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国立能楽堂オープンデイに行ってきたよ!の巻

星わにこ
2025/07/30 00:00
キモトモ(着物友達)に教えてもらい、国立能楽堂のオープンデイに行ってきました。能楽師さんに案内してもらい、能楽堂の舞台や楽屋などを見学でき、しかも入場無料、事前申し込み不要、写真撮影OK(一部不可)という太っ腹な企画。行くしかない! 初回の7月は、金春流の能楽師、山井綱雄先生、村岡聖美さんらによるご案内でした。この春「縁~ENISHI~」という能舞とピアノのコラボレーション公演を見たばかりということもあり、至近距離で山井先生の説明が聞けてドキドキ。 国立能楽堂は、1階の舞台だけでなく、2階には若手能楽師の研鑽の場があり、地下にはライブラリーがあり、過去の資料や映像が収められています。現代の能を鑑賞できるだけでなく、700年の歴史を持つ伝統芸能である能楽を記録し、未来へ伝えていく施設でもあるのですね。 いつも客席から見る能舞台をまず見学。屋内なのに屋根がついています。これはかつて江戸城の北の丸にあった能舞台を再現したもの。明治以前は屋外で行われていたため、このような形になっているそう。 いつも能舞台を見ているとかなりの確率で眠気に襲われるのですが、決して退屈してしまうせいではなく、能の持つヒーリング効果のため。科学的にも証明されているそうです。なんだかちょっと安心しました。 その後、いよいよ関係者以外お断りのスペースに案内していただきます。本来は白足袋で入る場所。白い靴下をお借りして、上がらせていただきます。 まずは楽屋。お家元が座る場所が上座にあり、六部屋の楽屋の襖が開け放たれてすべてが見渡せるようになっています。役柄(シテ方、ワキ方、狂言方、囃子方)によって使う部屋が決まっており、とても厳格な環境。お家元が座る位置から眺める「家元ビュー」は、整然とした畳の間を一目で見渡せて、ものすごい特別感でした。 その後、能面と装束の見学をさせていただきます。若い女性を表す「小面(こおもて)」、女性が嫉妬で鬼に変貌する「般若(はんにゃ)」、狐などの動物の神霊に使われる「小飛出(ことびで)」などの面。女性の鬼にはツノがあるけど、男性の鬼にはない、というお話も。狂言の面との違いなども興味深かったです。 唐織や縫箔などの豪華な能装束、庶民的な麻の狂言の装束など、こんなに近くで拝見してもいいの?という近さ、しかも写真撮影OKという……贅沢体験です! 装束が本当に、豪華で美しくて目が釘付け。着物好きにはたまらない瞬間かと思います!! そしていよいよ舞台への入り口近くへ。 楽屋の中でも特に神聖な場所「鏡の間」。ここが! あの! シテ(主役)が能面をつけるために使う場所(漫画の知識)。 ここで能楽師は能面に一礼し、能面をつけることで役を憑依させ「無念夢想」の境地で舞台に臨みます。実際、能面をつけると視野が狭まって集中が深まり、自分という存在を消して役に入り込めるのだそう。神聖な儀式を見せていただいたようで、背筋が伸びます。 ここから揚幕をくぐり、橋がかりをわたり、舞台へと進みます。釘を1本も使わず組み上げられた空間は、能舞台は日常の空間とは異なり、あの世や天国、地獄といった「異世界」を表現。やわらかな檜の舞台には、1983年の建立以来40年以上にわたってついた舞台の跡が残されています。しかし、なんとも清浄な空間で、立っているだけで気持ちが引き締まるようでした。 また、橋がかりを渡って、舞台裏に戻ったのですが、本当に異空間から現世に戻ってきた!という気持ちに。能は、神事なのだなあとしみじみ感じ入りました。 展示室も見学させていただき、無料なのにここまで見せていただいていいのでしょうか!と思わず拝むレベルでした。 最後にマスコットキャラクターの般若ちゃんと記念撮影をして帰ってきました。国立能楽堂の門を出るとこれまたさらにさらに現世に戻ってきた感。浮世の諸々が少し洗い流され、心がすっきりしたような気がいたしました。 この国立能楽堂オープンデイは毎月1回、来年の3月まで開催されています(2月はお休み)。毎回ご案内くださる流派が変わるそうです。お能が大好きな方も、どんなものか興味がある方も、大満足間違いなしの贅沢企画です。 着物で参加するときっと一層盛り上がりますよ! おすすめです!

