
暑中お見舞い申し上げます。暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
銀座いち利では着付け教室を開催しているのですが、三か月1クールごとに修了式が行われます。年に4回あって先日は夏の修了式でした。秋、冬、春とそれぞれの季節の着物姿が素敵なのですが、夏の修了式は格別だなと毎年感動します。
なんというか、夏着物ってとても贅沢だなと感じるんですよね。着物はその季節ならではの特別な魅力があるのですが、特に夏の着物や帯はその短期間しか楽しめない特別感がありますよね。
夏の風物詩の素材や柄を身に纏う。絽や紗、羅など透け感のある素材にほおづき、花火、金魚などの夏しか楽しめない限定の華やかな柄。七夕、蛍、虫籠、トンボなど涼やかな意匠も魅力的です。夏の着物は、日本の夏の美意識が凝縮された芸術品のようですね。
修了パーティでは、浦島太郎の着物をお召しになっていた方がいらっしゃいました。着物の裾には竜宮城のシルエットがあって、釣り竿に玉手箱の絵が描かれ、そこに人の姿はないのですが「浦島太郎のモチーフだな」ということが伝わります。そして着物の地模様が波という、素晴らしく凝ったデザインでした。もう本当に「最高の贅沢」ですよね。こういう細部へのこだわりは、洋服ではなかなか見られない、着物ならではの楽しみ方です。
着物や帯にあしらわれる文様や意匠は、日本人が持つ繊細な想いや願いが込められて、それを身に着けることで日々の暮らしを大切にする精神が息づいています。特に夏物は想像力がさらに膨らんで、まるで目でご馳走をいただいているかのようでしたね。見る側も涼やかな気持ちになり、うっとりとしてしまいます。
夏に着物を着る人が少なくなっている中で、こういう機会に恵まれるとまさに「日本人に生まれてよかった」という気持ちになりますね。
短い期間だからこそ最大限に楽しむ、そんな贅沢な体験が、夏の着物には詰まっています。
夏は暑いから着物は着ないという方も多いですけれど、暑くない工夫をしながら、夏ならではの着物をぜひ楽しんでいただけたらと思います。