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帯締めも衣替えが必要なの?夏のレース組とはの巻

星わにこ
2021/06/16 00:00
東京も梅雨入りということで、うなぎのぼりの気温も小休止。梅雨が終われば本格的な夏がやってきますね。当たり前のことだけれど、コロナ禍であったり自分も年をとってきたせいなのか、なんでも有り難いなあと思うようになってきました。 着物も6月の単衣のクッションを挟んで、7,8月の薄物の時期に入るわけですが、短い間だからこそ夏着物も楽しみたいですよね。年に一度くらいは絽の訪問着も着たいなあ、なんて思いながらなかなか機会に恵まれなかったりもするのですが、それだけに夏着物は「着たぜ!」という充実感が高いものです。 着物だけでなく、帯から襦袢から半衿から、帯締め帯揚げ、足袋に草履に着付小物に至まで「夏物」が存在します。ですが必ず夏物に、と言われるものと、通年でよいとされるものがありますよね。 例えば博多帯も通年使用OK。足袋も通年OK。帯締めも通年OKです。着付小物も見えないし、夏物にこだわる必要はありません。 それぞれ夏用の紗の博多帯もあるし、足袋なら麻やレース、帯締めにもレース組がありますが、必ず夏用でなくてはならないということもありません。逆に夏用は通年は使えません。着付小物は夏用を通年使う人もいます(見えないし・笑)。 いずれも、涼感をどれくらい求めるか、とか着用シーンとか、自分が納得できるかどうかによって判断すればOK。カジュアルであれば、自分が快適なら基本なんでもいいわけですし、基本ルールがわかっていればどんどん崩しても、和洋ミックスでもなんでも、よきようにお洒落を楽しめばよいと思います。 さてタイトルの帯締めのお話ですが、結論からいうと帯締めは通年使えるけれど、夏用のレース組というのは明らかに涼しげなので夏しか使わないということです。 夏用のレース組とは最初、スカスカにすきまがある組み方がレース組だと思っていたのですが、「正絹のレース紐を使って組んだもの」と先日知りました。通常の帯締め用の絹糸と素材が違うのです。 少し張りがある素材なので、それを組んで行くとすこし隙間ができてとても涼しげです。最初から透かして編むやり方もあります。 三つ編みのように、手で組み合わせ編んでいけるということですがカウントワークが苦手な私は絶対間違えそうです。。。 まあ帯締めが多少涼しい素材であろうがなかろうが、着ている側の実際の涼しさには一切関与してこないわけですが(笑)、夏用の帯締めをすると「ああ夏がきた。夏なのだ」と気分は盛り上がりますし、見ている方にも涼やかな気持ちにはなっていただけますよね。逆に冬なのにレース組がかっこいい!という使い方ができればそれもいいかもしれないです。 着物とは、涼しい格好をしたいという機能で選んで着るものではなく、「記号」のようなところがあります。 通年用の帯締めでも、涼やかな色を選べば問題なし。例えば太さのボリュームも控えめだったりすると、それも暑苦しくなく感じられます。夏は二分紐もキリっとして素敵です。要は、ルールがあっていても暑苦しいより、多少外していても涼しげなほうが素敵。なんでもそうですが、センスというやつにかかってくる部分ですね。。。 最初は面倒‥‥と思っても、夏物を出してくるとやっぱりテンションが上がります! その時期しか使えないもの、というのは面倒であり同時に特別感があって、やめられません。 ネットや雑誌で、いろんな着物姿を見て、自分が素敵と思ったものをイメトレしたり頭にストックしておくことも、役に立ちます。かくいう私も日々、いろいろ見たり妄想したり(妄想かよ)。梅雨の晴れ間に夏物を出しておきたいと思っております。 まだまだおでかけが制限される夏になりそうで、着られるかどうかはわからないけれど、日々着物のお洒落アンテナは張り巡らして準備怠らず。牙を研いでおきましょうぞ(牙?)。 特集:タイプもいろいろ♪夏のレース帯〆特集