ちょっとでも涼しく着る!夏の普段着物の十ヶ条の巻

星わにこ
2025/07/16 10:00
今年は早くから暑くなってしまい、少しでも気温が下がるとラッキーと思ってしまうくらいですが(でも充分に暑い)、それでも着物を着たい!というのはなんなのでしょうか。 無理して着なくてもいいのでは?と言われると、いやいや無理してませんよ!?という天邪鬼が出てきたり(笑)。暑い日に着る夏着物、謎の満足感がありますよね。やはり好きだから着る、ということでしょうか。 今回はそんな私が培った(?)夏のマジ涼しい着付ポイントプラスアルファ10ヶ条。目新しいこともないかもしれませんが、ちょっとおさらいしておきたいと思います。 1)着物を着るときはキンキンに冷やした部屋で 2)衣紋は抜きをちょいと大きく、衿元は、指1本入れて少し体から浮かせるとマジ涼しい 3)帯揚げしないとマジ涼しい 4)お太鼓より半幅や兵児帯マジ涼しい 5)ステテコはいたほうがマジ涼しい 6)角袖より筒袖がマジ涼しい 7)日傘必携 8)保冷剤を味方につけよう 9)暑い場所には居続けない 10)冷房対策も忘れずに 1から順にご説明しておきますと 1)着物を着るときはキンキンに冷やした部屋で 着物を着た段階ですでに汗だくにならないように、冷房の効いた部屋で着付を! 2)衣紋は抜きをちょいと大きく、衿元は、指1本入れて少し体から浮かせるとマジ涼しい 涼しさは、風の通り道があると段違い。衣紋が詰まると夏にハイネックを着ているようなもの。衿元が少し大きく空いて、さらに少し浮くだけで風が抜けます! 3)お太鼓より半幅マジ涼しい お太鼓は背中を大きく覆いますし、帯枕、帯揚げが暑い! 胸元の紐が2本なくなるし、半幅や兵児帯は軽くて楽ちんで涼しいです。 4)帯揚げしないとマジ涼しい お太鼓でも、普段着だったら帯枕にかけるカバーの色が白でなければ、帯揚げをしなくても気づかれない(経験談)帯揚げがないだけでかなり涼しくなるのでぜひお試しを。 5)ステテコはいたほうがマジ涼しい 汗は肌着に吸ってもらったほうが暑くない。特にステテコは足の間の汗を吸ってくれて快適です。 6)角袖より筒袖がマジ涼しい 角袖は、袖の部分が二重になるということですよね。それが筒袖だと、布の量が減って涼しいんです。 7)日傘と扇子必携 自分で日陰を作りましょう。着物に日傘は相性よしです。携帯扇風機もいいですがやはり着物のときは扇子がいいですよね。涼しげな風情も醸せます。 8)保冷剤を味方につけよう 物理的に冷やせ! 駅まで持つだけでもありがたい。小さな保冷剤を握ったり、胸元や帯下にはさんだり。 9)暑い場所には居続けない 一番大事なのは、暑い場所に長くいることはできるだけ避けること。長時間炎天下を歩いたり冷房をつけなかったりするのはNGです 10)冷房対策も忘れずに 体を冷やすことばかり考えているとやられるのが、夏の冷房! 移動の電車や出先で汗をかいたのが冷え冷えになってつらい(とくに首筋)ということもあります。夏用のショールや、アームカバーを持ち歩くと助かります! 最後に書きましたが、実は夏は冷房も油断大敵なのですよね。 12年前にこんなコラムを書いていました。 関連記事:冷房対策にアームカバーを!の巻 首筋にスカーフを巻くのがカッコ悪いみたいなことを書いてますが、今の私は、ちょっとでもひやっとしたらすかさずショールを巻いています! 格好よりも健康第一!と思うようになったのは、年齢を重ねたせいでしょうか(笑) 無理せず、楽しみたいですね。とはいえ夏着物を着るには1に気合い、2に気合い、3,4がなくて5に気合い、です(私の場合)。工夫をして、ちょっとでも楽に、ですが、それだけでは歯がたたないのが夏着物。 だけど、頑張って着る甲斐がある、それが夏の着物だと思います。今年の夏も、着物を楽しめますように!

