11月ももう終わり。寒さも本格的になってきましたね。我が家ではついにこたつを設置しました。これをしてしまうと、いろいろ動かなくなってしまったりはするのですが(笑)心と猫のオアシスなのでやめられません。
こたつなどの火(暖房器具)使い始めには「亥の日」がよいとされ、江戸時代から旧暦10月(亥の月)の亥の日に暖房(火)を使い始めました。亥は陰陽五行説で「水性の陰」とされ、火の対極だから火に勝つ=火事にならないと信じられ、武家は初亥の日、町家は二番目の亥の日にこたつ開きをする習わしがありました。昔は暖房=火でしたから、ことさら火の用心に心がけたのでしょうね。
2020年ではこの亥の月亥の日は11月4日、16日。もう過ぎてしまいましたが、来年は暦に気をつけてこたつを設置してみようかなと思っております。この先の亥の日は11月28日、12月10日、12月22日。これからこたつやストーブなどの暖房器具を使い始めようかなと思われる方は暦も参考にしてみては。
さて、もうひとつ11月といえば炉開きがあります。炉開きとは、お茶の世界でお釜のお湯をわかすのに風炉をやめてお茶用の囲炉裏「炉」を使い始めること。また口切りといって、新茶の茶壺の封をきります。ここからまた、お茶のお稽古の1年が始まるお正月のような日でもあります。
今年はコロナで、お稽古もままならない日々が続きましたが、少人数で感染対策に気をつけながらまたお稽古が始まりました。主菓子には「亥の子餅」を用意。多産のイノシシにあやかって、その年の新米を使った混ぜ餅を作り、亥の月亥の日亥の刻に食べて子孫繁栄、無病息災を祈るという風習があるそう。炉開きにはこの「亥の子餅」をいただきます。11月になり、亥の子餅が和菓子屋さんの店頭に並ぶと、ああ、炉開きだなあと思います。
イノシシの形に見立てた色と形をしているのですが、丸い方が頭、細い方がお尻なのだとか。ワタシはずっと逆だと思っていました。。そして猪突猛進でぶつかってこられないように、頭を向こうにしてお客様にお出しするのだそうです。
などと偉そうに言っていますが、私は万年初心者。月1回のお稽古をほそぼそと続けてお茶に親しむ程度。そんな頻度にも関わらず、以前は忙しい中ばたばたで、なにも準備しないで参加していることに申し訳ない気持ちになることもあったのですが、先生に「そうやって時間を作らないといつまでたってもヒマな時間なんて作れないんだから、お稽古の時間だけでも心を静かに豊かに過ごせばいいのよ」とおっしゃっていただいたことが。
今回も、お休みが長く時間はたっぷりあったはずなのに、やっぱり準備不足(爆)。それでもその時間を持てることがどれだけ自分にとって大切だったかと思い知りました。さらにいろいろキレイさっぱり忘れて、着物で立ったり座ったりもヨレヨレで、体力の衰えに愕然でした。月イチでもなんでもいい、続けていることが大事だったんだなと。。
そしてひさしぶりにやわらかものに手を通しました。仕事もほとんど紬やお召しだったので、何か月ぶりでしょうか。特有の絹のしとっという重さを体に纏う心地よさ。付け下げですが、大好きな房がたくさん描かれた図柄に気分も浮き立ちます。着付けの仕事で日々晴れ着には触れさせていただいているけれど、自分で着るとまた違った嬉しさがありますね。
猫のお尻ご容赦です。
今月は母の祥月命日があり、自分の誕生日がある月でもあり。そんなことをふと思って母の袋帯を締めました。静かに座って、呼吸をするとクク‥‥ククク‥‥と絹鳴りがして、なんだか母とおしゃべりしたみたいな、不思議な気持ち。
仕事以外では家の中にいることが増えおでかけもせず、適当な洋服で過ごす毎日ですが、やはりたまには自分のために手をかけなくてはと思います。その大切さと有り難さが身に染みました。
また感染者が増加して、そんなことばかりも言ってはおられないのかもしれませんが、日々の中で美しいことやもの、文化に触れる時間もやはり人間が生きていくうえで大事なもの。我慢とココロの贅沢と、うまくバランスをとって暮らしていきたいなあと、マスクをつけてのお稽古、炉の中で鳴る釜の松風の音を聞きながら思った一日でした。