スマホで試着!入学式の母コーデの巻
星わにこ
2021/03/31 00:00
東京はあっという間に桜が満開になってあっと言う間に散り始めてしまいました。まだ3月なのに今年は本当に早いですね。これから桜前線が北上していくと思いますが、いつもより少しだけ早い春。まだ集まってお花見はできないけれど、上を見上げて花を楽しむ心を忘れないでいたいなあと思います。
さてさて春はまた、お別れと出会いの季節ですよね。4月から新生活を始める方もたくさんいらっしゃると思います。我が家も子どもが高校生に。入学式には保護者が1名だけ参加できるとのこと。手持ちの着物で出席しようと思っておりますが、もしももしも新しく誂えるとしたらどんなかな?とふと思い。
おりしも、いつも妄想の翼を羽ばたかせているいち利モールの試着室のスマホ版ができたとのことで早速試してみました。
可愛いイラストの女性に、帯や着物を選んで着せていきます。指でぽちぽち選んで行くアクションでPC版より直感的に操作できます。後ろ姿もすぐ確認できて、帯姿もどんなかんじか見つつ、コーデを決められます。
よいな!と思ったのは帯締めや帯揚げ部分、着物の模様などさっとスワイプで拡大して確認できるところ。今までは帯締めなど正直細かい部分どうなってるの? という時がありましたがこれならばっちり!! 帯締めは丸組で、白に少し赤が入ったもので、おめでたい気持ちを表してみました。
着物はおめでたい花菱地紋のピンク。帯は西陣の葡萄唐草の袋帯。帯揚げは銀糸入りの若葉×薄緑の縦ぼかしでちょっと桜に新緑もまぜて。ああ~~楽しい!!やっぱり妄想コーデはめちゃ楽しい。
控えめだけどちょっと華やかな春の色無地入学式出席妄想コーデの出来上がりです!
>コーデ詳細はコチラ
式典色無地の注意としては、実は濃い色を選ぶと旅館の仲居さんのようになってしまうこともあり、薄めのお色が無難かも。あとは、なにしろ1色で面積が広いですから、顔映りのよい自分に似合った色を選ぶことが大切です。好きな色も大事ですが、肌の色などにあうものをあらかじめ知っておけるといいですね。
地域性もあるかとは思いますが、卒入式へ着物で出席する場合は、訪問着や色無地などに袋帯の礼装~略礼装での出席が一般的。スーツ相当の服装になりますので、訪問着や付下でもあまり派手ではない、控えめなものが好ましいとされています。主役はあくまで子どもということで、母は付き添い。式典などに出席する場合は、自分の好きなものを着るというよりは、場にふさわしいものを選びましょう。
私自身はもともと色無地好きということもあって、略礼装と言われる一つ紋の色無地で、黒羽織を羽織るスタイルでずっと出席してきましたが、小中学校ともに着物で出席されるお母さんが1、2人という状態だったので、地域性とは。という状態でしたが‥‥。
着物は華美だと言われることもありますが、体型が多少変わっても流行や自分の年齢が変わっても、何十年も着られるスーツやワンピースというのはないのではないでしょうか? 自分で着られれば着付け代もかかりませんし、かかるのはお手入れ代くらい。なにより着物を着ることで気持ちが引き締まってよいものです。
もし、入学式着物を着ようかどうか迷っている方がいらしたら、ぜひ!袖を通してください。春の日の、よき想い出になると思います。
子どもに「そういえばあのとき母は着物を着ていたな」なんて思い出してもらえたらいいなあなんて、ふと思う春でした。
花粉症と黄砂対策にはインナーマスクと木綿の着物!?の巻
星わにこ
2021/03/17 00:00
東京は14日午後に桜の開花宣言が出ましたね。昨年に引き続き観測史上最も早いそうで、我が家の近くの桜もぽちぽちと咲き始めています。今年も皆でわいわいお花見、というのは叶いそうにありませんが、やはり桜を見ると晴れやかな気持ちになります。
