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長襦袢の身幅が足りない時の超☆裏技その2!の巻

星わにこ
2025/09/10 00:00
久しぶりに出してきた長襦袢、あれっ、衿がうまくあわない……ということありませんでしょうか。深く合わせられない、襟の角度が鋭角になってしまう……。そんなときは身幅が足りなくなっているから。 仕舞っているうちに、縮んでしまったのね……という冗談はさておき、なんで夏痩せもしないで育っているのか、自分に問い掛けたい案件です。もう最近はあきらめてうそつき衿でずっと過ごしています。(痩せる予定はあるんです、あるんですよ) 襦袢と着物の身幅問題は横成長族にはシビアな問題で過去こんな裏ワザをお友達の敏腕着付師じゅんちゃんに教えてもらって助けられました。 関連記事:長襦袢の身幅が足りない時の超☆裏技!の巻 関連記事:身幅が足りない着物を裾つぼまりにする方法の巻 そして先日、じゅんちゃんに会ったときに「もう1つ襦袢の衿をしっかりあわせる裏ワザがあるんです!」と伝授してくれました。私の身幅問題を覚えていてくれてありがとう……。 それは、三河芯を使って、襦袢の地衿を広くする方法。広衿に改造する感じです。三河衿芯でもいいのですが、しっかり広げたいときは帯芯を切って使うと幅がとれますよ!とのことです。 なるほど、以前は脇の馬乗り部分を解いて衿の合わせを深くするというやり方でしたが、今度は衿自体の位置を動かしてしまうわけですね! 実際その方法で衿を深くあわせられるようにしたものを見せてもらいました。なるほど! この方法、身幅狭めの関東仕立ての襦袢にもよく使われているとのこと。 三河芯は衿芯にもなるものですが、この場合は地衿の幅を広げる役割なので、衿芯は別途入れるようにしてあります。三河芯は使う前に揉んで洗って柔らかくすると、馴染みやすい。 普段の洋服感覚で行くと、既製品に体を合わせるように考えがちですけれど、着物はそもそもお誂え。もったいなかったり、簡単に買い替えしづらかったりするものだからこそ、自分の体型に合うように工夫すればいいんですよね。 とはいえ秋のさらなる増量は避けたいと決意を新たにする私でした……。

うそつき衿で秋も浴衣を活躍させよう!の巻

星わにこ
2025/09/03 00:00
9月に入りましたが相変わらず暑くて、とてもじゃないけど夏ものは手放せない今日このごろ。とはいえ、さすがにずっと浴衣でおでかけもどうかなという時に、うそつき衿で浴衣を着物風に着るのは有効技ですよね。 うそつき衿はその名の通り、襦袢は着ていないけど着ている風にうそをつく、見せ半衿のこと。半衿つけの手間がかからないこともあって1年中愛用している方も多いと思います。私もほとんど長襦袢を着ることはなく、うそつき衿で通しています。 なにがよいかというと、長襦袢を着なくていいから、涼しいし楽。半衿をつけたまま洗濯機で洗ってしまって手入れも楽。 襦袢相当の袖をどうするかという問題はありますが、普段着や浴衣であれば袖もなくても平気です。汗の問題がありますから、筒袖か、筒袖相当の袖があればOK。浴衣下スリップにうそつき衿を装着すれば、浴衣も夏着物風に着こなせるというわけです。 さすがに昔ながらの綿の平織で白紺の「ザ・浴衣」はちょっと難しいかもしれませんが、今時の素材の浴衣なら十分着物風で着られると思います。そのあたりは自分がOKと思える感覚と相談してください。 あと、衿をつけたら足元も足袋を履くとより着物感が増します。このあたりはそもそもなんちゃってなわけなので、決まりが明確にあるわけではなく、暑いから今日は素足で下駄にしようかな、とか白足袋に草履でキチンと感アップとかそのシチュエーションで選んでいただいて良いと思います。余談ですが、塗りの下駄に足袋を履くとすべることが多いので、なんでもないところでつまづきやすくなってきた世代以上の方は注意です(真剣)。 浴衣や、暑い時期だけでなくうそつき衿は本当に便利なのでちょっと熱く語ってしまいます。うそつき衿と一言でいってもいろんなものがあり、大きく分けて2種類あります。 一つはかぶせ型で、襦袢の衿にかぶせて使うもの。美容衿や、あずま衿などといわれるちょっとソフトで衿が広衿になっていて2つに折るタイプがそれです。これは襦袢の地衿がないと使えないので、単独だとへにゃっとなってしまいます。「うそつき衿はダメだった」という方はだいたいこのかぶせタイプを単独で使おうとしたためイマイチだったということが多いです。 あとは襦袢にファスナーやスナップで衿をつけるのもうそつきと言われたりします。どちらも襦袢ありき、のうそつきです。 もう一つが単独型で、襦袢が必要ないもの。こちらが「秋浴衣」にはおすすめです。襦袢を着ないと使えないのであれば、結局暑くなってしまいますから、襦袢を着なくても衿だけでOKなものがいいですよね。 単独型にもいろいろな種類があります。 (1)棒状の衿に衣紋抜きと固定する紐やベルトがついているタイプ    最小限の布なので一番涼しい。うまく固定するのにコツがいる   (2)半襦袢の袖なしで脇が縫ってないものに衿がついているタイプ   布地が少ないジレタイプもあり    安定しやすい。布がある分暑い。 (3)Tシャツに衿が縫い付けてあるタイプ    紐で固定しなくていいので楽。体型に合わないと衿が決まらない  市販品もあるし、手作りされる方もいます。私は単独型(1)のタイプでたかはしきもの工房のうそつき衿を愛用しています。ウエストより下でベルトで固定するので、胸紐で固定するタイプより楽だからです。これは本当に好みだと思いますので、使いやすいものを見つけてください。 納得のいくうそつき衿が見つかると、着物ライフの楽さが格段にアップしますよ! 浴衣もまだまだ活躍しますし、ワンピースなど洋服の上にうそつき衿をつけて、着物を羽織るなんていう気軽な着方も楽しめます。1年中まだ試してないな、とかいまいちうまく使えなかったという方ももう一度、ぜひお試しください。

