つのを不思議に思って見ていましたが、それは軽いからなんですね……。歳をとると、軽いものしか持てなくなるんですね……。軽さこそが正義なんだということを知りました。 というわけで、よほどの1日中土砂降りとかではない限り、近年は軽い折り畳み傘で道中も畳んで吸水ポーチに入れてバッグに仕舞う(忘れるから)というムーブになったわけですが、当たり前だけど傘が小さいと濡れるんですよね。 多少濡れてもいいような仕様にはしていくのですが、もう少しなんとかならないものかと思っていたら、友人が雨に濡れにくい傘の差し方を教えてくれました。 ポイントは二つ。高い位置に差さないで、なるべく頭に傘を近づける。こうすることで肩の濡れがかなり変わります。 もうひとつは「クロス持ち」と言われるものですが、傘を持った手を胸の前で反対の肩のほうにクロスさせるというものです。 こうすると、傘の中心が体の中心に寄るので、普通に差した時に濡れがちな反対側の肩や荷物も濡れにくいというわけです。簡単なことだけど、そういえばしたことなかった! 傘の軸を顔の前に持ってきて、なるべく傘の真ん中に入ろうとしていたことはありますが、もう一息反対側に寄せることで、傘を持っている側の袖がぐっと内側に入りますし、反対側の肩も守られます。袖が本当に濡れにくくなります。衿元も守られるかんじがしてよきです。 普通に差した時と違って、反対側に傘が張り出すので、人混みなどを歩く時は勝手が違ってぶつかったりしないように最初はちょっと注意が必要かもしれません。でも、すぐ慣れますよ。 ほんのちょっとしたことですが、かなり変わりますのでぜひ試してみてください! もちろん着物のときだけでなく、洋服のときも同じです。梅雨の時期もおでかけを楽しみましょう。

カレンブロッソ用雨カバー『雨履音』使ってみたの巻

星わにこ
2026/06/17 00:00
雨予報が気になる季節になりましたね。寒暖差も結構あって、着るものにも迷う今日この頃ですが、梅雨があけてしまうと本当に暑くなるので、いまのうちに単衣も楽しんでおきたいところです。 さてさて、雨といえば雨支度を迷うところですよね。雨グッズって、実際は使わないかもしれないんだけど、あるとやはり心強くて安心できます。防災備蓄のようなものでしょうか。私くらいの雨女になってくると着物のレイングッズも一通り揃えてございます(涙)。 参考記事:正絹着物でもできる雨の日対策 今でもよく見ていただいている雨対策記事があるのですが、書いたのがなんと13年前(爆)。基本変化はないのですが、この時使った「おとも」が流石に経年劣化でもう寿命ですよね、という状態になってしまい、代わりのものを探していました。 ウレタンの雨草履も持っていたのですが、それも考えてみると10年以上前に購入したもので、履いて出かけると加水分解を起こす可能性大。見た目は綺麗なのに、歩いてるうちに本当に、本当にぐしゃあ。。。ってつぶれますからね。 つい最近もウレタン草履の崩壊の話を2回ほど聞きました。そう。見た目は綺麗なのでわからないんですよ。恐ろしいです。 私の雨草履も、黒の台に白い鼻緒で前ツボが赤、というお気に入りのものだったのですが、この梅雨を前に泣く泣く手放し。雨草履は、そんなに何回も履いたわけではなくもったいないような気もしますが、つま先が冷えそうな寒い日にも履きましたし、なによりお気に入りのものがあるということが、雨の日も楽しくしてくれましたし、買ってよかったと思っています。 さて雨草履をまた買うかどうしようかと思ったところで、急いで買うより気に入ったものがあれば購入しようと考えて、代わりに雨カバーの新しいものを入手することに。 また「おとも」かな、それとも気になってたけど購入に至ってない「つま先美人」かな、と思っていち利モールを覗くとなんか、新しいカバーが出てる! その名も「雨履音(あめりね)」。カレンブロッソのカフェぞうり用のつま先カバーだそうです。早速購入してみたんですが、なるほどカレンブロッソのロゴも入ってしっかりしていて、綺麗です。底面のカレンブロッソ特有のしまうま柄のビブラムソールの模様も入っていて、とっても可愛い。 そこではたと気づいたんですが、カフェぞうりがビブラムソールに変更になったのは2020年から順次だそう。私の持っているつま先が丸いカフェぞうりは全部旧タイプのクレープ底でした(爆) ビブラムソールのものは、角形しか持っていなかった。 近年角形が気に入ってしまい、角型ばっかり履いていたのですよね~。ということはぁ~丸型のものは、全部少なくとも5年以上前のものばかりということ。。。おおぅ~。。。これは草履も買い替えなのか? お財布と会議の必要が。。。 と、いろいろな個人的問題が噴出しつつも、使ってみたかったしセールだったしで「雨履音」を購入。クレープ底の丸型にもピッタリでした。とってつけ感がなくて、まるで最初から雨草履でしたというような一体感です。でも雨草履と違って取り外し可能ですから、小雨の日など出先までつけていって、屋内では外すというような使い方もできますね。 ちなみに角形にははまりはするけど無理やり感がすごすぎて使用しないほうがよさそうです(知ってた)。 先日小雨の日に使ってみましたが、綺麗な透明カバーでがっつりカバーされている感が心強く、心配していた底面は意外と傷も少なく、ざぶざぶ洗って乾かせて、よかったです。 見た目だと踵にかけるベルトがちょっと弱そうですが、これも繰り返し使ってみてまたレポートしたいと思います。パッケージには、もしちぎれたら有償でお直しができるかもしれないので相談してね(意訳)と書いてあります。 足元の雨支度をお考えの方、候補にいれてみてはいかがでしょうか?

