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夏は小千谷縮!涼しさの秘密「湯もみ」を見学の巻

星わにこ
2025/06/25 11:00
先週は突然のお休みをいただきすみませんでした。猛暑の中真昼間に自転車で大移動して倒れてしまったわにこです。水分や塩分をとったから大丈夫、ではなく「暑いところにはなるべく出ないで」とお医者様に叱られました。6月だからと油断していたのかもしれません。これから長い夏、年齢も鑑みて無理をせず行動しようと思いました。皆様もお気をつけてお過ごしください。 そんなわけで(?)近年は早くから真夏日が増えて、洒落にならない暑さです。涼しい着物が着たくなりますよね。汗もかくし、洗えて涼しいもの…‥といえば麻の着物が代表格ではないでしょうか。夏着物用に進化した素材もたくさんありますが、日本人が古来から愛用してきた麻はやっぱり格別です。 涼しさの秘密は、麻は熱伝導率が高く熱がこもりにくい、そして吸湿速乾性がよいためさらりとしていること。また、ハリがあるため肌に張り付きにくく、風が通ってさわやかです。 着物だけでなく、夏は襦袢やステテコ、足袋も麻は涼しい。だてにずっと夏といえば麻、リネンと愛されてきたわけではありませんね。 ひとつ難点はというと、素材にハリがあるためシルエットがちょっと大きめに見えること。厚みのある私の体型にさらに厚みが(涙)というわけで、ついついセオアルファなどに手がのびますが、やっぱり麻の「夏だわ~」という機能性、肌触り、その風情が素敵すぎてやっぱり着たい!となるのでした。 麻の着物の代表格として「小千谷縮」がありますが、先月たかはしきもの工房の研修で、産地である新潟県小千谷市のIONOという素敵なお店にお邪魔し、特別に小千谷縮の「湯もみ」を見学させていただきました。 小千谷縮は撚りをかけた緯糸(よこいと)を用いて織りあげ、それを湯もみで縮ませることで「シボ」を出し、このしぼによる凹凸が肌への接地を減らし、通気性がよくなることで涼しく、また独特の風合いが素敵な織物です。 夏に小千谷縮を着ている女性を見ると、本当に涼しげでうっとりですよね。 最初は平織りになっている反物を、45度ほどのちょっと熱いお風呂くらいの温度の何も薬剤が入っていないお湯につけて揉み洗いをし、糊を落としていきます。リズミカルに職人さんが揉んでいるうちに、余分な染料も落ち、シボができます。なが~い反物を揉んで満遍なくシボを立てていくのはまさに職人技。 この手作業による湯もみは江戸時代から変わらない小千谷縮の特徴。小千谷縮は越後上布とともに平成21年にユネスコの無形文化遺産に認定されていますが、「必ず手湯もみをすること」がその条件に入っているそうです。 暖かい湯の中で広げられ、揉まれ、絞られている反物は、なんだかとても気持ちよさそう。最後に「棒シボ」といって、反物を輪にして棒を使って一方向に捻ることで、縦方向にシボを揃えていきます。 この湯もみによってシボが形状記憶され、反物幅を整えるとさらりと風を通し、涼しい風合いのあの小千谷縮になるというわけです。 見学の時に湯もみをされていた反物が、なんと私が持っている譲られ着物の小千谷縮と同じ柄だったのです。なんだか、その子の生まれるところに立ち会ったような気持ちになりました。見学させていただき、感謝です。 百聞は一見に如かずと言いますが、文章や写真では見て知っていたつもりででも、実際職人さんの手でこうして仕上げられているのだと見るとやはり感動。一層愛着が湧きそうです!  一年の中でも暑い時期が増えて着る時期も長くなって、大活躍の小千谷縮。今年はたくさん着るぞ!と思った旅でした。 見学させていただいたときの反物は杉山織物さんの商品でした。ありがとうございました。