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精進料理を味わう。着物の休日の巻

星わにこ
2025/01/29 00:00
1月は新年会が何度かあり、今年は着物で参加しています! 先週はお友達と東京都小金井市にある臨済宗の尼寺、三光院さんで精進料理をいただいてきました。 三光院の精進料理は京都の曇華院の「竹之御所流精進料理」を継承しており、皇女や宮家から出家した女性たちが食べていたものということで、洗練されていて見た目にも美しいのが特徴だそう。二代目住職の星野香栄禅尼が精進料理の普及に尽力されたため、一般の人にも提供されています。 星野禅尼は精進料理の追求の他にも1980年代に『Zen Vegetarian Cooking』という英語で精進料理を紹介する本も出版されており、世界でベストセラーに。国際交流の中から生まれた新しい精進料理もあるのだとか。現在は、フランス料理研究家として活躍されたのち、精進料理の道に入られたという西井香春さんが受け継いでおられます。 精進料理については「お肉や魚を使わない料理ですよね」くらいの知識しかなかったのですが、かなりしっかりと説明を受けながら、作り置きはせず一皿一皿作りたてを提供していただく季節のお味は、滋味深く有難く感じられました。決して華美ではないけれど美しい器や飾りの葉なども使われて、目でも楽しめるのが御所流とのこと。 ほとんどお出汁を使わず、素材の味を楽しむというのも特徴で、供されるたびに「おいしー」「感動~」と声が漏れます。料理だけでなく器や室礼の由来などの説明もあり、いちいち納得。 最初はお菓子とお薄からいただくのですが、お菓子は直前に餡と大徳寺納豆を詰めたという最中で、三光院の印、笹竜胆紋の入った皮はぱりぱりで香ばしく、餡の甘味と大徳寺納豆の塩味が最高! お料理も見た目にも美しいものがたくさん。 定番だという大和芋の海苔巻きはころんと可愛らしく、やさしい食感にも驚き。ごま豆腐、揚げ物などもあり、大満足。お正月ということでくわいが使われていたり、旬のものを取り入れていて、毎月趣向がかわるそうです。 最後に啜り茶という、お煎茶を蓋椀でいただく体験をしました。煎茶道でいただくお茶のように、最後の1滴があま~くて美味しかったです。 日々の喧騒から離れて静かなお寺で、普段なかなかいただけない丁寧なお料理をいただいて心身ともに浄化されたような気持ちに。春の筍の時期、初夏の梅の時期‥‥と折々のおすすめを伺って、またぜひ来訪したい!! 禅は坐禅を組んで修行するだけでなく、「作務禅」といってこうして精進料理を作ったり清掃や日々の営みをすることもまた禅。それぞれの修行の形があるというお話に、もう少し日々丁寧に暮らしたいものだ……と感じ入りました。 13人という大人数で出かけたのですがうち5人が着物でした。今の時期ならではの梅の花、雪だるま、雪の結晶、椿などのモチーフが取り入れられているみんなのコーデを見せてもらうのも季節を感じられてまたよかったです。 私は、幹事をしてくれた友人にもらった帯にちょっと寺院ぽい建物の模様が入っている大島紬にしてみました。 ちょっと贅沢な時間、たまにはいいですね~。着物って、着るのはちょっと面倒くさいけど、そんなゆったりした時間にぴったり寄り添ってくれるものかもしれませんね。 <追記> メニューやイラストの「豆腐の茶碗蒸し」の記述ですが、豆腐の『腐』の字が忌み言葉ということで三光院さんでは「おかべの茶碗蒸し」というそうです。おかべ、とは宮中の女房詞であり漆喰の壁のことで、豆腐を白い壁にみたてての言い換え。雅ですね~。