日舞発表会で衣裳着付見学2025☆「鷺娘」の巻

星わにこ
2025/08/27 00:00
毎年8月に楽しみにしているキモトモ(着物友達)の日舞発表会。これまでもコラムにも何度か書いてきたのですが、今年はあの「鷺娘」を踊るということで、またまた舞台裏の見学をさせていただきました。 「鷺娘」は人間に恋してしまった白鷺が、美しい娘の姿になって舞うけれど、恋は叶わずその命が尽きてしまうという悲恋を描いています。人魚姫みたいですね。雪景色で姿を変化させながら舞う鷺娘が印象的で、映画『国宝』でも(こちらは歌舞伎版ですが)主人公の運命の象徴のように描かれていました。坂東玉三郎丈のシネマ歌舞伎も有名ですよね。 歌舞伎だけでなく、人形浄瑠璃や日舞でも人気のある演目で、衣装も髪型も何度も変わり、見せ場が多い。日舞を嗜む人なら「一度は踊ってみたい」と思うのではないでしょうか。 雪が舞う冬景色の中、白無垢に綿帽子姿で現れた鷺娘。重ね着した白い着物を引き抜きの「かぶせ」という方法で取り去って、赤い振袖姿に変わります。仮糸で留めてある二重仕立ての衣装を、舞台上で後見さんが引き抜きます。 綿帽子も取り去ると、鬘も可愛く赤いかんざしの可愛らしい娘姿で恋の始まりを表現。こちらは「クドキ」というパートだそう。 前半から後半の間に舞台袖に引っこみ、衣装替えとかんざしのチェンジが行われます。衣装さんが二人がかりで橙の振袖に着替えさせて、床山さんが白いかんざしにチェンジ。 秋色の振袖姿で恋の深まりと季節と心の移ろいを表し、最後に引き抜きのもう一つのバージョン、「ぶっかえり」といって上半身の着物を脱がせて腰から下に垂らして白鷺の姿に変身。叶わぬ恋のため地獄に堕ちてしまった……ということで鬘もシケを垂らして、後ろも捌いてザンバラ髪になります。「反り」のポーズや錫杖を振り回す激しい踊り、舞い散る雪とともに舞台は最高潮に。 最後、歌舞伎版では白鷺は息絶えて終わるのですが、この舞台では『二段』という一段高い場に登って決めポーズで幕が降りました。 普段から体幹を鍛えたり筋トレをしたりしながら、2年かけて振りを覚えて舞台に臨んで、見事踊り切ったキモトモに、応援に集まった友達みんなで惜しみない拍手を送りました。本当に、素晴らしかったです。 こちらのコラムでも何度か紹介させてもらったキモトモの日舞発表会ですが、習い始めて12年。大きな演目に挑む姿に感動しました。 関連記事:日舞発表会で衣裳着付見学☆藤娘って美しい!の巻(2016年) 関連記事:Youtubeで日舞発表会。舞台裏を覗いて来たよの巻(2020年) 舞台が終わった後、衣装のままでロビーに出てきてくれる時間があり、みんなで記念写真を撮らせてもらいました。こんな風に写真タイムがある発表会は珍しいので、毎回の楽しみでもあります。 特別に着付なども見学させていただいたのですが、松竹の衣装さんの着せつけの手際のよさ!! 踊っても着崩れず、美しく、またひきぬきなどの特殊な舞台衣装を二人でサクサクと10分ほどで着付。 途中、舞台袖での着せ替えも振袖を着付け直すのも、早い!!! ここではかんざしもチェンジがあり、着替えている間は後見さんや他のお弟子さんに扇であおいでもらったり、水分補給などもさせてもらうため「ちょっとセレブ気分だった」とキモトモは言ってました(笑) 鷺娘の鬘は2キロほどあるそうで、最初は潰し島田に結われたものが、途中でかんざしを変え、さらに地獄に落ちるシーンでは髷を解かれて振り乱すため、発表会などでは鬘が落ちないように羽二重に両面テープを貼って固定するのだとか。衣装も重いし、体力がなければ務まりませんね。 今回鬘を担当された床山さんはなんと映画『国宝』で吉沢亮さんにも鬘をつけたそう。「映画をきっかけに歌舞伎を見てくれる人が増えればいいんだけど」とおっしゃっていました。 これは最初の鬘の様子で、場面が進むにつれて乱れていきます。ドラマチックですね。。。 他にも藤娘や娘道明寺など華やかな演目が続き、まさに日舞は「日本の美」。目の保養をさせていただいた感謝の1日となりました。 取材協力:「藤蔭善次朗日本舞踊教室」