洋服のベルトを帯締めに&サイズの確かめ方★の巻

星わにこ
2021/06/09 00:00
単衣の季節ですね。もう30度を超える日も出て来て、普段着は半幅帯でちょっとでも涼しく楽に着たいなあなんて思います。このごろはまっているのが、気楽な装いのときに洋服用のベルトを帯締め代わりに使うこと。 カジュアルシーンに取り入れている方もいらっしゃると思いますが、特に半幅帯のときなど、大人っぽくカルタ結びや矢の字、あとは結ばない帯結びなんかにしたときに帯締めにベルトを使うと、和洋ミックスでお洒落度がちょっぴりアップする気がしてマイブームです。 着物用として販売されているものもありますが、入手しにくかったりもします。ファストファッションのお店などで1000円以下など、結構リーズナブルなお値段で手に入りますし、色違いで揃えてもよし。ベルトは細めのものがぱっと見帯締めに帯留をつけたようで違和感なく取り入れられます。逆に、太めのものでも主張があってかっこいい。 あと、伸びる太めのものはしっかり止まって安定がいいので、結ばない帯結びのときにかなり便利。着物用で売っているものもありますが、洋服用でも探すと結構あります。金具があれば、ゴムでも自作できると思います。 ただ、洋服に使うのと違って帯の上に巻くので長さが足りるか? とか自分にあったサイズなのか? とかがわからない時がありますよね。そんなときは長さを測っておいて、持ちあるいているメジャーで‥‥とできれば一番いいのですけど、それがなかなかそううまくメジャーを持ってなかったりするのです。。。(自分) そんなとき、目安になるのがヒップのサイズ。帯を巻いたときのウエストのサイズに近いのです。なのでお尻にまわしてみてサイズが足りそう、よさそうなら買えば大丈夫なので覚えておくと便利ですよ。これはリサイクルの帯締めなどを買うときにも使えるワザです。 ベルト穴が空いている場所があわない場合は、実際帯をしてベルトを巻いてみて、目打ちなどで開けて使いましょう。1.5センチ間隔くらいで3つほど空けておくと、帯結びや補整などのコンディションが変わっても対応できます。 普通の帯締めに飽きたときは、ベルトでアクセントをつけてみてはいかがでしょうか? 浴衣のときにも使えますよ!

いつかは欲しい!憧れの紗袷(しゃあわせ)の巻

星わにこ
2021/06/02 00:00
紗袷という着物をご存知ですか? お持ちの方もいらっしゃるかとは思うのですが、私は持っていません。実際に着ている方を見たのはこの10年で4回ほど。6月のお茶会で2回。あと、観劇のときに2回。いずれも強烈に目に焼き付いています。 紗袷とは、絽と紗、もしくは紗を二重(無双)に仕立てた着物のこと。いずれも透ける生地が二重になっています。そして、仕立てもとても難しいものです。リサイクルで買って裄直しをする、ということが簡単なものでもありません。 戦後新橋の芸者さんが5月末の「東をどり」で着てから流行したものと言われていて、厳格な決まりがあるわけではありませんが、着用期間がまさにこの時期、袷から単衣に切り替わる5月末~6月頭のほんの10日間だけという人もいます。6月の前半後半など諸説ありますが、それくらい贅沢で、幻のような着物というイメージがあります。 今は単衣の時期に、単衣代わりに着てもよいというかんじでしょうか。秋に着る方もいるので、秋の模様の紗袷もあります。一時、着てみたくていろいろ調べていたのですが、なかなかにお値段もハードルも高く、着ている人に伺ってみるとどうもそう涼しくもない(二重ですもんね・笑)ということで、どんどん優先順位が下がって二の足を踏んではや10数年となります。 でも、毎年この時期になると「あああ一度は着てみたい、持ってみたい」と思う憧れの着物。それが紗袷。 二重紗というのもありますが、それは風通織、袋織とも呼ばれるもともと生地自体が二重で織られているもので、紗袷とは別物になります。こちらも着用時期は単衣と同様になります。 紗袷で、よく見かけるのは訪問着。模様が描かれた絽に無地の紗が重ねてあるもの(絽紗袷)が多く、はっきりと見えない模様がなんとも儚く、モワレ模様が幻想的です。例えるなら、御簾越しに姫を眺めるような、ヴェールに隠された花嫁の顔のような‥‥秘めた感がたまりません。 しかも訪問着となるとこれまた着用機会もなかなか限られたり、単衣の時期といえば初夏は梅雨・秋は台風となかなか難しい。よし!紗袷を着るぞ!という機会にも巡り会えるのか会えないのか。また今年も「あ~紗袷の季節だわ」と思って過ぎて行きます。 1年のほんの短い時期の贅沢な着物。でも、だからこそ。憧れなのですよね~。 いつ、なんでも好きに着ていいという自由さの一方、これをこの時期限定で着る!みたいな特別さもまた捨てがたい着物の魅力なのかもしれません。

