2019年7月掲載夏こそキレイに差がつく!
脱いだあとのセルフケアを習慣に♪


7月に入り梅雨明けも間近となりました。今年は4月から夏日といわれましたが、やはり本物の夏は暑さの質が違います。お出かけから帰って帯をほどくと、中は汗でびっしょり。びっくりしてしまって「すぐにお手入れに出さないとダメですか!?」とお電話をくださる方が毎年いらっしゃるほどです。

確かに、着物や帯が濡れていたらぎょっとしてしまいますよね。けれど、汗で濡れている=汗ジミというわけでもないことをご存知でしょうか?
私は、汗抜きや汗ジミのシミ抜きをほとんどしたことがありません。秋にはよく着た夏物を悉皆屋さんに出しますが、「汗抜きはしなくて大丈夫」と太鼓判です。その秘訣は、汗取り肌着をしっかり着ていること。とうしん草で織った「あしべ織」や、吸湿・速乾の肌着、防水布の付いた汗取り着、さらしなど色々なものがありますが、とにかく蛋白質やアンモニアなど汗の汚い成分を中でしっかり吸い取れば、夏特有の汗ジミ汚れもだいぶ軽減することができるのです。

と、ここまでは毎年申し上げていて、いつもお読みくださっている方は「もう耳にタコだわ」とお思いかもしれません。(でも、大切なことなので来年もきっとお話します!)
そこで今回はもうひとつ大切なこと、脱いだあとの後始末についてご紹介したいと思います。

着物を脱いだらすぐハンガーに掛けて陰干しというのは、皆様ご存知ですね。でも、肩までの短いハンガーや、洋服用を使っている方もいらっしゃるのでは?これは型崩れのもとになりますから、ぜひ袖口までの長さの専用ハンガーをご用意ください。そんなに高価なものではありません。いち利モールで、帯掛付きのしっかりしたものが1,300円ほどです。肩山が型崩れすると、裄の長さがくるって袖口から下の生地がはみ出してきます。それを直す費用に比べたら、ハンガーのほうがはるかにお安いですね。

きものハンガー

さて、どれくらいの時間干すか生徒さんにおたずねしてみたら、1晩、2日くらいという方が多かったのですが、中には「次の週末まで」「次に着るときまで」というツワモノも…
過ぎたるは及ばざるがごとし。目安は着用した時間の倍として、干した翌晩にはたたんでしまうのがよいでしょう。ずっと掛けっぱなしでは裾が袋になりますし、逆に湿気を吸い込んだり光線でやけたりとトラブルのもとです。

着物が汗で濡れているときは、扇風機を30分ほど回しておきます。雨のときはエアコンの除湿との併用も効果的。汗の汚れは肌着で吸収しても、水分を完全に防ぐことは難しいですよね。絹は濡れたまま放置すると縮んだり風合いが変わったりとダメージがひどくなってしまいますから、脱いだらできるだけ早く湿気を飛ばしましょう。
帯もたっぷり湿気を吸っていますから、帯掛に掛けて同じく一昼夜ほど干します。特に袋帯や九寸名古屋帯は中に芯が入っていますから、しっかり干さないとカビになってしまいます。これも除湿や扇風機を使ってしっかり乾かすと安心です。

また、脱いだ直後は帯の結びジワや、着物の着用ジワが気になりますが、干してから手のしできれいに伸ばしてたたみ、たんすの中で押しをかければかなり落ち着きます。着物は必ずたたんでから着るもの。特にふわふわした夏物、小千谷縮などはたたむことでラインが引き締まり、美しい着姿になりますよ。
帯は脱いでまだ温かいうちに手のしで目立つしわをきれいに伸ばすのがコツ。それから形をととのえて干しましょう。帯のシワに不用意にアイロンをかけると、傷んだりにおいが出たりしますのでご注意を!

干したあとは、きもの用のブラシなどで裾、袖口、衿の表面汚れを軽く落とします。衿のファンデーションは比較的落ちやすく、こまめにブラシを掛ければシーズン終わりの汚れ具合がだいぶ変わります。逆に袖口の黒い皮脂汚れは自分ではなかなか落とせません。ベンジンで拭くという方もいらっしゃいますが、私は輪ジミがこわいのでプロにお任せしています。

きものブラシ

最後に、私がお手入れ代を増やさないために心がけていることを2つご紹介いたします。
ひとつは、着物を着付けるときはもちろん着用している間も、気がついたら手をきれいに洗うこと。着物の衿元や帯など、結局一番汚すのは自分の手だと、50年近く着物を着ていて気づいたのです。

ふたつめは、脱いだあとに気がついたシミ汚れやなどを忘れないようにメモしておくこと。皆様なら、スマホで撮影して記録するのもいいですね。日々バタバタしているうちにどこが汚れていたのかわからなくなってしまったこと、皆様もおありではないでしょうか?うっかりお手入れせずにそのまましまうと、翌年の夏には大変なことに…。そうなると直す費用はもちろん、心のダメージも大きいですよね。着物を20年後も30年後も気持ちよく着るために、私にとってお手入れメモは欠かせないものとなっています。

こんな感じで脱いだら後始末&点検をしていれば、お手入れは秋にまとめて出せば大丈夫。そもそも着物はそんなに頻繁に洗うものではないですし、体から出る汚れは肌着や長襦袢で防いでいるはずですから。

日本初のきものスタイリストである大久保信子先生は、常々「始末のいい女にならなきゃダメよ」とおっしゃいます。着物に限らないかもしれませんが、日々まめに手や体を動かす、気がついたらちょっと手をかけておく、そんな積み重ねが大切という言葉だと思います。そして、実際に大久保先生は少しもじっとなさらず、いつもお手をささっと動かして、たたんだりそろえたりしわを伸ばしたり…意識ではなく、習慣として身についておられると感じるほど、それが自然なのです。

もちろん、現代の女性はどなたもお忙しいですが、だからこそ「日々の始末」を、無意識に体が動くくらいクセにしてしまったほうが楽なのです。幸い夏物は軽くて扱いやすいですし、「汗がついたからこのままではいけないわ」と意識しやすいもの。脱いだあとのちょこっとセルフケア、習慣にしていただいて損はありませんよ!

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