子育てがんばった!自分へのご褒美着物。の巻

星わにこ
2025/08/20 00:00
よく「自分へのご褒美」なんて言いますが、今年は私も自分への「ご褒美着物」を買っちゃいました。なんだかんだでいろいろ自分にご褒美をあげているわけですが(笑)今回は5月に新潟は十日町への研修旅行のときに一目惚れした小千谷縮をお迎え。それがこの8月に仕上がってきました。 薄紫の大きめの格子柄で、和裁師さんが上手に柄合わせをしてくださったおかげで、脇に濃いラインが入り、ちょっと細見え。これがまた嬉しい! 小千谷で湯もみの工程などを見学させていただいたこともあり、愛着もひとしおです。大好きな皆さんとの旅行も楽しかったし、畳紙を開いてはニヤニヤ、閉じてはまた開いてニヤニヤ……。さて、いつ着ようかなと考えていたところ。 ちょうど子どもが8月で20歳を迎えたタイミング。「私もよく頑張ったなぁ」ということで、同じく8月生まれのお子さんがいるママ友と、子どもたちの誕生日祝い兼母たちのご苦労さん会を企画して、恵比寿にローストビーフを食べに行きました。 暑いし体力も落ちてるし、どうしようかな~と思ったのですが、せっかくなのでこの小千谷縮のしつけ糸を外して、初めて袖を通すことに。ディナーだったこともあって、暑さも落ち着いて過ごしやすく、ひさびさにゆったりと食事を楽しみました。子どもたちもすっかり大人になって、シャンパンとサングリアで乾杯。あの頃は小さな子どもを連れての外食は大騒ぎで、着物どころではなかったのに……本当に遠い昔のことになりました。 いや~、大きな節目を一つ乗り越えたな、という気持ちです。 そんな私の20年前の出産は、今思い出しても命がけでした。私は高齢出産で子宮筋腫の手術歴もあったため、帝王切開での計画出産の予定だったのですが、予定日の2日前に思いもよらない激痛が。夜中に緊急入院したところ、子宮破裂を起こしていたそうです。あとから夫に聞いた話では、当時「母体は生存確率2割、子どもは4割」と告げられていたとか。 幸いお医者さまたちの必死の処置で二度の手術を経て、一命を取りとめました。子どもも無事で、本当に奇跡のようでした。 輸血は8リットル。全身麻酔から覚めた時、人工呼吸器をつけられていて夜間だったためしばらく外せず、それがすごく苦しかった。外科病棟にいて、子どもと対面できたのは出産から3日後でした。元気な赤ちゃんですよと聞かされていたものの、自分の状態が悪くて会うことができず、本当に無事なのかなと不安でずっと泣いていたような気がします。 出産後も体力が戻らず、上京してくれた義母や母に助けてもらう日々。母子手帳を見たお医者さんに「ご本人ですか?」と驚かれるくらい、生きているのが不思議なほどの出産だったようです。実は私自身も、仮死状態で生まれ血まみれで24時間保育器に入れられていたそうで……。まさに九死に一生を二度味わった人生。改めて産婦人科に携わる医療関係者の皆さんへの感謝でいっぱいです。 「出産は病気じゃない」なんてよく言われますが、決して安産ばかりではなく、命を賭ける場面になることもある。身をもって実感しました。 今は子どももすっかり手が離れて、あとは学費だけが課題です(笑)。友人の中にはもうお孫さんが誕生した人もいて、私も次のステージに差しかかっているんだなぁと感じます。 この頃はもう友達もお孫さんが誕生している人も多く、私もさらに大人の階段を登ったんだな~としみじみしています。このコラムの担当さんにもお子さんが生まれて勝手にばぁば気分で話を聞かせてもらって幸せのお裾分けをしてもらったり。もうね~ほんとね!!赤ちゃんは天使ですよね!! うちの子の未来は神のみぞ知るですけれど、若い頃インド人の占い師さんに「あなたは73歳まで働き、孫もできる」と言われたことがあります(笑)。それを聞いた時は「え~そんなに働くの~」と思ったけど、今は妙に現実味のある数字になってきました。 女の人生ってまあいろいろありますよね。人には言わなくても、それぞれが何かを乗り越えて生きているんだと思います。そして、ときどきご褒美がなければやっていられない。私にとって着物はそのご褒美であり、着るたびに気分が上がるし「これはこんな風に私のところに来たな」とか「あのとき着たものだな」などと思い出を呼び起こす装置でもあります。 この先のおひとり様人生も視野にいれつつ、これから先、あと何回着物に袖を通せるのかはわからないけれど、ハッピーな気持ちでまた着物に袖が通せるよう、日々を大切に積み重ねていきたいと思っています。

