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二色のふき・十二単の五衣のような振袖の巻

星わにこ
2023/03/08 00:00
どうも、振袖が好きすぎて困るわにこです。また振袖の話題で失礼します。 私が着付けを担当しているスタジオでは、成人式の記念撮影もしています。レンタルも多いですが、お持ち込みのお振袖での撮影もあります。お嬢様用にあつらえられたものもあれば、ママ振もあります。 先日、お母様が20歳のときに着た振袖のお持ち込みがあったのですが、初めて見るお仕立てでした。 袖口と裾のふきと、袖の振りが赤と緑の二重の二色になっていて、辛子色の比翼がついています。さらに振りの部分から見える襦袢が裏表違う色(辛子色と朱色)で無双になっており、重ねると十二単の五衣(いつつぎぬ)のように見えるというもの。 絹の織りなす色の襲に、思わずうっとり‥‥。 伊達襟も、ふきの色目に合わせた色が用意されていました。比翼でついている辛子色の間に緑の伊達襟を挟む込み、ふきと同じように二色になります。 振袖は蝶々の大きくて華やかな地紋が入った色無地に花紋が入っていて、あでやかな真朱(まそほ)色がとても素敵でした。 振袖自体が一色なので、ちらりと見えるふき、袖口、襟元に密やかにこぼれる色がとても効いていて、おしゃれ!! よく見ないとわからないところもまたこれぞ着物の醍醐味という感じで痺れます。 着物が大好きで、凝ったものや特別感が大好きだったというお祖母様が、お母様のために誂えたまさに世界に1枚だけの振袖。 「20歳のときは、なんだか演歌歌手みたい‥‥ってあんまり気に入らなかったんだけど、娘がこうして着てくれて、大切にしていてよかった。誂えてくれた母にも感謝です」とおっしゃっていて、じーん。 母から娘へ、さらに孫に‥‥着物と一緒に受け継がれていく気持ちを思うと、胸がいっぱいになります。 受け継ぐ着物と簡単に言いますが、子供を産み、それが女の子で、健康に育って無事成人しそれを祝う‥‥誰でも叶えられることかというと、実はそうでもなく、だからこそ尊いなあと感じます。 写真スタジオの仕事は、そんなご家族と着物の物語に触れられる大好きな仕事です。人生はいろいろあるけど、大切な人と笑顔で写真を撮る幸せのお手伝いをすることができる‥‥だから続けているのかもな、と、着物で笑顔のご家族を見ながら有り難く思うのでした。