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男子の袴姿と憧れの仙台平(せんだいひら)の巻

星わにこ
2024/03/27 00:00
桜の蕾がまだ固い東京ですが、卒業式シーズンを終え、ほっと一息ついております。今年は大学の卒業袴だけではなく、小学生の卒業袴や先生の袴着付けもさせていただき、「卒業=袴」の文化を実感しました。 また、成人式で振袖着付けをさせていただいたお嬢さんの大学卒業の袴の着付けは本当に嬉しいものです。なかでも10年前、まだ着物の他装の勉強をはじめた頃に十三詣りの着付けをさせてもらったお嬢さんが大学卒業ということで袴着付と撮影に来てくれたのですが、本当に胸にくるものがありました。お子さんの成長、いえもう立派な大人になった姿を見つつ、そのお祝いを節々にお手伝いできたことの幸せを、ありがたく感じました。そして、立派に育てた親御さんにも心から拍手を送りたいです。 さて、そんな3月の終わり、我が家の子どもも無事高校を卒業したものの、先日のコラムの通り、まさに紺屋の白袴状態で、痛恨の卒業式の装い(?)をさせてしまった私ですが、子どもによると「袴は卒業写真の記念撮影でするから卒業式ではきなくてもいいと思った」とのことで‥‥いや優先どっちやっていう話なんですが‥‥その記念撮影を先日いたしました。 子どものサイズにあわせた袴を、リサイクルですが購入して楽しみにしていたので、まあ卒業式のことは生涯の笑い話になったということでおいておき、十三詣りと中学卒業、高校卒業で撮影した袴姿写真を並べてみました。 改めて見ると、こんなに小さかったのかと驚き! そして中学の卒業のときより、ぐっと大人になり、親バカですがとても嬉しかったです(卒業式当日はさておき(まだ言っている…… 並べてみるとずっと黒紋付なのにその年齢で違って見えて面白いですね。中学の卒業式のときなど、反抗期の名残でずっと変顔でちゃんとポーズもとってくれなかった思い出が蘇りました(そんなことばっかり)。あと、私の着付けも少し上達したかも(笑)。 さて、男子の袴といえば宮城の絹の袴地「仙台平(せんだいひら)」が有名ですよね。今は1社しか生産していない「精好仙台平」の生産技術は重要無形文化財です。スケートの羽生結弦選手が身につけたり、将棋の羽生善治さんが対局で着用したりとニュースにもなるほど、「男袴といえば」の憧れの逸品。 絹の縞袴は「シュルシュルッ」という独特の音がかっこよく、形もびしっと決まるのですが、中でも仙台平は光沢や風合いが素晴らしいのだそうです。 袴はなかなか手が届かないのですが、憧れて名刺入れとお財布は持っています。とても精緻で端正な縞にうっとりです。小さなものですが、しなやかで張りがあって、かっこいいんですよね~。いつか仙台平を身につけるような男になれ~息子よ(自力で頼む)。 春からはおかげさまで無事進学も決まり、入学式用には間に合うようにスーツを買いました。ちゃんとスーツで入学式に出席して、充実した大学生活を送ってほしいものです……。 学費が終わった!と晴れ晴れした笑顔のお母様方の後を追うべく、あと4年母も頑張りたいと思います!

