先週、友人のももせいづみさんと向山真理さんの銅版画と陶器のコラボレーション展のオープニングのお呈茶のお手伝いにいってきました。呈茶とは、お茶を差し上げること。茶道のときによく使われる言葉です。
ギャラリーを訪れてくれたお客様に、向山さんの素敵な器でお茶を楽しんでいただくという企画で、お抹茶をお出しする日とトルコのチャイをお出しする日があり、お抹茶の日のお手伝いをさせていただいたのですが、とにかく気軽に楽しんでいただきたいということで、格式ばらずにやりましょうということに。
お釜はじめ茶道具もあるもので。着物も、紬で。
茶道経験者が集まって、ああでもないこうでもないと準備をしました。そのとき、お作法も着物も茶道のドレスコードできちんとしていると、茶道をやったことがない人からすると「何も知らなくてすみません、無作法ですみません」という気持ちになって、とても緊張するんだよね、という話が出ました。
万年初心者の私も、大寄せのお茶会に出かけても「いいのかなこれであってたかな」とドキドキするので、よくわかります。まして今回はお茶がメインではなく、ギャラリーにいらしたお客様のおもてなしなので、そういう雰囲気にならないように心がけました。まあ、正式にやれと言われても、私の力ではできないわけですが(苦笑)、もともと「お客様をもてなす」心が茶道の基本のはずですから、お客様がリラックスしてお茶を飲んでくださればいいなあと、友達といろいろ考えて。
そんなわけで、気軽な装いでお手伝いに出かけました。
風が吹き抜ける白いギャラリーを抜けて、落ち着いた和室の作品展示を見ながら、お茶を楽しんでいただく趣向。廊下に釜をかけてテーブルでお茶を点ててお出ししました。お菓子もオーダーで作ってもらったという可愛い月とウサギの薯蕷饅頭。床の間には銅版画と、陶の花入れの中には銅線。とっても落ち着く空間で、釜のシュンシュンという松風(釜の鳴る音のこと)を聞きながら座っていると、日常を忘れて心がほっと安らぐような気がしました。
お茶をいただく時緊張する、という話を聞いた時、そういえば着物も同じように「どうしたらいいか緊張する」「ルールを知らないから」「着方がわからないから」といわれる事が多いかも、と思いました。
特に季節の変わり目、特にいまごろは私も「単衣にしようか袷にしようか」とか合わせる小物はこれでいいのかとか、ちょっと考え考え選びます。季節感は大事にしたいけど34度(爆)とかあったら、マジメな話、袷とか、無理っすよねー! そこらへんは臨機応変にできたらいいと思いますし、まして普段着だったら体感温度で決めなきゃやってられないですよね。
また最近は「着物警察」「着物憲兵」なる言葉もあるとか。着物を着ている人がルールを守っているか正しいかチェックする人のことなんだそうです。これは怖い(笑)。正装はさておき、普段着やファッションの着物に「絶対正解」はなくて、本人がよければそれでいいはず。洋服と同じですよね。
伝統や、しきたりを守るのも大切ですが、同時に時節に合わせて変わって行く部分もなければ、ただの化石になるだけ。着物やお茶に興味がある人にはどんどん自己流でいいから楽しんで欲しいなあと思います。本格的に極めたくなってから、学びを深めてもいいじゃないですか。最初から学ばなければやっちゃだめ!って風潮は、たくさんの人をシャットアウトして、結果どちらも気軽に手が出せないような雰囲気になってきているような気がします。
どっちも、ほんとは気軽に楽しめる、日本のよき文化だと思います。無意味に敷居を高くするようなことだけは、したくないものですよね。
極めなくってもなんちゃってでも、楽しんだもの勝ち。ギャラリーで展示を楽しむついでに、お茶美味しいわ、着物いいわね、なんておっしゃってくださるお客様と会話しながら、そんなことを思った週末でした。