志村ふくみ100歳記念特別展を見てきましたの巻

星わにこ
2025/01/15 00:00
三連休は20歳を祝う会が全国各地で開かれましたね。東京は雪予報が出ていてドキドキしていましたが、晴天で終わってほっとしているわにこ@着付です。20歳の皆様、ご家族の皆様、心よりお祝い申し上げます。 さてコラムはちょっと前の話なのですが、大倉集古館に特別展『志村ふくみ100歳記念―<秋霞>から<野の果て>までー』を着物友達に誘われて観に行ってきました。 告白しますと志村ふくみさんのことは「あの~紬織の~人間国宝の方ですよね」くらいの知識しかなかった私。せっかく誘ってもらったしとても手が届かない着物だけど一度見てみたいな、と軽い気持ちで入館して、いきなりハンマーで殴られたような気持ちになりました。 今年100歳を迎えられる志村さんの作品がずらりと並んでいるその最初の<秋霞>と名付けられているさまざまな青が重なり織り出された着物。その力強さもさることながら、作品が生み出された背景の説明に驚きました。 二人の娘を抱えて離婚後、30歳を過ぎて民藝に携わっていた母・小野豊の導きもあり、紬織の道へ。子供を預けて近江で一から織を学び、やがて1958年の伝統工芸展でこの<秋霞>が奨励賞を受賞する。その後も次々と入選を果たして工芸界のスターとなっていく。それまで庶民の「布」だった紬が芸術として認められていったのです。 その始まりの着物は、深い湖のような、夜が深まりまた明けていくような佇まいで、そのあまりにも力強い存在感に圧倒されてしまいました。母の豊が「もうそれ以上の着物は織れないかもしれない」と評したほどの、代表作です。 各年代の作品が並べられ、琵琶湖の自然を写した作品や音楽や詩にインスピレーションを得た作品など、志村さんの織物は「芸術」なんだと思わされます。 100歳を目前に制作されたという最新作<野の果てⅡ>は、<秋霞>とは対照的な軽やかな色のグラデーションの作品。裾の日本ムラサキで染めた薄紫から曙のように明るくなり、紅花染めの薄桃から薄黄色へと変化していく様は、太陽の光のよう。そして肩の萌黄色は、今いる野なのでしょうか。それともこれから向かう野なのでしょうか。生きる力が込められたような秋霞と対照的に、こちらは軽やかで柔らかでふわりと肩の力が抜けるようで。 タイトルの「野の果て」の元となった自作の童話も展示されており、随筆家としても有名な志村さんの芸術の原点がそこにあるようでした。 紬織を見るときにはどんな糸でどんな染色をほどこしどんな技法で織ったのかということばかりについ目が行くものですが、それよりもそのものの美しさや佇まいとどんなバックグラウンドで製作されたものなのかということに焦点をあててみるというのが新鮮な体験でした。 いくつかの作品と、製作の背景の志村さんの人生や求めてきたものなどの一端を見ただけですが「これが芸術というものか」と感じ入り。随筆もたくさんあるので、拝読してみたくなりました。 自分的には昨年までずっとアウトプットばかりしてきた気がするので、今年は、博物館や美術館にもでかけて知識を深めるインプットの年にしたいななんて思っています。 1月19日までの展示となっておりますので、未見の方はぜひ! 着物で行くと、入場料が300円引きという嬉しいサービスもありますよ。