花は花でも、花粉症にお悩みの皆様にとっては今は辛い季節ではないでしょうか。今年は黄砂もすごいようで、花粉症でない私でも目がしょぼしょぼ‥‥。そして去年からず~っと不織布マスクをつけているので、密着させる頬のあたりがもうちくちくして限界感ありありです。着物でお散歩したいな~なんて思っても、ちょっとためらわれてしまうのでは。
花粉症対策としては、環境庁の「花粉症環境保健マニュアル2019」によるとマスクの中にインナーマスクをするとよいとのこと。インナーマスクとは、ガーゼを10センチ角に切ったものを用意し、1枚はそのままマスクの内側にあて、もう1枚は化粧用コットンをくるんで、鼻の下にあてるもの。これをマスクと併用することで花粉の吸い込みを99%以上除去できるそう。
この、化粧用コットンをガーゼでくるんだものがちょっと鼻水とかがたれたときに(汚くてスミマセン)いい仕事をしてくれます‥‥。もうガーゼでくるむのが面倒で無印良品の生成カットコットンをそのまままるめて鼻の下にあてているのですが、今までマスクの中に水滴がついたりして不快だったのも解決されていいかんじです。
マスクの内側にあてるガーゼですが、手作りが得意な方はコットンなどでプリーツのついたものを手作りしてもいいですよね。抗ウイルスの市販品などにすれば、えい花粉はウイルスより大きいので効果はより高くなりそうです。
次に衣類は、帯電しやすい素材が花粉を吸着しやすくNG。綿が最も帯電しにくい素材で、「綿.麻<絹<化繊<ウール」の順で花粉付着率が高くなっていきます。もちろん同じ素材でも、織り方によっても付着率は変わります。
繊維の表面が滑らかなもののほうが花粉がつきにくく、付着しても落ちやすいので、着物でいうと、結城紬のようなほっこりとした真綿系は花粉がつきやすく、大島紬のようなツルツルとして生地の密度が高いものは付着しにくいということになります。ほっこりした木綿の着物より、なんとなくツルツルの大島のほうが花粉がつきにくいような気がしますが、どうでしょうか。
また着物は、長着と長襦袢の素材の相性で静電気が起きる(絹+ポリエステルなど)ので、そのあたりも気をつけるとよりGOOD。肌を露出したところに花粉がつきやすいので、体を覆ってくれる着物はなかなかよいチョイスでしょう。
化繊でも、東レの「アンチポラン」や帝人の「ポランバリア」など、花粉がつきにくく、付着しても落としやすくする素材も出ていて、スプリングコートなどに遣われています。こういう素材で着物は難しいとしても、着物にさっと羽織れるものなどがあれば素敵かもかも! な~んてまたまた妄想しているわにこでした。
ブタクサ花粉症なので、いつも夏の終わりにア"~!!となることが多いのですが、なんだか今年は春から目がショボショボ‥‥いえこれは、違う違うそうじゃそうじゃないと自分に強く言い聞かせています‥‥。
というわけで(?)花粉症にお悩みの方がいらしたら、ガーゼと化粧用のコットンのインナーマスク。あとはメガネと帽子、そして着物を着るなら大島紬か木綿をおすすめします!!(麻もいいけど、まだちょっと早いですよね)
集まれなくてもマスクでも、せめて着物で花見のお一人様散歩ぐらいはしたいな~と思う春でした。
大学卒業式の女子袴はいつから定番になったのか?の巻
星わにこ
2021/03/10 00:00
先週、袴の流行について調べていて、「女子大生・卒業式・袴・いつから」で検索したところ、90年ごろから1987年の映画「はいからさんが通る」の流行で女子大生が卒業式に袴をはき始めたという記事があり、当時女子大生だった自分の実感とは合わないなあと思ったのがきっかけで、調べて見ました。二週連続袴の話題で失礼します。
まずはお知恵拝借!と、その頃以前に女子大生だった皆様に卒業式の服装についてSNSで聞いてみました。ちなみに91年卒のわたしは、1尺4寸(53センチ。ちょっとだけ長め)の袖のピンクの江戸小紋に紫の無地の袴でした。同級生は袴もいれば、振袖もスーツもいました。生協でレンタルもありました。
83年卒:友達はほとんど袴姿
85年卒:袴。写真をとっておけばよかった!
