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志村ふくみ100歳記念特別展を見てきましたの巻

星わにこ
2025/01/15 00:00
三連休は20歳を祝う会が全国各地で開かれましたね。東京は雪予報が出ていてドキドキしていましたが、晴天で終わってほっとしているわにこ@着付です。20歳の皆様、ご家族の皆様、心よりお祝い申し上げます。 さてコラムはちょっと前の話なのですが、大倉集古館に特別展『志村ふくみ100歳記念―<秋霞>から<野の果て>までー』を着物友達に誘われて観に行ってきました。 告白しますと志村ふくみさんのことは「あの~紬織の~人間国宝の方ですよね」くらいの知識しかなかった私。せっかく誘ってもらったしとても手が届かない着物だけど一度見てみたいな、と軽い気持ちで入館して、いきなりハンマーで殴られたような気持ちになりました。 今年100歳を迎えられる志村さんの作品がずらりと並んでいるその最初の<秋霞>と名付けられているさまざまな青が重なり織り出された着物。その力強さもさることながら、作品が生み出された背景の説明に驚きました。 二人の娘を抱えて離婚後、30歳を過ぎて民藝に携わっていた母・小野豊の導きもあり、紬織の道へ。子供を預けて近江で一から織を学び、やがて1958年の伝統工芸展でこの<秋霞>が奨励賞を受賞する。その後も次々と入選を果たして工芸界のスターとなっていく。それまで庶民の「布」だった紬が芸術として認められていったのです。 その始まりの着物は、深い湖のような、夜が深まりまた明けていくような佇まいで、そのあまりにも力強い存在感に圧倒されてしまいました。母の豊が「もうそれ以上の着物は織れないかもしれない」と評したほどの、代表作です。 各年代の作品が並べられ、琵琶湖の自然を写した作品や音楽や詩にインスピレーションを得た作品など、志村さんの織物は「芸術」なんだと思わされます。 100歳を目前に制作されたという最新作<野の果てⅡ>は、<秋霞>とは対照的な軽やかな色のグラデーションの作品。裾の日本ムラサキで染めた薄紫から曙のように明るくなり、紅花染めの薄桃から薄黄色へと変化していく様は、太陽の光のよう。そして肩の萌黄色は、今いる野なのでしょうか。それともこれから向かう野なのでしょうか。生きる力が込められたような秋霞と対照的に、こちらは軽やかで柔らかでふわりと肩の力が抜けるようで。 タイトルの「野の果て」の元となった自作の童話も展示されており、随筆家としても有名な志村さんの芸術の原点がそこにあるようでした。 紬織を見るときにはどんな糸でどんな染色をほどこしどんな技法で織ったのかということばかりについ目が行くものですが、それよりもそのものの美しさや佇まいとどんなバックグラウンドで製作されたものなのかということに焦点をあててみるというのが新鮮な体験でした。 いくつかの作品と、製作の背景の志村さんの人生や求めてきたものなどの一端を見ただけですが「これが芸術というものか」と感じ入り。随筆もたくさんあるので、拝読してみたくなりました。 自分的には昨年までずっとアウトプットばかりしてきた気がするので、今年は、博物館や美術館にもでかけて知識を深めるインプットの年にしたいななんて思っています。 1月19日までの展示となっておりますので、未見の方はぜひ! 着物で行くと、入場料が300円引きという嬉しいサービスもありますよ。