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70年代少女漫画の中の着物は生きているの巻

星わにこ
2023/06/28 00:00
老眼が進んでいる昨今、昔買い揃えた単行本や文庫本サイズの漫画を読むのが辛くなってあまり読んでいなかったのですが、iPadで読むとわかんないとこも拡大できるし非常に快適だということを知り、また最近漫画を読むのにハマっています。 いろんな漫画アプリがありますが、最近本当にラインナップが充実してきていて、過去の名作が無料で読めることも多くなってきました。超名作みたいなものは、一気読みとかできたりしていましたが、人気はあって漫画雑誌では読んでたけど単行本までは揃えなかったな~みたいなものもかなり幅広く読めるようになってきました。 今、ハマっているのがLINEマンガで読めるプリンセス連載だった『悪魔の花嫁』(あしべゆうほ作1975年~)。今なら無料で結構な話数が読めます。連載当時は小学生だったし、よくわからない部分も多くて怖いな~、でもこんなかっこいい悪魔ならちょっといいかも()とか思っていた記憶が。80年代に流行った少女漫画のイメージLP(ボイスドラマつき)もリリースされており、男性主人公が大好きな声優の塩沢兼人さんが担当していたので当時友達に借りました(買えよ)。 今回改めて調べてみたら、つい最近まで最終章という形で連載されていてまだ完結してないと知りました。『ガラスの仮面』や『王家の紋章』とともに、永遠の宿題みたいな漫画ですね。まあ、基本本当にあった怖い話みたいな一話完結ものなので、最後どうなるの!ってものでもない気はしますが。 改めて読み返してみると、あったあったこの話、みたいな記憶が蘇ったり。悪魔デイモスが砂漠に迷い込む話で、人の足に傷をつけて卵を埋め込むと体内で育って目から成長して出てくるみたいなのとか、やたらなんでも地下室に閉じ込められるとか沼に沈むとか小学生のころマジで怯えたトラウマ案件てんこもり。はい、恐怖漫画ですから。 お話は主人公の美奈子がビーナスの生まれ変わりで、ヴィーナスを愛していたデイモスが美奈子につきまとうという話なのですが、デイモスのくせに「美奈子(びーなす)、名前も同じだ」とキラキラネームもびっくりな読み方をかましてきたり、一人で旅行にいったりいろんなこと(勝手な行動ともいう)をして事件に巻き込まれる大人っぽい美奈子は金髪なのにまだ中学2年生だったり、当時気づかなかった(笑)次々と驚愕の真実が明らかに。今読むと「デイモスよ、ヴィーナスのこと責任取れよ」と思う。いやほんと。 さらにおもしろいのは、毎回起こる事件も意外と令和では「いやいやそうはならんやろ」という熱い昭和パッションに溢れていてつっこみどころ満載。そこで、みんなのコメントを見ると同じようなツッコミをしていたり「この話、覚えてる~~!」というおそらく同年代であろう女子たちで溢れていて、同級生と一緒に楽しみながら読んでいる感覚にひたれること。 一時期を風靡したマンガならではの楽しみ方なのかもしれません。 読んでいて「おおっ」と思ったのは、デイモスとビーナスの話の割には日本が舞台なので着物がちょこちょこ出てくるんですね。昔のエピソードだけじゃなく、お正月や観劇や、家での着物姿など、その時代の着物が生き生きと描かれています。(デイモスは基本半裸) 最近の漫画に着物が出てくると「いや構造上そうはならんやろ」という作画があったりしてつい心の着物警察が出動してしまうのですが、さすが1970年代、まだまだ日本に着物が日常にあった時代だけあってどの角度からの作画もパーフェクトで惚れ惚れします。 70年代の少女漫画というと外国ものが多いけど、『はいからさんが通る』などは言うに及ばず、70年代日本が舞台の『エースをねらえ!』なんかも宗方コーチが家では着流しだったりして、着物アイで見てもかなり楽しめるんですよね。ドジさまこと木原敏江先生の漫画も、本当に素晴らしく描かれています。少女漫画だけじゃなく、少年漫画の中の着物もやっぱり描写に破綻がない。描く人が構造を知っているということが、資料を見て想像で描くというのとはまったく別次元だということがよくわかります。今ももちろんきちんと描かれている漫画もありますが、70年代の漫画を見るとまさに着物が生活の中で生きていた時代だなあと思わされます。まあそんな楽しみ方もありということで。 タイムスリップ気分で読む70年代の少女漫画、70年代少女だった人にはもちろん、着物好きの方にもおすすめです! というお話でした。

