おはしょりナナメをまっすぐにする方法★の巻
星わにこ
2023/03/29 00:00
着付けについて考えるシリーズ(シリーズだったの?)、今回はおはしょりに注目してみました。
よくおはしょりは指1本分、などと言われます。だいたい7センチ前後ですが、背の低い人は控えめに、高い人はもう少しあってもバランスがとれると思います。
このおはしょりですが、裾つぼまりに着付けをする(上前の端を上げる)と、左側が長くなり、ナナメになります。これは構造上いたしかたないこと。
昭和時代のきもの本などを見ていると、ナナメでも当然ですよね!という感じですが、平成以降は床と平行に、まっすぐおはしょりを仕上げるようになっています。ナナメが変だな、と思うのは、着付け教室でもそう習うし、雑誌などでもまっすぐだから。
でも、このおはしょりをまっすぐにしようと思うとちょっと手直しをしなければなりません。
いくつか解決方法はあって、まず帯を結ぶ前にまっすぐに整えて伊達締めや胸紐で押さえてしまうやり方。
これは他装でよく行う方法。綺麗におはしょりを整えてから帯を結ぶので綺麗に仕上がります。でも、この方法の欠点は、着崩れて衿がゆるんだりした場合、おはしょりをひっぱって直す、ということが難しいこと。
胸下の紐が苦手ではない人はこれでもいいと思いますが、私は苦しくなってしまうので、この方法が苦手です。崩れないように胸紐や伊達締めをきつく結ぶと体がしんどいですから、着崩れても引いて直せるようにしておいたほうが楽です。
また、腰紐自体を左上がりにナナメに結んでおはしょりをまっすぐに見せるやり方もあります。これは体に紐がナナメにあたるので、体が歪む原因にも。
じゃあ一体どうしたらいいの?ということですが、帯を結び終わってから、おはしょりを帯につっこんでまっすぐに整える方法を採用しています。
見えるところ、おはしょりの長い部分をぐっと帯の中に押し込んだら、両手の4本指を下から差し込んで脇に扱いて真っ直ぐにします。このときちょっとお腹をひっこめるとなおよし。
着付けヘラを持っている方は使うとよりすっきりと扱くことができます。
これで胸元が緩んだりしたら、一度おはしょりを引っ張り出して下まで引き、緩みを直して、また帯につっこめばOK。
つっこんだだけでも、よほど帯が緩かったりしなければ、落ちてきたりすることはありません。
胸紐で調整する派の方も、よかったら一度試して見てください。楽ちんですよ!
次回はもうちょっとおはしょりについて考えたいと思います。「おはしょりを一重にするには」編、お楽しみに!
「お太鼓止め」は短い帯の救世主!の巻
星わにこ
2023/03/22 00:00
まだ三月半ばなのに東京ではもう桜が満開に近い状態で、あまりの早い春にあわあわ。年度末で追いまくられているうちに春が終わってしまうのでは? とドキドキしております。
でも、キモノオタクは通常運転。また日々着付けのことなど考えているのですが、最近は「お太鼓結び」を最速で結ぶにはというのを試していて、ずっと仮紐を使って結んでいたところをきものクリップを使うということをしてみたら、かなり時間短縮になりました。
結ばない代わりに、仮紐で押さえるところをクリップで止めるのですが、ゆるまないし、小さめのクリップならつけっぱなしでもOK。むしろ外さないほうが手間もない。ということでいいぞ!と思ったのですが、やっぱり時々クリップの形がぽこっと出そうで気になる時も‥‥。
そこで銀座いち利の女将さんの動画を見て、「お太鼓止め」を使えばいいのでは!と思い、使ってみたらめっちゃよかった! 平らでしっかりと止まり、つけていても違和感ゼロです。
関連動画:【便利グッズ】使ってみたシリーズ お太鼓止め編
あと、最近更なる胴回りの成長を遂げてしまった私‥‥(悲報)。先日、喪服を出してみたらあれっ!入らない!? なんか、しまっておいたら縮んじゃったのかな‥‥よくあることだって友達に聞いたな‥‥そうそう、帯もしまっておくと短くなっちゃうって聞いたことがあるな‥‥という現実逃避はおいておて(爆)
帯の長さが足りないためにお太鼓の返しが不十分で、このままではお太鼓が落ちてしまう危険が‥‥という時、このお太鼓止めがいい仕事をしてくれるのです。
まずは、結ばずにお太鼓止めで帯を止めることで、帯の長さが稼げること。
そして、さらに返しが短くてお太鼓が落ちそう!というときには、短い返しの部分(「て」で隠れるところ)にお太鼓止めを差し込むだけ。「て」を差し込む前にクリップをしてくださいね。
返しをクリップで止める場合は2ついるので、3つ必要です。
今までそんな時のピンチ案は「隠し仮紐」一択だったのですが、新たな裏技発見です。
関連記事:短い帯は隠し仮紐で固定できるぞ。の巻
実はこの返しを止めるのは、お太鼓止めを使う前に文房具のダブルクリップでもやったことがあります(爆)。ただ、挟むのにちょっと力がいるし、うしろに手をまわしてするのでちょっとがんばらないとだめ、また帯が傷つくかも?という場合はやめた方がいいかも。
お太鼓止めは差し込むだけでOKなので、比較的楽です。前結びの方だともっと楽に対処できると思います。
なんという‥‥なんというチームふくよかの強い味方‥‥。(チームふくよかでは、「裏技に頼らず痩せろよ」というつっこみは受け付けておりませんので悪しからず‥‥)
他にも、半幅結びの結び目を固定したり、帯が緩まないようさまざまな使い方ができるお太鼓止め。
お値段もリーズナブルなので嬉しいですね。もし、帯が箪笥にしまっていたら縮んじゃった!(縮まない)&お太鼓止め裏技やったことないわ、という方がいらしたらぜひ試してみてくださいね!チャオ!
