綸子や薄い帯揚げをふっくら結ぶ方法の巻
星わにこ
2023/04/26 00:00
「今日は袷でいくか? 単衣にするか?」と天気予報とにらめっこの4月末。フォーマルではなく、体感にあわせて着物を着ようと思うと春先と秋の入り口は気温に敏感になりますよね。
今年は3月末にもう24℃の予報が出て、早速単衣を出動させました。本来は6月1日が衣替えと言われますが、もうそんなことは言ってられないくらい、この頃は早くから暑くなります。かと思うと急に冷えたり、雨が降ったり。なかなか油断できません。
1年中単衣よ、という方もいますし、ウールや木綿などの普段着はそもそも単衣。もうそれでいいんじゃないか~と思う反面、袷の安定感や八掛の楽しみも捨てがたい。胴抜きという手も使いつつ、まだまだ端境期、欲張りに楽しんでいこうと思っています。
さてさて先日「着物は着られるけど、細かい部分のブラッシュアップがしたい」という上級者の皆様のレッスンがありました。その中で、冬は縮緬で普通に結ぶだけでもふっくらとうまく形になるけど、綸子や薄い生地の帯揚げがぺしゃんこになってしまう、というお悩みが。
結んでから余った部分をサイドに詰め込んでふっくらさせたり、撮影のときは綿を詰めるというようなこともしますが、余った部分を詰める方法は結び目がぐしゃっとなりがちでなかなか難しく、かといって綿のようなものも暑くなる時期に足したくない。
というわけで、ここでおすすめしたいのが、結ぶ前に帯揚げの先を折りたたんで二重にしてふっくらさせちゃう銀座いち利の女将方式。お伝えしたところ、なるほど!と喜んでいただけました。
やり方は以下の通り。
・帯枕に帯揚げをかけて前にもってきたら、しっかり前に引いてピンと伸ばし、脇から30センチくらいのところで手前から折りたたみ、前にわたる部分を二重にします。
・それを結べる太さに畳んで整理し、脇を整えてから着物と同じ打ち合わせにあわせ、一絡げします。
・クロスしたところを立てて、上側を下におろし、それを抑えるように下側を折り返して両方一緒に帯の中につっこみます。
こうすると、あら不思議~~。サイドはふっくら、結び目はすっきりな帯揚げが完成です!
慣れるまで、折りたたんでそれを整える作業がうまくいかないかもしれませんが、慣れたらこっちのもん。帯につっこむ時の作業が早くて楽ですし、大人っぽい「いりく」結びも簡単。
年齢が上になると帯揚げは控えめにみせると言われますが、それにしても綸子などのときは控えめになりすぎることも。せっかくお気に入りの帯揚げをしたら、色のアクセントとしてもほどよく存在が主張できるように結べたらいいですよね。
帯揚げがぺしゃんこになりすぎる、うまく結べないという方はぜひぜひ試してみてください!
<おすすめ>
その他にも帯揚げ達人になれる技がみっちり解説されてるお宝動画はこちらです!
銀座いち利の女将ちゃんねる:女将流!帯揚げの結び方~前編~
帯の前結びと後ろ結びどっちがいいの?の巻
星わにこ
2023/04/19 00:00
名古屋帯や袋帯を結ぶとき、お太鼓を前で作る前結びの方が増えているなあ~と感じます。前結びは簡単!といわれますが、後ろ結びに慣れていると戸惑うことも多いです。今回は自分でもやってみて感じた、前結びと後ろ結びのいいところ悪いところをあげてみたいと思います。
前結びのよい点・悪い点
〇お太鼓の形や柄を確認できる
〇帯揚げも綺麗にかけられる
〇気持ちが楽!
