いよいよ梅雨入り。梅雨寒になったりカラッと晴れたり、忙しい天気ですね。紫陽花も例年より早く咲いたようで、あちこちで目を楽しませてくれます。
先日、装束勉強会でご一緒させていただいている漫画家の鈴木淳子さんが「平安王朝絵巻ぬりえbook」を出版され、その出版パーティにお邪魔しました。
昨今大人の塗り絵が大ブームということで、書店にいくと細密な塗り絵がたくさんありますね。洋風のものが多い中、この塗り絵本は、和でしかも平安王朝ということで、想像力がかきたてられる内容になっています。源氏物語や伊勢物語などの有名な物語のワンシーンや季節の行事などが、有職故実に基づいた確かな監修のもとに、見事に描き出されていて圧巻。塗り絵の画材の選び方や塗り方ワンポイントなどのページもあって読み応えもあります。絵巻ということで、絵が横長なのも素敵なのです~。有職文様なども細かく書き込んであって、ぬりぬりしていると時間を忘れて集中できます。
当日は主役・じゅんじゅんこと鈴木さんの着物コーディネートと着付をさせていただいたのですが、お母様から譲られたという紫陽花のように見える単衣の着物に、十二単の五つ衣をイメージして五色の伊達衿を重ねて華やかさを出してみました。また、帯も半幅帯を2本かさねて、華やかに。色あわせがキモのコーデです。
五つ衣の色あわせは女房装束の「かさね色目」と言って、胸元、袖口、裾にこぼれる、五色の衣の色をどうあわせるかで素敵な名前がついています。特に四月以降の薄衣にあわせるかさね色目は「卯の花」「菖蒲」「撫子」「女郎花」「藤」「躑躅」など、美しい花の名前がついていて、それぞれの花を連想させる美しい色あわせになっているのです。
このかさねの色目から連想して正式なかさね色目にはないものですが、6月なので「紫陽花」をイメージし、手持ちの伊達衿を合わせてコーディネートしてみました。
色の順番に決まりがあるというと、守らなくちゃとか、間違えないようにしなくちゃと身構えてしまいますが、平安の女性たちも、きっと綺麗だなあと思う色を合わせていたと思うのです。どんどん華美になって重ねる衣の枚数が増えすぎて、禁止令が出されたという記録もあるほど。さぞかし自由な取り合わせで美しさを競ったのでしょうね。
ぬりえも、お手本のかさねの色目もよいけれど、自分の好きな色に重ねて塗ってみてはいかがでしょうか。小学生に塗らせたら、冠が紫になったり、袍が黄緑になったり、それはそれは自由でした。髪の色だって、自分が好きならば赤でも黄色でもいいではありませんか。
五色の重ね衿を使うときは振袖でのコーデばかりでしたが、今回初めてこの重ね衿を小紋で使ってみました。オーバーになりすぎるかな?と思いましたが、着物ってすごい。受け止めますね。小紋でもどーんと華やかになります!! パーティなどここぞというお洒落にはおすすめ! 鈴木さんの美しさにあいまって、本当に紫陽花の花が咲いているようで、うっとりでした。色無地などの襟元で楽しんでもよいかもしれませんね。
まさにぬりえ感覚。色で遊ぶ可能性、無限大。きまりにとらわれすぎないで、手持ちの着物や帯、伊達衿などの小物をあわせたり、かさねたり。平安の女房装束の色の世界にうっとりしながら、着物でももっともっと遊んでみたいなあと思ったのでした。
「平安王朝絵巻ぬりえbook」鈴木淳子 監修:八條忠基 ディスカヴァー・トゥエンティワン