自分好みの素材と長さの腰紐は超楽ですの巻

2025/08/12 00:00
皆様腰紐はどんなものを使ってらっしゃいますか? 腰紐って実は結構好みがあって、十人十色。 素材はもとより、細め、太めなどの好みもさまざま。最近は「結ぶ」ということが苦手な人も増えているためか、ワンタッチのウエストベルトを使う人も多いですよね。 ざっと思いつくだけでも結ぶタイプで7種類ほど。 モスリン(毛織)は使っている方が多いのではないでしょうか。手触りは少しざらざらで滑りにくく、結び目が緩みにくいし、適度な厚みで結びやすいです。一方、ボリュームがあるので、暑かったりもたつくことも。古いものは虫食いが出やすい。 木綿は手触りが優しく、汗も吸ってくれます。洗濯に強いですが、やや滑りやすい。生地が薄いと食い込みやすい。 正絹はしなやかで結びやすく、緩みにくい。シュルッとした手触りも魅力です。水や汗に弱いという弱点も。 ポリエステルはなどの化繊は、安価で軽量、発色がきれいですが、滑りやすく結び目も緩みやすい。 ゴム入り(すずろ、シャーリングなど)は、ゴムの摩擦で着物が安定します。伸縮性があり楽という声も。ゴムが劣化すると効果が半減。 幅広タイプは、素材さまざま。胸紐や伊達締めを使う人もいる。幅広だと、圧力が分散されてシワになりにくく、身丈が長い着物に使うとおはしょりが綺麗になる。着物の長さをとるので、身丈の短い着物には不向き。 最近は「きんち(絹地、絹縮)紐」といわれる楊柳タイプの紐も人気です。素材は正絹で、ある程度厚みがあるもののほうが扱いがしやすいです。しなやかで、ごろごろしないし、軽くて手触りもいいのでテンションがあがります。綺麗な色のものも増えましたね。 結ばないものもあって、全てがゴムでできているウエストベルトで、金具で止めるタイプも。結び目がごろつかないので愛用する方も多いのではないでしょうか。 昔の腰紐で、薄い生地の中に芯があって、くちゃくちゃっと丸まっているものが箪笥から発掘された理もすると思います。他にも手作りなども含めればまだまだ腰紐はいろいろなものがあります。 要は「腰紐」の役割を果たせばいいわけですから、他にも可能性があるかも。先日はレンタルの着物セットについてきたポリエステルの楊柳生地を紐の幅に切っただけ、という腰紐(?)を見て「これもありなのか」と驚愕したことも。 私自身は何を使っているかというと、少し細めの綿の平紐タイプか、きんち紐です。どちらもあまり嵩張らないので、身丈が短い着物でもおはしょりがとりやすくなるのです。頂き物の着物やリサイクルのものなどは身丈が足りないことも多いので、この2種類は重宝しています。 個人的な感覚なのですが、ゴムタイプは、楽なようでいて常にじわじわ締め付けられている感じがしてちょっと苦手です。紐でカチッと止まる感じが嫌だという方もいますし、いろいろな選択肢があるので自分の体感を優先してください。 腰紐は自分に合った素材と形状を選ぶのが第一歩、次に着付時間が超短縮できるのが、自分にあった長さのものを使うことです。 腰回りが大きい場合は「長尺」を使うのはもちろんですが、逆に普通尺でも長すぎて結んで余った分の処理が毎回面倒だなと思う人は処理が楽な長さに切ってしまえばいいのです。 よく使う腰紐一本をマイサイズの長さにするだけで、着付時間が短くなり、小さなイライラが解消します! 胸紐や伊達締め、仮紐も自分に合わない長さのものをプチストレスを感じながら使うより、長さを自分に合わせてしまえばいいのです。 きんち紐などは勿体無くて切れない……という方もいますが、もったいない>楽 なら切らなくてOK。もったいない<楽 なら、切ればよし。 着物や帯も圧倒的にマイサイズが着やすいわけですから、腰紐も自分サイズにカスタマイズしてみてください。あと、人には見えないものですが好きな色や柄、手触りなどお気に入りのものを使うとテンションがあがりますよ。たかが腰紐と侮るなかれです。 もし今、なんとなくそこにある腰紐を使っていたら……着付の要、腰紐も自分のお気に入りを見つけてくださいね。

