3月に入ったとたん、東京はぽかぽか陽気となりました。しばらくは寒暖の差が激しい日が続きそうですが、厳しい冬のあとだけに春の喜びもひとしおですね。
先月は記録的な寒波襲来の真っ只中、新潟県十日町市に着物産地探訪ツアーで行ってまいりました。一晩で1メートル以上の雪が積もり、文字通り一歩も外に出られないほど。そんな厳しい生活の中で培われた辛抱強さがあればこそ、見事な絞りや手織りの紬が生まれたのだなあと実感した真冬の旅でございました。
さて、おかげ様でこの3月をもちまして、このコラムも3周年を迎えます。ご愛読いただいている皆様に、心から御礼申し上げます。
当初はいち利のLINEで何かちょっとした読み物をということで、ご登録いただいている方だけに配信しておりました。1年くらいのつもりでしたが、あっという間に3年がたち、今ではいち利モールの中で3年分の内容をいつでも好きなときにお読みいただけるようになりました。
4年目ももっと楽しくお役にたつよう、四季折々に着物のある暮らしをご提案していきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
そして、3周年記念イベントとして3ヶ月連続で開催しております「きもの知恵袋」実践講座&ランチ。先月2/4は、銀座本店にて10名のご参加者様と銀座の「ジョーズシャンハイ」へ。ちょっと贅沢に中華料理のコースランチをいただきました。
お食事のときは、お一人ずつ自己紹介をかねてお着物との関わりやエピソードをお話いただいたのですが、これがとても盛り上がり講座の予定時間まで食い込んでしまったほど。とても和気あいあいとした楽しいひとときでした。そんな中、皆様口をそろえておられたのが「なかなか着物を着る機会がない」ということ。一人で着物を着て出かけるのは気恥ずかしいし、かといってご近所を着物姿でブラブラするのも「今日はどうしたの?」なんて声を掛けられてしまう。今回のイベントも、講座での学びもさることながら、着物姿の方が大勢集まってお出かけする機会としてとても喜んでいただけたようです。
来週3/11には福岡天神店でのイベント開催となります。福岡の皆様とお会いできますのは年に1~2回ですので、皆様とたくさんお話をして、充実した時間を過ごせますのを心待ちにしております。どうぞお気軽にご参加くださいませ。
さあ、4年目となります3月のコラムです。何をお話したものかとこれまでのものを読み直しましたところ、入卒式や春のお出かけと、コーディネートのご紹介が主となっておりました。お式ごとでなくとも、3月、4月にはちょっとしたお集まりや節目の行事など、着物の機会が増えますね。
そんな折につきものなのが「記念撮影」。もちろんあらたまった機会に限らず、最近はSNSなど実にまめに着物姿のお写真をアップしておられる方も少なくないですね。
ご自分のためだけに、覚書としてコーディネートのお写真を残しておくのもおすすめです。
着物のお出かけは当日その日ばかりでなく、予定を決めてから何を着ていこうかと思案し、たんすを開けてあれこれ組み合わせてみたりと、そんな時間もすべてが楽しみなのです。写真を見返しては「あのときはこんな着物だったわ」と思いを巡らすのも、着物ならではの醍醐味と言えますでしょう。
さて女性ならば誰しも、せっかく着物でお洒落なさったら、少しでもきれいなお写真をと気配りをなさることと思います。そんなとき、わざわざお化粧室に行ったり鏡を見たりせずに、わずか5秒で写真うつりをぐっと美しくするコツがあるのです。
まずは、目立つ部分の着崩れ直しです。よく、カメラの前で帯揚やおはしょりを直す方がいらっしゃいますけれど、本当に目立つのはお顔まわり。お顔に一番近い2つのポイントを直す方が、簡単で効果的ですよ。
まず半衿のしわを伸ばします。衿の合わせ目を片手で押さえ、衿元が崩れないよう片方ずつ、人差し指を衿の内側に入れて前から後ろへと半衿のしわ、たるみを送ります。このとき前に向かってなでると衿の合わせ目にたるみが寄ってしまいますから、写真にうつらない後ろへ送るのがコツです。
次に、肩のしわを伸ばします。きれいに着付けても、動作につれて肩のあたりにはだんだんしわが寄ってきます。肩の細い方、前に寄っている方は、尚さら気になるポイントですね。これは、袖口の外側を指先でそっと持ち、下に引くように伸ばすことできれいになります。カメラの前に立ってからさりげなくできますから、着崩れを直しているなんて気づかれません。でも、このとおり先ほどまでのしわがきれいに伸びました。
次は、ポーズのコツを3つほど。
着物での立ち姿のときは、基本的に左肩を前にして少し斜めに構えます。つま先は左足をやや前にして内向きにそろえます。こうすると、上前側の胸と裾がきちんと正面に見えるのです。訪問着はもちろん、小紋でも上前の胸と裾にはできるだけ柄の良いところがくるように仕立てますから、ぜひこの立ち姿を心がけてみてくださいね。
両手先は、おはしょりの前あたりで指先をそろえて重ねます。重ねた手は少しお腹から浮かせるように体から離すと、上前肩から袖のラインがすっと伸びて柄も美しく見えるんですよ。それから、後姿を撮るとき。
お洋服のときには、わざわざ後姿を撮ることはあまりないかと思いますが、着物のときは帯も主役ですから、後姿を写真に残すことも多いですよね。そのときに普通に背筋を伸ばして立つだけでは、写真だとなんだか猫背に見えるのです。後ろ姿をきれいに撮るには、あごをちょっと上げ、頭を後ろから引っ張られているようなイメージで体を後ろにぐーっと反らし気味にすることです。ちょっと不自然に思えるかもしれませんが、写真では背筋のすっと伸びた美しい立ち姿になりますよ。さらに、右足を半足ぶんほど後ろに引くと着物が裾すぼまりのすらりとしたラインになり、帯下も長く見えます。最後に、一番大事なこと。
こまごまと書き連ねてまいりましたが、本当はどんな美しい着付けやヘアメイクも、飛び切りの笑顔にはかなわないのです。思わぬアクシデントに見舞われ、100点満点の姿でカメラの前に立てないこともあるかもしれません。そんなときも、笑顔だけは忘れずに!
長く厳しかった冬のあと、待ちに待った春のお出かけです。楽しい思い出のお写真がたくさん残りますように願っております。
「銀座の女将 きもの知恵袋」実践講座 福岡天神店の開催日程は下記のとおりです。
3/11(日) 福岡天神店
※コーディネートに使用したアイテムは、SOLD OUT、及び販売終了の場合がございます。ご了承ください。