晴れ着はじめはホテルのアフタヌーンティでの巻

星わにこ
2025/01/08 00:00
あっという間に年があけて1週間! 年初の「週3着物生活」は家にいるときも洋服の上に着物を着るオーバーワンピ式×2日と、おでかけ着物×1日でした。オーバーワンピ式は、ゆるっと着てみたのですが、帯が意外と圧迫感があり男着物風に腰紐だけでいいんじゃん?と思ったり。 晴れ着始めは、キモトモ(着物友達)新年会で椿山荘へ。「晴れ着を着てアフタヌーンティを」ということだったので、私もがっつり訪問着と袋帯で参加しました。新年会にアラ還の12人の訪問着・付下げ(黒留も!)が集ったわけですが、かなりなはくりょ‥‥いえ華やかさでした! やはり晴れ着は気分が上がります。 ちょっと贅沢なお正月のアフタヌーンティ。見てくださいこの楽しそうなこと。美味しい紅茶をいただきながら、話に花が咲きました。キモトモの皆さんとは10年以上のお付き合い。仕事や子育ての悩みを相談し合い、今では介護と健康と老後について相談し合う仲です。せっかく晴れ着を着たので、ということで、カメラマンの渡部瑞穂ちゃんに写真もとってもらいました。この嬉しそうなこと(実際嬉しい)。 私のコーデはちょっと大人色の雲取り紋様と松竹梅に菊という重めの訪問着と、これまた大柄な松葉の帯。帯締めは貝の口亀甲組。帯揚げはこのコラムを始めた年に、いち利モールで記念で買った加藤萬の市松の疋田絞り。毎年お正月には使うことにしています。 半衿はこれまたいち利ロゴの入った鱗の刺繍半衿。厄除けにもいいとされる鱗柄ですが、今年は巳年なので一層よし!ですね。衣紋には銀座いち利の赤いロゴが入っているので、ちらっと見えるとさりげなくオシャレです。私は生成をヘビロテしていますが、カラバリもたくさんあっておすすめですよ! 上着はフルレングスのコートで、首元はもふもふショール&手袋&足元はしっかり足袋下ハイソックスで防寒していきました。お天気もよかったし、家に返ってスマホを見たら15000歩歩いていました。でも不思議と疲れを感じてない。 そこであれれ、と思ったのですが、家でリラックスしている時に来ている着物よりもずっと重い訪問着と帯なのに、しっかりと補整してピッタリ着付をしたほうが楽ちんだったのです。 「着物を着る時はきちっと布目を考えて体をしっかり包むと、布で体を支える」のだということが実感できました。ゆるりと着るのもお好みでいいと思うのですが、ゆるゆるだと私はかえって疲れる感覚がありました。今年はほどほどに楽におうち着物を着る研究をしていきたいところです。 まだまだ1月中は新春気分で、晴れ着も楽しみたいなと思っております。改めまして今年もよろしくお願いいたします!

オトナの週3着物生活はじめるよ!の巻

星わにこ
2025/01/01 10:00
新年あけましておめでとうございます。なんと元日にコラム更新という初めてのことにドキドキしております。いつも読んでくださる皆様のおかげで、長く続けさせていただいて本当に感謝しております。本年も、どうぞよろしくお願いいたします! せっかくなので新年の抱負など書いてみたいと思います。毎年コラムを締め切りに余裕をもって提出したいとか、思うわけなんですがなかなか‥‥。 いろいろ考えてみたんですけど、私はどうも性格も運勢も極端らしくて母にもオールオアナッシングすぎるとよく言われていたものです。でもずっと全力投球で目標に向かって集中して走り続けある日突然倒れて強制終了みたいなことから卒業したいなと思い、一昨年から体力をつけようとジムに通いはじめました。行けないこともあるんですが、最低週に1回行くと決めて、まあまあ続いています。 最初は毎日!あれもこれも!と張り切って始めたのですが、最近は「お風呂に入りにいくだけでもいい」と思ってとにかくその場にいけば合格としています。ジム友もでき、声をかけあって参加。ものすごく低レベルなのですが、なにもしないよりはいい。なにしろ運動とは縁のない人生を送ってきたので、私にとっては大きな進歩です。 リンパマッサージの先生にも「ジムに行くようになってから、体の状態がいいですよ」と言っていただき、この年齢でやっと「自分ができる範囲で続けることの大切さ」を知りました(笑)。 それでなんの話かというと、ずっと『オトナの着物生活』というタイトルでコラムを書いている割には、仕事だったりお出かけだったりネタ探しだったりということで着物を着ていて、日々の「生活」を着物で楽しんでいるかなというと、まだもうちょっと楽しめるんじゃないかな?気がしていました。 せっかく寝込んだりすることも減ったので、『毎日着物生活』どうだろう!?と友達にも言ってみたのですが、ちょっと待て待て。目標を高く持ちすぎて途中で倒れちゃうパターンでは?と思い直し、今年はほどほどに『週3着物生活』を楽しんでみよう!と。 25年くらい前に毎日着物生活を半年くらいしたことがあるんですが、着物に夢中で楽しかったけど、ある日気がついたらウエストが消滅していました(笑)だからやめたというわけではないんですが、洋服に戻ったらすとんとそのまましばらく着物も着なくなってしまったことがあります。 私はこれからの人生、なんでもほどほどで生きていくことを覚えたい(切実) そして出番を待っている箪笥の着物たちともいいお付き合いをするべく、『オトナの週3着物生活』はじめたいと思います! また今年も徒然コラムでご報告させていただきますね。 本年も一緒に着物生活楽しみましょう。