襦袢と着物の袖丈が合わない時の応急処置の巻
星わにこ
2022/04/27 00:00
毎年どんどん花の時期が早くなっているような気がするのですが、今年はいつも5月中旬に咲くお庭の紫蘭がもう咲いてびっくりしているわにこです。
こう暑くなったりするともう単衣の出番だったりするのですが、襦袢も単衣や夏のものを使って対策していかないと厳しいときもあります。
私はうそつき襦袢で通していますが、最近はカラフルでやわらかい麻の襦袢や新素材の襦袢も人気ですよね。
さて、いただきものや久々に出してきた着物を着ようと思った時、あれっ!襦袢と着物の袖丈が合わない、なんていうことはありませんか?
襦袢のほうが長い場合は中で畳んでしまえばいいのですが、短いときが困りものです。着物の袖から、ぴょんと飛び出してきてしまうからです。
よくやる処置は、お袖の振りを1箇所縫いとめてしまうこと。襦袢の袖丈より上の部分を縫います。こうすることで、襦袢の飛び出しを防げます。
(1)袖の振りを縫う
一番簡単なのは、着物の袖の振りをあわせて縫ってしまうことです。
ちょっと内側で糸の長さに少しゆるみをつけて縫っておくと、振りの飛び出しを自然なかんじで防げます。
(2)袖の内側から安全ピンで止める
着てから長襦袢の内側から着物の裏地に袖同士を安全ピンで止めても。もしくは人にやってもらえるのであれば、縫い止める。(脱ぐときには安全ピンをとる、糸を切ってから。それか襦袢と着物と一緒に脱ぎましょう)
(3)襦袢の振りを折る
もしくは襦袢の振りを三角に内側に折って、縫うもしくは安全ピンで止めるという応急処置もあります。
(4)アメピンで振り同士を挟む
先日、着付けレッスンにいらした方がレースの道中着と着物の袖丈が微妙に合わなくて振りが出てきてしまうのを防ぐために、ヘアピン(アメピンと呼ばれるやつです)で袖の振りを目立たないところで止めていらっしゃいました。袷の着物であれば、表地と裏地の縫い目の間にすべりこませれば、ほぼ見えなくなりますね。
ぱっと見て全然気づきませんでしたし、自分でできる応急処置でなるほどな!と思いました。早速コラムに書かせてくださいとお願いしたのは言うまでもありません。。
ただしアメピンやスモールピンなどのヘアピンを使う場合、万が一錆びていたりすると着物が汚れてしまいますから、使う前に確認しましょう!
いろんなやり方を知っておくと、その時できる方法で対応できますよね。
(5)うそつき袖なら筒袖にするか、最初からつけない
わたしはうそつき袖なので本来はその着物にあった長さのうそつき袖をつけるわけですが、ない場合は筒袖にするorつけない!という対処もしたりします。
それからもうひとつ。着物と襦袢の袖丈、合っているはずなのに襦袢のほうがちょっと短くなっちゃう。なんていうことはありませんか?
そんなときは、着付けが原因です。襦袢の袖付けのところを胸紐や伊達締めでしっかり押さえて袖側の布まで引っ張りすぎている場合。
そんなときは、身八つ口の部分から襦袢の袖付けを上にひっぱって少し緩めてあげると、着物と袖丈がぴったりになりますよ。
袖の振りが、羽織やコート、着物、襦袢とピッタリ重なって層になり色のグラデーションが見えたりすると本当にうっとりしますよね~。
でもなかなか全てがそうはいかないからこそ、その尊さも分かろうというもの‥‥。
袖丈が合わないからといって諦めるよりも、多少のことはちょっとした工夫で乗り切って、楽しみましょう!
完結目前!ゴールデンカムイ推し着物コーデ完成!の巻
星わにこ
2022/04/20 00:00
昨年12月に推し着物のお話をご紹介したのですが、その時推しの漫画『ゴールデンカムイ』の鯉登少尉の誕生日(クリスマスイブイブ)にあわせて推しコーデをしたい!と言っていたのに、気がついたら年を跨いで、さらに袷のシーズンものこりわずかに。。。なんでこうなった?
ここからはオタクの戯言になりますので、なんか言葉はわからなくても、ご自分の推しに変換して理解していただけると幸いです(えええ
「これは鯉登少尉ぽいわ!」と思うものを見つけては地味に揃えていたんです。でも、なんだか着る機会もなくて‥‥。でも、ゴールデンカムイはもうすぐ最終回! えーっ!!というわけで完結前になんとかコーデを完成させたい!と頑張りました。
それがこちらです!
まず、鯉の訪問着!!! 飛び跳ねています!! もちろん鯉登少尉の名前に因んだ柄です。
そして帯! 帯は雪月花の袋帯にしました。雪は少尉のお母様の名前、月はバディの月島軍曹の月、花は家族ぐるみでお付き合いがあったであろう花沢家の花。え?それこじつけすぎ? いいんです。因み柄は別名「こじつけ」です!!