畳の表替えと職人さんの粋な黒足袋のお話の巻

星わにこ
2026/06/10 00:00
先日、自宅の畳の表替えをしてもらいました。我が家はマンションの一室が畳で、小上がりのようにして茶室っぽく設えているのですが、普段は私の寝床です(笑)。リフォームしてから8年、そろそろかなと思っていたところに愛猫の吐き跡が決定打に。猫様の啓示ですね(遠い目)。 ネットで検索して、口コミのとてもよかった世田谷の畳店さんに問い合わせたところ、打ち合わせから引き取り・納品まで非常にスムーズに対応していただけました。実際に畳表を見せていただき、せっかくだからと国産のい草で、黒縁の「ザ!茶室」な畳にすることに。 当日は朝に引き取っていただき、午後には納品。高さの調整もしていただきながら畳を敷いていただくと、あっという間に部屋が綺麗になり、真新しい畳の香りに包まれました。気持ちいい~! 実家は日本家屋でほとんどが畳だったので、やっぱり落ち着きます。 今回の依頼で表替えの下見と打ち合わせに来ていただいた時、職人さんの足元をみるとなんと足袋! なぜなんだろう?と好奇心がむくむく。そこで今回表替えをお願いした波貝畳店代表の浪貝俊行さんにお話を伺ってみました。 畳職人さんは修行のときから足袋を履くのだそう。礼儀でもあり、足袋を履くことで畳を傷つけにくく、歩く感覚で畳の状態もわかる。靴下では感覚が変わってしまうし、夏場は汗や足跡が畳についてしまうこともあるので、足袋以外は履かないのだとか。 黒や濃紺の足袋に雪駄という足元は、まさに伝統産業の職人さん!という感じで、粋でかっこいいだけでなく、ちゃんと理由があったのですね。 畳の話をもう少し。畳はそもそもオーダーメイドで、大きさはもちろん、厚さも1.3センチから6センチまで選べ、床暖房にも対応可能。最近人気の琉球畳(縁なしタイプ)は普通の畳より高価で、表替えなどランニングコストもかかるそう。「縁もいろいろな色柄が選べますし、一周回って普通の畳のほうがかっこいい気がしてます」と浪貝さん。着物と同じで「お誂え」と思うと、どんな畳を選ぶか考えるのが楽しくなりますね。 また、「裏返し」「表替え」など、畳床本体をそのままにい草部分の入れ替えをすることでさっぱりしたり、そのあたりも着物の洗い張りのことを思い出したり、ものを大切にする和の文化を感じます。 日頃のお手入れについても教えていただきました。新しい畳には「洗土(せんど)」といって、い草を泥染したときの泥が少し残っています。これは綺麗に拭き取ってしまうより、使いながら乾拭きなどで馴染ませていくと、薄い膜のような役割を果たして畳の青みを保ち、艶を出して美しい日焼けにつながっていくのだとか。 ベストはお座敷ほうきと乾いた布での乾拭き。クイックルワイパーのドライタイプでもOK。掃除機は目に沿ってかける。ただしルンバなどのロボット掃除機は畳が傷んでしまうのでやめたほうがよいそうです。えええっ、やってしまってました(白目)。畳さん申し訳ない! 着物と畳はとっても相性がよく、着物を着たり脱いだり畳んだりは、やっぱり畳の上がしっくりきます。ちょっと転がって体を休めるのも、畳の上だとリラックスできますよね。和室が少なくなった今どき、置き畳でリビングの一角に和のスペースを作られるお客様も多いのだそうです。 職人さんのお仕事に触れると、ものを大切にしたくなります。せっかく新しい畳になったのだから、これからはロボット掃除機に頼らず、ちゃんと手をかけようと思うわにこでございました。