帯がキレイに結べる?「お太鼓サポート」を使ってみたの巻

星わにこ
2021/05/26 00:00
帯付姿も颯爽と歩ける季節になりました。まだなかなか、心置きなくおでかけをできる状況ではありませんが、キレイに着るにはどうしたらいいかな~とか、着付が楽になる方法はないかな~とか、あれこれ考えては楽しんでいるわにこです。今はYoutubeでいろんな方がいろんな着付や裏技を紹介してくれているので、なるほどこんなやり方もあるんだ!と、勉強になります。 銀座いち利の女将チャンネルも春から始まりましたね。女将のキュートな笑顔とお話にほっこりしつつ、しっかり参考になる情報が詰まっています。そこで私が気になったのが「お太鼓サポート」(あづま姿)。こういうものがあるということを、知りませんでした。 早速購入してみました! で、使ってみました! どういうものかというと、 ・柔らかい帯でお太鼓がピシっと作れる ・タレが長い帯も処理がしやすい ・初心者でもお太鼓を作りやすい ということなんですが、要は手の下に板を入れることでピシっとしたお太鼓が作れるというものです。メッシュでできていて、小さな帯板をお太鼓に挟むようなイメージでしょうか。 丸みのある方を下にして、下線に仮紐を通してお太鼓の大きさを決めます。クリップでお太鼓サポートをタレに止めます(これでお太鼓の大きさが決まります)。これで両手を使って、タレの余り部分を持ち上げられるのがらくちんポイント。タレを人差し指の長さ分残して持ち上げられたら、仮紐を前でしっかり結びます。 あとは、手をお太鼓サポートの上に入れて帯締めを締め、クリップをとって仮紐もゆっっくり引き抜きます。これでできあがり。 お太鼓サポートを入れる、という一手間が加わりますが、確かに柔らかい帯はぴしっといい形になります。 それから女将動画でも紹介されていたように、補整不足でお太鼓の中で手が帯締めを締めたところがグシャっとなったり、「く」の字に折れてお太鼓の形が丸っぽくなって決まらないというのもなくなります。反り腰の人でも補整をたくさん入れなくてもキレイな形のお太鼓ができますね。 また、広い範囲でタレの折り込まれた部分を抑える働きもあるので、帯が短くて折り込みがちょっと少なくて落ちないかな、なんて心配なときもお役にたちます。お太鼓サポートに細めの紐を入れておいて、結んだら引き抜かないでそのままお太鼓の下線に入れこんでしまえば、タレが落ちる心配がなくなります。 お太鼓を作るのがちょっと苦手だわ、という方にはよい目安になりそうですし、私も柔らかすぎて扱いづらい帯とかに使ってみたいと思います。こういう便利グッズは、合う合わないがありますが、私はとりあえず使ってみるのが大好きです。合えば使えばいいし、いらないと思えば使わなければいいだけですから。 お太鼓サポートも、普段は使わないかもしれないけど、やわやわの帯とかに使っていこうと思っています。絶対これがいい!というのではなくて、いろいろ探って行くと、それぞれ自分が使いやすい、好みにあったものがあると思うんですよね。 自分の着付を楽にキレイにしてくれそう? と思うものがあったら、あまり先入観を持たずにとにかくやってみるのもいいものですよ。ぜひお試しを。 銀座いち利の女将ちゃんねる もぜひ! 【女将愛用】簡単!綺麗に!着付けが出来る便利グッズのご紹介

肌襦袢の小衿が衣紋から見えるときはどうしたらいいの?の巻

星わにこ
2021/05/19 00:00
なかなか人形の世界から戻って来れないわにこですが、着物の話題に戻ります。趣味の世界におつきあいいただき、ありがとうございました! ひな人形や着物のお人形など見かけたら、どんな風になっているのかな、と見てみるのも面白いと思います。 わたしの作った「さくら人形」は着付の知識も学べるような内容になっていたのですが、3体とも、いわゆる肌襦袢の小衿が衣紋から見える着付でした。赤い小衿がちらりと見える着付は、日舞などでもします。花嫁の肌襦袢もそうしたタイプもあります。 もともとは肌襦袢に小衿という細い衿がついているものは、長襦袢の衿のストッパーとしてつけられたもので、そもそも見えるものだったのです。うそつき衿で、この小衿に芯を入れてストッパーにして固定するタイプのものがありますが、その着付のやり方ですね。見えるようにする着付もある、と思っておくと他人の着付も気にならなくなります。小衿に限らず、着付はいろんなやり方があるので、知っておくといろいろあるんだな~って、心が豊かになりますよね。 間違っているわけではないのですが、今はほとんど小衿を見せない着付がスタンダードになってきているので、小衿がある肌襦袢を使って着る場合に「衿から肌襦袢が見えてしまうのはどうしたら」とよく質問されます。 衣紋の抜き具合も昔より抜きが大きくなっていますし、小衿がついてないタイプの肌襦袢でも昔のものだとあまり衣紋も抜けないので、見えてしまいがちですよね。 まず試したいのは、首から衿を離して着付けること。こうすると、後ろの衿もこんにちはしにくくなります。 後ろにぐっとひいて衣紋を抜こうと思っても、構造上抜くことは難しいものもあります。さてどうしたらよいかというと‥‥ 1)脇の馬乗り(スリップ)をほどいて深くする 2)脇の身八ツ口をほどいて深くする のどちらか(もしくは両方)を試して見てください。ほどいたときには、縫いどまりを玉止めしたり、ほつれない工夫をしておいてくださいね。 そうすると、衣紋を抜いても衿があいます。 以前、長襦袢の衿があわないときの対処法としてこの脇をほどくという技をご紹介しました。 衿があわなくても一番下だからいいや、と思われるかもしれませんが、実は肌襦袢をきちっと衿あわせすることも美しい着付のコツなのです。 肌襦袢も両胸を包むように深くあわせることで、脇のだぶつきもおさえられ、胸もまんなかに寄せられて痩せ見え効果もあります。布の面でしっかり体を包むように着ると、体もささえられますし、体の凹凸や布のシワもなくなって補整にもなり、着物が着付しやすくなります。 ゆるっと着るのが好きな方はゆるりと着付けていただいていいと思うのですが、もしピタッとサイズのあう肌着を着ることで着付が楽になるということを未体験の方がいらしたら試していただきたいです! 木綿の肌襦袢を工夫して着るのもよし、思い切って新しい肌着を求めてみるのもよし。今は、吸汗速乾機能のあるものや涼しいもの、あたたかいものなどいろんな素材のものもあります。たかが肌着と思わずに、肌襦袢こそ、ピタリと着る工夫をしてみてくださいね。