強風に負けない!振袖の襦袢の袂が飛び出さない対策3選の巻

星わにこ
2024/03/20 00:00
友人と運営している和装写真スタジオは、秋は七五三、冬は成人式、春は卒業式・入学式の撮影が多くなります。その他、通年婚礼写真、結婚記念日、お誕生日など家族の記念日や最近は大人の振袖(還暦など)も、ご利用いただいています。 春のこの季節は卒業式が多く、大学の卒業式の撮影だと、2年前に成人式のお支度をさせていただいたお嬢様も多く、もう卒業なの!と時の流れの早さに驚くのと同時に、少しあどけなさもあった20歳の時よりぐっと大人になった様子に思わず親戚のおばちゃん気分で感動してしまいます。 また春は、春休みでもありますし少し暖かくなってからゆったりと成人式の後撮りをされる方も多いです。 この時期暖かくなってきて、季節はいいのですが立春から春分の日あたりにかけて吹く春一番をはじめとした、風が強いことが多いこと。 先日も撮影の日に、強風で振袖の襦袢がふわ~っと飛び出してきてしまい‥‥これは、袴の二尺袖でも結構お見かけします。七五三も、お袖が長いので飛び出し案件は多いです。風のいたずら、困りますね。 これを防ぐ対策3つをご紹介します。 1)つばさ たもとに入れる「つばさ」のご紹介をしたことがあります。たもとにいれる錘のようなものなんですが、だいたい15gの重さがあれば大丈夫。ハンカチのようなものでも代替できます。 関連記事:振袖の襦袢の袂が飛び出さない「つばさ」が便利☆の巻 2)糸をわたす 袖の下線から30センチくらいのところで、着物の袖の振りの部分に糸をわたします。縫って止めてしまわないで、5センチくらいの長さを残すことで、袖の動きが不自然になりません。日舞などの着付けでも使われている技です。 3)安全ピンなどでとめる 襦袢の袖の内側から、振袖の袖とまとめて安全ピンでとめてしまいます(袖の後ろ側推奨)。時間があるときは糸で止めてももちろんOK。袖の幅の真ん中あたり、下から3センチくらいのところを止めてしまいます。超応急処置ですが、両面テープでとめることもあります。七五三などはさっとできたほうがいいですし、針などを使わない方が安心なのでテープを使うことが多いです(はがし跡の残らないタイプがおすすめです)。 先日の振袖撮影では、風も強かったし撮影の後振袖のままで移動されるということで、安全ピンの応急処置をさせていただきました。 2、3の方法を使うときは、振袖を痛めないよう気をつけて。特に脱ぐときに注意してくださいね。 着付ける際は、袖付けの部分での振袖と襦袢の袖合わせをきちっとすることも大切です。 あとは、着る人の所作になりますが、\(^O^)/ など腕をばっ!と上にあげたりすると、袖付けの部分が緩んで襦袢が飛び出しやすくなってしまいますし、脇も緩んで着崩れにもつながります。まあ~お子さんの場合などは元気な証拠でそれもよしですけどね! 晴れ着を着る日のお天気がよければ最高ですが、雨でもそれはたくさんの恩恵やお金が振り込む雨、風が強かったら幸運を運んでくれる風。撮影をさせていただく時には、晴れ着を着たその日がいい思い出になりますようにと願いながら着付けをさせていただいています。 もし晴れ着を着る日に、風が強かったら思い出してもらえると吉なTIPSでした。 ちなみに普通袖の場合は下記をご参照ください! 関連記事:襦袢と着物の袖丈が合わない時の応急処置の巻

女子袴の後ろがずり落ちないためのコツと奥の手の巻

星わにこ
2024/03/13 00:00
卒業式シーズン。袴姿をあちこちで見かけます。これから3月後半は大学や小学校の卒業式で着用される方も多いのではないでしょうか。 時々袴の後ろがずり落ちて帯が見えていることがありますが、そうならないよう防ぐ方法を今回はご紹介したいと思います。 まずは所作。どんなにきちっと袴の紐を結んでも、座る時にスカートのひだを整えるように下に撫で下ろしてしまうと、後ろが落ちてきてしまいます。座るときには、脇のスリットからそっと手をいれて、後ろをふわっと持ち上げて座ると、袴のずり落ちが防げます。(男袴も同様です) 椅子にもたれても、後ろの山が崩れてしまいます。車の乗り降りのときも、後ろ側がひっぱられがちなので注意しましょう。これがもしかしたら一番のポイントかもしれません。 あとは、座っていて立ち上がる時に袴を踏んでないか確認しましょう。他の人や椅子に踏まれていることもあります‥‥。知らずに立ち上がるとアウトです。 とにかく袴を下方向に強くひっぱらない点を気をつけていれば大丈夫かと思いますが、着付けのときにもいくつかコツがあります。着付け師の方には釈迦に説法だと思いますが、卒業袴はご家族か着付けてあげることもあると思うので、ご参考までに……。 基本ですが、後ろ紐を結ぶときは、交差させるとき前紐にしっかりからげること。後ろは上側をしっかりと背中に密着させること。 それから袴紐が結ばれる胸下の部分、ウエストにタオルなどで補整を入れてあげること。あまり薄すぎるものではなく、ほどよい厚さのものを入れたいです。また、1枚では長さが足りないときもあるので2枚繋げたり、100均などでちょっと長めのロングタオルを購入してもいいでしょう。 補整が入ることで、少ししっかりと紐を結んでもクッションになって着る本人も苦しくないですし、紐も安定します。 もうひとつは、「へら」を帯の結び目に差し込むときに、ぐっと奥まで入れておくこと。さくっとさすだけでは、外れてしまって役にたたなかったりします。 へらという存在があるということは、やっぱり後ろは帯から外れて落ちやすいんですよね。特に、女子袴は男子袴のように腰板もないので、帯の根元にの腰板の付け根をあてて安定させることができません。ふんわりとした柔らかい山を作るようになっているので、より落ちやすい構造です。 着付けヘラなどで、へらをぐっと押し込んでおくとよく効きます。 この後ろの「へら」がないものもあります。そんなときは細い紐を安全ピンでとめるかちくちくっと縫ってとめて、その紐を帯の結び目にからげてあげるという奥の手があります。 あんまりひっぱりすぎると、袴のうしろのふわりとしたラインが崩れてしまいますが、ほどほどな強さで袴の腰板を帯に固定すれば、ずるっと帯が丸見えになってしまうようなことはありません。 お子さんなどの場合は、体も細くて袴も安定しづらかったりするので、補整を入れるのはもちろん、この裏技を使うのもひとつです。 卒業式、袴で1日楽に過ごして、楽しい思い出になるように‥‥。お子様、お嬢様に着付けてあげるときなど、参考になさってください。 それから、袴を着た人は「ふわっと袴を持ち上げて座る」ちょっとプリンセスな所作も忘れずに!
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卒業式。着物の母の気持ちの巻

