着物を着る人なら誰もが一度は目にしたことがある「コーリンベルト」(着物ベルト)。使っていらっしゃいますか?
広衿を畳んだ幅を固定して、衿元を美しく整える便利グッズです。なぜコーリンというかというと、開発者の高林三郎さんの苗字を音読みしたものだから~(チコちゃん風)。紐を何本も使って着付けが大変だと着る人がいなくなってしまう、という危惧から昭和32年に開発されたアイテム。コーリンベルトは商標登録されている商品名です。「着付けベルト」「着物ベルト」が一般名称ですが、通りがいいので以下コーリンベルトでお話させていただきます。
ゴムベルトの両端にクリップがついているもので、これを使って着付けされる方は本当に多いですよね。余談ですが、クリップが金属製のものは飛行機に乗るとき保安検査でひっかかる可能性もあるので、着物で旅行の際は避けたほうがよいかもしれません。
よく着付けレッスンにいらした方に「コーリンベルトはなぜ使うの?」と質問をうけます。
そのときはこんなふうにお答えしています。
1 襟元をクリップで止めることで簡単に固定できる
2 おはしょりを一重にしたいとき、三角あげが容易にできる
3 伊達襟などを使う時、クリップで綺麗に止められる
4 伊達締めをする前にコーリンベルトをした段階で着物のシワが整えやすい
5 伊達締めを省略することもできる
6 衿が緩んできたとき、コーリンベルトのクリップを上から押すと緩みが直る
参考:
振袖や訪問着の伊達衿のゆるみを直す方法☆の巻
逆に欠点はというと
・うまく使わないと、襟元が詰まってくる
・クリップが肋骨に当たって痛くなることがある
あと、欠点ではないけれど、あくまで便利グッズ、補助グッズなので使わなくても着付けはできる、ということでしょうか。なんでも良い点悪い点を知って、使う使わないを選択されればいいと思います。
私自身はコーリンベルトを使うかというと、使ったり使わなかったり。まったくの気分次第(えー・笑)。初心者のときは、使う着付けのやり方を習ったので、何も考えずに使っていましたが、やはり「衿がつまる、あばらが痛い」という問題に直面しました。
この解決方法は「コーリンベルトの長さを肩幅より少し広くする」と習うのですが、それをもっとゆるゆるにして、動いた時にゴムが強く引き合わないようにすること。
それから、クリップを必ず左右同じ高さにつけることです。高さが違うと、ゴムが斜めに引き合って、衿がどんどん詰まってしまいます。
あとは、あまり上につけないこと。私はウエスト補整をたかはしきもの工房の満点腰すっきりパッドスキニーを使っているんですが、その上にクリップがくるようにしています。そうすると体に当たって痛いということもありません。
「コーリンベルトは痛い」と頑なに使わなかった時期もありますが、着付けがまあまあできるようになってきて、またその便利さに目覚めて使い始めました。うまくつかえば痛くない(あばらの位置とかもありますから、これは個人差もあると思います)。
コーリンベルトを使った時は伊達締めを省略することが多いです。前に紐が1本減ると本当に楽ですよ。胸紐もいりません。この「紐を減らす」ことこそが開発者の高林先生の狙い。普段に楽に着るとき、ぜひ試していただきたいです。
逆にコーリンベルトを使わないときは、使わなくても着られるから~(再びチコちゃん風)。このときは伊達締めは必須ですが、なにかの調子でゴムベルトが悪さをして衿がつまっちゃう、ということはなくなるので、本当に気分次第ですね。使わないのは紬のときが多いです。逆にやわらかもののときは衿が広がってくるような気がするので使います。気分だけかもしれませんが‥‥。自装ってそんなもんなんじゃないでしょうか。
他装のときは、礼装で伊達襟を挟むことが多いので、コーリンベルトは必須ですね。コーリンベルトがないときは、伊達襟をコーリンベルトをとめる位置に小さい着付けクリップで固定しちゃいます。
結局いるの?いらないの?と言われると、どっちでもいい、となりますでしょうか(いつもこの結論)。絶対なくてはならないものでもないので、絶対使う!という人も一度使わない着付けにもチャレンジされてみてはいかがでしょうか?
私は便利なので、あると嬉しい派です。使わない派の方もそれでよし。でも、なんと70年近く使われているロングセラー。使い方を覚えておいて損はない便利グッズだと思いますよ!