懐かしの「さくら人形」を作ってみる完結編。「八重垣姫」の巻

星わにこ
2021/05/12 00:00
緊急事態宣言が延長となった東京。相変わらず人形を作っていたわにこです。先の2体がもう着物のパーツが縫い上がっていたので、楽勝気分で3体目の「八重垣姫」の説明書を読んだら、布を断って着物を縫うところから‥‥‥。がーん!! いきなりの難易度爆上がりです。しかも、姫、ということでお振袖。果たして、出来上がるのでしょうか? よくよくこの説明書や添付案内などを読み返すと、いろんな人形ができてわーい楽しい!というガンプラ的なものではなく、作り進むに従って着物を縫ったり、髪を結ったり(!)、人形がイチから作れる人形作家に育成するというシステム。だんだん難易度があがるというわけです。 前回の下駄でもそうですが、1つ難易度の高いことをクリアすると、後の「やったことがある作業」が楽勝に思えるマジックというのがよく効いていて、最初は「縫うの?」なんて、あんなに嫌だった帯締めを作る作業などへのカッパに思えてきます。こうして人は成長していくのね。 くけ台を出してちくちく縫うも、運針が‥‥。でも見えないところについては「裏は大きい針目でもよい」などというなぐさめ(?)もあり、頑張りました。 裾ふきの構造がよくわからなかったりしつつも、なんとか形にしていくと、すごく嬉しくなってきました。お人形のものとはいえ、振袖好きとしてはめっちゃめっちゃ盛り上がります!!  襦袢にあたる部分は、衿とけだし部分だけ。徹底した見えるとこだけでヨカヨカというのが潔い。実は、人形好きなのでバービーやブライスなどいろいろ着せ替えて遊んだことがあるんですが、やっぱりこういう「見えるところだけ」とかある程度割り切っていかないとどんどん着膨れして、すっきり見えないんですよね。目指す方向性で割り切る感も、実際の着付に通じるような気がします。 帯は芯を紙で作ってとのことでしたが、ちょうど帯芯があったので使ってみました。もしかしたら経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが、「半衿は三河芯と一緒に縫いつける」というのにチャレンジして、手が血だらけになり、普通の衿芯でいいや、ってなった、その三河芯の残りです‥‥‥。 今までのお人形は、帯も紙の芯を入れて作ってあったのでパキパキ言わせながら形を作りましたが、三河芯を使えばなんとなくいいかんじのような気もいたします(完全な自己満足)。趣味とは、こだわり始めると終わりが見えないもの‥‥。やっぱりこれも着物に通じるような気がしますね(笑)。 台につけたりするのも今回は自分で穴をあけてとりつけたり、絶妙にステップアップしている教材でした。手は前回の春雨のときに失敗してしまったものを使いましたが、見えないからヨシ!(えええ) テキストにはなかったけど、赤い布が余ったので帯揚げを追加しましたが、微妙かな~。このあたりもアレンジを加えて行くと面白いのかもしれません。沼ですね……。 そして、ドライヤーで兜の房や毛をのばし、髪のびんの部分をお姫様カットにして、完成です!! この「八重垣姫」とは、歌舞伎「本朝廿四孝 奥庭狐火の場」から題材をとったもの。長尾家の八重垣姫は、武田信玄の嫡男・勝頼の許嫁。恋しい勝頼が危機にあると知り、追いかけて知らせたいと思うが勝頼はすでに湖の向こうに。「翼が欲しい、羽根が欲しい。飛んで行きたい知らせたい」という名台詞とともに、霊力がある武田の兜を手に捧げ持って念ずると、泉水に狐の姿が映ってその願いが聞き届けられ、霊力を借りて諏訪湖の氷上をシャーーーーッと渡って追いかけて危機を知らせに行くという場面のお人形です。すごくはしょっての説明ですみません。シャーッて。 そして、願いが叶った瞬間を表現したということで「泉水を覗き来んでいる」ということなのですが、目線が下にいかなかった‥‥。ですが、情熱的なお姫様であるとともに典雅でありりりしくもあり‥‥というところはそういう目で見ればそう見えるかも。うんうん(自分を納得させている)。 こういうドラマチックな場面を人形で表現することの難しさと楽しさよ! 20年ほど前に「真珠夫人」という昼ドラが流行ったときに、その名場面を人形で再現する『パール人形劇場』というサイトをやっていたことがあり、その楽しさが蘇って参りました‥‥。(その時も着物が多くて楽しかったです!) こんなのでした。ちなみにタワシコロッケは粘土で手作り。男性の人形は黒髪にするために全部植毛しました<阿呆すぎる。この時はのめりこみすぎて、常に1/6の小物を探していましたね‥‥(遠い目)。 このコラムを読んでくれた友達から『りかさん』(梨木香歩著)という本を教えてもらいました。それは、持ち主とお話ができる人形で‥‥。というお話で、染色や、人形の衣装、着物の話も織り交ぜられて、とても興味深かったです。 様々な人形の物語が出てきますが、事情があって冠をかぶせてもらえず露頂(ろちょう)となり所在なさげにしていた男雛が、冠を頂いた瞬間からモテモテになるというエピソードも。平安貴族の男性が冠を被っていないのはパンツをはいていないのと同じくらい恥ずかしかったそうですから、冠を被ることができてほっとしたことでしょう。よかったね!男雛! 深い深い人形の世界。これで打ち止めにして、また来週からは人間の着物のお話に戻ります。3週に渡っておつきあいいただき、ありがとうございました!