ミッチー30周年を帯締めの薔薇結びでお祝いの巻

星わにこ
2026/06/03 00:00
どうも毎年ミッチーこと及川光博さんのワンマンショーに参泉(参加)するのが人生の季節行事となっているわにこです。今年はなんと!ワンマンショーが開催されるようになって30周年なのだとか。ツアータイトルは「TAKE IT ROSY!」ということで、ベイベー(ファンのこと)たちには、薔薇になっていらっしゃいという素敵なお達しが。 それにしても30周年とは、本当に素晴らしいです。流行らず廃らずというけれど、この出力を続けることは、並大抵ではありませんよね。私は2000年の武道館に初めて参加したので(当時はまだ参泉という言葉はなかった)、私なんて新参者ですみません、とずっと思っていたのですが、もう26年も経っていました。結構な古参やん(爆)泉友と年越しライブやディナーショーなどもあったなあ。光陰矢の如し! 今年は体調こそイマイチだったものの、仕事をセーブしていたので妄想する時間だけはたっぷりあって、CDを購入して予習し、ミッチーのツアーイメージ写真のスーツの薔薇柄の生地と似たものを購入して、簡単付け帯を作ったりしてめちゃくちゃ楽しみにしていました。 が、やはり術後20日で着物を着て3時間踊ったりするのはちょっと体力がたりないかも。。。ということで体調優先で楽なワンピースにスニーカーに変更。というわけで当日着られなかった渾身?の薔薇コーデをこちらで供養させていただきます。。。 メインはミッチーとお揃い(?)の柄の帯。作り方はこちらの三部式作り帯と同じですが、今回は土台を使わない帯を切って三部式に。それに布を布用ボンドで貼り付けるという荒技に出ました。 参考記事:楽しみ方も4通り。リバーシブル3部式作り帯の作り方の巻 参考記事:布を挟む、貼付けるだけで帯が因み柄に変身!の巻 裁縫ではなくもはや工作。でも土台がしっかりしていると、結構綺麗に仕上がるんですよ。 そして、薔薇色の帯締めを花玉結びのアレンジで薔薇風にしてみました。房を片方は葉っぱのように花玉結びの横に出し、余った分はつたのように絡めて。 参考記事:春の帯締め花玉結び風の巻 こんなにやる気マンマンお色気ムンムン(ミッチー語)だったのに無念です。本当に健康あっての推し活だなとしみじみいたしました。 話はずれますが、SNSなどで着物で観劇やコンサートに来られると帯の分座席から離れて前のめりになり、後ろの人に迷惑なのでやめてほしいというような投稿が話題になっていましたね。私、何度もお太鼓でワンマンショーに行っていてなんかちょっと胸がちりちりしてしまいました。振袖の飾り結びはさすがに邪魔かもしれないけど、髪の毛もりもりとかじゃなく普段着物&お太鼓や半幅は許容範囲なのではないでしょうか。炎上していたけど、観客層にもよりますし着物着ている人をひとくくりにして攻撃や謎ルールを押し付けるのはやめてほしいなあと感じています。会場もいつもより着物ベイベーが少ないかんじで、いてもぺったんこの半幅帯にされていて、気にされているのかなと思いました。まあそういう意味ではこのコーデも着ていったらダメだったのかな?とちょっとしょんぼり。 とはいえせっかくわくわくコーディネートしたので、みてもらえたら嬉しいです! 会場にも行くことができたし、せめてもと思い、余った布で東袋を作って持って行きました。ミッチーをお祝いする東京会場6250本の薔薇の1本になれた(つもり)ことは、とってもいい思い出になりました。 今年は同じくSNSで「ミッチーのワンマンショーは一度は見るべき」というという投稿がバズって、初心者ベイベーがものすごくたくさん参泉されていたようです。本当にミッチーのワンマンショーは、私は年に一度が精一杯だけど、それでも生きる楽しみ、心の元気の特効薬です。ミュージシャン及川光博をみたことがない方はぜひ一度観てほしい。キラキラして笑えて泣ける沼ならぬ、泉に浸かってしまうかもしれませんよ~! 30年間、変わらぬクオリティでときめきとエンターテインメントを提供し続けてくれる星(推しじゃなくて)。感謝しかありません。私もがんばらねばと毎年思います。これからも、ミッチーさんには健康でワンマンショーをいけるとこまで続けてほしい。そして、私もいけるとこまで参泉したいと、養生を強く誓うのでありました。