夏の着物と美術鑑賞は心の栄養の巻

星わにこ
2025/08/06 00:00
毎年暑さが増していくような気がする夏。それでもやはり日傘に着物姿を見ると「涼しそう」と思うのは日本人だからでしょうか。 着ている本人は暑いのはよくよく知っているはずだけど、それでもそんな女性を見ると素敵だなと目で追ってしまいます。 花火大会に行く若い人の浴衣姿とはまた違って、大人の女性がびしっと夏着物や浴衣を着こなしているのを見ると、よくぞと夏着物を着る気概に惚れ惚れしますね! そんな私はというと今年は週3着物を着るぞ!と宣言したにもかかわらず6月にすでに熱中症になりかけかなりペースダウンしている状況のヘタレでございます……。「いのちだいじに」作戦です。 先日もいつもの着物仲間と五島美術館の「極上の仮名 ─王朝貴族の教養と美意識─」に行くことになったのですが、安定の真夏日&体調イマイチということで洋服参加。でも、私以外の4名は着物姿で、本当に目の保養をさせてもらいました。 小千谷縮、綿麻、セオアルファとそれぞれ夏らしい華やかさ、涼やかさあふれる着こなしで、素敵100万点。 五島美術館はお庭も素晴らしく、照りつける太陽と木陰のコントラストの下を日傘で歩く姿は絵になるぅぅ!! 美とは、お洒落とは、健康あってこそ……! もう若い頃のような無理はできないし、これからますます衰えるであろう体力をちょっとでもなんとかしないとと切実に思いました。 そしてほそぼそと仮名書道を習っている身としては、本で目にしている古筆切の実物が!!これでもか!!と展示されているのに大興奮! 皆様と別れてしばしぐるぐると1000年前の紙と墨を目にする奇跡!! 特にこの3年ほど高野切第一種の臨書を続けているので、これが!!紀貫之様(推し)の書いたお手蹟!本物!!と、凝視しすぎて目が血走っていたかもしれません。印刷物では見ることのできない、料紙の雲母砂子のキラキラに気絶しそうに。 キモトモが「こんな手蹟(て)のお手紙をもらったらそれは惚れるわよね」と言っていましたがウンウンガクガク頷きまくり。 他にも藤原行成、公任、小野道風はじめ綺羅星のようなスーパースターズの書蹟がずらり!! そして表装の、使われている古裂の素晴らしいこと………。 「こんなに揃うことは滅多にありません」と館長さんもおっしゃっていましたが、弩級の感動でした。今回もキモトモに行こうよと誘ってもらって会期終わりギリギリに駆け込んだのですが(会期が終わってからコラムを書いてすみません……)、本物の持つ力に圧倒され、本や動画を見て分かったつもりになっていないで、チャンスがあれば自分のみたいものを見に行こう!という気持ちになりました。 着物に、仮名書に……目と心に栄養の夏の日でした。

