梅雨が来る前に夏がきてしまったような東京ですが、わたくし気温30度を越えた5月31日に袷で出かけました。
衣替えを待たなくても暑ければ単衣でいいのでは、と書いたばかりなのになんでかと申しますと、袷で出かけなくてはならぬ用事があったのでございます。
行き先は明治座。
『オーディションで選ばれた100名の方に、舞台「細雪」の一場面にエキストラとしてご出演いただく、“「細雪」の舞台に着物で出演しよう!”キャンペーン』に応募して、なんと千秋楽にエキストラ出演させていただけることになったためです。
http://www.meijiza.co.jp/info/2014_06/campaign/
通し稽古を見せていただき、自分も一度舞台にあがってみるということで、当日着る衣装で参加とのこと。衣装は袷(><)。着替え場所はないので、家から汗対策をし、衣紋をがっつり抜き(こうすると結構涼しい)、帯下保冷剤の術(
http://ichirimall.ldblog.jp/archives/31587783.html)で、なんとか劇場にたどり着きました。いや?やっぱり5月末の袷は厳しいです!!
……思い起こせばこのキャンペーンの締切当日。いち利モールの担当さんにこのオーディションのことを教えていただき、な、な、なんですと?!と驚くわにこ。
「細雪」と言えば、上演があるたびにしつこく観に行っている大好きな舞台。
そのとき、すでに15時近く。明治座のオーディション説明ページを確認し、応募用紙をダウンロード。上半身、全身の写真が必要とのことで、キモ友(着物友達の)カメラマンに撮ってもらった写真を掘り起こし、コンビニにいってプリントアウト。
応募用紙に、細雪に対する暑苦しいまでの想いをみっちり書き込み、16時半には郵便局に行って投函。そんな勢いだけで出した書類でしたが、後日書類審査通過のお知らせをいただき、オーディションに行くことになりました。
ここで悩んだのが「古典柄の自分の着物で出演。それを着て参加」というミッションです。時は昭和13年秋。古典柄……。
キモトモの皆さんにお知恵拝借しつつ、自分の持ってるそんな時代っぽい着物を引っ張り出して、帯や羽織とコーディネート。通行人としてあーでもないこーでもないと悩んだ末に、こんなコーディネートになりました。秋といいつつ、細雪の「雪」を意識してみました(自己満足)。
着物:雪のようなロウケツのたたき染めに椿の小紋
帯 :いただきものの紅葉の刺繍帯
帯揚:紅葉のりんだし
半襟:雪輪に桜の刺繍半襟
羽織:雪輪に撫子の長羽織
草履:菊之好の和紙台にスエード鼻緒
かんざし:二葉苑の更紗玉
さて、肝心のオーディション。
「自分で着物を着て来る」というハードルのためか、年齢層はやや高め。キモノ姿の方が、大勢で控え室にいらっしゃる姿にドキドキ!! コーディネートで頭がいっぱいだった私は、オーディション会場についてはじめて「演技(というほどではないが)して人前に立つ」のだと改めて気付いてまたこれドキドキ!!
そして順番が回って来て、演出の水谷幹夫先生はじめ、あの憧れの舞台の製作の皆様の前で「人形を見ながら歩いてお気に入りの人形を見つけて、じっくりみて、一度前を向いてから、出て行く」という演技をする、というミッションが課せられました。そ、そんな!!
オーディションを受けにいらしている方たちは「明治座アカデミー」という俳優養成所で勉強されている方も多いようで、皆様素敵に歩いていかれます。
私はかなりロボっぽいというか、挙動不審状態に。右手と右足が同時に出ては‥‥いなかったと思いたいレベル(><)。
でも、一緒のグループだった素敵な方と、帰りの方向が一緒でお話させていただいたりして、楽しかったです。着物の話って、本当に盛り上がりますよね。
ドキドキのオーディションから待つこと10日間あまり‥‥。
なんと合格通知が届いたのです。
私・舞台に立つ!・・・・
いいの?いいのですか?? そして、説明会にいくと、合格者出演日一覧が張り出されており、なんと千秋楽(ごろんごろんごろん)。そんな大切な日に!ひい~~! 赤くなったり青くなったり大変です。
オーディション通過した人への説明会ではヘアメイクの方から「女優さんより、キレイにしてこないでくださいね(笑)」と言われましたが、まあそれは心配ないすね(笑)。
この日はメイクの注意や、コーディネートチェックなどが行われました。
そしてゲネプロ(最後の通し稽古)を観劇し、エキストラの出番を確認。何度も観劇していますが、通行人の方に注目したことはなかったので、あ、ここなのね、と再確認。
実際は、一人で歩くのではなくプロの俳優さんがきちんとエスコートしてくださることがわかり、ホッとしました。それにしても、出番まで1ヵ月ほど……緊張でどーにかなりそうです!
「細雪」は皆様ご存知の通り、谷崎潤一郎原作の名作舞台。
上演回数は1400回を越え、長く愛されている作品です。
大阪船場の老舗「蒔岡商店」の四姉妹の物語。大きなお屋敷で暮らし、春は京都の花見、夏の蛍狩り、秋は箕面の紅葉見物と優雅な生活を送っていますが、時代は遷り、店が倒産し戦争が始まり、そんな生活も翳りを見せ、姉妹達の生活も変わっていきます。
テーマ曲として使われているバッハのブランデンブルク協奏曲第5番が流れると、気持ちは一気に細雪の世界へ!!
長女から四女まで、それぞれの年代のそれぞれの女性の喜びだけではなく、悩みや苦しみや悲しみが、美しい四季の風景と美しい衣装に彩られて、観るものの心に飛び込んできます。わたくし、毎度ハンケチ必須で観劇しております。あと、男性陣も素敵なんですよ?。
キモノスキーとしても、冒頭の法事の四姉妹の年代に応じた桜色の色無地の着こなしから始まり、日本舞踊のおさらい会でのこいさんの黒引姿、お屋敷での虫干しシーンなどなど、うっとりの連続です。
私が一番好きなのは、長女の鶴子が次女の友人達が自分のうわさ話をしているところに入って行き、皆が帰ったところで長羽織の裾をパっと払ってソファに腰掛けるシーンです。そういうちょっとした仕草なども本当に美しく、かっこよく、目が離せません。着物を着たときの参考にもなりますよ。
未見の方もリピーターの方も、着物好きならぜひ御覧になっていただきたい舞台です。
3幕3時間半を越える上演時間ですが、30分2回の休憩がありますので、幕間にお弁当をいただいたり、時間に追われる日常生活を忘れて、ゆったりとした気持ちでお楽しみ下さい。
キモトモと四姉妹結成するのも楽しいですよっ(誰が何女になるかで喧嘩しないようにしてください(笑))。
もし千秋楽にいかれる方がいらっしゃいましたら、四女妙子の人形展で人形を観ているうちの一人が私ですので、転ばないかどうかちらっと見守ってやってくださいませ。
いち利モールさんの「細雪」観劇のおでかけイベントにも参加していますし、その他にも何度か観劇に行く予定でおります。もし明治座でわにこを見かけたらお声かけくださいねっ!(どんだけ好きやねん!)