新年明けましておめでとうございます。銀座いち利でも初売りが始まって、お正月ならではの華やいだ雰囲気に包まれております。
今回はちょっと、お正月の昔話でもさせていただこうかな?と思います。私が子供の頃、昭和の時代はお正月といえば着物を着せてもらったものです。
初詣や親戚のおうちへのご挨拶まわりも家族で着物で行きましたね。晴れ着ででかけるのが子供心にとても嬉しかったものです。お年玉も楽しみでした(笑)。
でも昔は道路もアスファルトではなくて土でしたから、冬は霜が降りるともうぐちゃぐちゃで着物が汚れるからと、舗装された道路まで父におぶってもらったな、なんてことも思い出します。
三姉妹でしたから、姉たちの晴れ着を見て「大きくなったらこの着物が着られるんだ」などと思ったものです。着物は順番に回ってきたので、いくつになったらこれを着られる、というように楽しみにしたものです。お正月だけでなく、節々でウールのアンサンブルなんかも着せてもらったり。着物がまだまだ身近な時代でした。
大きくなって、着たかったあの着物が着られる!と母に聞いたら、処分してしまったと言われてすごく悲しかったこともありました。母はそのあたりがさっぱりしているというか、執着のない人でしたね。
とても好きな着物だったので、たとえ着られなくても手元に置いておきたかったなあという想いがあって、いまだに忘れられません(笑)。
でも、三姉妹でそうやって折々に晴れ着を着せてもらったことは、今思うと感謝しかありませんね。
母はあまり着物が好きではなかったのですが、叔母が着物好きの人だったので「今年はどんな着物を着てくるかな」とわくわくして見ていました。
私が今こういうお仕事をしているのも、叔母の血を受け継いだからなのかもしれません。亡くなった時に形見分けにも行ったのですが、埼玉の人なのに京都の呉服屋さんの畳紙がたくさんあって、本当に着物が大好きだったんだなあと感心しました。
女の人にとっては、着物をたくさん見たり選んだりすることは本当に楽しみなことですよね。『細雪』の桜を見に行くときに何を着ようと着物を広げて悩んだり、華やかなたくさんの着物を虫干ししたり‥‥まさにあの風景が思い浮かびます。
今度のお正月は何を着よう‥‥そんな風に楽しみに指折り数えたことが今でも思い出されます。決して豊かな時代ではなかったけれど、女の人はお正月や人生の節目に何を着ようかと、贅沢品に思いをこめていたんでしょうね。
私の家もそんなに裕福ではなかったですけれど、三人の娘の嫁入り着物は揃えてくれました。きっと順番にやりくりして揃えてくれたのでしょう。そういう時代でしたね。
またお正月には新しいものを身につけて新年を迎えたものです。今でも私は着物教室の修了式にはお祝いの気持ちを込めて、毎回着物とはいきませんが肌着や足袋でも、とにかくなにか新しいものを身につけることにしています。そういう、気持ちを新たにすることを着物を通して表したり感じたりすることも、日本の文化でしょうね。
着物を着る人は減りましたけれど、お正月を祝う日本の伝統は受け継がれています。いち利の店内もお正月仕様で、スタッフもいつもより華やかな装いで皆様をお迎えしております。今年こそ、コロナ禍も収まってまた賑々しく楽しめますように……。
そしてまたコラムやYoutubeで皆様のお役に立つ情報が発信できればなと思っております。本年も変わらずどうぞよろしくお願い申し上げます。