国立能楽堂オープンデイに行ってきたよ!の巻

星わにこ
2025/07/30 00:00
キモトモ(着物友達)に教えてもらい、国立能楽堂のオープンデイに行ってきました。能楽師さんに案内してもらい、能楽堂の舞台や楽屋などを見学でき、しかも入場無料、事前申し込み不要、写真撮影OK(一部不可)という太っ腹な企画。行くしかない! 初回の7月は、金春流の能楽師、山井綱雄先生、村岡聖美さんらによるご案内でした。この春「縁~ENISHI~」という能舞とピアノのコラボレーション公演を見たばかりということもあり、至近距離で山井先生の説明が聞けてドキドキ。 国立能楽堂は、1階の舞台だけでなく、2階には若手能楽師の研鑽の場があり、地下にはライブラリーがあり、過去の資料や映像が収められています。現代の能を鑑賞できるだけでなく、700年の歴史を持つ伝統芸能である能楽を記録し、未来へ伝えていく施設でもあるのですね。 いつも客席から見る能舞台をまず見学。屋内なのに屋根がついています。これはかつて江戸城の北の丸にあった能舞台を再現したもの。明治以前は屋外で行われていたため、このような形になっているそう。 いつも能舞台を見ているとかなりの確率で眠気に襲われるのですが、決して退屈してしまうせいではなく、能の持つヒーリング効果のため。科学的にも証明されているそうです。なんだかちょっと安心しました。 その後、いよいよ関係者以外お断りのスペースに案内していただきます。本来は白足袋で入る場所。白い靴下をお借りして、上がらせていただきます。 まずは楽屋。お家元が座る場所が上座にあり、六部屋の楽屋の襖が開け放たれてすべてが見渡せるようになっています。役柄(シテ方、ワキ方、狂言方、囃子方)によって使う部屋が決まっており、とても厳格な環境。お家元が座る位置から眺める「家元ビュー」は、整然とした畳の間を一目で見渡せて、ものすごい特別感でした。 その後、能面と装束の見学をさせていただきます。若い女性を表す「小面(こおもて)」、女性が嫉妬で鬼に変貌する「般若(はんにゃ)」、狐などの動物の神霊に使われる「小飛出(ことびで)」などの面。女性の鬼にはツノがあるけど、男性の鬼にはない、というお話も。狂言の面との違いなども興味深かったです。 唐織や縫箔などの豪華な能装束、庶民的な麻の狂言の装束など、こんなに近くで拝見してもいいの?という近さ、しかも写真撮影OKという……贅沢体験です! 装束が本当に、豪華で美しくて目が釘付け。着物好きにはたまらない瞬間かと思います!! そしていよいよ舞台への入り口近くへ。 楽屋の中でも特に神聖な場所「鏡の間」。ここが! あの! シテ(主役)が能面をつけるために使う場所(漫画の知識)。 ここで能楽師は能面に一礼し、能面をつけることで役を憑依させ「無念夢想」の境地で舞台に臨みます。実際、能面をつけると視野が狭まって集中が深まり、自分という存在を消して役に入り込めるのだそう。神聖な儀式を見せていただいたようで、背筋が伸びます。 ここから揚幕をくぐり、橋がかりをわたり、舞台へと進みます。釘を1本も使わず組み上げられた空間は、能舞台は日常の空間とは異なり、あの世や天国、地獄といった「異世界」を表現。やわらかな檜の舞台には、1983年の建立以来40年以上にわたってついた舞台の跡が残されています。しかし、なんとも清浄な空間で、立っているだけで気持ちが引き締まるようでした。 また、橋がかりを渡って、舞台裏に戻ったのですが、本当に異空間から現世に戻ってきた!という気持ちに。能は、神事なのだなあとしみじみ感じ入りました。 展示室も見学させていただき、無料なのにここまで見せていただいていいのでしょうか!と思わず拝むレベルでした。 最後にマスコットキャラクターの般若ちゃんと記念撮影をして帰ってきました。国立能楽堂の門を出るとこれまたさらにさらに現世に戻ってきた感。浮世の諸々が少し洗い流され、心がすっきりしたような気がいたしました。 この国立能楽堂オープンデイは毎月1回、来年の3月まで開催されています(2月はお休み)。毎回ご案内くださる流派が変わるそうです。お能が大好きな方も、どんなものか興味がある方も、大満足間違いなしの贅沢企画です。 着物で参加するときっと一層盛り上がりますよ! おすすめです!