帯揚げはグッズなどで割り当てられている貴公子カラーの紫。もうちょっと濃い色がよかったかも!
帯留は、波に鯉です。
帯締めは軍服のカーキの三分紐に少尉の一つ星をつけて。
せっかくの訪問着なので、ゴールデンの伊達襟を入れました。
着付けはちょっと帯を低めに、帯揚げは入り組(いりく)に、帯も気持ち前でクロスさせて斜めラインを出して、ちょっと粋なマダム風にしてみたつもりです! こいででっかい指輪とかしたいでモス!
あんまりあからさまではないけれど、見る人が見たらわかるようなコーデをめ、め、目指してみました(なぜどもるのか)。
まだ半衿や襦袢、草履に足袋にバッグに‥‥と凝り始めるといくらでも熱量が入っていくのですが、ごてごてにしないでどこで抑えるかっていうところも大事なのかな(抑えてないw
なんか書いていたらゴールデンカムイゴールデンカムイばっかり言ってる自分がちょっと気の毒になってきたけど(笑)いいの!!楽しいから!!
自分だけが「これは推しちなみ。ふふ」というようなアイテムや色、柄がちょっと入っているだけでもほんとにほんとに、どうしてこんなに心がうきうきするのでしょう。推しって尊いわ。
ニヤニヤしながら写真を撮っていたら、猫がドアを開けろと怒ってきました。(茶色がいわしで、黒がさわらです)す、すみません。。。
前にはまったバーフバリもそうだったんですけど、なんかこう上裸の男子たちが戦うやつが好きなんでしょうか? 少年ジャンプ育ちなので仕方がないのかもしれません。なんかこうご時世的にもいろいろセンシティブなところはありますが、あまりの人気ぶりに実写映画化もされるとのこと。私はめちゃめちゃハマりましたが、全ての人にどうぞどうぞと言いづらい(笑)んですけれど、とにかく面白い! 今ならヤンジャンアプリで全話無料で読めますので、もし興味があったらぜひ!!
私の推し、鯉登少尉は最初はただのアレかと思ったのが、途中からめちゃくちゃ成長してよかにせ(いい男)になりますので途中でやめないで我慢して読んでもらえると(笑)
コラムの担当さんにも、漫画が完結してしまったらわにこさんどうなるの?と心配されていますが、まだ単行本発売もあるし(いろいろ加筆される)、展覧会もあるしアニメもあるし、映画も……あるしまだまだ踊っていそうです。
ゴールデンカムイファンの方いらしたら、声かけてくださいね!
おうちでできる卒業袴の洗い方の巻
星わにこ
2022/04/13 00:00
入学式も終えて4月からの新生活に入った方も多いのではないでしょうか。冬の名残も消えて初夏に向かう気配すら感じる東京です。
天気がいいのでいろいろ洗ってお手入れをしているのですが、正絹ではないきものまわりのものは、自分で洗えるものも結構あります。
今回は卒業式で使った袴も自宅で洗えるというお話です。
最近の袴はポリエステル製が多く、選択表示を見ると洗濯機で洗えるもの、手洗い可能なものがほとんどです。刺繍のついているものは手洗いが多いかもしれません。
着物もそうなのですが、ポリエステル製のものって本当に丈夫というか、ざぶざぶ洗っても結構平気なんですよね。静電気が起きやすいので、埃を吸着して黒ずんでいたりしても、洗えばキレイになります。
洗う時に注意するポイントは3つ
1)洗ったら、脱水は1分以内!
洗濯機OKの表示のものは、大きめのネットに入れて手洗いモードで洗います。もともとついているヒダはなるべく崩さないで。このとき注意してほしいのは脱水の時間。必ず1分以内にしてください。脱水をしすぎるとシワがついてとれなくなりますので、ここだけ厳守!です。
手洗い表示のものは手洗いで。でも大きいので洗いにくいな~という場合は、バスタブを利用してみてください。お風呂場でやるとシャワーも使えるし便利ですよね。この場合も最後の脱水は洗濯機で1分以内でかけてください。
2)干すときは履いている形で
干すときには、ピンチハンガーで前と後ろの腰板を分けて、履いているときのように間に空間ができるように干します。そうすることで早く乾きます。
ポイントは陰干しにすること、それからピンチあとがつかないようにてぬぐいで挟んであげることです。
3)アイロンは当て布をして
脱水時間を短くして干せばあまりシワも残らないと思いますが、仕上げのアイロンをかけたい場合は、必ず当て布をして。ポリエステルはてかりやすいので要注意です。あと、ヒダがずれないように気をつけてください。
とりかかるまではうーんと思っていましたが、友人が「上手に洗えた!」と言っていたので私もトライしてみました。お稽古で使っていた袴も、洗わずにおいていましたがスッキリしましたよ。
クリーニングに出すと結構費用もかかりますから、洗わず締まっているポリエステル袴がある方は一度ホームクリーニングに挑戦してみませんか?