半幅帯を後ろに回す時、真ん中にきてるか簡単に確認する方法の巻

星わにこ
2025/07/09 00:00
タイトルながっ!ですが、夏になると俄然半幅帯の出番が増えますよね。浴衣にあわせるということもありますし、普段着でも半幅帯をすると帯枕などしなくていい分涼しいので「今日は半幅帯にするか‥‥」となることも。 半幅帯は前で結んで後ろに回しますが、いつも「結び目が果たして真後ろに来ているのか?」というのがイマイチ確信がもてないまま、振り返って鏡を見て「まあこんなもんかな? いやもうちょっとこっち?」なんてやっていました。 先日、お太鼓の前結びの方が、帯を回す時にたれを上に折って真ん中をクリップで止めて回す、とおっしゃっていて「これは!」と気がついてしまいました。 半幅帯も結んで、帯結びの真ん中にクリップをつけて後ろに回せば、クリップの位置で簡単に「ど真ん中」が分かるってわけ! すご! そんなの~ずっと前から知ってた!という方も多いかと思いますが、わにこ的にはコペルニクス的発見(大袈裟)だったので、書いてしまいました! ただしクリップをつけっぱなしにしないよう注意!ですね(笑) これだけではちょっと短めなので、最近のお話をちょっと。 暑い!とにかく暑いですよね。でも着物は結構覚悟を決めて着てしまえば、ずっと屋外にいたりしないかぎり、意外となんとかなります。 今年は小千谷縮の産地見学に行ったこともあって、毎年「ちょっと太って見えるから~」なんて思っていたのですが、気にしているのは自分だけで何を着てもそう変わらない誤差の範疇だなあと最近は思うように。 敬遠しないで着てみたらやっぱり涼しいですね~。半幅帯も「背中が広く見えるから」「お尻が大きく見えるから」と思っていたけど、まあそれも元が太いんだからお太鼓しようが半幅しようが誤差の範疇ですよねえ~という気持ちになり、半幅をしてみたらやっぱり涼しい。 半幅をしても、以前はなんか物足りなくて帯揚げをしたり、三重ゴム紐を使ったりしていたんですが、それもしない結び方をすると俄然楽で涼しい。ほんと、1本でも紐を減らすと涼しいですよね。 気に入っているのは笹結びです。 関連記事:紐も帯揚げも帯締めもいらない。変形笹結びが気に入ってますの巻 そこから変形させたり、あれこれ楽しんでいます。今年はちょっと半幅帯を探求してみよう!と思っているわにこでした。

