
まだまだ暑い毎日ですが、秋の気配を感じると、ふっと旅に出たくなる気分になりませんか。食べものは美味しいし、山々は紅葉に彩られ、どこへ行こうかと計画を立てるだけでも心が浮き立ちます。そんな季節に、「着物で出かけてみる」というのも、なかなか素敵な楽しみですよ。
よく「着物で旅行するとき、荷物はどうしたらいいですか?」と尋ねられます。
私は出張などで着物を着て行くことも多いのですが、基本は「旅行中は着物なら着物、洋服なら洋服」と決めてしまうのがおすすめ。両方を持って行こうとすると、履き物や肌着も二種類必要になって、大荷物になりがちだからです。
着物は持ち運ぶと重いし、用意する小物もいろいろ。旅先で「あれがない、これがない」ということも起こりがちです。洋服なら、買い足すことも簡単ですが、和装用のものとなるとちょっと探すのも大変です。全部身につけて出掛けてしまえば忘れ物もありませんし、意外と着物での旅もらくちんです。
工夫次第で、荷物はもっと軽くなります。一泊でしたら、リバーシブルの半幅帯を締めていけば、同じ着物でも表情を変えて楽しめますし、長襦袢には半衿を重ねてつけておき、一日使ったら外して翌日は新しい衿にする、なんて方法もあります。小さな工夫で、ぐっと快適になります。
それから私は帯は前結びでするので、新幹線などで長時間座るときは帯を前に回してしまいます。これが思いのほか快適なんです。
あると便利なものは、撥水の風呂敷ですね。物を包むのにも使えますし、ホテルで着替える時に床にちょっと敷いて衣装敷きのように使ったりもできます。
着替える時の裏技として、一番いいのはベッドの上に着物の裾をあげておいて、下に引きずらないというやり方があります。私はそうしていますけれど、慣れない場合はやはり床になにか敷いてあると安心ですよね。そんなときにも風呂敷が1枚あると便利です。
着物はたとう紙のまま持っていかないほうがシワになりません。意外とたとう紙の中では着物が滑って動いてしまうんですよね。携帯用のたとう紙もありますが、私は風呂敷を使います。
風呂敷を大きく広げた後、「帯→きもの→長襦袢→着付け小物」という順で重ねてしっかり包みます。もしそれを二つ折りにするようでしたらお太鼓の柄に折線ができないようお太鼓の柄が外側になるようにおくと良いですよ。そうすると折線もつかず、なかで動くこともないので安心だと思います。
一泊二泊の旅なら、着物と帯、半衿を工夫して組み合わせ、足袋と肌着を持っていけば十分。そう思うと、案外気軽に「着物での旅」が楽しめます。
この秋、気軽に着物で、ちょっと素敵な旅に出かけてみませんか。