着物は苦しくて痛い!?の巻
星わにこ
2022/04/06 00:00
着付けのお仕事をしていて、よく言われるのが「あら、苦しくないわ」ということ。成人式のときなどに、本当に苦しくてもう着るのが嫌になってしまった、ということを聞きます。先日は「痛くなかった」と言っていただき、よかったと思う一方「ずっと着物は痛いと、我慢してらっしゃったんだ」と胸がつまりました。着物は、痛くないし苦しくないし、もっと着て欲しいなあと思います。
苦しい原因は、胸紐や帯枕の紐、三重仮紐などがみぞおちに集中して、締め付けるのが一番多いのではないでしょうか。普段着でも、みぞおちに紐が食い込むと苦しいのに、振袖は帯を高い位置で結びますから、重みが段違い。
私のように締め付けに弱い人間だと、酸欠を起こしてしまうかもしれません。実際、着せつけてもらったときに、あまりに苦しくて途中で伊達締めを抜いたこともあります。
苦しくなる原因は、十中八九「胸紐」と「伊達締め」の締めすぎです。
着物は紐をきちっと締めないと着崩れてしまいますが、着崩れを恐るあまりに紐をたくさん使ったり、締め付けすぎたりするとそれは痛くて苦しい原因になってしまいます。
着付けてもらうときには、紐を締められるときには息を吸っておけと言われます。息を吐いた状態で締められてしまうと、呼吸が浅くなることもあります。私はゴムの伊達締めを使って着付けてもらったとき、呼吸が浅くなって酸欠を起こしたことがあります。
ぎゅっと押さえつければ気崩れは減りますが、本人が苦しければ意味がありません。その加減が難しいのですよね。
私がするのは主に短時間の撮影用の着付けなので、そこまでがちがちに紐を使いません。えっ、こんなに紐が少なくていいの?と言われることもあります。
成人式の着付けなどでは長時間着用しますから、気崩れないようにたくさん紐を使ったり強く締められがちなので、紐類を結ばれるときに息を吸う、違和感や苦しいなと思ったら伝えるというのが大切。着付け師さんも、加減をしてくれます。大丈夫、というとどんどん締められてしまうこともあるので、遠慮なく伝えましょう。
あと紐がみぞおちに集中しないよう、なるべく帯の中に落として低い位置で結んでもらうのが大事です。
あと、だんだん紐が上にあがってきてしまうこともあります。着ていて苦しくなったら、帯の上線に親指を入れて、紐類を体から離してみてください。それだけでもちょっと息ができますよ。
かといって、あまりゆるゆるにもできません。ウエストマークのないワンピースやチュニックを着るような感覚では着物は着られません。ある程度締め付け感は伴うものなので、その分は慣れでもあると思います。
緊張したりもすると思うので、苦しくならないよう自分が納得して楽しく着付けてもらえるといいですよね。
着付けする側もその力加減が一番難しいところであり、習うより慣れていくしかない。日々たくさんの反省と気づきをいただいて精進するしかないのです。私もたくさん、辛い思いをさせてしまったことがあるのではと、夜中にふと眠れなくなることもあります。
着付けを習うときにも、最初に胸紐や伊達締めを高い位置で締めて結ぶやり方を習っていると、それがなくては着られないと思い込んでしまいがちです。綺麗に着られるけど、実は苦しいのですよね~。
この辺りは、個人差があって、みぞおちを締めても大丈夫な方もいるんです。なので、自分の感覚と相談することが大事です。
着付けを教えるときには、紐は低い位置で結んでいい、ここまで紐や伊達締めを省略してもいい、ということもお伝えするようにしています。いろいろあるけど、最低腰紐1本で着られるものなので、あとはどこまで自分が整えたいか、にかかってくるのです。
紐を締める強さだけに着目しがちですが、それよりも補整を適宜入れると着崩れが減るので紐でぎゅうぎゅうする必要がないし、特にウエスト補整は体への紐の食い込みを防いでクッションになってくれるので、必要だなあ~と感じています。
タオルでもいいのですが、食い込みを押さえるという点で、私はたかはしきもの工房のウエスト全体をぐるっと巻いてしまう腰パッドスキニーを愛用しています。これを使うと腰紐をかなりぎゅっと強く結んでも体が苦しくないのです。しかもウエスト補整がしっかりできるので、おはしょりも綺麗に整うし、気崩れが格段に減ったので、これなしで着物を着ることは考えられないくらい頼っています(笑)。
痛くしない、苦しくしない着付けは、紐の数、紐の位置、紐を締める強さ、そしてウエスト補整が肝だと思います。
痛い、苦しいと思ったことがある方は、このポイントをちょっと見直してみてくださいね。こういうものだと思っていても、ちょっとした工夫で楽になることも。自分の好みで、らくちんな着付けで着物を楽しんでください!