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2019年5月掲載初夏から秋まで快適に過ごす
女将の衣替えカレンダー




いよいよ令和元年が始まりました。私が若い頃には、明治、大正、昭和と三つの時代を生きてきた方をうんとご長命だと感じたものですが、こんどは自分自身が昭和、平成、そして令和を経験することになるのですね。

私が物心ついた昭和の中頃、日々の暮らしに着物は不可欠なものでした。高度経済成長期を経て洋服が日常着になり、私が母になって入卒式に出席する頃には着物は冠婚葬祭のものになっていました。今、息子たちの小学校の入学式の写真を見返すと、お母さん方がほぼ全員黒の絵羽織姿でずらりと並んでいます。
当時の着物雑誌には人間国宝の着物が毎号のように大きくとりあげられていました。女性たちも、大島をそろえ結城をそろえ…と箪笥の中に「皆が持っているもの」一通りを用意したいと願ったものです。昔は呉服屋さんも、お客様の個性よりも世間の価値観でおすすめするのが普通でしたから、今になって一度も着ていない着物や帯がおうちの箪笥に眠っているのも、無理のないことでしょう。

いち利本店のオープンは平成19年でした。カジュアル着物の専門店はまだまだ少なく手探りの状態でしたが、それでも立ち寄ってくださる皆様から、女性と着物との関係が大きく変わっているのを肌で感じたことを憶えています。私たちの世代と違って「これをそろえなくちゃ」という感覚はなくなり、好きなもの、ご自分の気持ちが動くものを着たいという考え方が主流になりました。人間国宝だから、高価なものだからという世間の見方に縛られず、自分の価値観で選ぶのが当たり前になり、着物はファッションの一つとして自由に楽しむものに変わりました。

けれど、自由になった分わからないこと、迷うことが増えたというお声も本当によく伺います。本格的な礼装は結婚式やよほどきちんとしたお集まりのときくらいですし、季節の衣替えもこれだけ気候が変化すれば教科書どおりが正解とも言えなくなってきました。中でも、今からオンシーズンとなる単衣・夏物は、素材や織り方など生地の種類がたくさんあって袷の着物より複雑です。その上、街で実際に着姿を見かけることもそう多くはないでしょう。特に、日常生活から着物が消えてしまった今の若い世代の方にとって、触れる機会、知る機会がなくハードルが高いのが夏着物であるようです。

そこで、今回は私自身が初夏から晩夏までどんなものを着ているかをご紹介してみたいと思います。私にとって着物は日々の生活着ですから、まず自分が無理せず健康に過ごせることが最優先。その上で、まわりの方に違和感を与えないよう、考えた結果の私的衣替えカレンダーです。これが正解、という線引きは難しいのですが、趣味の着物ならこれくらいの自由度でも大丈夫、というご参考になればと思います。※クリックすると拡大しますさて、今年も4月に入ったとたん気温が急上昇しましたね。長襦袢は、気温に合わせて4月初旬からでも単衣を着ます。4月中旬からは、正絹はお役御免で爽竹や麻の長襦袢の出番。白地の夏物は少し早いので、色柄物を選びます。着物よりも長襦袢を先に涼しいものにして、体感温度を調整するのが過ごしやすさのコツです。

着物は4月中旬~下旬に暑さをみながら袷から単衣に替えてゆきます。この時期の単衣は、御召や、塩澤、大島など、春・秋の長い期間着回せるしっかりめの生地。中でも御召や塩澤は、生地にシャリ感があり適度な厚みと涼しさを兼ね備えているので、自然と着る機会が多くなりますね。
着物を単衣にしたら、帯もぶ厚い袋帯や温かみあるざっくりした風合いのものはやめて、博多帯などつるっとした質感のものを締めます。最近は3シーズン、4シーズン締められるという軽くてお洒落な帯も増えてきました。着回し重視の現代女性にはぴったりのアイテムだと思います。

さて、5月も中旬を過ぎ気温が25度以上に上がってきたら、薄ものを着はじめます。といっても、5~6月に活躍するのは透けすぎない薄ものです。この時期から盛夏、初秋までずっと着回すのは、夏大島、紋紗、さわやか縮緬など。これらは色柄のバリエーションも豊富で、好みのものが見つかりやすいのです。
ただ、夏大島や紋紗は割としっかり地厚なものから透け感の強いものまで生地感が幅広いので、もしお探しになるときは、画像や巻いてある反物を見るだけでなく、必ず広げてさわってみてくださいね。また、明石縮や結城縮の透けすぎないものも、以前は初夏の単衣としてよく見かけたものです。最近はすっかり珍しくなってしまって残念ですが…
絽や麻、透ける夏着物は6月下旬からですが、夏帯はそれよりも早くから締めはじめます。着物は一番目立つところですから、衣替えは一番最後。体感的に少しでも涼しく、軽くするにはまず長襦袢、次に帯。見えないところから夏になる、と憶えておかれるとよいですよ。

迷われる方が多いのが小物ですが、半衿を基準にして、半衿が夏になったら帯〆帯揚も夏になると考えれば失敗しません。いち利では、6/1を境に夏の半衿に替えていますが、皆様はそんなにきっちりでなくても大丈夫。着物や帯に対して小物だけが重い感じにならないようバランスをとるとよいでしょう。最近は、レースの半衿などファッションとして一年中使えるアイテムも増えましたし、帯〆だって夏はレース組とかぎらず、細めのものでも十分です。三分紐や細ゆるぎの帯〆も、一年中ずっと使えます。夏の帯〆は白っぽい色が多いので、お好きな色の三分紐や細い帯〆を挿し色として活用するのもいいですね。
帯揚は、着物や帯が軽くなったらぽってりした縮緬はやめて、りんずなど薄手のものに替えます。単衣には楊柳や絽縮緬、盛夏には絽や紗を使います。絽縮緬は単衣~夏とずっと使えて便利ですよ。

気候も世の中もどんどん変わっていく中で、着物についても一部の冠婚葬祭やお茶席などを除けば昔ほど限定されない、寛容な考え方になっています。これから新しい時代に入り、古い常識にこだわらないほうが良い場面も増えていくでしょう。新しい時代のマナーとして一番大切なことは何かと考えると、それはやはり「自分も周りの方も、快適であること」ではないでしょうか。これから、蒸し暑く過ごしにくい時期に向かいますが、着心地も見た目にも涼しく、自由な発想と工夫で着物を楽しんでくださいね。

今月のおすすめコーディネート

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