よく着物をお求めになるときに、いろんなシーンで着られるものや長いシーズン着られるもの、それから無難なものが欲しいとおっしゃるお客様がいらっしゃいます。
もちろん、気軽に何枚も一度に揃えられるものでもないですからお気持ちはよくわかります。洋服でもベーシックなものを着回すというのはよくありますよね。
その最たる着物が色無地ですよね。一つ紋が入っていれば準礼装として着られるし、紋がなければセミフォーマルから少しカジュアルにも着られる便利なアイテムです。
まずは1枚、と言われるとおすすめな1枚です。でも、今の時代はまず、自分が着てみたいものを選ばれるというのもいいのではないかなと最近思います。
着物をおめしになる方はお分かりになると思いますが、1枚ですべてを満たすような「万能着物」はありません。洋服でも1年中いつでもどんな場所でも着られるものなんてありませんよね。着物も同じで、季節もありますし、着ていく時と場所によって違ってきます。
それに、着物を着る機会というのもフォーマルシーンというよりは、自分の楽しみのために着ることが多くなっているのではないでしょうか。
だったら、誰から見てもおかしくない無難な着物を選ぶよりも、自分が「これが好き!」というものを選んだほうが、袖を通す度にワクワクしますし、気持ちもときめきますよね。
よく体型別で似合う柄とか、パーソナルカラーで選ぶといったこともあるかと思います。もちろんそれも一つの方法ですが、やっぱり自分が一番気に入ったものがその人に似合うものではないかなとこのごろ思います。
着れば気持ちがあがる、着ない時も「あれが箪笥の中にあるわ」と思うだけでも心が豊かになる。そんな1枚を選んでみてはいかがでしょうか。
フォーマルシーンでは別ですが、普段のおしゃれは自分のためにするもの。着物もファッションですから、人から見てどうだというよりは、自分が着たいなと思うものを着て楽しむ。そして、今はそういう時代になってきているのではないでしょうか。
無難なものや人の意見で決めるより、自分がときめく着物で、どんどん着物を楽しんでいただきたいなと思います。
ご覧いただきありがとうございました。
銀座いち利本店で開店以来女将をつとめております、みたざき要子です。きもの歴50年を越え、ますますきものに愛着がわくこの頃です。私たちの娘時代には、母や祖母にぱっと聞けたようなことなのですが… そんな想いから、毎日のきもの暮らしの中で気づいたこと、ご質問いただいたことなどを季節のうつろいに合わせてお話できたらと、このコーナーを始めさせていただきました。いつものように、脱線いっぱいのとりとめないおしゃべりですが、月に一度、少しのお時間お付き合いくださいませ。
いつもご愛読いただき、ありがとうございます。ご感想やご意見、女将にこんなことを聞いてみたい!などなど、こちら(info@ichiri.ne.jp)までメールにてお寄せくださいませ。もしかしたら、次回のコラムのテーマにさせていただくかも!?お便り、お待ちしております。
※メールにはタイトルに「女将きもの知恵袋宛」と明記ください。いただいたお便りは全て女将が拝見いたしますが、お一人お一人へのご返信はご容赦くださいませ。このコーナーの中で、できるだけご紹介させていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。