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昭和な「さくら人形」を作ってみるその2。「春雨」の巻

星わにこ
2021/05/05 00:00
さて、GWもすっかりおこもり体制で人形を作っているわにこです。東京高等人形学院の通信教育を受けているつもりの第二弾。ファーストステップの「おとずれ」に続いて今度は「春雨」と名前のついてるお人形さんです。 さっきまでシトシトと降っていた春の雨も、いつしか小振りになり、どこからか三味の音が聞こえてくるような粋な花街の昼下がり……。お稽古ごとの帰り道でしょうか? うら若い一人の芸者が心持ち蛇の目傘を傾けて歩いてまいります。そんな情景を思い浮かべて製作してください(!)と書いてございます。 そう、今回は芸者さん。黒のお引きを桃色の腰紐でからげて、雨下駄で歩いている様子。 今回は、顔にも染みが出ておらず(おそらく、最初のお人形は取り出して眺めて仕舞ったりしたけど、次はもビニールの封をあけもしなかったのではと推測)キレイな状態。髪も結ってあり着物も縫ってあるので、あとはあなたが組み立てるだけ。とあったので、まあ腰紐縫うくらいなら楽勝じゃね、と軽い気持ちで教本を開いたら、いきなり下駄に鼻緒を縫ってすげろと書いてある‥‥。 さてこのお人形、だいたい出来上がりが45センチ前後。いわゆる1/6ドール(実際の1/6で作られる)と呼ばれるバービーやジェニーちゃんは25~27センチですから、その大きさたるや。かなりな迫力です。小物もそれに付随して大きめ‥‥とはいえ、下駄の鼻緒‥‥細かい作業が老眼につらい(;;)。しかもすげろと書いてあり、ちっさい穴に鼻緒を通すのが難しいのなんのって。きいい!!きいいい!! もう「ちょっと慣れたし、ちゃちゃっと組み立てるだけ」とか思っていた私の心はいきなり打ちのめされました。 人形作家への道は険しい‥‥。 細雪の四女気分になり、「人形への情熱は誰にも負けしまへん」とか適当につぶやきながら、なんとかこの難関を乗り切りました。 さてそこから先はボディの組み立て。一度やっているから楽勝か!?と思いきや、今度はプラスチック製の手を、傘が持てるように指を曲げてお湯で茹でて成形しろと書いてある。んがー。 でもまあ、これは人形の髪にパーマをかけるのにお湯で煮たりしたことがあったので、そういうこともあるか、という気持ちでとりかかる。が、手を握った状態にして固定するのに木綿の布でくるんで縫えと書いてある。んんん‥‥ラップでくるんで輪ゴムで止めればいいじゃん! と思った私は早速実行に移してみると‥‥ がびょーん! ゴムが強すぎたのか、手首にゴムの後がついてしまった!! お人形の完成図を見ると、けっこう手首もあらわになっているので、こりゃいかん!!と真っ青に。3体目にとりかかる予定の人形も同じく握った手にするのであるが、ほとんど隠れて見えない仕上がりのようなので、ごめんねして手をとりかえてもらい、真面目に木綿でくるんでお湯成形をしなおしました。マニュアル通りにしなくてごめんなさい‥‥。 今回はちょっとポーズもひねり気味で、傘を持つので手の曲げ具合もなかなか難しいところ。でもなんとかポーズをつけ、綿で補整をし、いよいよ着せつけに入ります。 今回は芸者さんということで、「なまめかしい色気と芸の道を追求する厳しい女の情熱をじょうずにミックスさせて」(原文ママ)という課題。お、おう。 髪型はつぶし島田。お嬢様とは違い、ちょっとゆったりめに首から離して衿をあわせ、赤い下衿がちらりと片方だけ見えるようにします。色気です。色気。でもちょっと上手く衣紋が抜ききれなかったかなあと反省。本当にこのあたりは、実際の着付でもそうなのですがミリ単位で印象が変わるもの。ましてや人形、本当にちょーっとのことで変わってしまいます。うーむ奥が深い。 帯はだらり。虫ピンでざくざく止めていくだけでした。帯締めはないので縫わなくてもいいのですが、今回は裾をからげるための腰紐を縫いました。もうね、鼻緒に比べたらどうってことないですね。あのいきなりの試練は、上達するために必要なことだったんだなと思えてきました。 そして、お引きの裾を持ち上げて、腰紐で結んで止めます。傘はよくできていて、好きなところまで開いて、手に持たせます。できた!!!! 苦戦した下駄ですが、黒塗りの台に映ってとてもキレイです。裾の中が映って見えないかちょっとどきどきしてしまいました。ううーむ、どうでしょうか、「粋できりっとしていてなまめかしく」できたでしょうか。 実は実家に似たような人形があり、子どもの頃どきどきして眺めたものでした。それがお人形のお色気というものだったのでしょうか。母はそれを結婚祝いにもらったと言ってましたが(何故)、昭和な時代は博多人形やこういう日本人形がどのお宅にも飾ってありましたよね。今のようにネットですぐにいろいろな情報が手に入れられる時代ではなく、ひな人形や五月人形と同じようにこういう美しいお人形を飾ることに、昭和な人々の夢や憧れや祈りが込められていたのかなあとも思います。 さてお人形が完成したら、写真を撮って送ると「担当講師がていねいな批評を差し上げます」と書いてありました。教本の文章もなかなか大げさだったり詩も載っていたり、夢と妄想が暴走しがちな人形愛好者(ワシのことか)の傾向がよく出ています。半世紀の時を超えて、やはり人形を愛して止まなかったであろう講師の先生の批評を伺ってみたいところです‥‥。 さて、いよいよ次週、この初心者コース(若衆)の最後のお人形「八重垣姫」にとりかかります。詰むや、詰まざるや!(そういうお話ではない