
月に一度の女将コラムも気がつくともう10年目に入っておりました。毎月きものの徒然話をさせていただいておりますが、早いものですね。Youtubeもはじめてからあっという間に5年。時の流れに驚きです。
あらためて読み返してみますと、着物の常識もこの10年で随分と変わったような気がいたします。きっとこれからの10年もさらに変わっていくのでしょうね。
以前はドレスコードや格、季節の衣替えなどよく質問されましたし、こういった時にはこういう着物がおすすめです、というようなこともコラムの話題にもしておりましたが、今はあまり話題にならなくなった気がします。
入学式、卒業式などでもお母様の着物姿が減っていますし、結婚式でも本当に親御さんくらいしか留袖をお召しにならなかったりね。一方で、成人式はみなさん振袖ですし、大学の卒業式も袴だったり、そういうイベントごとでの着物はレンタルでもうセットになっていたりして、なかなかフォーマルな場でご自分で着物を用意してということが減ってきてしまっているのかもしれませんね。
以前はころも替えも意識して守っていたものですけれど、気候も変わってきてとても昔のルールでは対応できなくなっていますよね。
昔はころも替えのルールが季節の表になっているものが欲しくて、そのために『美しい着物』を購入して、それをみながらきちんと守っていたりしたものです。二十四節気などの、日本の暦も大切にしたり。でも今はそういうバイブル的な、みんなが参考にするようなものも少なくなって、大枠はあっても、自分で選んで良い時代になってきましたね。
着物も自分の体感温度で決めていいんですよ、とよく最近聞きますし私もいいますけれど、フォーマルシーンでなければ自由に楽しんでいいと思います。
それから、昔の雑誌などは年代別のコーディネートや着こなしなんていう特集もよく組まれていました。20代はこう、30代はこう。50代、60代はこういうものでこれをきたらおかしいなんて、そういう風なことも言われたりね。だけど、やっぱり年齢が上がったから地味にしなくちゃいけないということもないですよね。
もうそういう時代ではないというのが、私もすごく嬉しいですね。やっぱり綺麗なもの、自分の好きなものを着たら気持ちもあがるじゃないですか。そんなところも、変わってきたのかなあと感じています。
着こなしもね、私も年をとったら女優の沢村貞子さんみたいな、帯をぐっと低くして上半身ざっくりと楽に着るような姿に憧れたときもありますが、あれは沢村さんだから素敵で美しく見えるのではないでしょうか。やっぱり自分はきちんと帯も高く綺麗目に着ることが好きだし向いている気がしています。皆様もお好みがあると思います。そういう帯の位置などの着こなしも、今は年齢でどうこうではなく好みや似合う、似合わないということで決めていいのではないでしょうか。
また普段に気楽に着物を楽しむ方は増えている気がいたしますね。素材の進化もあって、洗えるものも増えています。爽竹などの洗える襦袢の進化もすごくて、3年くらい前までの私はポリエステルの襦袢はちょっとね、やはり天然素材が一番ですなんて言っていたし、このコラムやYoutubeでも言っていたと思います。でも今では正絹はもちろんですけれど、新素材も愛用しています。
またこれからもどんどん着物は変わっていくのかもしれませんが、着物で装う喜びには変わりがないような気がいたします。時代の変化も感じながら、変わらない着物の魅力もお伝えしていければと思っております。Youtubeともども女将コラムも変わらずご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。