昭和な「さくら人形」を作ってみるその2。「春雨」の巻

星わにこ
2021/05/05 00:00
さて、GWもすっかりおこもり体制で人形を作っているわにこです。東京高等人形学院の通信教育を受けているつもりの第二弾。ファーストステップの「おとずれ」に続いて今度は「春雨」と名前のついてるお人形さんです。 さっきまでシトシトと降っていた春の雨も、いつしか小振りになり、どこからか三味の音が聞こえてくるような粋な花街の昼下がり……。お稽古ごとの帰り道でしょうか? うら若い一人の芸者が心持ち蛇の目傘を傾けて歩いてまいります。そんな情景を思い浮かべて製作してください(!)と書いてございます。 そう、今回は芸者さん。黒のお引きを桃色の腰紐でからげて、雨下駄で歩いている様子。 今回は、顔にも染みが出ておらず(おそらく、最初のお人形は取り出して眺めて仕舞ったりしたけど、次はもビニールの封をあけもしなかったのではと推測)キレイな状態。髪も結ってあり着物も縫ってあるので、あとはあなたが組み立てるだけ。とあったので、まあ腰紐縫うくらいなら楽勝じゃね、と軽い気持ちで教本を開いたら、いきなり下駄に鼻緒を縫ってすげろと書いてある‥‥。 さてこのお人形、だいたい出来上がりが45センチ前後。いわゆる1/6ドール(実際の1/6で作られる)と呼ばれるバービーやジェニーちゃんは25~27センチですから、その大きさたるや。かなりな迫力です。小物もそれに付随して大きめ‥‥とはいえ、下駄の鼻緒‥‥細かい作業が老眼につらい(;;)。しかもすげろと書いてあり、ちっさい穴に鼻緒を通すのが難しいのなんのって。きいい!!きいいい!! もう「ちょっと慣れたし、ちゃちゃっと組み立てるだけ」とか思っていた私の心はいきなり打ちのめされました。 人形作家への道は険しい‥‥。 細雪の四女気分になり、「人形への情熱は誰にも負けしまへん」とか適当につぶやきながら、なんとかこの難関を乗り切りました。 さてそこから先はボディの組み立て。一度やっているから楽勝か!?と思いきや、今度はプラスチック製の手を、傘が持てるように指を曲げてお湯で茹でて成形しろと書いてある。んがー。 でもまあ、これは人形の髪にパーマをかけるのにお湯で煮たりしたことがあったので、そういうこともあるか、という気持ちでとりかかる。が、手を握った状態にして固定するのに木綿の布でくるんで縫えと書いてある。んんん‥‥ラップでくるんで輪ゴムで止めればいいじゃん! と思った私は早速実行に移してみると‥‥ がびょーん! ゴムが強すぎたのか、手首にゴムの後がついてしまった!! お人形の完成図を見ると、けっこう手首もあらわになっているので、こりゃいかん!!と真っ青に。3体目にとりかかる予定の人形も同じく握った手にするのであるが、ほとんど隠れて見えない仕上がりのようなので、ごめんねして手をとりかえてもらい、真面目に木綿でくるんでお湯成形をしなおしました。マニュアル通りにしなくてごめんなさい‥‥。 今回はちょっとポーズもひねり気味で、傘を持つので手の曲げ具合もなかなか難しいところ。でもなんとかポーズをつけ、綿で補整をし、いよいよ着せつけに入ります。 今回は芸者さんということで、「なまめかしい色気と芸の道を追求する厳しい女の情熱をじょうずにミックスさせて」(原文ママ)という課題。お、おう。 髪型はつぶし島田。お嬢様とは違い、ちょっとゆったりめに首から離して衿をあわせ、赤い下衿がちらりと片方だけ見えるようにします。色気です。色気。でもちょっと上手く衣紋が抜ききれなかったかなあと反省。本当にこのあたりは、実際の着付でもそうなのですがミリ単位で印象が変わるもの。ましてや人形、本当にちょーっとのことで変わってしまいます。うーむ奥が深い。 帯はだらり。虫ピンでざくざく止めていくだけでした。帯締めはないので縫わなくてもいいのですが、今回は裾をからげるための腰紐を縫いました。もうね、鼻緒に比べたらどうってことないですね。あのいきなりの試練は、上達するために必要なことだったんだなと思えてきました。 そして、お引きの裾を持ち上げて、腰紐で結んで止めます。傘はよくできていて、好きなところまで開いて、手に持たせます。できた!!!! 苦戦した下駄ですが、黒塗りの台に映ってとてもキレイです。裾の中が映って見えないかちょっとどきどきしてしまいました。ううーむ、どうでしょうか、「粋できりっとしていてなまめかしく」できたでしょうか。 実は実家に似たような人形があり、子どもの頃どきどきして眺めたものでした。それがお人形のお色気というものだったのでしょうか。母はそれを結婚祝いにもらったと言ってましたが(何故)、昭和な時代は博多人形やこういう日本人形がどのお宅にも飾ってありましたよね。今のようにネットですぐにいろいろな情報が手に入れられる時代ではなく、ひな人形や五月人形と同じようにこういう美しいお人形を飾ることに、昭和な人々の夢や憧れや祈りが込められていたのかなあとも思います。 さてお人形が完成したら、写真を撮って送ると「担当講師がていねいな批評を差し上げます」と書いてありました。教本の文章もなかなか大げさだったり詩も載っていたり、夢と妄想が暴走しがちな人形愛好者(ワシのことか)の傾向がよく出ています。半世紀の時を超えて、やはり人形を愛して止まなかったであろう講師の先生の批評を伺ってみたいところです‥‥。 さて、いよいよ次週、この初心者コース(若衆)の最後のお人形「八重垣姫」にとりかかります。詰むや、詰まざるや!(そういうお話ではない

