3月に入り、少しずつ春めいてきましたね。卒業式や入学式などこれからフォーマルなお着物をおめしになる方もお多いのではないでしょうか。
今回は普段あまり気にしないけれど、意外と目立つ八掛のお話です
八掛は、フォーマルは表地をひきたてるような少し控えめなものをつけるのが定石です。
訪問着の場合は、共八掛といって共生地に作家さんが柄をつけたものなどをつけたりしますね。表地と同じ生地ですから、重みもあって裾のたれ感が出ます。
付け下げや色無地はぼかしや表地に響かない色の無地になります。
一方、紬や小紋などにつける八掛にはセンスが試されるところですね。
昔、昭和な頃には「朱色が間違いない」と言われた時期があって、よく朱色の八掛がついているものがありますね。今見るとちょっと昔っぽく、レトロな感じがしてしまいますし、ほとんど選ばれる方はいません。
無難なのは、共色ですね。八掛は、表地よりほんの少し出して取り付けてあります。汚れと擦れから表地を守ってくれる役割があるのです。
ですから表地より一段濃い色をおつけになることが多いですね。
または表地を引き立てるようなキレイな色を選ぶのも素敵です。白黒の表地に薄紫の八掛なんて、とても素敵ではないでしょうか?
またその着物を着る季節にあわせたお色を選ぶのも素敵です。春に着たい着物には春らしいトーンのパステルカラーを選んだりするのも心がときめくものですよね。
私も昔、母が着ていた紅葉の小紋に朱色の八掛がついていたものを、秋っぽい緑色に染め替えてもらって取り替えたことがあります。
若い頃に着ていたものですが、八掛の色を変えたことでぐんと大人っぽい雰囲気になり、年齢を重ねてからも楽しめるようになりました。
八掛は取替もできますから、お好きな色のものに取り替えることもできます。ただ、かなり大掛かりなお直しになりますから、古いものであればそのタイミングでお仕立て直しをしてしまうと、ぐんと着やすいマイサイズの着物に生まれ変わるのでおすすめですよ。
最近は、無地の紬におしゃれな柄の八掛をつけたりすることもありますね。
裾が翻るときだけでなく、袖口や振りにも八掛の色がこぼれますから、裏地とはいっても結構目立つものです。裾だけのように思いがちですが、振りの色などは人からよく見える部分ですから、それも考えに入れておきましょう。
よくわからないわという場合は、着物の柄の一色をとると、なじみもよくて帯のコーディネートもしやすいです。
素敵な取り合わせができれば、はっとするほどおしゃれになりますし、ちょっと奇抜な色をつけてしまうと八掛ばかりが目立ってしまうことにもなり、その加減が難しいところです。バランスが大事ですね。
つい無難なものを選びがちですけれども、カジュアルなシーンでは思いっきり楽しむのもよいかと思います。先日歌舞伎にお出かけしたときに、素敵な八掛のおしゃれをされていた方がいたのでご紹介しますね。黒字に小さな猫が縦縞のように入っているお着物なのですが、それに同じく猫ちゃんのモチーフのおしゃれな長襦袢地を八掛に使っていらして本当に素敵でした。着るだけで楽しくて、うきうきしてしまいそうですよね。
私も今度黒い紬を買って、八掛で思いっきり楽しんでしまおうかしらと計画中です。
八掛も袷の着物の醍醐味のひとつです。お手持ちのお着物を改めてそういう視点で見てみると新しい発見があるかもしれません。
八掛のおしゃれ、見直してみませんか?