百聞は一見に如かず。黄櫨染御袍と三浦屋揚巻衣装の巻

星わにこ
2023/06/21 00:00
もともと大変出不精ここで(デブ性と変換されてショックをうけたのは内緒です)、できることならずっと家にこもっていたい生粋のインドア派妄想系に加えて、コロナ禍もあり仕事以外で積極的に外出するというアクションを忘れかけていた私。 先日友達から「日本橋高島屋でお装束が見られるよ! 見ておいた方がいいんじゃない?」と教えてもらって久しぶりに自分の趣味のために外出をしてきました。 「御即位5年・御成婚30年記念特別展 新しい時代とともに――天皇皇后両陛下の歩み」と題された展示は、5月17日から6月6日まで。気がついたらもう最終日になっていて、あわてて日本橋へGO! 両陛下ゆかりの約100点のお品の中には、何度も何度も映像などで見たご成婚パレードの雅子様のローブデコルテとボレロや、ご婚約会見の淡いイエローのワンピースもあり、歴史を間近で拝見できて超感動でした。 そして!! 即位の際の御束帯と御五衣、御唐衣、御裳も展示されていました。天皇陛下しか身につけることができない絶対禁色といわれる黄櫨染色で、これまた天皇の袍にのみ織り現されるという桐竹鳳凰の地紋。 黄櫨染は黄櫨(はじ)の樹皮と蘇芳(すおう)の心材の煎汁に灰汁や酢を混ぜて染めたもので、赤みと黄みとが感じられる茶色。太陽の光の象徴とされる色で、禁色だけにあまり目にする機会はありません。 しかもそれが実際の御袍となると、さらにです。正直をいいますと、そんなに綺麗な色でもないし(不敬)、なんでこの色が絶対禁色なのかとずっと思っていましたが、実際目にした御袍は、深く重厚な色で、威厳があり、「ああ、これはゴールドなんだ!」と腑に落ちました。しかも、キラキラした金ピカ、というのではなく、渋みのあるどっしりとした金の色。なるほどなあ~!と感じ入った次第です。 そしてまた6月中旬は、セイコーハウス銀座ホールで坂東玉三郎さんの衣裳展「四季・自然・生命~時の移ろいと自然美~」が開催されていました。またまた気付くのが遅れて、最終日直前に駆け込みで拝見。 これまた非常に近い距離で芸術品のような歌舞伎の衣装を見ることができました。10点の展示と聞いた時、さっと見られるかなと思っていたらとんでもなくて、それぞれの衣装の素晴らしさに釘付け&玉三郎さん本人による解説映像が上映されており、めちゃめちゃ濃い展示でした。 私自身は歌舞伎にそんなに詳しいわけではなく、誘われたら見に行くという程度なのですが、そんな私でも見たことがある「助六曲輪初桜」「廓文章」「隅田川」などの超メジャー演目のあの!衣装が!ガラスなどの仕切りもなく、超近くで、しかも写真撮影オッケーという大盤振る舞いで見ることができて大興奮。 もうどうかしているような豪華な唐織や、舞い散る桜や篝火が揺らめいて見える紗掛、盛り盛りの手刺繍、金泥の手書きの牡丹など、もうすごいの一言。 特に三浦屋揚巻の正月衣装は、背中に金糸の注連飾り(しめかざり)と橙(だいだい)と伊勢海老(!)が乗った鏡餅があしらわれているもので、解説でも玉三郎さんが、歌舞伎ならではのとおっしゃっていましたが、ド級のぶっ飛び具合でした。 一度イラストに描いたことがあり、一体この伊勢海老の下はどうなっているんだろう?と不思議だったのですが、20年来くらいの疑問が解けました。まさかの鏡餅(かなり立体)でした。 梅雨時にもかかわらず、着物姿のご婦人がいっぱいで、それも眼福‥‥。こういう情報は、読んだら観にいけるタイミングで書けよという話なんですが、事後報告で本当にすみません。。。 いつも映像や本やネットから得た知識を、自分の頭の中だけで妄想しまくってふくらませまくって楽しんで満足していた私ですが、黄櫨染御袍と三浦屋揚巻の打掛を実際に直近で見ることができ、実物の持つパワーに打ちのめされました。 百聞は一見に如かずとはまさにこのことなのね‥‥と。 これからは、チャンスがあったらやっぱり足を運んで実際に体験してみよう!と改めて思った。そんな体験でした。

