2019年4月掲載似合う「色」は見つける?つくる?
着物×帯の"似合わせ"コーデ術


春は始まりの季節。大きな節目でなくとも、せっかくだから何か新しいことにチャレンジしたくなりますね。明るい日差しや暖かな風に後押しされて、なんだか積極的な気持ちになるのは私だけではないと思います。

さて、着物でいえば新しいコーディネートや新しい色柄に挑戦してみたい、というお声も新鮮な気分の春に多いように思います。とはいえ、着物は洋服と違って占める面積が大きいですし、洋服よりも高価なぶん冒険しづらいもの。もちろん、色とりどりの着物を楽しまれる方もいらっしゃいますが、大半の方はどうしても好きな色、「自分にはこれが似合う」と安心できる色に偏りがちです。また、「好きなのはこの色だけれど、似合うかどうかは…」という方も多いのではないでしょうか。

私はいち利開店以来、年間で千人…とはいきませんが、数百人のお客様をコーディネートさせていただいて、私なりにその方に似合うものをご提案するコツを見つけてまいりました。
まず一番大切なのは、先入観をもたないこと。そのときのお洋服や小物、お好みの色柄などの情報はヒントになりますが、あまりとらわれすぎないよう気をつけます。意外と全く違う色がぴったりお似合いになることも多いですから。
着物に限らずお友達にファッションのご相談をなさるときは、お好みやいつもお召しのものをあまりご存知ない方に選んでいただくのもおすすめですよ。

さて、鏡の前に立っていただいたら全体の雰囲気とともに髪や瞳の色を見て、どんなふうにしたらその方がもっときれいになるかしらと考えます。髪や瞳、肌の色はパーソナルカラー診断でも重要なポイントだそうですね。私は、この色だからこう、と決めているわけではありませんが、髪や瞳の色が明るめの方には明るい色を当ててみることが多いように思います。

このとき大事なのは、気になるものは必ず白衿を付けて着物の形に着装することです。反物を胸の前や肩に垂らすだけでは、お顔うつりも実際に仕立てたときのイメージもわかりません。
そして、全身を見るときには必ず帯まで付けてみます。着物は肩から足元まで全てを覆うだけに、着姿を決めるポイントはなんといっても帯。最近流行の無地感の着物は、帯が入らないとなんだか間延びしますし、反対に総柄の着物は柄が途切れずよけいにうるさい印象に。どんな帯を合わせるかで、着物の色柄はまるで変わって見えます。そもそも着物のデザイン自体、帯があって初めて全体にメリハリがついて完成するように考えられていますから、帯なしでどう見えるか、似合うかどうかを判断することはできないのです。

そして、帯は着物の色とも大きく関係します。
着物の地や柄の色は、単色ということはありません。色無地でも複数の染料を混ぜて染められています。すると、帯を合わせることで着物の色のどれかが、帯の色に引っ張られて強く出てくるのです。同じ着物だとしても、合わせる帯が変われば色みや全体のイメージは大きく変わってきます。つまり、ご自身の好みの帯を合わせることで、着物の色をあなたに似合う色に作っていくことができる。これこそ着物のコーディネートの醍醐味といえるでしょう。

もし、お好きな色だけれど似合っているかどうか自信がなかったり、新しい色を合わせてみるときには、ぜひあなたらしい帯を付けてみてください。同じ着物でもぐっとお顔うつりよくしっくりなじんで見えたり、「あ、私この色、似合うかも!」と気づくことがあります。そして、まわりの方にも「よくお似合いね!」とほめていただくと、着こなしに自信が出てますます似合ってくるのです。

この「似合わせコーデ」のためにも、ぜひ機会があればお店でさまざまな着物や帯を試してみてください。着物の形に着装して帯や小物まで合わせることで、たくさんの色柄を比べていただけるのはもちろん、生地の質感や光沢によって同じ色でもまったく違って見えたりと新しい発見が生まれます。お洋服でも、ちゃんと選ぶときにはご試着をされますでしょう。着物は高価なものなのですから、尚更ご試着は欠かせませんよね。「試着したら買わなきゃいけないかも?」なんて思わずに。きちんとした呉服屋さんなら「試してみませんか」イコール「買いませんか」ということではありません。安心して「これを試着したいのですが」とお声をかけてくださいね。

それにお店でトータルコーデをお試しいただけば、プロのテクニックを参考にすることもできます。ちなみに私のコーディネートのポイントは「その方の個性を出しつつ、品の良い着こなしをご提案する」ということ。淡い色で上品なイメージに仕上げるだけでなく、強い色を使っても品の良さを失わないように気をつけます。「上品さ」を演出する基本的な方法は、色づかいに統一感を出すこと。着物や帯にビビッドカラーがあるときは、小物のどこかに同じ色を合わせれば、全体的にまとまりのある印象になりますよ。
それからこれは余談ですが、どんなにお手本のような上品コーデでも、きちっと着付けることが何より大切です。だらしないところに品の良さはないのですから。

洋服よりも着物のほうが似合うものを選ぶのが難しい、何を選んだらいいか分からないとよく伺います。日常生活で目にする機会が圧倒的に少なく、雑誌やインターネットで参考になる情報も少ないので、そう思われるのも無理はないかもしれません。けれど、洋服の美しさ、着物の美しさということを考えたとき、私は、やっぱり洋服を着たときは若さやスタイル、顔かたちが美しさを作っているように思うのです。対して着物は年齢や外見に関わらず、その方のお人柄や雰囲気が着こなしの「味」を作り、それが美しさにつながるのではないでしょうか。皆様のまわりにも、女優のような美貌や若くてスタイル抜群でなくても、着物姿がしっくりとはまって、えも言われずお洒落でその方らしい美しさを醸し出す方がいらっしゃいませんか?

だからこそ着物は、似合うものをあなたらしいコーディネートでさらに似合わせることがとても大切です。あなたならではの「着物美」を作っていくことこそ、奥深い着物の魅力ともいえるでしょう。

今月のおすすめコーディネート

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