先週6月25日のことです。アメリカのタレントで実業家のキム・カーダシアンさんが自らの矯正下着ブランドの名前を、自分の名前にちなんで「KIMONO」と名付け、商標登録も申請しているというニュースが流れました。この動向について、一着物ファンが思ったことを書いておきますね。
私は最初、フェイスブックのタイムラインに流れて来た投稿でそれを知りましたが、キム・カーダシアンという女性がどんな人なのかも知りませんでした。でも、ニュースを読むと実業家でミュージシャンのカニエ・ウエストのパートナー、そしてインスタグラムで1億4000万以上のフォロワーを持つド級のインフルエンサーとのこと。なにその数字。
まあ、少なくともそれだけの人がその動向をフォローしている人が、「自分のブランドはKimono」というわけですから、日本の着物を知らない人は「KIMONO=下着のブランド」という認識をすることになるわけですね。そしてアメリカで商標登録されてしまうと、アメリカで「これはKIMONOです」と言って着物関連の発信や販売もできなくなってしまうということで、それは大変! と大騒ぎに。
今まで#kimono と検索ワードを入れれば、様々な日本の着物の写真が見られたインスタグラムでも、今後は下着の画像がずらりと並ぶ可能性もあるわけです。早速 #KimOhNo というハッシュタグが作られ、日本の着物はこういうものです、とそれぞれが思う、着物の写真がアップされはじめ、その数は7000以上に。署名運動などのRTも回ってきて、様々な人が様々な意見を述べていました。
またすでに会社名「Kimono Intimates」で商標を取得、ブランドで「kimono.com」というドメインも取得してサイトが立ちあがっており(7月1日現在アクセス不能になっています)、このままだとkimonoで検索すると、最初にブランドがヒットし、「あ、矯正肌着のブランドのことなのね」というサーチ結果になってしまうことにもなりかねない状況。
SNSでの批判があったものの、最初は15年間あたため準備してきたプロジェクトなので、名称変更する予定はないと言っていたキム側も、収まる気配のない炎上、反対の声や京都市長などの声明を受け(返信はないようですが)、7月1日に「名称変更します」と声明。詳細は後日発表、ただし、商標登録申請の取り下げには言及していないので、まだまだ動向からは目が離せませんが‥‥。
これが1週間以内に起こってしまう、SNS時代のスピード感ってすごい。しかも、個人の声が直接本人に届くことも、また集合体となったときの意見の大きさも無視できないものということが示されました。
ちょっと残念だったのは、「矯正肌着なんかに名称を使ってほしくない」「下着と一緒にするな」などという矯正肌着を貶めるような発言もちらほらみられたことでした。
最初に発表された、人種や肌の色にあわせて作られたボディラインをひきたたせる矯正肌着の写真を、わたしは美しいと思って見ました。それにKIMONOという名前をつけることの是非はおいておいて、です。
美意識は様々で、着物のようにボディラインを隠す衣裳を美しいと思う人、ボディラインを強調するドレスが美しいと思う人、様々だと思います。このあと、キム・カーダシアンさんがどんな名前を発表されるかわかりませんが、圧倒的な肉体美を持つ彼女に憧れる人たちが、ハッピーになれる矯正下着を作っていかれたらいいなあ~と思います。まあ、私には関係ないわけですが、こんな日本でボ~っと暮らしているだけのおばちゃんにも、キム・カーダシアンという名前が記憶に刻まれた点では、炎上商法大成功とも言えるのかもしれません。
言霊ってよく言いますけれども、今回のことで、「名称」の大切さを改めて感じるとともに、着物の良さを、今着物に携わっている人や着物が好きな人だけじゃなくて、日本は勿論、世界中のいろんな人に改めて知ってもらえるきっかけにもなったのではないかなと思っています。私も、改めて「自分は着物の何が好きで、何を美しいと思い、何を愛しているのだろう」と考えさせられました。それは、皆さんそれぞれの答えがあるのだと思います。
これからも「Kimono」と言ったら、日本の民族衣裳だなと、そしてその美しさを感じ、また実際に楽しんで着る人が増えてくれることを願います。