ちょっとでも涼しく着る!夏の普段着物の十ヶ条の巻

星わにこ
2025/07/16 10:00
今年は早くから暑くなってしまい、少しでも気温が下がるとラッキーと思ってしまうくらいですが(でも充分に暑い)、それでも着物を着たい!というのはなんなのでしょうか。 無理して着なくてもいいのでは?と言われると、いやいや無理してませんよ!?という天邪鬼が出てきたり(笑)。暑い日に着る夏着物、謎の満足感がありますよね。やはり好きだから着る、ということでしょうか。 今回はそんな私が培った(?)夏のマジ涼しい着付ポイントプラスアルファ10ヶ条。目新しいこともないかもしれませんが、ちょっとおさらいしておきたいと思います。 1)着物を着るときはキンキンに冷やした部屋で 2)衣紋は抜きをちょいと大きく、衿元は、指1本入れて少し体から浮かせるとマジ涼しい 3)帯揚げしないとマジ涼しい 4)お太鼓より半幅や兵児帯マジ涼しい 5)ステテコはいたほうがマジ涼しい 6)角袖より筒袖がマジ涼しい 7)日傘必携 8)保冷剤を味方につけよう 9)暑い場所には居続けない 10)冷房対策も忘れずに 1から順にご説明しておきますと 1)着物を着るときはキンキンに冷やした部屋で 着物を着た段階ですでに汗だくにならないように、冷房の効いた部屋で着付を! 2)衣紋は抜きをちょいと大きく、衿元は、指1本入れて少し体から浮かせるとマジ涼しい 涼しさは、風の通り道があると段違い。衣紋が詰まると夏にハイネックを着ているようなもの。衿元が少し大きく空いて、さらに少し浮くだけで風が抜けます! 3)お太鼓より半幅マジ涼しい お太鼓は背中を大きく覆いますし、帯枕、帯揚げが暑い! 胸元の紐が2本なくなるし、半幅や兵児帯は軽くて楽ちんで涼しいです。 4)帯揚げしないとマジ涼しい お太鼓でも、普段着だったら帯枕にかけるカバーの色が白でなければ、帯揚げをしなくても気づかれない(経験談)帯揚げがないだけでかなり涼しくなるのでぜひお試しを。 5)ステテコはいたほうがマジ涼しい 汗は肌着に吸ってもらったほうが暑くない。特にステテコは足の間の汗を吸ってくれて快適です。 6)角袖より筒袖がマジ涼しい 角袖は、袖の部分が二重になるということですよね。それが筒袖だと、布の量が減って涼しいんです。 7)日傘と扇子必携 自分で日陰を作りましょう。着物に日傘は相性よしです。携帯扇風機もいいですがやはり着物のときは扇子がいいですよね。涼しげな風情も醸せます。 8)保冷剤を味方につけよう 物理的に冷やせ! 駅まで持つだけでもありがたい。小さな保冷剤を握ったり、胸元や帯下にはさんだり。 9)暑い場所には居続けない 一番大事なのは、暑い場所に長くいることはできるだけ避けること。長時間炎天下を歩いたり冷房をつけなかったりするのはNGです 10)冷房対策も忘れずに 体を冷やすことばかり考えているとやられるのが、夏の冷房! 移動の電車や出先で汗をかいたのが冷え冷えになってつらい(とくに首筋)ということもあります。夏用のショールや、アームカバーを持ち歩くと助かります! 最後に書きましたが、実は夏は冷房も油断大敵なのですよね。 12年前にこんなコラムを書いていました。 関連記事:冷房対策にアームカバーを!の巻 首筋にスカーフを巻くのがカッコ悪いみたいなことを書いてますが、今の私は、ちょっとでもひやっとしたらすかさずショールを巻いています! 格好よりも健康第一!と思うようになったのは、年齢を重ねたせいでしょうか(笑) 無理せず、楽しみたいですね。とはいえ夏着物を着るには1に気合い、2に気合い、3,4がなくて5に気合い、です(私の場合)。工夫をして、ちょっとでも楽に、ですが、それだけでは歯がたたないのが夏着物。 だけど、頑張って着る甲斐がある、それが夏の着物だと思います。今年の夏も、着物を楽しめますように!

半幅帯を後ろに回す時、真ん中にきてるか簡単に確認する方法の巻

星わにこ
2025/07/09 00:00
タイトルながっ!ですが、夏になると俄然半幅帯の出番が増えますよね。浴衣にあわせるということもありますし、普段着でも半幅帯をすると帯枕などしなくていい分涼しいので「今日は半幅帯にするか‥‥」となることも。 半幅帯は前で結んで後ろに回しますが、いつも「結び目が果たして真後ろに来ているのか?」というのがイマイチ確信がもてないまま、振り返って鏡を見て「まあこんなもんかな? いやもうちょっとこっち?」なんてやっていました。 先日、お太鼓の前結びの方が、帯を回す時にたれを上に折って真ん中をクリップで止めて回す、とおっしゃっていて「これは!」と気がついてしまいました。 半幅帯も結んで、帯結びの真ん中にクリップをつけて後ろに回せば、クリップの位置で簡単に「ど真ん中」が分かるってわけ! すご! そんなの~ずっと前から知ってた!という方も多いかと思いますが、わにこ的にはコペルニクス的発見(大袈裟)だったので、書いてしまいました! ただしクリップをつけっぱなしにしないよう注意!ですね(笑) これだけではちょっと短めなので、最近のお話をちょっと。 暑い!とにかく暑いですよね。でも着物は結構覚悟を決めて着てしまえば、ずっと屋外にいたりしないかぎり、意外となんとかなります。 今年は小千谷縮の産地見学に行ったこともあって、毎年「ちょっと太って見えるから~」なんて思っていたのですが、気にしているのは自分だけで何を着てもそう変わらない誤差の範疇だなあと最近は思うように。 敬遠しないで着てみたらやっぱり涼しいですね~。半幅帯も「背中が広く見えるから」「お尻が大きく見えるから」と思っていたけど、まあそれも元が太いんだからお太鼓しようが半幅しようが誤差の範疇ですよねえ~という気持ちになり、半幅をしてみたらやっぱり涼しい。 半幅をしても、以前はなんか物足りなくて帯揚げをしたり、三重ゴム紐を使ったりしていたんですが、それもしない結び方をすると俄然楽で涼しい。ほんと、1本でも紐を減らすと涼しいですよね。 気に入っているのは笹結びです。 関連記事:紐も帯揚げも帯締めもいらない。変形笹結びが気に入ってますの巻 そこから変形させたり、あれこれ楽しんでいます。今年はちょっと半幅帯を探求してみよう!と思っているわにこでした。

