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仮名手本忠臣蔵を観にいってきたよの巻

星わにこ
2025/03/26 00:00
急に春らしくなってきましたね。東京は3月に雪が降ったのにはびっくりしましたが、春の雪は窓から眺める分には美しい景色でした。桜の開花予報も出て、もうすぐ新年度! 私は特に何が変わるというわけではないのですが、それでもなんだかワクワクします。 さて「週3着物生活」の途中報告なのですが、今のところだいたい続けられています。おでかけが1、仕事着物が1、お家着物が1な割合かな。どうせ着るならおでかけするか!という気分になるためか、お出かけも増えていていつもよりおでかけコラムが多いかも。 先日は久しぶりに歌舞伎座へ。その時も雪予報だったのですが、めげずに着物で行ってきましたよ。たまたまチケットを譲っていただき、一生に一度見てみたいと願っていた「仁左衛門様の大星由良之助」の夢が叶いました。 今月の忠臣蔵はダブルキャストで、AプロBプロがあり、ABも見たい、昼夜通しでも見たいという方が多かったのでは。私はBプロの夜のみでしたが、それでも4時間半という長丁場。久々にお尻が痛くなりましたが、目も心も大満足でした。 いろいろ悩んで当日はこんなコーディネート。 雨で自撮りしそこねたので平置きで失礼します……。あまり演目とは関係ありませんが柴草の小紋に雪月花の帯。母の帯留に一緒に行ってもらいました。大好きな仁左衛門様見えたかなー! 私は本当にたまにしか歌舞伎座にも行かない(行けない)のですが、それだけに観た演目はどれも忘れがたく、忠臣蔵も平成19年に観た時には七段目、由良之助は松本幸四郎(白鸚)、おかるが玉三郎、寺岡平右衛門が仁左衛門というキャストでした。 おかると平右衛門の兄妹のシーンはとにかく可愛くて美しかったんだけど、仁左衛門様が「めーい!」ってなんか違うな~、由良之助の役で見たいな~~ってず~~っと思っていたので、夢が叶った!という感じでした。 そして今回は、五段目の斧定九郎が中村隼人!!!イケメンの色悪えらいこっちゃ!!ってなりました。気流しの黒羽二重に破れ傘。伸びた月代に白塗りの手足でクールビューティ。おかるの父与市兵衛から金を奪い、斬り殺し、返り血をあびたのかシケ(カツラの前髪がはらりとしているところ)を手で払い、着物の裾をぎゅっと絞る。財布の中身を改めて、セリフはたった一言「五十両‥‥」。 決めっ決めの見栄に大向こうがかかった後、勘平に猪と間違えられて銃で撃たれて絶命するのですが、撃たれてからがまたこれ長い。もんどり打ちつつ、口から赤い血がぽたり、ぽたりと尻ッ端折りにしてあらわになっている白い太ももに‥‥!! 誰こんなけしからん演出考えた人。いやすごかったです。客席の女性たちの双眼鏡構え率が(笑)。 そして今回の寺岡平右衛門は松也で、これはとっても仁に合っている感じで「めーい!」もしっくりきました。あと驚いたのは竹森喜多八の中村橋之助。声が!声が!お父さんの若い頃に激似!! なんか若い頃、いやあ~先代にそっくり~なんていうおじさんやおばさんの話を聞いて「先代知らんし!」などと思っていた私ですが、もう完全にそっち側です。代々の芸が見られるって本当にすごいことだなあ、と年をとった今はそう思います。 まあこれも毎回歌舞伎のネタの時に同じことを書いている気がしますが‥‥。年をとるとはそういうことです。そうじゃないですか?(中島みゆき) 中村勘九郎七之助兄弟のおかる勘平は完璧でしたし、仁左衛門由良之助はまさに錦絵のようで、私が妄想した通り(病が深すぎる)で感動でした。。。 悪天候にもかかわらず、歌舞伎座は着物姿がちらほらで、「ですよね!」ってなりました。がんばって着ていってよかったです。私のこのペースではこの先何度歌舞伎を見られるのかなと思ったら、この一度の僥倖を噛みしめずにはおられません。引揚げの場で、菊五郎丈の服部逸郎が「世にたぐいなき忠義。あっぱれ!」と浪士たちを見送るシーンは本当に胸熱でした。 外に出たらば小雨。雪だったら完璧だったけど、そこまで行くと出来過ぎだから‥‥人生は腹八分目でちょうどいいのかも?なんて、夜の歌舞伎座を後にしたのでした。

