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圧巻!能装束の虫干しツアーに参加したよの巻

星わにこ
2023/08/23 00:00
皆様お盆休みは何をして過ごされましたか? 久しぶりに帰省された方も多いのではないでしょうか。私は夏バテもあって自宅でのんびり、と思っていましたが、尊敬する着物マダムにお誘いいただいて、東京都中野区にある武田修能館の能装束の「虫干しツアー」に行ってきました。 お能好きの方ならご存知の方も多いのではないかと思いますが、財団設立以前から行われているこの「虫干しツアー」では、公益財団法人 武田太加志記念能楽振興財団所蔵の300点あまりの能装束や小道具類が虫干しされている様子を見学できます。 普段は舞台でしか目にすることができない貴重な装束を、能楽師の先生の解説つきで、もうびっくりするくらい近距離で見ることができ、写真も撮影させていただけて、ものによっては触らせていただくことも可能というどんだけ~!という大盤振る舞い。美術館でガラス越しに見るのと違った天元突破の贅沢さに思わず挙動不審になってしまうくらいでした。 虫干しは能舞台と見所(けんしょ/観客席)、楽屋を使って行われ、先生に案内していただきながら、まさに衣装をかき分けるように移動しつつ見せていただきます。能舞台の上にもあがらせていただくので、白足袋を履く決まりになっています。 今回は武田文志先生にご案内をいただく回に参加したのですが、わかりやすく楽しいお話に、時間を忘れて聞き入ってしまいました。 まず最初に、おそらく江戸の元禄時代のものであろうという武田家に代々伝わる300年前の貴重な家宝ならぬ「財宝」(財団法人のお宝だから!)から見せていただきました。 驚くのはそれがまだ、機会があれば実際に舞台に使われるものだということ。さすがは約600年の歴史があり、現存する最古の舞台芸術である「能・狂言」。初手から凄すぎます(語彙)。 能装束研究家の山口憲氏が手がけたという、もともと武田家に伝わる装束を復元した花車の唐織にも、触らせていただくことができました。江戸時代と現代では絹糸の重さが違うということで、自ら桑畑を作り養蚕から行ったというこだわりの装束は、現代物の他の唐織に比べて格段にしなやかで軽い触り心地。そんなお宝をはじめ、この装束はこんな演目で使われる、役の年齢による使い分けをするといった密度の濃いお話を伺いました。 例えば縫箔という女性や童子が着る衣装の「色」。裏地が赤いものは「紅入(いろいり)」といい、若い女性や少年役に用いられ、赤ではなく紫や紺などの裏地は「無紅(いろなし)」といって中年期以降の女性のものとして使われるそう。そういった知識があると、舞台ももっともっと楽しめそうです。 10年ほど、能の番組であらすじの漫画を描く仕事をさせていただいているのですが、あの!あれは!こういう構造になっていたのね!と実物を間近で見て初めてわかることもあり、本当に勉強になりました。 唐織をはじめ、縫箔、長絹、舞衣・水衣といった絹の美しさ、素晴らしさを間近で堪能できるこのツアー。お能が好きな方はもちろん、着物好きなら、夢中になること間違いなしです。1時間という見学時間内ではとても全てを鑑賞しきることはできないので、リピーターの方も多いとか。毎年夏に開催されますが予約制ですので、同財団のホームページやFacebookをチェックしてみてください。 武田文志先生のYoutubeチャンネルでも、虫干しの様子が見られます。お能のお話も本当に素晴らしいので、ぜひご覧ください! 公益財団法人 武田太加志記念能楽振興財団 文志村塾(ふみゆきそんじゅく)