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夏風邪と『昭和元禄落語心中』の巻

星わにこ
2023/07/19 00:00
久々にやらかしました。なんだかんだで10年間ほぼ毎週続けて書かせていただいているこのコラムですが、先週は夏風邪を拗らせて1週間近く熱が下がらず無念のお休みをいただいてしまいました。本当にすみません。 微熱でも熱があるとやっぱり動けないもので、基本ごろごろしていたわけですが、頭が痛くて本を読もうにも目が泳ぐし、そうは言っても寝れないし‥‥という中、死んだ目をして動画を見るのが関の山。 そんな中Youtubeで『昭和元禄落語心中』のアニメが全話開放とのことでおすすめにあがってきたので、そういえばやたらと評判がよかったなと軽い気持ちで見始めたら、これがもうどうかしているほどの名作で、全部観てしまいました。終始泣きっぱなしで、熱とあいまって、寝てもうなされる始末。いやそれくらい、持っていかれました。 雲田はるこ先生による原作漫画は2010年~2016年『ITAN』で連載され、2017年には手塚治虫文化賞も受賞。2016年、2017年にアニメの第一期と二期が放映され、2018年にはNHK総合でドラマ化。とにかく面白い、名作と聞こえてはきたものの、ついぞ見る機会がなかったのですが、ここにきて邂逅。 いや~ほんとすごかったです(語彙) もうご存知の皆様には今更とは思いますが、昭和最後の落語の大名人、八代目有楽亭八雲の人生を軸に同じ名を受け継ぐ「八雲」と「助六」の三世代、そしてまた次の世代にわたる物語が紡がれていきます。 一期「与太郎放浪篇」では八雲師匠が語る若かりし日の輝きと悔恨、そして二期「助六再び篇」では八雲師匠の老いと死と真実が明らかに。合わせ鏡のように、取り戻すことはできない過去を映し出します。誰も悪くないのに、拗れていく人生と取り戻そうと足掻く心といっそなにもかもと心中してしまえという気持ち。 歳をとったからでしょうか。もう本当に泣けて泣けて‥‥。誰の気持ちも、痛いほどにわかるような。リアルタイムで知るよりも、今だからこそ、またまとめて観たから余計沁みる部分もあるのかもしれません。 そして、劇中の落語もまた素晴らしい。主人公の年代によって演じ分ける石田彰さんはじめ、声優さんたちの演技がすごすぎた‥‥。まだまだ下手っぴいな前座の落語も、真打になりたての勢いのある落語も、円熟してからの名人の落語も、わかる‥‥!!という説得力。「ひ」を「し」と発音する江戸言葉にもうっとり。素晴らしき声の芸。 『死神』『野ざらし』『芝浜』『居残り佐平次』などなど、物語に絡めて古典落語が生き生きとそれぞれのキャラクターで演じられて、鳥肌が立ちます。 そして、噺家さんが高座でついっと羽織を脱ぐのをはじめ、胸筋ばーん!などなど男子着物の所作や色気が満喫できます!!!もう八雲師匠なんか、おかしいから!じいさんなのに、誰より色っぽいてんですから(落ち着いて)なんだか真夏の夢のよう(まだ熱がある模様) 一期は7月24日まで、二期は8月17日まで公開されている模様です。一期の残りがわずかですが、みたことないわという方ももう一度見ようかなと思う方も、すでにチェック済みの方も、今一度いかがでしょうか。  関連動画:アニメタイムズ公式 昭和元禄落語心中 期間限定本編配信