美濃和紙を継いで、書いて、送る「和紙まるけな茶会」の巻

星わにこ
2025/03/19 00:00
もう先月のことになってしまうのですが、2月28日に西荻窪。一欅庵で行われた「和の暮らし」展にいってきました。 以前「できたての和菓子でお抹茶をいただく贅沢☆巻」でもご紹介したのですが、素敵な歴史的建造物の中で行われる素敵なイベントで、10年前から開催されているのです。 今回もまた彩詠さんのお茶会に参加してきました。 「紙を継ぐ特別な時間"継いで、書いて、送る 和紙まるけな茶会"」と題されたお茶会では、お茶をいただきながら岐阜の美濃和紙で作った懐紙を継いで巻紙や好きな長さの紙を作ろうという贅沢企画。「まるけ」は岐阜弁で「だらけ」とか「まみれ」という意味。私も岐阜人なので懐かしい! 巻紙とは、毛筆で手紙をしたためるのに使われる文字通り「巻いてある紙」。幅は20センチ弱ですが、長さは3メートルから5メートル。手にもったまま、巻いた部分を台にさらさらさらっと文字を書くこともできます。便箋とは違って、途中で途切れることなく自分の好きな長さの文章を書いたら、そこで切って使うのです。合理的!  もちろん和紙にはそんな長い紙があるわけではないので、途中で糊で職人さんが継いで作るのだそうです。その糊代は2ミリがベスト。1ミリでは剥がれてしまい、3ミリでは野暮。美しく継ぐのも熟練の技で、90歳の職人さんが継いでいるというお話をきいたら買うよね、巻紙。 さて、その「継ぐ」という作業を実際にさせてもらったのですが、紙を並べて大和糊をつけ、貼り合わせていく。糊が多くてもいけないし、少なくてもだめ。重なりが深くても浅くてもだめ。単純なようでなかなか難しく、作業に夢中になってしまいました。 でも、継がれて、長くなっていく紙を見るとなんだか心が暖かくなってきました。 数日前に大切な友人が亡くなったばかりで、着物を着て出かける気力もなくしかけていたのですが、いつも明るかった彼女の顔を思い出してえいっと出かけて。道中、別の友人の新築のおうちを見学させてもらい、イベントにたどり着き、心尽くしのお茶とお菓子をいただいて、気持ちがほぐれて。 出来上がった美しい紙に、筆ペンやガラスペンで手紙を書き、和紙の封筒に入れて封印をし、自分宛に送る。数日後にそれを受け取るまでが、お茶会。私は茶会記とガラスペンでイラストを書いて送ったのですが、巻紙を開くと、またお茶会の様子が蘇り。 ばらばらの気持ちを丁寧に集めて、真っ白な紙を無心で継いで、次へと繋げていく。終わったあとも、まだ繋がっている。人生も。 本当に贅沢な時間でした。 気持ちがあふれすぎてその場で友人への手紙は書けなかったけれど、美しい紙を見ていたら、白くて柔らかな和紙の中にいろいろな思い出が浮かんで、またいつか会えるのだとそんな気持ちになりました。 彩詠さんのお茶会は、いつも初めてみること、聞くことがたくさん。お抹茶だけでなく、アルコールランプやビーカーを使って実験のように淹れる中国茶や美濃で産まれた見たこともないお菓子。新しい扉が開く、なんだか魔法にかけられているみたいな不思議な時間なのでした。 ほかにも魅力的な作家さんの和小物やワークショップがてんこもりで、今回はキンゾウ商店さんの着物にもあう大人ターバンと、富士商会さんの刺繍の蝶々ブローチをゲットしてきました。 「一欅庵 和の暮らし展」展は春と秋に定期開催されているので、要チェックや!

