機会に恵まれ、今月も歌舞伎座にいってきました。毎年5月は團菊祭(九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎の功績を讃える祭典)ですが、特に今年は8代目尾上菊五郎と6代目尾上菊之助の襲名披露ということで、いつにも増して歌舞伎座が華やかな雰囲気に包まれています。
夜の部では、義経腰越状、襲名披露口上、弁天娘女男白波の序幕と二幕目。弁天小僧は菊五郎の当たり役、白浪五人男の台詞もとても有名ですよね。私もお祝い気分で訪問着ででかけることに。役者さんの奥様方もロビーにたくさんいらして、お客様も華やか目の着物の方もいつもより多かった気がします。

傘を片手にどうして悪の道に入ったかを語るつらねと呼ばれる場面では、5人の盗賊がそれぞれの物語をモチーフにした衣装を着ています。
日本駄右衛門・・・・白波に方位磁石
弁天小僧菊之助・・・・弁天様の琵琶と白蛇、菊の花
忠信利平・・・・雲に龍
赤星十三郎・・・・尾長鶏と凶星
南郷力丸・・・・稲妻と雷獣
いずれもその生い立ちや台詞にちなんだ図柄で、歌舞伎らしく大胆! 「問われて名乗るもおこがましいが」「さてどんじりに控えしは」など、ずらりと並んで述べる七五調の口上はきっとどこかで聞いたことがあるはず。
今回このシーンは六代目菊之助が弁天小僧。日本駄右衛門の市川新之助、忠信利平は坂東亀三郎、赤星十三郎は中村梅枝、南郷力丸は尾上眞秀と平均年齢11歳という歌舞伎の次世代を担うお子さんたちがずらり。そのお父様方がまた若いころから見ているわけですから、えーあの〇〇さんちの赤ちゃんがもうこんなに大きくなって!!と感慨ひとしお。完全に気分は近所のおばちゃんです。ずっと片手を真横に伸ばして重い番傘を持っているので、ぷるぷるしているのもが、がんばれ!と孫を見るような気持ちで応援したくなってしまいます。
せっかくなので因み柄で・・・・と手持ちの着物で考えて、弁天小僧の衣装、琵琶に白蛇をテーマにすることに。仕舞い込んでいた琵琶の柄の訪問着に菊之助にちなんで菊の袋帯。数-SUU-さんの帯留「大蛇」の白蛇さんバージョンで、自己満足コーデのできあがり。

素敵な訪問着の友人と、五代目菊五郎の胸像の横で記念写真も撮ってもらいました!
今回「知らざあ言って聞かせやしょう」という台詞で有名な序幕では八代目菊五郎が美しいお嬢さん(お母様そっくり)から、正体がバレて弁天小僧だと名乗るシーンと最後に屋根の上で立ち回りをするシーンは八代目菊五郎(私にとっては菊之助)が演じていて、脂の乗った感が素晴らしかったです。市川團十郎(私にとっては海老蔵)との同級生当代菊団コンビも盤石感。あまり歌舞伎に詳しくない私もとっても楽しめました。

今回八代目菊五郎襲名で、先代の菊五郎さんはなんと言う名跡になるのかなと思ったら、なんとそのままだそう。50年以上名乗った「菊五郎」を名乗り続けたいという七代目の希望で、二人の菊五郎が存在するという史上初の状況だそうです。二人の菊五郎が舞台に立つという歴史的瞬間を見られて感動でした。まだ11歳の菊之助くんのしっかりぶりにも驚き! これからが本当に楽しみですね。いつか9代目菊五郎を見られるよう元気で長生きできたらいいな。
6月8日(日)にはBSフジで「2人の菊五郎 11歳の菊之助 ~密着100日 世紀の襲名ドキュメント~」という番組も放映されるそうなので見なくては。歌舞伎の世界を描いた映画『国宝』も6月公開予定ですし、ちょっとだけ歌舞伎熱が高まりそうなわにこなのでした。