たすき掛けのやり方★初級編&上級編の巻

星わにこ
2023/06/14 00:00
先日、友人たちと作っている「フォントかるた」を紹介する動画を撮影しました。 フォントかるたってなんぞや?というお話はこちらでご紹介しております。 6年前に誕生した「フォントかるた」ですが、去年その欧文版も発売されました。アルファベットの見分けも、かなりマニアックです。動画出演者のみなさんには「やっぱりかるたは袴でしょ!」というわけで、袴姿になっていただきました。そして動きやすいようにたすき掛けに。 たすき掛けに必要な長さは、2メートル~2メートル20センチくらいあれば女子ならだいたいOK。腰紐の長さと同じくらいです。腰紐が長尺の方はさらに20センチくらいプラスして。 普段たすき掛けをするときは、そこらにある腰紐を使うことが多いのですが、さすがに撮影ということで腰紐はどうよ、というのと、おそろいの方が可愛いよね!ということで読み手と取る人の合計6人分を作ることに。撮影の前日に欧文版のかるたのイメージのロイヤルブルーのサテン地にひたすらミシンをかけて作った私です‥‥(なんでもギリギリか)。 がんばった甲斐あって、可愛い袴女子たちの動画が撮影できました。じゃん! さてさてたすき掛けのやり方は、主に2つ。最初から輪っかに結んでおいて袖をひっかける方法と、時代劇とかでよく見る口に紐の端を加えて、肩にしゅしゅっとかけていく方法があります。 簡単なのは輪っか方式。紐の端を結んで真ん中でねじったたすきを、両腕に通したら、首をくぐらせてクロス部分を背中にやり、あとは腕にかけたたすきを肩にかけるだけ。とにかくさっとできます。 簡単でぱぱっとできますが、たすきがヨレやすく、袖をひっかけてからもたすきが緩かったら結び直したりもするのが難。 上級者編は、肩にかけていくやり方。紐の端を口に咥えるとかっこいいのですが、汚れたらやだなって場合は帯締めにひっかけたりクリップでとめたりしてもOK。 それを、左脇下を通して右肩にかけ、右脇下を通して左肩にかけて、たすきの端同士をきゅっ!と結びます。 ちょっと五十肩とかだと痛いかも(笑)。でもしゅっ、しゅっと背中で紐をクロスさせていく姿はちょっと「できる」感があって快感です。動きが大きいので、男性っぽいイメージがあるかも。 たすきをすると、袖が邪魔にならないので、水仕事のときなど便利ですよね。 もしまだたすき掛けをマスターしてない方がいたら、チャレンジしてみてください! <ちょっと宣伝> 6月17日(土)渋谷のヒカリエにて開催されるTYPE &という書体のイベントに「フォントかるた制作チーム」の一員として参加します。出演者がたすき掛けの動画も披露予定です(笑)。もし興味がある方がいらしたらよろしくお願いいたします!

