もうすぐ衣替えになりますね。秋は着物を着るのが快適で、楽しい季節ではないでしょうか。
着物は袷を着るシーズンが一番長いわけですけれども、東京では真冬以外はそんなに寒くもありません。特に今は寒い時でも暖房が効いていることが多いですから、暑さ対策のために、袷より単衣に手が伸びることも多いです。
大島やお召などは単衣にしてしまうことが多いのですが、ちょっと困るのが私が大好きな結城紬など真綿系のほっこりしたもの。単衣にすると裾捌きが悪くなってしまうのです。
ですから結城紬などは袷にするのがベストなのですが、少しでも涼しく着たいので最近は『胴抜き仕立て』にすることが増えました。
胴抜き仕立てとは、その名の通り袷仕立てから、胴=上半身の裏地を抜いて仕立てたもの。八掛がついていますから、足捌きはよいし上半身の裏地がないのでその分涼しく着られてとても重宝するんですよ。
胴抜きのよいところは、上半身の暑さが軽減されること、少し胸元がすっきり見えることでしょうか。
胴抜き仕立てに向いているのは、紬やお召など生地がしっかりしたもの。
柔らか物などは裏地がついているところとついていないところの差が出がちなので、あまり向いていません。袷にしたほうが落ち感もよくなりますので袷仕立てのほうがおすすめです。
胴抜きと言っても実はいろいろで、主に3種類の仕立て方があります。Aは、『胴裏』をすべて省略、『八掛』を袖口と裾につけ、広衿に。『衿裏』と『背伏せ』のみになります。
Bは袖は袷仕立てにし、身頃は内揚げより下に『胴裏』をつけます。身頃と内揚げより上が単衣になる仕立て方です。一番使う裏地が多いです。
Cは内揚げより下に『胴裏』をつけ、『八掛』をつけます。袖は袖口『八掛』のみ。AとBの中間です。
Aに関しては、お尻の部分が単衣仕立てになります。一番裏地が少なく、涼しい仕立て方になりますが、注意点も。単衣や夏物でもお尻の部分には居敷当てをおすすめしているくらいなのですが、この部分になにも裏地がない仕立てになりますし、お尻の下にくけ線が見えることもあるのであまりおすすめはしていません。
BとCはお尻の部分がカバーできているので、私はこちらをおすすめしています。違いはお袖の振りの部分が違うのですが、これは着る人が気にされるかどうかということにかかっています。お袖の部分は融通がききますので、袖口もいらない、とか、振りの一部だけ胴裏の生地をくけて、などのオーダーも可能です。
普通の紬だとCが多く、少し柔らかめのお召などだとBを選ばれる方が多いでしょうか。
胸元、背中の部分が単衣になるだけでも、お太鼓の枕の部分に汗をかきやすいです、という方とかには効果的ですし、おすすめですよ。
これから秋冬にほっこりと楽しむ結城や紅花系、飯田など真綿系の紬でお着物を作られる方や、袷でちょっと暑すぎて手がのびないお着物を持っておられる方がいらしたら、『胴抜き仕立て』を検討されてみてはいかがでしょうか? 快適で、着られるシーズンがぐんと増えるのでおすすめですよ。