単衣の時期に大活躍した綿や麻の着物も、そろそろきちんとお手入れして仕舞う時期になりました。皆様によく「どうやって洗ったらいいですか」とご質問をいただきますので、今回は綿の着物のお洗濯についてお話ししたいと思います。
木綿や麻の着物は、自宅でも手洗いできます。麻など高級品の場合は心配であれば専門家にお願いすると安心ですが、木綿の場合はお手頃ですし、自分でお手入れに挑戦してみてもいいと思います。もちろん麻も自分でお手入れできます。
ドライクリーニングですと皮脂の汚れが取れてプレスしてもらえますが、汗染みは取れません。汗の汚れをとるには水洗いや汗抜きをお願いすることになると思うんですが、自分でしっかりと水に通して汗を落とせばすっきりします。
昔はどこのお宅にもタライがあって、それで着物も洗えたものですが、今はそんな大きなものはありませんよね。私は
40センチほどの直径の洗い桶で洗っていますが、なるべくくしゃくしゃにならないようゆとりのあるスペースで、洗剤は本当に少量、泡立たない程度で押し洗いしてください。お風呂や大きめの洗面台でもいいと思います。
そのまま洗うとよれてしまいますから、
最初から洗濯ネットに入れて押し洗いをすると型崩れしにくいです。大切なのは、しっかりと汗を水で流すことです。あとでアイロンをかけたりするのは面倒ですから、シワを作らないように気をつけてください。
脱水はタオルドライが一番なのですが、濡れたタオルをまた洗うのが面倒なので私はほんの短い時間だけ脱水をかけるようにしています。脱水をかけるときに、洗濯ネットを筒のようにまるめて紐などで縛ると着物がくしゃっとなりません。
本当に軽く脱水をするだけで、あとは陰干しをします。直射日光に当てると、褪色してしまったり生地が固くなってしまいますから、必ず陰干ししてくださいね。
どうしても水で洗うと綿の特性で多少は縮みますので、元の寸法を測っておくと参考になります。洗って干すときによくパンパン叩いてシワものばしておくと、ぎゅっと縮んだりするのが防げます
通常、いち利でお仕立てをさせていただくときは水通しをして一度縮ませて、糸も木綿で同じ収縮率になるようにさせていただいております。特に縦方向に縮みますので、身丈で一寸、袖丈で三分ほどですが少しだけ長く仕立てていますが、干すときの一手間で縮みもかなり防げます。
自宅で手入れできるといっても、洋服のように、着たら毎回洗うことはありませんし、すごく汗をかいたときとシーズンの最後だけでもいいですよね。全体ではなく、衿だけ洗う方法もあります。必要以上に構えないで、挑戦してみてはいかがでしょうか。
ただやはり、自宅でのお手入れだとどうしてもくたっとしてくるのが避けられません。着物が日常着だった時代と違って、洗う場所も干す場所も、アイロンをかける場所もないなんてこともあるかと思います。ブランドもののTシャツはクリーニングに出したりするのと同じで、基本自分でお手入れしていても、シーズンの最後だけでもプロに任せてきちっとプレスしてもらうと、次のシーズンも気持ちよくお召しになれますよ。
木綿の着物はカジュアルなもの。絶対こうしなければならないということもありませんので、ご自分がいいなと思うお手入れを選んでくださいね。