袴のリボンに水引でワンポイントチャームの巻
星わにこ
2023/03/15 00:00
卒業式シーズンですね。コロナ禍でいろいろな式典も我慢してきたお子さんたちが、晴れ晴れと卒業式に臨めるのは本当によかったな~と思います。
2年前に成人式が中止になってしまったお嬢さんの記念写真の撮影をさせていただいたのですが、今年は卒業式。同じ振袖に袴をあわせて着付けをさせていただきました。とてもとても嬉しかったー!
いまや振袖に袴をあわせるコーディネートもすっかり見慣れてきたように思います。お袖が長いと華やかでいいですよね~。
お母様は、拙著『その着物、どうする? 好きだから知っておきたい保管・メンテ・処分の方法』で、着物の収納・お片付けを監修してくれたさかもとりえさん。着物の準備も完璧でした!
お祖母様が用意してお母様が来た振袖を受け継いで、キラキラの笑顔で卒業式に向かう姿を見て、涙~~~!!
佳き日の門出、本当におめでとうございます!!
「成長」を祝う縁起の良い蝶が舞う振袖に蝶の刺繍の袴姿が、とても素敵でした。
水引の髪飾りをつけていらしたので、袴のリボンに水引の飾りを添えさせてもらいました。リボンだけでも可愛いのですが、コサージュやワンポイントの飾りをつけても可愛いですよね! リボンの変形結びもいいし、シンプルな乙女結びもやはりスタンダードでよき‥‥。
本人の個性や学校の雰囲気にもよるとは思いますが、それぞれのスタイルで
袴は、後ろの帯をちょっと大きめに結ぶとバッスルドレス(※)みたいでいいですよね。ふわりと膨らむと、本当に可愛らしいし、着ている本人もテンションあがるんですよね~。
この時期、卒業式に出る先生のふりをして袴で出かける(コスプレ?)なんてこともしたことがありますが、実に楽しい。あと、とってもとっても楽ちんなんですよね。もっと普段に袴を履いたらいいのに。
なーんて思いながら、晴れの門出のお祝いの着付けをさせてもらえるってなんて幸せなんだろうと思う、春の日でした。
※19世紀ヨーロッパで流行した腰あてをしてふわりと後を盛り上げるスタイルのドレス
二色のふき・十二単の五衣のような振袖の巻
星わにこ
2023/03/08 00:00
どうも、振袖が好きすぎて困るわにこです。また振袖の話題で失礼します。
私が着付けを担当しているスタジオでは、成人式の記念撮影もしています。レンタルも多いですが、お持ち込みのお振袖での撮影もあります。お嬢様用にあつらえられたものもあれば、ママ振もあります。
先日、お母様が20歳のときに着た振袖のお持ち込みがあったのですが、初めて見るお仕立てでした。
袖口と裾のふきと、袖の振りが赤と緑の二重の二色になっていて、辛子色の比翼がついています。さらに振りの部分から見える襦袢が裏表違う色(辛子色と朱色)で無双になっており、重ねると十二単の五衣(いつつぎぬ)のように見えるというもの。
絹の織りなす色の襲に、思わずうっとり‥‥。
伊達襟も、ふきの色目に合わせた色が用意されていました。比翼でついている辛子色の間に緑の伊達襟を挟む込み、ふきと同じように二色になります。
振袖は蝶々の大きくて華やかな地紋が入った色無地に花紋が入っていて、あでやかな真朱(まそほ)色がとても素敵でした。
振袖自体が一色なので、ちらりと見えるふき、袖口、襟元に密やかにこぼれる色がとても効いていて、おしゃれ!! よく見ないとわからないところもまたこれぞ着物の醍醐味という感じで痺れます。
着物が大好きで、凝ったものや特別感が大好きだったというお祖母様が、お母様のために誂えたまさに世界に1枚だけの振袖。
「20歳のときは、なんだか演歌歌手みたい‥‥ってあんまり気に入らなかったんだけど、娘がこうして着てくれて、大切にしていてよかった。誂えてくれた母にも感謝です」とおっしゃっていて、じーん。
母から娘へ、さらに孫に‥‥着物と一緒に受け継がれていく気持ちを思うと、胸がいっぱいになります。
受け継ぐ着物と簡単に言いますが、子供を産み、それが女の子で、健康に育って無事成人しそれを祝う‥‥誰でも叶えられることかというと、実はそうでもなく、だからこそ尊いなあと感じます。
写真スタジオの仕事は、そんなご家族と着物の物語に触れられる大好きな仕事です。人生はいろいろあるけど、大切な人と笑顔で写真を撮る幸せのお手伝いをすることができる‥‥だから続けているのかもな、と、着物で笑顔のご家族を見ながら有り難く思うのでした。