50年前の「さくら人形」を作ってみる。「おとずれ」の巻

星わにこ
2021/04/28 00:00
三度目の緊急事態宣言まっただなかの東京。もはや緊急慣れしてしまっているのか、人の動きは変わらないような気もしないでもない中。大腸ポリープの内視鏡手術をうけたのもあり、しっかりステイホーム予定のわにこです。 ゆっくり家にいる時間があるときにしか出来ないこと‥‥と以前、キモトモからご実家から出て来たという日本人形の制作キットを託されていたものを出してきました。「さくら人形」というものだそうです。 ご両親が新婚時代、見知らぬ土地に転勤となり、お母様がなにかやってみようと思って揃えられたのではないかと言っていましたが、東京高等人形学院というところの通信教育で人形を制作することで、資格も得られて人形作家になれるというもの。初心者の「若衆」コースは3体セットで、それが完成すると高等科・師範科へとすすむことができ、やがて雅号をもらって人形作家として活躍できる!!と書いてありました。 昭和41年当時、1体約2,000円と当時男子の初任給が17,550円(昭和国政総覧 下)とのことですから、結構よいお値段。でも結局すぐに子どもを授かりそれどころではなくなってしまったのでしょう。以来50年以上そのままになっていたというわけです。 「さくら人形」とは日本古来の人形技法にフランス人形の技法を取り入れたものだそう。顔はジョーゼットを貼った上に描かれていて、うちの実家にもあった、こういうの。きっと昭和な時代を知っている方は「どこかでみたことあるー」となる和服のポーズ人形です。よくガラスケースとかに入れられてました。うちにあったのは芸者さんのお人形でした。そして結構大きい。 まずは入門編「おとずれ」という名の人形からトライすることに。このお人形は江戸時代の武家娘であり、高島田を結ってひそかに待ち続けた恋しい人からの文にふと物思いにふける乙女心を、あなたのフレッシュなセンスやアイディアを活かしてじゅうぶんに表現して、と書いてあります。お、おう。 もう頭や体(木屑をつめてあって針金でポーズがつけられる)は出来上がったものがあり、それを組み合わせて着物をきせるというものです。文箱やかんざしなども入っていて、人形者属性がある私としてはかなりかなりかなり盛り上がります! さてここで問題が。なにしろ古いものなので、お人形と足袋と白いジョーゼットに茶色い置き染みが。はい、怖くありません。ジェニーやバービー人形のカスタマイズは顔のペイントはもとよりパーマどころか植毛までしていたことのある私です。躊躇なく漂白です! 薄めた台所用の漂白剤で、キレイになりました!(水洗いは十分に行います。個人責任でw) 最初のこのキットでは縫って作るものは帯締めだけ(帯止め、と書いてありました)。布に脱脂綿をくるんでくけて作ります。久々にくけ台を取り出しました。帯は作り帯形式でパーツにわかれているので、形を作って糸で止めます。 ここで漂白した足袋や顔が乾いたのでボディにとりかかりました。ボディに足袋をはかせて綿を入れて足を作り、腕や顔を取り付けます。頭をとりつける穴ははさみであけろと書いてあり、かなり迫力のある絵柄でした。 台にとりつけてポーズをつけて、着物を着せる前に綿で補整をしていきます。これはもう、補整や着付の知識がなくてはちょっと難しいのでは?という内容。でも、髪型や衣装などについても勉強になり、とても楽しい作業でした。 着物は、上下にわかれていて、それを虫ピンでボディに止め付けて行くスタイル。けだし(裾除け)も本当に見える部分の布しかなく、上手くできてます。裾引きは、ちょっとコツがわからないと図だけでは難しいかも。 補整も着付も、もはや人形作りというよりは花嫁着付を思い出して没頭してしまいました。お人形作りを通じて、和裁や着物への知識も深まりそうです。 そして、で、できた~~~!! 武家のお嬢様人形「おとづれ」(通称おとちゃん)の完成です!! そして、で、でかい~~~!! すごい迫力です。猫も興味津々。 ここまで、わりとさくさくっとできまして。調子にのった私は、次の「春雨」というお人形に着手するのでした。来週につづく(つづくんかい!)