星わにこ
2024/03/06 00:00
3月。卒業式シーズンですね。うちの子どもも先日無事高校の卒業式を終えました。春からの進路も決まり、ほっと一息ついております。あとは頑張って学費を稼ぐだけ!です。 高校は私服通学のため、卒業式は女子はほとんど袴! 大学の卒業式のようでした。袴の男子もちらほらいましたが、男子はスーツが主流。 受験のあれこれで、すっかりスーツのことを失念していて卒業式に購入が間に合わず、とりあえずジャケットだけでも買わないかというと、友達に借りることにしたという返事だったので、まあいいかと思っていた間抜けな母の私。 本当は黒紋付袴を用意していたのですが、卒業式が終わったら打ち上げだからと拒否られ、卒業写真を別日に撮影させてもらうことと引き換えに手打ち。当日は本人に任せるか‥‥なんて思っていました。 当日別々に学校に行き、体育館で待つことしばし。卒業生入場のみんなの晴れ姿に目頭が熱くなります。いよいようちの子‥‥と思ったら‥‥えっ!! そこには黒のウインドブレーカーの上下を着て、胸にコサージュをつけた我が子が‥‥!!! あ、友達に借りるって行ったけど、別にスーツって言ってなかったな‥‥。 いやだがしかし、ウインドブレーカーって(白目) はい、もちろんうちの子だけでしたよ!!! もうやっちまったもんは仕方ないですけど‥‥。涙もひっこんだ母でした。 この際、何事もなく(なかったと言えるのか)、元気で卒業してくれただけでいいと思うしかないと式の間中、なんともいえない気持ちでございました。 さて、気持ちを切り替えて(涙)着物の話ですが、女の子たちの袴姿は本当に華やかで、とても素敵でした。小学校、高校、大学の卒業式で袴の着用率も上がっているし、成人式も振袖を着るし、今のお子さんたちは私が若かった頃より、ずっと行事での着物の着用率が高いかもしれません。 これからのシーズン、袴の着付けの仕事が増えるので思わずめちゃ業者目線で観察してしまいました(爆) 父兄席にも着物のお母さんが数名。入学式より人数が増えていました。訪問着の方が多かったかな。 私ももちろん着物で。卒業式の昭和の定番の黒羽織に一つ紋色無地でした。久しぶりに色無地に袖を通しましたが、やっぱり気持ちが引き締まりますね。 新しく買ったものはありませんが、自分的一張羅をひっぱり出しました。 着物:一ツ紋色無地(嫁入り着物) 帯:母の辻ヶ花袋帯 羽織:母の紋付を羽織に仕立て直したもの    義母の羽織紐で 帯揚:中野スズミさんにオーダーしたワニ 帯締:道明の奈良組 草履:カレンブロッソの白 こだわりは帯揚げです! ワニに、双葉が生えている図案をリクエストしたものです。 子どもの名前に植物の漢字が入っているので、成長を祈って描いてもらいました。今や、樹も大きく育ってワニが潰れそうですが(笑) そして、中身ですが たかはしきもの工房のペチコ! 足袋下ハイソックス! 足袋はゑびす足袋のふわもこ足袋! 腕にはアームカバー という防寒ばっちりスタイルで、冷え知らずでした。 特におすすめなのが「ペチコ」。これは昔の都腰巻(ニットの腰巻)のアクリル復刻版なのですが、暖かいのはもちろん、のびがよくて、お手洗いとかにいくとき着物の裾をくるっと包んで上に持ち上げられるので、とってもいいんです。 特に柔らか物だと、トイレで四苦八苦しがちなんですが、ペチコだとらくちん! 和装肌着をスリップのスカートタイプ愛用の方の気持ちがわかります。 自分的には、卒業式完璧母着物コーデのつもりででかけたのに、まさかウインドブレーカー攻撃で薙ぎ倒されるとは思いませんでした‥‥。やられた。。。 家に帰って一悶着あったのは言うまでもありません。一生の思い出話になるやつですね。友達に上下揃いなんだから、スーツといえなくもないかもよ?と言われ、そうだなあ、黒の上下だったし色的にはそんなに浮いてなかったし、五つ紋の場所にブランドロゴが入っていていいかも‥‥いいわけあるか。 時々、かましてくれる子どもですが、気がついたらもう成人。自分のやりたいように生きていってくれればいいのかもしれません。卒業シーズンはちょっぴりおセンチになりますね。 全国の卒業生と卒業を見守るご家族の皆さんに幸あれ!