85年卒:自分も友達も袴。謝恩会はドレス。84年卒の姉も袴。75年卒のいとこが着たピンク付下とえんじの袴を借りた。
85年卒:色無地に袴(デパートレンタル)。ほかにも付下、振袖に袴の人もいた。
85年卒:うす橙色の色無地と母の黒い袴。袴と振袖は半々だった。
90年代卒:ほぼ振袖。袴は女性の先生が着るイメージだった
88年卒:東京女子大はほとんど袴(矢絣は禁止だった)
88年卒:キャップとガウン
86年卒:袴(レンタル)着用。袴は多かったが、振袖やドレスもいた。
91年卒:保育園の先生である伯母(今88歳)はずっと卒業式は袴だった。その袴を借りた。
91年卒:成人式の振袖にレンタルのグラデーションの袴。
80年代から袴は定番のようですね。ちなみに、銀座いち利の女将にも伺ってみたところ、74年卒業で振袖に袴だったそうです。周りも小紋や色無地に袴で、先生も袴だったと教えてくださいました。
「はいからさんが通る」の映画の影響で袴が復活して履かれ始めたということではなく、礼装として卒業式では定番の服装のひとつであったのではないでしょうか。原作漫画の連載開始が1975年、アニメ化が78年ですので、そちらのほうがブームへの影響はありそうです。私自身も子どもの頃から大好きだった漫画ですし、刷り込みになっていると感じます。
袴が定番でこれが流行、というように雑誌にとりあげられたりするのには、女子の進学率も関係があったのでは?との指摘も。70年代に大学が大衆化し、女子の進学率も上がり、80年代には女子大生ブームがやってきます。
ふーむと思っていると、『スキルアップ!情報検索 基本と実践』の著者の一人である中島玲子先生に「女子大生 袴 1980」で検索したら共立女子大の文献がありましたよと教えてもらいました。
田中淑江ほか.卒業式に見る袴の現代的着装の研究Ⅲ : 「伝統的な視点から.共立女子大学家政学部紀要」2015,Vol.63, p. 23 - 35.によると注の(1)に「筆者が新聞4 紙(朝日新聞・読売新聞・毎日新囲・繊研新聞)を用いて分析した結果、袴復活の黎明期を1980年代初期-1980年代後期、定着期を1980年代末期-1990年代中期、安定期を1990年代後期~現代と時代区分を行った。」とあります。
全文もpdfで読めますし、この研究にはⅠやⅡもあり、卒業式の袴の着付の考察(衿あわせやえもんの抜き具合など)や流行などについて研究されておりものすごく面白い。ぼんやりと袴について「そんなかんじ?」と思っていたことが明文化されていて老眼鏡をかけたときのような気持ちになりました(婆)。
また、togetterのまとめ記事もありました。引用されていた1980年代バブルのころの謝恩会のドレスが度肝を抜かれる華やかさです!!
1970年代から女子大生の数が増えたのに伴い、1980年代初期には袴を履く女子大生の絶対数が増え、今では卒業式といえば袴、というような状況になったと考えられます。レンタル業者が着付までまとめて校内で行ったりするようになった時期とも重なるのでは。あとは、校風や学部や専攻にも関係があるかもしれませんね。
中島先生に「知りたいことを検索するときは、いつから?とか抽象的な言葉ではなく、知りたいことがどういう風に書かれているか、使われている言葉を想像して検索するといいですよ」と教えていただきました。
わにこはひとつ賢くなりました・・・・。
そして、「袴に振袖をあわせるのは最近のことだ」となんとなく思い込んでいたのですが、いち利女将の証言によって覆されました! 確かにはいからさんしかり、大正時代の高畠華宵の絵にも振袖に袴の若い女性がたくさん描かれていますし、もともと袖が長い着物にあわせるほうがスタンダードで、むしろ70~80年代の普通の袖丈の着物に袴、という流行のほうが少しイレギュラーだったのかもしれません。この頃は、手持ちの着物に袴をあわせていた人が多数だったためと考えられます。
今は着物もレンタルが多く、ほとんど二尺袖(76センチ)か振袖(100センチ前後)になります。やはり袖が長いと華やかですよね。もちろんご自分の着物で用意されている方もいらっしゃると思いますが、普通丈の袖は先生が着るものという流れになってきています。着物といえば何か絶対のルールがあると思いがちですが、細かい常識や流行も時代によって変化しているものなんですよね。
今回は女子大生に絞って調べましたが、今は小学生も卒業式に袴を着用しますし、それも漫画「ちはやふる」の人気が関係あるという人もいるようです。それだけではないにしても、漫画の影響というのも昨年の七五三の子どもたちの「鬼滅の刃」の影響による和装人気を見ても確かにあると感じます。
今回はふとした疑問から、ネットを通じて調べただけですがいろんなことがわかりました。そして、ちょっとぐぐって一番最初に見たものを鵜呑みにしたりすることは避けて、裏をとる大事さも痛感、反省。今は、なにかあるとすぐ拡散されてそれが事実かどうかというのはなおざりにされているように感じます。いろんな情報をちゃんと読み込む検索のスキルも必要なんだなと、袴とは関係ないところでも考えさせられた一件でした。いろいろ教えてくださった皆様に、感謝です!