オトナの振袖!還暦振袖撮影のおはなしの巻

星わにこ
2025/07/02 00:00
今年に入って、オトナの振袖撮影や着付のお仕事が増えているわにこです。2019年の東京キモノショーで還暦の女性たちによる「大人の振袖ファッションショー」が行われてから、「大人も振袖を着てもいいじゃない」という風潮が生まれてきたように思います。 カメラマンの友人と運営している写真スタジオ「昭和な家スタジオ」でも大人の振袖撮影会は大好評。一人で撮影に来る方も、グループで撮影に来る方も、美しい振袖姿に変身して、とてもいい笑顔を見せてくださいます。 二十歳の時きた振袖をもう一度着たいとか、パーティに振袖で出かけたいとか、動機はいろいろですが、ヘアスタイルを決めて、フルメイクをし、振袖に手を通すと本当にわ~っとテンションが上がるんですよね。私たちスタッフも一緒にわくわくしてしまう楽しさです。 最初は振袖着て大丈夫ですか?とか、何を着たらいいか全然わからない、という感じなのが、実際振袖を羽織って、帯や小物を決めていくとどんどんお顔が輝いていきます。大人なので自分に似合うものもよくわかっているし、最終的にはなるほど!というお似合いのコーディネートが出来上がります。指輪などのアクセサリーも大振りで豪華めなのが似合うのも大人ならでは。 ご自分の振袖をお持ちくださる方もいれば、帯だけ、バッグなどの小物だけなどお持ち込みの方もいます。やっぱりご自分のものを活かしたほうが想い出にもなりますから、レンタルと組み合わせていただいています。 そんな中、先日大学の同級生4人グループで、卒業式の袴写真と同じ並びで撮影したいです!というお客様が。忙しい中予定を合わせて衣装合わせと撮影に来てくださいました。 お一人お一人お支度ができると歓声が。綺麗!可愛い!似合う!素敵!ってたくさんの褒め言葉が飛び交ってスタジオは大盛り上がりです。 まずは一人ずつ、立ちポーズや座りポーズ、扇や傘を持つなど小道具を使った撮影をします。リクエストでお持ち込みのフルートでのポーズ写真も撮影。 七五三や成人式もそうですが、前に着物で撮影したポーズと同じで撮影してほしいというリクエストもよくあります。家族や兄弟姉妹で「〇〇年後」と、比べてみると、来し方を振り返って胸がいっぱいになるものですよね。 この日は大学の卒業式に撮影したという、グループでの袴姿のスナップ写真をお持ちになりました。写真に映っているのは5人でした。 「もう一人仲良しの友達がいたんですけど、五十代で亡くなってしまって。着物が好きだったので、みんなで着たかったです」と着物姿のご友人のお写真をお持ちになって、卒業式と同じ並びでのグループ写真を撮影しました。ご友人も、着物姿で皆さんとニコニコ笑っておられるような気がしました。 そして、卒業後永きに渡ってずっと友情を持ち続けられるということも本当に素晴らしいですよね。集まった皆さんは、女子大生に戻ったみたいにとっても楽しそうで、私も一緒に盛り上がってしまいました。 成人式の時にも思うのですが、何事もそのお祝いの日が迎えられるのが普通、なんてことはなくて、無事に生きてこられたことの尊さ。特に還暦ともなると、そんな重みも増してきます。 こうやって大事に想ってくれる人たちがいる限り、人は生きているのだろうなと思います。また、人生を大事に生きなくてはと、亡くなってからも励まし続けてくれているのだろうなと。私も先日亡くなって30年経つ弟の学生時代の友達からお墓参りをさせてほしいという連絡を受け、家族以外にも大事に思ってくれている人の存在に涙が出ました。私も亡くなった大切な人たちのことを忘れずにいたいと強く思います。 山あり谷あり。順風満帆でなにもない平坦な人生など滅多にないのではないでしょうか。それぞれがいろんなことを乗り越えて迎えた干支ひとまわり、還暦からの出発の振袖姿はとっても輝いていました。オトナの振袖、やっぱり素敵です。 なんか胸がいっぱいでなかなか書けなかったのですが、やっぱり書き残しておきたいと思いキーボードをたたきました。 時には自分のポンコツぶりに嫌になってしまうこともあるけれど、生きていられることに感謝して、また着物を楽しめることにも感謝して、日々過ごしていきたいと改めて思っているわにこでした。