×帯を回すとき、着崩れしやすい
×前結び用の帯板が必要。暑い
×意外と後ろで結んだりする作業も多い
×胸高には結べない
後結びのよい点・悪い点
〇回したりしないので、手早く結べる
〇帯板を選ばない
×お太鼓の形や柄が確認しづらい、見えないのでイライラする
×後ろ手の作業が多い
×難しく感じる
欠点としてあげたところも、改善余地はありますし、必ずしもそうではない場合もありますが悪しからず。
慣れてしまうと、後ろ結びのほうが早いし楽だと思うのですが、最初に覚えよう!としたときの敷居の高さは半端ないです。実際、着付けレッスンでお教えするのに超難関!なのがこのお太鼓。構造が理解できるまでは、「今どういう形にするために、なにをどう動かしているのか」がわからないんですよね。いまだにね、なぜお太鼓結びをしなくてはならないのか? その形である必然性はあるのか? こんなん誰が考えたんや??と思うこともあります。どうしてこんな面倒なことをしなくてはいけないのか! それは説明できません(笑)。そういうもんだと思ってやるしかない。その形があまり好きでなければ、他の結び方なり、服装をすればいいわけですから。
とはいえそんな、どうなってるかよくわからない形を、なが~い布(帯)を使って、ささっとできるわけでもない手順を踏んで形にしていくわけですから、最初はほんと頭に疑問符が浮かびまくります。最初から作り帯でええやんけ!と思ったりもします。
これは慣れと理解でしか解決できないと思います。とにかく回数結んでみる、あとは動画などを見てひたすらイメトレすることで上達します。慣れてくれば、自分のやりやすいアレンジを加えたりして楽にできるようになってきます。
でも、この「ひたすら回数をこなす」「イメトレをする」といういわゆる修行パートをぽーんと飛ばすことができるのが「前結び」なんですよね~~~~!!! いやほんとすごいと思います。
なにしろ、目で見て一番難しいお太鼓の形作りができるわけですから。今、私が、何にも知らないで一から帯結びを覚えなさいと言われたら、前結びを選ぶのではないかと思います。
でも実際は慣れているので自分でさっと着るときは、慣れている後ろ結びにすることがほとんどです。着付けは、体が覚えていて普段と違うことをしたりするとよくわからなくなったりすることもあるので、自分が慣れている方法が一番効率がいい。
でもやわらかくてお太鼓柄のここが出したい!と決まっているような帯や、帯揚げの柄を後ろ脇で見せたいポイントがある、というようなこだわりがあるとき、前結びをすることもあります。
帯結び含め、着付けは最終結果は同じでも、そこにい至るプロセスがそれぞれ着る人によって細か~く違ったりします。だって、要は着れればよかろうなのだ。ですから、手段は選ばなくていいはず。
いろんなやり方を知ると、それぞれのいいところを取り入れたり、自分にあったものがわかるので、「私はこれしかやらないの!」と決めつけてしまうのはもったいない。単に私が着付けオタクなだけかもしれませんが(笑)
たまには自分と違う着付けの方法を、試してみるのも面白いですよ~!
気になるおはしょりの横もっこりを解消する★の巻
星わにこ
2023/04/12 00:00
着付けについて考えるシリーズ、おはしょり第三弾です。しつこくすみません‥‥。今回はおはしょりの横のぶかぶかをなんとかする!という考察です。
おはしょりがもこもこしたりスカートみたいにひろがっちゃったりするのは、着付けの問題というよりは実は補整が大きな原因だったりします。
ウエストの補整をしていない、もしくは足りないと、ウエストで腰紐が締まるとおはしょりにギャザーが寄った状態になってしまいます。ラムネビンに紙を巻きつけて、細いところに紐を結んだら、ぐしゃっとなってしまいますよね。
腰骨の上は「私、補整必要ないんで(キリッ)」というお腹のお肉が潤沢な方(私です)でも、やっぱりくびれています。その段差によって、特に体の横の帯の下、おはしょりがもこっとなってお尻が大きく見えてしまうという現象が‥‥。
なので、適切にこの腰骨の上のくびれを埋めてあげることで、ヒップとの段差がなくなり、おはしょりの横もっこりも解消されるという仕組みです。
あとは、着物のサイズがあわず、身幅が余っていたりしておはしょりの横がもっこりすることがあると思います。
だいたい、身幅が余った場合は体の真横でタックをとって、後ろ見頃の生地を前見頃につっこもう、と言われることが多いです。
そうすると、背中もすっきりするし、余った生地は横で処理する‥‥というものなんですが、これは実は体の真横で布がもたつくので、どうしてももこっとなりがち。
