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2021年12月掲載後から入れたり、抜いたりもできます。
着物の紋のおはなし


先月は色無地のお話でしたが、今月は「紋」のお話をさせていただきたいと思います。

着物でいう「紋」はいわゆる家紋のことで、自分の家系を表すもの。ヨーロッパにもエンブレムなどがありますが、同じように伝統的なシンボルですね。

着物に紋を入れるか入れないかで、格の高さが変わります。紋が入っていると冠婚葬祭など、正式な場面で着用する着物になるということです。一つ紋、三つ紋、五つ紋と、紋の数が多いほど格が高く正式とされています。

昔は訪問着にも紋を入れたものです。アンティークの訪問着や振袖にも家紋が入っているものを見かけます。15年くらい前まではそういうお誂えもありましたね。それだけ家を背負って行動する場面が多かったということなのかもしれません。お嫁入りの着物には紋付きのものをもたされたりということが多かったと思います。

また色無地に一つ紋を入れておけばいろんな場面で着られてよいということで、紋を入れる方が多かったですけれど、今は紋を入れない方がほとんどですね。お茶をなさっている方でも、先生が紋を入れたほうがよいとおっしゃる社中の方以外は、今はほとんど紋なしでお作りになります。

紋を入れると、今の時代はすこし堅苦しくなりすぎるかなというようなこともあるので、あまりおすすめをしなくなりました。自分の家の家紋がわからない、という時には、確実なのは家のお墓に入っている紋を確認することですよ、なんてよく言っていましたが、今はお墓や仏壇にも家紋が入っていないこともありますよね。意外と皆さん、自分の家紋をご存知ないことが多いです。これも時代の流れということでしょうか。

「紋を入れたい」とおっしゃる方にも、白抜きで格が高い日向紋ではなく、あまり目立たず控えめな刺繍紋をおすすめすることが多くなってまいりました。

また、紋は入れたり抜いたりできるものでもありますから、どうしても必要な時には後から入れることもできます。

逆に紋が入っていて気軽に着れないわというものも、紋を抜くこともできますので、気になるものがあったら抜いてお召しになってはいかがでしょうか? また、紋が変わったので入れ替えるということもできます。

また、「家紋」とは別に、「加賀紋」「刺繍紋」「友禅紋」といった「しゃれ紋」と呼ばれるものがあります。

女性の着物に入れますが、女性紋より大きく、38~50ミリほどの直径で、紬やおしゃれ着に自分の好きなデザインで入れるものです。無地の結城紬に入れたりするととってもお洒落ですよね。家紋と違って格があるものではないので、黒羽織に入れてお洒落に着るのも素敵です。

お花や動物など好きなモチーフを入れることができますが、キューピッドをデザインして入れた方もいらっしゃいましたね。本当に自由なものなので、例えばクリスマスのモチーフを入れてもいいわけです。そうするとその季節限定になってしまいますが(笑)なんでもいいのです。ご自分のラッキーモチーフや好きなものをデザインされる楽しみがありますよ。

家紋は、本当にデザイン的に優れていて美しいもの。男性用は38ミリ、女性用は21ミリという小さな丸の中に繊細な図案が描かれていて、家紋帳を眺めるのは本当に楽しいものです。一説によれば8000種以上もあるといわれ、苗字とも深い関係があり、知れば知るほど奥深い世界でもあります。ルイヴィトンのモノグラムのデザインが日本の家紋をモチーフにしているというのも有名なおはなしですよね。

長く受け継がれてきた日本の伝統的な文化は、やはり大切にしたいもの。まったく必要ないものとは思わず、いざというときのためにご自分の家紋は覚えておかれて、また受け継いでいかれると素敵だと思います。

紋を知れば着物の世界はもっと楽しくなりますよ。