寒い中にも、花が綻び始めて春に向かっていることを感じるこのごろ。お子様の卒業式や入学式の着物のご相談を受けることが増えます。
この女将コラムも8年目を迎えますが、2015年の第一回もこの話題でした。それから2017年にも春の式典のお話をしていますね。やはり、何を着たらいいのかなというのが皆様お悩みになられるところなのではないでしょうか。
5年前には、式典着物はこれでなくてはいけないと言うことでなく、訪問着、付下、色無地、江戸小紋、飛び柄の上品な小紋など柔らかもので、子どもの保護者として程よい装いであればというお話をしています。
最近はさらにくだけても違和感を感じなくなってきたように思います。むしろ洋装の中でも浮かないような、おとなしめの小紋やさりげないお召しなどが増えてきたように思いますね。時代の流れを感じます。
それでも、今はカジュアル着物は本当にいろんな着方があって、自由に楽しむ方も多いですが、やはり卒入式は式典ですから、なんでもいいというわけでもありません。
あくまでもお子様が主役で、自分が目立つためのものではなく、少し控えめにお祝いの気持ちを表すために上品でオーソドックスな装いがよいと、おばあちゃん目線で感じております。
また、その時だけでなくお写真も残るでしょうから、10年、20年と経ったときに恥ずかしくないような装いがよいのではないでしょうか。
コーディネートもドレスのように華々しく着たり、パーティのような装いも素敵ですが、それはご自分の楽しみの場で。コンサートやお友達とのお食事とはまた違います。
あくまでも、主役はお子さんということを忘れないことが大切ではないでしょうか。これも母心ならぬババ心でしょうか?
あくまでも脇役、でも式典への敬意は忘れずに、上品な装いができたらいいですね。
同じ春の式典ですが、「卒業式は控えめに」「入学式はきれいめに」といつもお話させていただいております。
卒業式は洋装でもダークな色目の方が多いですし、先生方への感謝も込めて控えめな装いがよいかと思います。地味かな、と思うくらいでちょうどいいのではないでしょうか。
入学式は春らしく、少し明るいお色目でお祝いの気持ちを表しても素敵ですね。
わたし自身が子どもの卒業式に最後に出席したのはずいぶん前のことになりますが、やはり着物でした。
子どもは来なくていいよと言っていた気もしますが(笑)、これで子どもの学生生活も終わり、社会人になるという式を見届けることが、もう親としてできる最後のことかなという自分自身のけじめのような気持ちもありました。
そんな式典に着物で改まって親が出席したという気持ちが、すぐにはわからないかもしれないですけれど、やがて自分も年をとったり子どもをもったりしたときには、伝わるのではないでしょうか。
着物には、そんな力もあるような気がいたします。
でも、着物を着る人は少ないのではないかしら?と心配なさる方もいらっしゃるかもしれません。でも、お子様の区切りの式典に、着物を着たいと思っている方も実は多いのではないでしょうか? ママ友同士で声をかけあってみてもよいかもしれませんね。
行事のときは、着物を着るチャンスでもあります。
普段から着ない方は、少し前から準備をしたり着付けの練習をしたりしておくと、直前にあわてなくてすみます。また、コーディネートを考えたりする時間も、楽しく特別なものです。
振り返ってみると、卒業式も入学式もそんなに何回もあるものでもないのですよね。
あのとき、お母さん着物を着ていたな、といつかお子さんが懐かしく思う日もあるかもしれませんね。
大切な行事のときにはぜひ、着物で出席されてみてはいかがでしょうか。