思い立ったら!和服で家族写真のススメの巻

星わにこ
2023/06/07 00:00
私が普段なにをやっているかといいますと、こうやってコラムやイラストなどを書くお仕事のほかに、着付けや着付けレッスンのお仕事などもしています。カメラマンの友人と二人で小さな写真スタジオの運営をしているのですが、主に着物での撮影を得意にしています。カメラマンの渡部瑞穂さんは、月刊アレコレというきもの雑誌で毎月着物関係のグラビアなどの撮影を手掛けていて、自分も日舞や三味線を嗜む大の着物好き。大学の同級生で、卒業後10年ほどしてお互いに着物にはまっていることで意気投合。以来、着物で出かけて撮影したりしているうちに、好きが高じてスタジオ運営をすることに。 とにかく着物が好きな二人なので、「和服で家族写真」をおすすめしています。家族写真にこだわるわけは、「家族写真はいつかそのうちとか、いつでも撮れるわけじゃない」ということを二人とも知っているから。 私は両親も夫も亡くしてしまったし、渡部さんもご家族の病気などもあって「ああ、みんなが元気なうちに撮っておけばよかったなあ」と叶わない気持ちを知っているのです。だから、なにかあったら記念写真撮っておくといい!といつもお勧めしています。 七五三や卒入学式、成人式や結婚、記念日などなど。人生の節目節目のお祝いは、意外と数えるほどです。 特に子どもが小さい頃は言うことを聞いてくれるけど、大きくなって高校生、大学生ともなってくると予定を合わせるだけでも一苦労。そんなの、いらないと言われることもあるし、面倒がられてしまうことも。そこを説得してみんなの予定を合わせて‥‥となると、もういいか。となる気持ちもわかります。 でも、それでも。誰かがえいや!と頑張らないと、なかなか家族写真なんて撮れないものなんです。先日は、おばあさまの卒寿の記念とお孫さんとの三世代記念写真を撮りにいらしたお客様が。当日お孫さん三人兄弟のうち二人が都合がつかないということで長女さんとお母様、おばあさまで撮影されました。 ところがすぐ後に、やっぱりお孫さん全員とで撮影したいので、ということでもう一度撮影することに。「母も元気なうち、子どもたちも巣立ってしまう前と思うと今しかないと思って」とお母様。お忙しい中を再度スケジュールを組んで、今度は全員集合できました。 着物好きな方で、自分の着物の他にこつこつとお嬢さんに着せる振袖なども買い揃えていらして、スタジオのほうで足りない帯や小物類などを足してお持ちの着物でお支度をさせていただきました。 お子さんは24歳、20歳、17歳。七五三のときに三人で撮った可愛い着物写真をお持ちくださって、それと同じポーズでも撮影。写真を並べてみると末っ子の男の子が今では一番背が高く、子どもの成長を感じられて、「お母さんがんばりましたねーーー!!」と思わず目から汗が出そうに。 最後に少しだけロケ撮影もしたのですが、最初は歩くのがちょっと‥‥とおっしゃっていたおばあさまが、「やっぱり行くわ、今がんばらないでいつがんばるの?」とおっしゃって外へ。振袖のお嬢さん二人が卒寿のおばあちゃまを支えてキラキラの新緑の下を歩く姿にまた感動。本当に、素敵な撮影でした。 私も数少ない(汗)家族写真は、見る度に子どもの成長を感じたり、今は亡き人に感謝したりできる大切な宝物です。例えば記念日から半年、1年とずれていてものちには誤差。もし、あ~家族写真撮ってないな、なんてお祝い事があったら、思い立ったが吉日で撮影してみてはいかがでしょう。未来の自分が「あの時頑張ってえらかったぞ!」ときっと褒めてくれるのではないでしょうか。