『その着物、どうする?』という本を書いたこともあってか、よく着物の処分については相談を受けます。先日、着物の処分に困っている人がいるんだけど、どこか買い取ってくれるいいところはありませんかという相談を受けました。私自身は、実は買取をしてもらったことはありません。差し上げたり寄付したりすることがほとんどで、どうしようもないものは古布回収に出しています。
ちょっと今回はしょんぼりな話になってしまうのですが、昭和ピープルは「着物は高価なもの」と思っています。確かに、買う時は高価ですが、昔と違ってみんなが着物を着るわけではなく、またファストファッション全盛の現代、売る時には値段がつかないと思ったほうが間違いありません。
最近の若い人は、流行の服を着るために購入するときに「リセールバリュー」を大事にする人が増えているそう。飽きたらメルカリなどで売って、また新しいものを購入する。そのとき、高く売れるものを選んだり、手入れもきちんとして、その洋服の価値が下がらないようにするんだそうです。物価がどんどん上がっている今、リサイクルの衣類も需要があるし、賢いですよね。
そういう観点で見てみると、着物は圧倒的に手放したい人は多いけど、欲しい人が超少ない市場です。リセールバリューは、ほぼないジャンルと言っていいでしょう。
だから買取業者さんも高くは買ってくれません。「えっ!買ったときはすごく高かったと聞いていたのに、買取金額はこれっぽっち?」ということがほとんどです。
そして、どこの家の箪笥にも入っている喪服や普段着のウール着物などは、買取もしてもらえません。寄付も断られることが多いです。中古の喪服やウール着物は数も多すぎて需要がないのです。あと、サイズが小さい着物や色柄が流行とかけ離れていたり状態が悪かったりしても難しいです。
だれかに差し上げるときも、同じです。欲しいという人のほうが圧倒的に少ないので、もし欲しいという人がいたら本当にラッキーだと思います。
買取のことを聞かれたときには「買取金額は期待しないで、持っていってもらえてだれか着る人のところに渡ればいいと思えれば」とお伝えしています。
「あんなに大事にしていたものなのに、価値がないの?」と悲しくなってしまう可能性があれば、もらってくれる人を探すか気持ちよく寄付するか、「もうこの着物のお役目は終わった」と思って、洋服と同じように処分する方法を考えてみるほうがよいでしょう。
着物に限らずものの価値は、自分軸で考えると楽になります。いくらいいものでも、自分にとって必要なければそれは不用品なのです。自分はいらないのに、「もったいない」「高く売れるかも」「何かに使えるかも」「思い出の品だから」と手放さないでいると、際限がありません。
自分が不要と思ったら、手放す勇気も必要です。そのときは、潔くさようならすると、意外とスッキリしますよ! 決められない!というときは、一人じゃなく、誰かと一緒にやるのがおすすめ。
着物じゃないですが、実家にある大量の昔の写真アルバムの処分を考えあぐねていましたが、先日実家の法事で集まった親戚にアルバムを見てもらい、とっておきたい写真だけはがしたりスマホで撮影したりして、それで供養としてあとは全部処分することにしました。思い出話に花が咲いたし、とってもすっきりしました。
といいつつ、昨日お友達の着物整理を手伝いにいって、いらないという着物をいただいてきたり、その帰りに古本屋さんで面白そうな本を買ってきてしまった私ですが(汗)、その時その時、自分に必要なものを手元に置いて、「自分が」不要になったら処分する、という暮らしが理想。……理想です。大事なことなので2回言いました……。
自分ができることは限られていて、活かせる範囲のものしか活かせない。手にあまるものを手放して、数を減らしたほうが一つ一つのものを大切にできる。残して死んだら全部ゴミだと思うと、自分で処理したほうがいいなとも思います。
着物も、そんな「もの」のひとつです。思い入れが強くなりがちですが、自分の気持ちと相談して、ただ無闇に「大事なもの」と思い込まず、自分が本当にそれを好きか、とっておきたいか、必要かどうかという視点が大事なのかもしれないなと思う今日この頃です。