記録的な暖冬といわれたこの冬でしたが、やはり春の訪れは嬉しいものです。日増しに明るくなる陽光にコートやショールも軽くなり、いよいよ着物シーズンの到来ですね。
このコラムもお陰様で5周年を迎えました。5年前の3月、着物の季節だし入卒式もあるし、何か書けるでしょうと軽い気持ちでスタートしたものがここまで続きましたのも、いつもご愛読くださる皆様あってこそ。この場をお借りして心から御礼申し上げます。
さて、第一回目のコラムでは私自身の入卒式の思い出を交えて着物選びなどを、その後には「春のお悩みズバッと解決!」と題して失敗しない入卒式のコーディネートを小物まわりも含めてご紹介いたしました。
そうしましたら先日、「TPOやご一緒の方に合わせて、失敗しない着物合わせのコツは?」というお便りをいただきました。春秋の気候の良い時期には、何かと行事も多いものです。ふだんは好きな着物を楽しまれている方も、着物選びやコーディネートに迷ってしまう機会が増えるかもしれませんね。今回は、場面やお相手のある着物選びではどんなことに気をつければ良いかを考えてまいりましょう。
オキテその1「迷ったらセミフォーマル」
さて、TPOと一口にいっても皆様がお着物に迷ってしまうのは、入卒式や謝恩会、PTAの会合、ご家族のお集まりやお稽古事の会などといった、礼装でも普段着でもないような機会でしょう。
ドレスコードに悩んだら、ともかくセミフォーマルになさることです。完全なフォーマルでは大仰ですし、かといってくだけすぎていては主催者の方に失礼になったり、そのお席を軽んじているようにも見えかねません。おすすめは紋なしの色無地、江戸小紋、無地感の御召など。特に御召は光沢があって着映えがします。
オキテその2「ご自身の趣味は控えめに」
場所柄を考え、同席の皆様に好感を持たれたい。そんな場面では、ご自身のお好みはいったんおいておかれることをおすすめします。ふだんから着物のお洒落を満喫しておられる方ほど、ちょっと気を遣うお席では何を着たらいいのか悩んでしまったり、無難な着こなしではつまらないと感じてしまうかもしれません。ですが、どなたのお好みにも反することなくその場になじむというのは、悪いことではありません。控えめな装いは、その場の主役を立てることにもつながります。お洒落心は、ご自身が主役になれる場にとっておきましょう。
オキテその3「年代、立場に合った色柄を」
お嫁入りのときの色無地や訪問着。今の自分にはちょっと派手だけれど…と思いながらも、なんとなく続けてお召しになっている方は多いものです。しかしながら、決断のときはいつか必ずやってきます。体型が変わりサイズが合わなくなったタイミングかもしれませんし、保管しているうちに変色やカビで傷んでしまったときかもしれません。
また、お孫さんができておばあちゃまのお立場になられたら、ママより若く華やかな色柄をお召しでは周囲に違和感を感じさせてしまいます。ご自身のお立場に合わせてふさわしい装いを選ぶのも、大人の女性のたしなみというもの。切り替えどきに迷ったら、この先ずっと身体に合わない着物を我慢しているご自分、色柄が似合っていないご自分を想像なさってみて!
オキテその4「判断基準は洋服と同じ」
色柄、サイズ、着物や帯の状態…これでいいかしら?と迷ったときは、いつもなさっているお洋服の考え方に立ち戻ってみてください。学校、ご家族、お稽古事の大事なお集まりのとき、お洋服でも上品でやさしい色柄を選ばれると思いますし、サイズの合わないものもお召しにならないでしょう。着物も同じ。着物だからって特別なことはありません。洋服の「愛されコーデ」と同じように、上品、控えめで清潔感のある装いなら、どなたにも好印象を与えることでしょう。
オキテその5「髪型、メイクまで気配りを」
せっかく素敵な着物をお召しのときは、ヘアスタイルやメイクもいつもより丁寧に、きちんと感を出しましょう。最近はゆるふわのまとめ髪が流行っていますが、お式ごとのとき、目上の方とご一緒のときは、後れ毛などなくきっちりとまとめるほうがいいですね。いち利ではときどき和装に合うヘアメイクレッスンも開催しております。ご自身の髪質やお顔だちに合ったヘアメイクをレッスンできますので、お近くの方はぜひご参加なさってみてください。
オキテその6「着姿を決める着付けの力」
どんな高価な着物や帯でも、着付けが乱れていてはその素晴らしさ、美しさは半減してしまいます。特によそゆきの着物は生地がやわらかく身体のラインが出やすいため、補正も重要です。目上の方やお稽古事で先生や先輩とご一緒のとき、会合などで代表してご挨拶なさるようなときは、特に気を配りたいポイントです。
オキテその7「事前のひと言で好感度アップ!」
先生や先輩、職場の方、ご親戚…どなたとご一緒の場合も、事前に「着物を着ていこうかと思うんですけれど」とひと言お伝えしておくと、当日の雰囲気がぐっと良くなります。急に着物姿で現れると、びっくりされたり嫉妬されたりすることもあるかもしれませんが、少しの気配りで「やっぱり着物っていいわね」とほめられたり、逆に着物を着ていかないと「あら!楽しみにしてたのよ」と残念がっていただけたり、いいことずくめです。これは、同学年ママやお友達など、横のつながりを大事にしたいお付き合いにも言えること。特別なことではありませんが、ご自身が居心地よく過ごすためのコツとして、憶えておかれて損はありませんよ。
まとめてみますと、どなたとご一緒だからこう、着物だからこうという違いはなく、主役の方を立て「上品・控えめ・清潔感」が好感を得る秘訣というのは、着物にも洋服にも共通することですね。思うような色柄の着物や帯がお手元に揃わないときも、こざっぱりと手入れされたバッグやお草履を用意し、髪を整え、きちっと折り目正しく着付けることはできるはず。それだけでも、周囲の方は「ちゃんとした方ね」と思ってくださるものです。
最近は、着物をお召しというだけでも「きちんとしている」と思われる風潮もありますが、そこに大人の女性らしい配慮が加われば、皆様の着物姿はもっと美しく輝くはず。「何を着たらいいか迷うときこそ着物!」そんな風に着物を楽しんでいただけたら素敵ですね。
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