2021のトレンドカラーを着物コーデに取り入れようの巻

星わにこ
2021/04/21 00:00
まだ4月なのに、真夏日!? 早速普段着用に単衣の着物をひっぱり出してきたわにこです。真夏日といえども、朝晩は涼しいし、日陰に入ればまた体感温度も下がるので、まだまだ洋服は手放しで半袖!とはなれませんよね。そんなとき、着物は羽織かショール1枚持っていればまあまあ困ることはありません。 とはいえ、また不要不急の外出が制限されそうなので、なかなか着物でおでかけもハードルが高くなってきましたが、季節のおしゃれを考えるだけでも楽しいものです。 JAFCA(日本流行色協会)によると、今年の流行色は「Zero White」。白いスカートや白いトップスを取り入れている方も多いのではないでしょうか。そういえば、今年の卒業式の袴では白を結構おみかけしました。 ゼロホワイトは、まあいわゆる「白」なのですが、ゼロというネーミングの意味は「はじまり」であり、清廉潔白、知性などを象徴するものだそう。コロナ禍の中、新しい生活様式での生活が始まり、真実を見抜く知性や政治の清廉潔白さが求められる世の中に。そんな年を象徴する色となります。 また、白は清潔な色。消毒や除菌など、今、より強く求められるものかもしれません。 JAFCAではこれに組み合わせて使う色として「フレッシュブルー」「インサイトグレー」を、アクセントにする色として「デイライトピンク」「バイタルイエロー」を挙げています。白だけでは‥‥というときコーディネートに取り入れるとぐっと今っぽくなります。 また、色見本帳で有名なPANTONEでは「アルティメットグレイ」と「イルミネーティング」。薄いグレーと黄色を2021年流行色として発表しています。 このあたりの色を組み合わせると、洋服だけでなく着物にも今年っぽい雰囲気が取り入れられそうです。 どちらにしても、どーんと濃い色、派手な色というよりは優しく気持ちに寄り添うようなトーンのほうが、今のトレンドということでしょうか。 やさしげな色使いの着物や帯にちょっと元気になるアクセントカラーを帯締めや帯揚げ、帯留めなどで取り入れてみてはいかがでしょうか。 私も手持ちの着物と帯で組み合わせてみました。優しい感じを目指しつつ、帯揚げはスカーフでちょっと洋服テイストを意識。ここにデイライトピンクの小物があったりするとピリっと決まりそうですね。 ミヤコレのモレッティガラス帯留(グラデーション):ピンクルビーなんかどうでしょう~。元気がでそう!! 意外と色イメージにピッタリなものを探そうとするとないものですね。あと、手持ちのものは好きな色に偏っていることが多いので、そういうものも見直すチャンスになるかもしれません。 お天気がいい日が続きます。虫干しかねてこんなコーディネート遊びはいかがでしょうか。そして早く普通におでかけできる日がきますように‥‥。

