絹という素材の美しさと「育てる」ということの巻
星わにこ
2022/10/19 00:00
先日、着付け教室の生徒さんが持っていらした深い青色の帯揚げが、それはそれは美しい光沢で、思わず「うわぁ~綺麗ですね!」と言うと、箪笥に入っていたお母様の帯揚げを染めてもらったものだとか。
シミが出ていて、そのままじゃ使えないなと思っていたら染め直しもできますよと言われたのでお願いしたの、とのこと。本当に新品同様の艶で、シミがあったとは思えない美しさ。職人さんの技術もすごい。しばしうっとり触らせていただいてしまいました。
染め直しは、色が派手になったものやシミがあるものなどを染め直すことで生まれ変わらせること。特に柔らか物は若い頃のものが派手になったから、というような理由で染め替えることがあります。
着物の表地だけでなく、生徒さんが持っていらしたような帯揚げや、八掛、帯なども染め替えで生かすことができます。絹は動物繊維なので、染まりやすいためこういった加工も発達してきたのですね。全体を同じ色で染めるなら、比較的安価にできますし、費用はアップしますが柄を活かしたければそこを糊伏して染めることも可能です。
染め替えは柔らか物で見ることが多いですが、紬もできます。織柄などは目立たなくなってしまうので、それが難点ではありますが、逆にそれがよい場合も。
いただきもので本当に気に入っている大島紬の着物があるのですが、大島の光沢がありながら柔らかく、藍色なのですがよ~く見ると大島特有の柄が浮かび上がります。もともとの着物は泥染で赤色が差してある龍郷柄だったと思うのですが、全体を藍色に染めているため、柄が目立たなくなっています。
龍郷柄は結構インパクトがありますし、「ザ・大島紬」というかんじですが、それに色かけをしたことで、大人しくどこにでも着ていきやすいような仕上がりになっていて、とても重宝しています。
そしてなにより、一度仕立て直しをしていることで信じられないくらい軽くしなやかで着やすくなっています。よく「紬は着て育てる」といい、「洗い張り3回目が最高」と言う話も聞きますが、こういうことなのでしょうか。
自分でも大島紬や紅花紬を仕立て直して着ているものがありますが、やはり洗い張り前よりも柔らかく身に沿うような感じがあります。
染め替えや洗い張りで仕立て直した着物は、新品になるわけではありません。だからこそ、愛着も湧くし、「育てる」という言葉も納得です。
自分では染め替えは八掛くらいしかお願いしたことがないので、染め替えはいつかやってみたいなと思っていることのひとつ。
でも結構費用もかかることですし、そうそう気軽にできることでもなく、着物熱でうかされまくっていた頃に比べると「まあ、そこまでしなくてもいいか」というような気持ちに正直なっていたのですが、その生まれ変わったという美しい深い深い青の帯揚げを見て、ああ、やはりまだ技術がある職人さんが残っているうちに、私が元気に着物が着られるうちに(笑)一度トライしてみたいなという想いが蘇りました。
着物好きの夢は、果てしないですねえ。