オトナの振袖!還暦振袖撮影のおはなしの巻

星わにこ
2025/07/02 00:00
今年に入って、オトナの振袖撮影や着付のお仕事が増えているわにこです。2019年の東京キモノショーで還暦の女性たちによる「大人の振袖ファッションショー」が行われてから、「大人も振袖を着てもいいじゃない」という風潮が生まれてきたように思います。 カメラマンの友人と運営している写真スタジオ「昭和な家スタジオ」でも大人の振袖撮影会は大好評。一人で撮影に来る方も、グループで撮影に来る方も、美しい振袖姿に変身して、とてもいい笑顔を見せてくださいます。 二十歳の時きた振袖をもう一度着たいとか、パーティに振袖で出かけたいとか、動機はいろいろですが、ヘアスタイルを決めて、フルメイクをし、振袖に手を通すと本当にわ~っとテンションが上がるんですよね。私たちスタッフも一緒にわくわくしてしまう楽しさです。 最初は振袖着て大丈夫ですか?とか、何を着たらいいか全然わからない、という感じなのが、実際振袖を羽織って、帯や小物を決めていくとどんどんお顔が輝いていきます。大人なので自分に似合うものもよくわかっているし、最終的にはなるほど!というお似合いのコーディネートが出来上がります。指輪などのアクセサリーも大振りで豪華めなのが似合うのも大人ならでは。 ご自分の振袖をお持ちくださる方もいれば、帯だけ、バッグなどの小物だけなどお持ち込みの方もいます。やっぱりご自分のものを活かしたほうが想い出にもなりますから、レンタルと組み合わせていただいています。 そんな中、先日大学の同級生4人グループで、卒業式の袴写真と同じ並びで撮影したいです!というお客様が。忙しい中予定を合わせて衣装合わせと撮影に来てくださいました。 お一人お一人お支度ができると歓声が。綺麗!可愛い!似合う!素敵!ってたくさんの褒め言葉が飛び交ってスタジオは大盛り上がりです。 まずは一人ずつ、立ちポーズや座りポーズ、扇や傘を持つなど小道具を使った撮影をします。リクエストでお持ち込みのフルートでのポーズ写真も撮影。 七五三や成人式もそうですが、前に着物で撮影したポーズと同じで撮影してほしいというリクエストもよくあります。家族や兄弟姉妹で「〇〇年後」と、比べてみると、来し方を振り返って胸がいっぱいになるものですよね。 この日は大学の卒業式に撮影したという、グループでの袴姿のスナップ写真をお持ちになりました。写真に映っているのは5人でした。 「もう一人仲良しの友達がいたんですけど、五十代で亡くなってしまって。着物が好きだったので、みんなで着たかったです」と着物姿のご友人のお写真をお持ちになって、卒業式と同じ並びでのグループ写真を撮影しました。ご友人も、着物姿で皆さんとニコニコ笑っておられるような気がしました。 そして、卒業後永きに渡ってずっと友情を持ち続けられるということも本当に素晴らしいですよね。集まった皆さんは、女子大生に戻ったみたいにとっても楽しそうで、私も一緒に盛り上がってしまいました。 成人式の時にも思うのですが、何事もそのお祝いの日が迎えられるのが普通、なんてことはなくて、無事に生きてこられたことの尊さ。特に還暦ともなると、そんな重みも増してきます。 こうやって大事に想ってくれる人たちがいる限り、人は生きているのだろうなと思います。また、人生を大事に生きなくてはと、亡くなってからも励まし続けてくれているのだろうなと。私も先日亡くなって30年経つ弟の学生時代の友達からお墓参りをさせてほしいという連絡を受け、家族以外にも大事に思ってくれている人の存在に涙が出ました。私も亡くなった大切な人たちのことを忘れずにいたいと強く思います。 山あり谷あり。順風満帆でなにもない平坦な人生など滅多にないのではないでしょうか。それぞれがいろんなことを乗り越えて迎えた干支ひとまわり、還暦からの出発の振袖姿はとっても輝いていました。オトナの振袖、やっぱり素敵です。 なんか胸がいっぱいでなかなか書けなかったのですが、やっぱり書き残しておきたいと思いキーボードをたたきました。 時には自分のポンコツぶりに嫌になってしまうこともあるけれど、生きていられることに感謝して、また着物を楽しめることにも感謝して、日々過ごしていきたいと改めて思っているわにこでした。