30年前に作ってもらった3枚の色無地の話。の巻

星わにこ
2021/04/14 00:00
4月から新生活が始まった方も多いのではないでしょうか。我が家は子どもが高校に入学して、日々いろんな経験をしているようです。中学まではなんだかんだと今日はなに、帰りは何時と気にしていましたが、高校生ともなると一気に手が離れる感じがします。義務教育は終わったんだなあと、実感します。 その卒入式ですが、今年は感染症防止対策で短めの開催ながら保護者も出席して見守ることができました。小学校ではぼっち、中学校では2人だった保護者の着物姿。高校ではどうか!と思いましたら2人でした。さ、寂しい‥‥。でも卒業式も着るもんね(スーツを持っていないとも言う)。 卒園式と小学校の卒業式は雨だったので洗える着物にしましたが、小・中学校入学式と卒業式は同じ白緑の色無地と黒羽織を帯を変えて着ました。でも、あまりにワンパターンでちょっと自分が飽きて来て、高校の入学式には、お宮参りと七五三の参拝のときに着た紅掛空色の一越ちりめんの色無地をひっぱりだしてきました。 30年前。社会人になりお茶を習い始めたと母に言ったところ、だったら、と嫁入り着物の前払い(?)のように色無地を3枚仕立ててくれました。その時はもう離れて暮らしていたので、電話でどんな色がいいかと言われて、臙脂色と銀鼠とあとはおまかせ、と頼んだら、臙脂は濃い色は玄人っぽいのでやめたらと京染め屋さんに言われたそうで、却下。自分としてはスクールカラーなので、と思ったのですが、残念。玄人っぽいってなんじゃと思いましたが、昭和な感覚では仕事着っぽいというところでしょうか? 当時、憧れていたイラストレーターの大橋歩さんの「どきどき着物」という本に、成人式で着た振袖の色を抜いて、銀鼠の色無地に仕立て直して、洋服感覚でいろんなシーンに着ていける万能選手に生まれ変わったという素敵な話が載っていて、銀鼠だけはお願いします、と食い下がったのですが‥‥。 仕立て上がってきた着物と対面したら、白緑(薄い竹色)、梔子(くちなし:黄色)、紅掛空色(薄い水紫色)で、え、え、私の銀鼠ドコ!?となりましたが、どうも私には紅掛空色に見えるものが銀鼠、と言われたらしいです。まあ、素敵な色だし、喪にも使えそうな万能選手ですが、でも銀鼠じゃないー! となった想い出のある着物です。 しかも、日向紋という白抜きの一番格の高い一つ紋が入っているので、どうにもこうにもカジュアルダウンには無理そうなものです。 白緑の色無地は、ケシ縫いの一つ紋で少し大きめの蔦の地紋入りでちょっと華やかな印象があります。 でも紅掛空色のほうは、地紋もなく日向紋が入っており、ザ・礼装という感じ。若い頃はそのプレーンな感じと色が気に入って着ていましたが、一度地紋のある白緑の華やかさを経験してしまうと、そちらばかりを着るようになってしまいました。 でも今回、さすがにちょっとワンパターンすぎるな、と久々に紅掛空色をとりだしました。自分の記憶の中ではつるんとしていてなんとなく物足りないと感じていたのですが、 袖を通してみると、とっしりとした重みもあり、纏うと気持ちも引き締まって「おお~これが礼装パワーか!」と感じ入りました。絹のパワーってすごい。 入学式の頃には、桜ではなくすでに新緑がまぶしく、これからの子どもたちの新しい学校生活が楽しく輝くものになりますようにと祈りました。 色無地にはつづれの帯と、母から受け継いだいつもの一つ紋の黒羽織をあわせました。 黒羽織のお話はこちら:母の黒羽織をリメイクしてみましたの巻 いち利の女将さんとの対談でもお話しています:ほしわにこさん&女将の着物談義 母の黒羽織と義母の羽織紐は、子どもの卒業入学のお祝いのときには一緒に見届けてほしい気持ちで、着ていくようにしています。 あとはお祝いの気持ちで、昨年国立博物館の「きものKIMONO」展の帰りに清水の舞台からダイブしてしまった道明の奈良組を初おろししました。新しいものがなにかあると、特別感がありますよね! あ、買い物の言い訳じゃないですよ、はい(怪しいw)。きっと、この帯締めを使うたびに「子どもの入学式で使った」という晴れやかな想い出が、蘇ることでしょう。 カジュアルダウンもできるという色無地ですが、やっぱりこういうちょっと控えた式服、略礼装に一番しっくりくるものなんだなと改めて思いました。自分のために好きなものを着る、ということと、人のために装う、ということは違うし、それぞれ意味があることなのですね。 それにしても多少体型や年齢や流行が変わっても、着続けられるのが着物のすごいところ。30年前のスーツではこうはいきません。(あとは着られないほど太らないようにしないと‥‥モゴモゴ) ちなみに、もう一枚の色無地、梔子(日向紋)はちょっと色が濃い目で、地紋が四君子や立涌など吉祥文様の雲取で一番ゴージャスな感じです。一度黒い袋帯をしたら、お寿司の卵焼きのような色合わせになってしまい(笑)以来なんとなく手がのびていません。でもこれもまた、5年、10年と時間が過ぎていつか気に入って着こなせる日がくるかもしれません。虫干しで、取り出しては仕舞い。また思いついては取り出して、仕舞い。母を想い、来し方行く末を想い。それが、着物なのかなあとこのごろ思います。 そして、これはいつ着た、あのときも、このときも、とアルバムのように想い出を刻むもの。30年前に母が作ってくれた色無地たちと、残りの人生も過ごしていくのでしょう。感謝とともに‥‥。