まあ、身幅が足りない方向で悩んでいる胴回りが潤沢な方(私です)は、あまりそういうことにはならないんですが、身幅があまるわ、というスレンダーな方にはこれは大きな問題です。
そこで、タックをとる場所を体の真横から、背中側に移動させましょう。そうすると、布が横で重ならなくなるのでスッキリするというわけ。
この背中タックは、他装のときに身幅が余ったりするとよく使われるテクニックですが、自分だとできないな~と思い込んでいたのですが、両手を後ろにしてウエストのところできゅっと左右同時にタックをとるようにすると案外いけます。
この時下方向にも引き気味にすると、すっきりとタックが入ります。
体型や着物のサイズ、補整や紐の位置、いろんな要因が重なってうまく行ったり行かなかったり‥‥。毎回、なにかしら「もっとこうだったら」と思うことがある着付け。うまくいったな~と思っても、写真をみたらあれれれ、と思うこともあったり、なかなか自分の理想には近づけないでいます。
あらかじめ形が出来上がっている洋服だったら、こんなふうに布の扱いで悩むことも少ないのかも。でも、それが面白くて着物を着ているのかもな~と、ああでもないこうでもないと考える時間が、好きなのでした。
今回もっこりとか書いていて、頭の中には『Get Wild』(シティハンターの主題歌)がぐるぐるしていたのはまた別の話です(こんなネタは何人の方がわかってくださるのだろうか)。
こんな私ですが、今後ともどうぞお見捨てなきようよろしくお願いします。。。
おはしょりを一重にする「三角上げ」考★の巻
星わにこ
2023/04/05 00:00
着付けについて考えるシリーズ(シリーズだったの?)、前回に引き続きおはしょりです。マニアックネタなので、好きな人だけ読んでください・・・。
おはしょりのお腹にあたる部分、上前と下前の布が重なって二重になっていると、ぶかぶかしてしまったりもっこりしてしまったりすることがありますよね。
この部分を一重にするためによく使われるテクニックが「三角上げ」。下前の衿をおはしょりまで下りないように三角に折り上げてしまうというもの。
コーリンベルトを使うとこれがかなり簡単にできます。下前の衿をコーリンベルトで留めたら、留め具の上に下前のおはしょり部分の布を持ち上げて押さえてしまえば、お腹の部分には上前の布しかなくなるというわけ。
これをすると、下前の衿がおはしょりのところで下にひっぱれなくなるので気崩れがなおしにくくなるのですが、やはりお腹のところはすっきりするし、折り上げた布でウエストの補整にもなるので一石二鳥のため、このやりかたを採用している方も多いのでは。
私はずっとこの「三角上げ」は、着崩れが直せなくなるのが欠点だと思っていたのですが、コーリンベルトの留め具を押して衿のゆるみを直す技を会得して以来、いけるでこれはと思っています。
参考:振袖や訪問着の伊達衿のゆるみを直す方法☆の巻
ところが、この三角上げの布を持ち上げる方向を逆にするという方法を、たかはしきもの工房の女将さんに教えてもらいました。
どういうことかというと、コーリンベルトは低めにして、衿はおはしょりのところで引けるように下ろしておき、右に向かって下前の布を持ち上げておはしょりを一重にするのです。
な、何を言っているかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった・・・(ジャン・ポルナレフ談)というくらいコペルニクス的発想でした。イラストを見てみてください。
右側の上前の端がなくなるのでは?と思いきや、そんなこともなく、もしなければ引っ張ればいいし、右端の腰のもたもたがなくなるという凄技。しかも、下の衿も緩んだらおはしょりのところで引いて直せるんです。
へえ~?と思った方は、試してみてくださいね! 目鱗です。
ただ、このおはしょりを一重にする必要がない時もあるわけで、薄手の着物や痩せていておはしょりがふがふがしなければやらなくていいですし、逆にふくよかさんの場合、二重になっていたほうがしっかりとお腹を押さえてくれる効果もあったりして、一重よりよい場合もあります。本当にケースバイケースですね。
人の数だけ着付けのやり方はある・・・というわけで、いろいろ試して自分がやりやすくて綺麗に仕上がる方法はまだまだ探す余地がある、と思っています。
次回も引き続き、しつこくおはしょりについて考えたいと思います。「おはしょりの横のぶかぶかをなくすには」編、お楽しみに!