岸惠子さんの「魔物・きものの魅力」を読んでの巻

星わにこ
2026/05/27 00:00
さてさて実は5月の頭に不整脈の手術をして、家でごろごろムーブのわにこです。心臓の音が静かになって、心穏やかになりました。 で、あまり無理もよくないという話でごろごろしながら本を読んだりしているのですが、ネットの古本屋さんで1983年刊の『細雪のきもの』(旺文社)というずっと読みたかった本をゲットしました。谷崎潤一郎の松子夫人監修で市川崑監督の映画『細雪』の着物のグラビアや、女優さんや制作スタッフの話が掲載されているということで、私が欲しいなと思った時にはもう絶版で、地元図書館にも入っていなくて、古本で買うにはちょっと高いなと思ってそのままにしていたのですが、手術を機に「やりたいと思ったことは、できるならやっていこう」と思い、注文しました。 届いて早速本を開くと、『細雪』の公開同時のチラシ、映画鑑賞割引券、朝日新聞の記事の切り抜きが挟まれていて、誰かのファンの方かそれとも細雪マニアか、とにかくこの本を大切にしていたどなたかが昭和58年に購入したものが、めぐって私のところにきたんだなと胸熱になりました。 何度も何度も見たシーンの着物たちの色柄を美しい写真で見ることができて、超大満足。そして監督や出演者の方たちのエピソードや、着物の制作秘話、着物リストと、本当に手に取ることができてよかった~~!! 読んでから映画をみるとまたこれ一層愛が深まります。 そして私たちの一世代、二世代前の人たちの「きもの考」も読むことができるのですが、1983年に着物はすでに、いいものだけどそんなに着ることもないみたいな存在。それを戦前の船場の老舗のお嬢様たちの着こなしに寄せられたかどうか? というような話もちらほら。それでもやはりまだ、着物は細雪の時代と地続きで、時代劇なども盛んでみなが着てはいなくても着物姿はどういうものかみんなが知っている時代だったかなと思います。 そんな中で、長女の鶴子役であった岸惠子さんの「魔物・きものの魅力」というエッセイに頭を殴られたくらい衝撃をうけました。 岸惠子さんはたくさんの本を上梓されていますが、この一節はその中の『パリ・東京井戸端会議』という映画評論家の秦早穂子さんとの往復書簡の本からの転載。『細雪のきもの』同様絶版となっていますが、こちらは新潮文庫に入っているので古本入手も、図書館で借りて読むことも容易です。 国際結婚をするにあたり、パリに大好きなきものを百着以上持参したという岸さん。でもパリで着る気にはなかなかなれなかったそう。その心を紐解くと、外国で「着物を着る」ということが、日本人であるという意識の高揚と自分の中で他民族への対抗心のようなものが芽生えるような気がするというものでした。 映画監督でフランス人の夫が、岸さんが着物を着たのを見て、美しいけれど、明るくざっくばらん部分が消えてまるでサムライのような別の尊大なシロモノのように感じられると言われたそうですが、着物にはそんな「装置」的な部分もあるのかもしれません。また男性に比べて不自由なところも多い女性の着物にはそういった女性の自我を抑えるように感じられる側面もあったのは否めない。 岸さんは戦争も体験されているし、着物の持つそういった「魔力」を敏感に感じ取られたのかもしれません。そして同時に抗えない着物の魅力も。そして本にはこの文章の横に、岸さんの美しい着物姿の横顔の写真が、光と影のようにポジとネガで掲載されていました。 戦後20年あたりで生まれた私は、もう着物に対して「自分を縛るもの、押さえつけるもの」という感覚は薄れていて、そこから必死に抜け出したい、逃げ出したいと思った女性たちの気持ちがわからなかった。ただ、なんでこんな綺麗なのに着ないんだろ、しんどいし面倒だからかな、としか思わなかったけれど、戦後に着物から抜け出した女性たちは、もう絶対元に戻らない!と思っていたのかも。 だって、戦前つまり今からたった80年ほど前までは、女性が自分の名前で財産を持つ権利もなかったのです。今は当然と思われていることも認めてもらえなかった時代の象徴のひとつが着物だとしたら、着物に罪はないけど敬遠されても仕方ないかもと、上の世代の女性たちの「好きだけど、着ない」「着物は持ってはいるけどね‥‥」という呟きの奥底にある気持ちがちょっとわかったような気がしました。 そして今、もっと若い世代の人たちがそんな着物の側面から完全に離れて自由闊達にファッションとして楽しんでいて、それが実現していることが本当に素晴らしい。決してこの、自由にファッションとして純粋に着物を楽しめるようになった環境を手放して欲しくないと思います。同時に、なんで日本人が着物を着なくなったのか、少し深掘りして知っておくことも。物事にはなんでも二面性があるもので、白黒で割り切れないことがいっぱいです。 今はネットでなんでも情報が手に入り、AIが聞きたい答えを囁いてくれるかもしれないけれど、印刷物にしか残っていない情報もたくさんたくさんあります。特に、ちょっと昔の話は本当にそう。 老眼がつらい&インターネット老人会の私だけど、これをきっかけにまた本を読もう!という気持ちになったのでした。