令和の袴はここが違う!卒業袴にも流行あり。の巻
星わにこ
2021/03/03 00:00
3月、卒業の季節ですね。ご卒業の皆様、おめでとうございます。昨年はちょうどコロナ禍への突入の時期と重なり、卒業式も入学式も中止や縮小が相次ぎましたね。今年は対策を取りながら開催のところが多く、大学などは例年のようにで袴をレンタル当日会場で着付‥‥というようなこともないようです。いろいろなことが変わってはいますが、人生の節目であることには変わりなく。それぞれの形でお祝いできるよう、心より祈っております。
今年は小学生、大学生はじめ卒業式の袴着付をご依頼いただいているのですが、自分の卒業式(30年前‥‥がーん)の時と比べるといろいろなことが変わったなあと思います。ネットで調べてみると、1987年の映画「はいからさんが通る」の流行で、90年代から大学生が卒業式に袴を着るようになった、と記述されています。
私の卒業式のとき(平成初期)には、すでに「やっぱり卒業式は袴でしょう!」と母が張り切って用意してくれたのですが、ネットもない時代にそんな超流行に乗ったんでしょうか。「はいからさんが通る」の原作は1975年連載開始、大人気で1978年にはアニメ化され、私も子どもの頃夢中でした。だから、映画の流行ではいからさんブームが、というのはあったとは思いますがそれだけかなという疑問が。もう母も亡くなっているので聞くこともできませんが、このあたりもう少し調べてみたいですね。
実際の卒業式では今のように女子はみんな袴!ということもなく、スーツもあれば振袖もいる、というような状況でした。成人式も同じくですから、和装がこんなに増えた背景にはレンタル業者さんの仕掛けと躍進が凄かったということなのかなあと拝察いたします。
最近の袴姿が変わったと感じるのは、とにかく華やかになっているということ。
平成初期は色無地もしくは江戸小紋や小紋などに伊達衿をあわせたものに無地袴が主流。矢絣のはいからさんスタイルもありました。普通の着物に袴をあわせる、というかんじで、袖も普通でせいぜい若いので少し長めかな、という程度でした。レンタルも主流ではなく私も袴をその日のために買ってもらいましたし、「家にある着物に袴をあわせる」ということだったのかもしれません。
今はニ尺袖がベースで、振袖に袴をあわせるのも普通になってきています。最初振袖に袴をあわせるのを見てびっくりしましたが、もうすっかり慣れてしまって普通丈のお袖だと、先生ですか?と思ってしまうほど地味に感じるようになりました。慣れってすごい。また、袴も刺繍、グラデーション、バイカラーと華やか。紐の裏表で色が違うタイプも増えて、結び目も乙女結びだけではなく飾り結びなどバリエーションも豊富です。
振袖に袴をあわせるようになったのは最近では、と思っていたのですが実はそうでもないようです。ちなみに、1994年(平成6年)の「美しいキモノ」春号には大学の卒業式の袴が紹介されていますが、早稲田大学でのスナップがまさに私の時代あるある(二尺袖も数名います)。ですが、同じ号に載っているグラビアの卒業袴は、色柄こそ地味目ではありましたが、小紋などの二尺袖、振袖に袴というスタイルが掲載されていてびっくり。いわゆる今成人式で着られるような振袖は、謝恩会のスタイルとして紹介されています。そういう雑誌や着物業界の提案が、実際に着られるようになっていったということでしょうか。
きものというと細かいルールがあって、それが絶対!のように言われることも多いですが、礼装としてきちんとしていればどんな組み合わせでも問題なく、またその形も洋服とおなじように流行があるんだということを改めて感じました。
あともうひとつ、紐を結ぶ位置が平成初期と今ではスタイルが変わってきています。以前は、前紐の付け根部分の下にやや斜めに引き下ろすように紐を回して結び、後ろ紐も少し斜めにあわせて前紐の付け根より下で飾り結びをしていました。
今は、前紐の付け根に重ねて紐を結び、後ろ紐もそれに重ねて平行に高い位置に飾り結びをするスタイルが多く見受けられます。前者は男袴と同じような着付で、このほうがしっかり締まって安定するかなと思いましたが、十二単の長袴の着付を習ったとき、前紐にすべて重ねて行くスタイルだったので、しっかり結びさえすればはずれるとかずれるとかいったことはないのでしょう。
また、結び目が少し高い位置にきますので、足長効果もあります。こんなところもアップデートされているんですね。民族衣装ではあるけれど、やはり着物も流行のもの。残って行くためには魅力的であり続けることも大切ですよね。
30年後。はたして袴は卒業式の定番スタイルでありつづけるのか? またそうだとしたらどんな進化をとげているのか? そしてそれを私は見届けられるのか? なーんて思ったりする春なのでした。