Mahora稲穗山森の美術館の『秩父銘仙展』にGO!の巻

星わにこ
2025/03/12 00:00
先週の金曜日、かねてから行きたいなと思っていた「秩父銘仙展」に行ってきました!  銘仙とは、鮮やかな色や大胆な柄が特徴のよりをかけない糸で織った平織の絹布。明治中期に女学校の通学着に指定されたことから大正、昭和初期にかけて女性の普段着として大流行しました。 銘仙は主に関東で生産され、秩父、伊勢崎、足利、桐生、八王子が五大産地とされています。それぞれの産地で、デザインや技巧を競い流行を生み出しました。アンティーク着物ブームでも注目された、現代の着物にはなかなかない大胆な柄行が素敵です。ファンの方も多いのではないでしょうか。 昔ちちぶ銘仙館には行ったことがありますが、以後なかなか行けなかったところにお誘いをいただいて、キモトモと一緒に小旅行気分でおでかけしました。 西武池袋線のラビューという素敵な特急に乗ろうと思っていたら、西武池袋線が飛来物の点検のためしばらく止まってしまい、出発時間間に合わず(号泣。もっと余裕をもって行動したい)東武東上線の向かい合わせの電車で懐かし気分で秩父方面に向かいました。(実は東武東上線で行ったほうが早かった:爆) 『銘仙展』は西武秩父ではなく、秩父鉄道の皆野駅が最寄り。Mihara稲穗山の森の美術館で開催され、今年で四年目。 会場で長谷川雄子さんにご案内いただき、銘仙展示を見学。一言で「銘仙」といっても本当に様々で、びっくりしました。華道家であり、秩父語り部の木村和恵さんの1000枚以上のコレクションの中から、毎年総入れ替えで展示されているそうです。なので、今年見たものはもう見られない!? すべて展示するまで続けるとのことで、あと6年ほどかかるそう。1000枚って!と思ったら、もともと2000枚あってそこから県や国に寄付をしてそれでも減ってその数だそうです。 その時の流行を取り入れたり、大正ロマン風からロシアンアバンギャルドまで様々。不思議な模様の羽織があり、何かと思ったら1954年に打ち上げられた人工衛星スプートニクを想像で図案化したもの(!)宇宙!自由です! 銘仙には「ほぐし織」という技法があり、縦糸に型染めをして1色の横糸で織っていきます。そのため模様に微妙な滲みが生まれるのが特徴です。横糸の色によって、織り上がりの反物の色が変わります。 こちらは逸見織物さんで見せていただいた織見本なのですが、左は白い横糸、右は赤い横糸で織ったものです。模様は同じように浮かび上がるのですが、雰囲気が全く変わりますね。 会場では、秩父の銘仙の織元さんや銘仙を使ったアーティストの作品などが並び、お買い物もうきうき。私は海松目さんの帯留めブローチをゲットしました。素晴らしい歌声の正調秩父音頭の披露もありました。 イベントもいろいろで、開催日には染め体験や織体験ができたり、銘仙をお借りして着付けてもらい、記念写真を撮影してランウェイを歩くこともできます! 美術館は結構な山の上で、草履で登山は厳しいかも!ということで和洋ミックスコーデでスニーカーで向かった私(先週に続き、「着物にヘアゴム。スニーカーで着物に恋した話」につながる!?怖い・笑)。里帰りということで銘仙を着たり、アンティーク風の帯で一緒にいってくれたキモトモにも感謝! 結局皆野駅からタクシーで向かったのであまり関係なかったかもですが、歩いて行くぞ~という方はかなりの坂道を覚悟してください! 山の斜面には、珍しいオレンジの福寿草(『秩父紅』という品種だそうです)が咲いていて綺麗でした。 お昼ごろついて、麓の里カフェ hirake gomaさんでオーガニックランチを堪能しました。こだわりの食材で、本当に美味しかったです。美術館にはそのあと登っていくといいと思います。車でおでかけのほうが楽ちんかもです。 開催は3月17日まで。終了間際のご案内で恐縮ですが、おすすめです! 来年もあるそうなので、お近くの方はもとより、遠くてもお友達と小旅行企画にぜひぜひ。

一瞬でできる!中抜き絞りの帯揚げでターバンの巻

星わにこ
2025/03/05 00:00
絞りの帯揚げって豪華だけど、なかなか大人の着物生活には使づらいもの。部分絞りはいいけれど、総絞りや中抜き絞りはボリュームが出過ぎてしまいます。よくのびるしシワも目立たないし、すごく使いやすいしよいものだとわかるんですが、なんとな~く箪笥の片隅においやられがちではないでしょうか。 以前、使いやすくするためのアイデアとしてこんなコラムを書いたことがあります。 関連記事:総絞りの帯揚げをアイロンで伸ばして大人の帯揚げに☆の巻 ほどよく伸びた絞りは、ちょっと薄い色になって使いやすさUPです。これは3年ほど前に書いた記事なんですが、そのときびよ~んと伸ばした帯揚げの絞り、先日みたら少し戻ってました。絞りってすごい! 総絞りの帯揚げは振袖に使われるのでリサイクルでも高めですが、帯枕をかける部分を絞っていない「中抜き絞り」といわれる帯揚げは、総絞りに比べればボリュームが少ないけど絞りのいいところがしっかりあって、ドレスダウンもしやすいです。そして、絞り部分が総絞りより少ないのですごくお手頃な値段で入手しやすかったり、頂き物なんかにも混ざっていたりします。 先日黒い中抜き絞りの帯揚げをいただき、洋服にも合わせやすそうだな~と思ってみていたのですが、ピコーん!とひらめきました。適度に伸びるし、ターバンによさそう! でも縫ったりするのはどうすればいいかな‥‥と考えていて「そうだ!ヘアゴムでまとめちゃえばいいじゃない!」(これが『着物にヘアゴム。』に繋がるのか!?いや繋がらない) というわけで、帯揚げを半分に折って、端同士をあわせてゴムでまとめたらターバンのできあがり! ヘアゴム部分は後ろにもってきても、前にもってきてもOK! 要は輪っかになっていればいいので、頭の前にくる部分をクロスさせたり、バリエーションもできるし、絞りの効果で髪の毛はしっかりまとまるし、シルクだから静電気も起きず髪にやさしい、といいことづくめ。 Youtubeをみていたら「リサイクル横丁」さんが、ゴムでとめることもしないヘアバンドアレンジを披露されていました。賢い!! 落ち着いた色は使いやすいけど、明るめの色も多いので、好きな色に染めて使ってもいいですよね。絹は染まりやすいので、試す価値ありですよ。 総絞りだと頭の後ろにくる部分がボリュームが出過ぎるし、普通の帯揚げでは伸縮性がほとんどないというわけで、この中抜き絞りの帯揚げが髪をまとめるのに超最の高なんです。 もし「これもう使わないな~」なんて思ってる中抜き絞りの帯揚げがあったり、リサイクルなどでお手頃で見つけたらターバンにしてみてはいかがでしょうか。おすすめです!