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2019年8月掲載単衣キモノの新スタイル
残暑をのりきる「夏寄り単衣」


冷夏が心配された東京の7月ですが、8月に入るとやはり気温がぐんぐん上がってきました。そんな中でもいち利着付け教室の上級生さんたちは、着物姿でお稽古に通う方がけっこういらっしゃいます。凛と美しい着姿はさっと涼風が吹き込むよう。「暑かったでしょう。大丈夫?」と伺うと、「荷物が重くなるので、着ちゃったほうが楽ですよ」と頼もしいお言葉!そうそう、着慣れると意外に平気なのよね、なんて皆で盛り上がりるのも、夏ならではの楽しいひとコマです。

最近は着物のルールもだいぶゆるやかですから、夏のおでかけもいくらか楽になったのではないでしょうか。昔は7月は絽、8月は紗、木綿や麻は家で着るものと母や祖母に細々と言われたものです。今は絽も紗も盛夏を通して着ますし、木綿でお食事や美術館などに行くのも珍しくありません。昔とはライフスタイルも気候も違いますから、それに合った着方が一般的になっています。

私も「原則ではこうするんですよ」とお伝えしつつ、あまり口うるさくならないように心がけています。冠婚葬祭など一部の場合を除けば着物は「お洒落」であり、着物ならではのお洒落をまずは楽しんでいただきたいと思うからです。
そんな私ですが、先日教室の生徒さんと迎賓館の見学に伺った際には、珍しくはっきりと「浴衣は避けてくださいね」と申し上げました。
いつもの気軽なお出かけならかまわないのですが、迎賓館となれば国賓の方をおもてなしするような場所です。やはり訪問先に失礼のない装いが望ましいですし、着物を着るひととして知識やたしなみを身につけるのも大切なこと。時には「涼しくしたい」というご自分の欲求を抑え、お相手を尊重することが日本女性らしい美しさを生むのではないでしょうか。
それに、最近何かと話題の「着物警察」も、ご自身に知識があれば何か言われても毅然としていられます。「これでいいのかしら…」と不安に思っているところに、「あなた間違ってるわよ」なんて言われるから傷ついてしまうのです。知っていれば「くずしている」、知らなければ「間違っている」。同じ着方をしていても大きな違いがありますよね。

特にこれからの季節は、うだるような残暑の中でどんどん秋物に替わっていく衣替えの難関といえます。
「着物は季節先取り」といわれますから、4、5月の単衣や6月の薄物は、もちろん限度はあるものの、かなり大目にみられます。一方で秋は、暑いからといって夏物を着続けると「季節に遅れる」ことになり、けして良しとはされません。しかもお盆を過ぎればもう秋のうち、白露を境に完全に秋とみなされます。6月よりもずっと暑いのになんだか理不尽にも思えますが、着物好きの方はなんとか工夫して少しでも過ごしやすく、かつ秋らしいコーディネートをと頭を悩ませているのです。

さて、ここでもう一度、衣替えのおさらいをしておきましょう。
原則として、10月~5月が袷、6月と9月のそれぞれ1ヶ月間が単衣、7、8月の2ヶ月間が薄物と呼ばれる盛夏の着物です。とはいえ5月の終わりや10月頭に袷の着物では暑すぎますから、25度くらいを目安に着分けることが多く、実質的には単衣が前後約一ヶ月長くなっています。決まりの厳しいお稽古ごとでも、最近は先生が「5月だけれど単衣でいいですよ」とおっしゃることもあるそうです。

そんな中で最近は、5~10月と着用期間がのびた単衣を「夏寄りの単衣」「袷寄りの単衣」と使い分けるようになってきました。6月と9月は夏物に近い薄く軽い生地で4ヶ月間涼しく過ごせるもの。5月と10月はもともと袷の時期ですから、生地は袷にも仕立てる生地でしっかりめの単衣ということですね。
「夏寄りの単衣」の生地は、さわやか縮緬、紋紗、縦絽、夏大島…新素材のセオαも5~9月の着回しを提案されているようです。昔からある生地でも、この数年の間にぐっと色柄が充実して、今の好みに合う洒落たデザインが増えてきました。これは、近年の酷暑やクールビズといった世の中の流れに合わせ、涼しさ、快適さに加え価格面でも女性の要望にこたえようという着物メーカーさんの努力のたまものなんですよ。

これらの生地の特長は、一目で「あ、夏物!」とわかりにくいこと。9月に横絽や紗など透ける着物では「いつまでも夏物を着ている人」と悪目立ちしてしまいますが、「夏寄り単衣」はかなり長く、10月頃まで着てもさほど違和感を感じさせません。お茶などお稽古の方にはさわやか縮緬の江戸小紋や飛び柄小紋、カジュアル好きな方にはしゃきっとした夏大島、ドレス感覚で着こなしたい方には地紋が美しい紋紗と、着用シーンに合わせて選べるのもポイント。これまで、2ヶ月間しか着られない夏物を作るのはもったいないな…と迷っていた方も、5~9月の5ヶ月間ならきっと活用の機会がありそうですよね。

帯はTPOも合わせつつ、5月はさらっとした白っぽい帯、6月からは気温に合わせて夏帯を締めはじめます。お盆を過ぎたら同じ夏帯でも小物をちょっと濃い色に替えてみましょう。黒や茶など濃い色の夏帯をお持ちなら、着物は同じでもがらっと雰囲気を変えることができますね。
9月に入ったら、羅や絽、麻など透ける夏帯は遅くても1週目まで。最近増えている軽くて風通しの良いスリーシーズン帯は、暑さ対策としてはもちろん衣替えのストレスから解放されるのが大きな魅力です。
小物は半衿を基準にとよくいわれます。いち利のスタッフは6/1から白露くらいまでが夏の衿、10/1からは冬の衿としつつ、微妙な端境期にはレースや絽縮緬を活用しています。帯〆は三分紐、帯揚も絽縮緬などが長い期間使えて便利です。

もっとも、着物の常識が昔と今では違うように、着物や帯も昔とはずいぶん変わっています。以前は単衣によく見られた本塩沢や結城縮、ポーラと呼ばれたサマーウールなど、今はとても少なくなりました。お母様やおばあ様のお着物で、何の生地だかわからないものがあるのも無理のないことです。一方では新しい生地もどんどん出てきて、プロでも日々勉強しないとついていけないほどです。
ですからコーディネートやTPO、季節のことなども「わからなくて当たり前」と思って、お気軽に専門店にご相談ください。おうちの着物でわからないものは、写真では判断できませんからお持ちいただくのが一番です。そして、そのお店で作ったものかどうかやお買物のある無しに関係なく、心から親身に相談にのってくれるお店が、きっとあなたの着物ライフの頼もしいパートナーになってくれることでしょう。

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