着物を着ていると、「着物をもらって」と言われることが一度ならずとあるのではないでしょうか。
そう、着物は着る人のところに集まってくるものなのです。着物を着始めたころは、若かったこともあるのだと思いますが、いろんな方から着物を譲っていただきました。
ありがたく着させていただいて、お手入れをして、いろんな勉強(失敗含む)もしました。
一方で一度も袖を通していないものもありました。
サイズが合わなかったり、やっぱり趣味が合わなかったり、自分に似合わなかったり。そういうものはまた誰かに差し上げたり、チャリティに出したり。
でも、仕立て直しの可能性があるものや、自分では着れないけど可愛くてどうしても手放せないものや、いつか着るかもと思うものなど、手放すことができなくて、どんどん数が膨れがって収納崩壊を起こしたことも‥‥。
そう。着物って捨てられない! 本当に、どうしてなのでしょう。
同じ衣類でも、洋服は落ちないシミがついちゃった、擦り切れた、着古した、似合わなかった、サイズが変わったなどがあれば、処分することができます。
でも、着物は思い切れないのです。
体はひとつだから、大量の着物はいらないし所有もしきれない。どうしたらいいの! ということで今回書籍の取材でいろんな人に「着物を手放す」話を聞きました。
いろんな方法がありますが、ベテランの着物好きは大抵困っているのですよね。どうしてる? と聞くと「こっちが聞きたい」と言われたことも何度もありました(笑)。
話をきいて、紐解いていくと「着物は特別なものだと思っている」から、なのではないかな~と思い当たりました。
確かに、買うと高価だし、代々受け継ぐことができるものもあるし、捨てるのはもったいない。正直意地汚い気持ちもありました(笑)だけど、維持したり保管しておくのも大変です。
あとは「着物が大好きだから」こそ、手放せない。
でも、あの世まで持っていくわけにもいかないし、本当に気にいった着物だけに厳選して、それを片付けてくれる人も楽にできるようにしたいな~とも思うわけです。
ポイントは「もったいない」ということが理由なら、手放し候補だということ。
「大好き!」「着たい!」というのは手元に置いておく候補。
私も五十歳をすぎて人生後半戦。いつまでもどんどん増やせるわけではないし、欲しい着物もあるし(笑)、着物も新陳代謝を図っていかねばな~と考えています。
売る(買取、自分でフリマやネットで売る、店舗に持ち込む)、譲る、寄付する、リメイクする、捨てる。どれでもいいのです。自分が一番納得できる方法、心の負担にならない方法を選んでください。
私が主に選ぶ方法はチャリティと寄付なんですが、寄付しても迷惑そうなものについてはすっぱり諦めて捨てるということも、思い切れるようになりました。着物も洋服と同じ衣類だから、と思えるようになったのです。
まあこのへんは、この結論に辿り着くまでにいろいろ紆余曲折もあったし、まだ悩むこともあるんですが。
今回は、本を描きながらめちゃくちゃ着物の処分に向き合いました。結局、大幅に着物の数を整理して、かなり精神的にも楽になったし、残っている着物は大切にお手入れしながら着ていこうと思っています。
着物は、その時その時の思い出も全部映し出す鏡のようなものでもあります。これを着た時どうだった、誰になんと言われた、その時の気持ちはどうだった‥‥びっくりするほど、よく覚えているものです。もしそれが、とても悲しかったりいやなことだったら、どんなよいものでも思い切って手放すのもありでしょう。
着物は捨ててもばちはあたりません!
(はい、ちょっとバチが当たると思っていた昭和生まれです)
もし、あなたが持っている着物の量があきらかに自分のキャパをオーバーしていたら、着物を大事にしきれていないな、とか自分が着物に関してちょっとでも心が重いなと思うことがあったら、一度処分について考えてみませんか?
なかなか向き合えないこともあると思いますが、着物に向き合うことは自分に向き合うこと。わにこ五十五歳の春からの「着物の数が多いなと感じたら、本当に自分に必要か考えてみよう」という、おすすめでした。
<宣伝>
星わにこコミックエッセイ『
「その着物、どうする?」好きだから知っておきたい保管・メンテ・処分の方法(河出書房新社)』5月12日発売です!